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2018.01.04

「リビング」か「子ども部屋」か。家庭学習の環境づくりによる効果

家庭学習の環境づくりは学習意欲にも影響する大切なことですが、「リビング」と「子ども部屋」、勉強はどちらでやったほうが良いのでしょうか?それぞれのメリットや効果についてご紹介します。

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リビング学習のメリット

リビング学習の利点は、勉強とは孤独で苦しい修行のようなもの、という「孤独で苦役的な学習観」からの脱出にあります。要するに学習に対するイメージを変える意味で重要な環境づくりと言えるでしょう。学習へのイメージが改善すれば、「勉強は嫌なもの」という先入観が緩和され、勉強へのモチベーションが高まる効果が期待できます。 また、保護者が「見守る」距離感に居ることができる、ということも大きな利点です。過干渉になってしまえば台無しですが、子どもの立場になってみると、自分が努力をしていることを認められるということは「やる気」を継続する上でとても重要です。さらに、結果しか評価することのできない関係より、過程を評価することもできる関係であれば、表面的な結果よりも、そこに至る努力を重視する意識が生まれ易い環境になり、学習に対してより質の高い意識を持つようになることでしょう。

保護者の姿が与える影響

さらに、リビングは住まいにおいて、家族共有の空間である、ということも忘れてはならないポイントです。いわば、家族内における擬似パブリック空間とも言える場所であり、お互いの存在を意識し合いながら過ごす場所なのです。ですから、そこで保護者が見せる姿は大きな影響を与えることは言うまでもありません。保護者が率先して本や新聞を読み、学ぶ姿を見せ、学習することが「当たり前」の雰囲気を作り出すと、子どもにとっての「当たり前」も、それが基準になっていきます。言葉ではなくとも、姿で語ることもまた教育と言えるでしょう。 そして、そうした中で交わされる会話は、お互いが得た知識や情報を共有するきっかけになっていくことでしょう。リビングがアカデミックな空間になり、知恵の共有化を行なう場所になっていく、そんな可能性を持っているのがリビング学習なのです。

リビング学習はいつまでやれば良いか

リビング学習の話をしていると、よく聞かれるのは「保護者が見守る必要があるのは低学年の間であって、高学年になれば自室でやらせるのが良いのではないか」というご意見です。もちろん、リビング学習は万能ではないので絶対というルールはありませんが、年齢で区切るのもおかしな話です。 というのも、要は勉強をしやすい環境を設定することがそもそもの目的ですので、リビングでやらせなければいけない、自室でやらせなければいけない、という線引き自体が間違っていて、ケースバイケースで勉強し易い場所を選択できるということが大切なのです。 ですから、高学年になって、自室で勉強したいという時があれば自室で勉強をすれば良いですし、リビングでやった方が落ち着くということであればリビングで勉強をすれば良いのです。その使い分けがしやすくなるように、レイアウトや家具などを選定していくことが大切となっていきます。

個室を与える必要はあるか

さらに、子ども部屋の所有率(※1)を見ると、2~3歳ですでに32.2%、4~6歳で51.4%の子どもが子ども部屋を持っており、小学3・4年生にもなれば90%を超えていきます。ですが、子ども部屋で過ごすようになった時期(※2)というデータを見ると、小学校入学前の子は1.4%しかおらず、年齢が上がれば増えていくものの、小学5・6年生でも17.9%程度だったのが、中学生になったら一気に62.8%まで上がり、中学生になると個室で過ごす傾向が強いことが分かります。 小学校入学前の子において個室で過ごすのはたったの1.4%しかいなかったのに、個室を持っている割合は5割もいる、という実情が見えてきます。個室はあるけれど子どもが居場所としては使っていないということです。 使いもしないのに無駄に与えたということではなく、これは純粋に新築したり、マンションを購入した際に、将来を見越して部屋を与えたということなのでしょう。ただ、中学生になると一気にニーズが高まるという点から、思春期を迎えた子どもがプライバシーを求めて個室で過ごすようになるということが分かります。 ですから、一定のプライバシーを守ることができる環境を与えることも必要で、リビング学習させるから個室は不要という訳ではないのです。

個室は簡素に

個室は必要ですが、その個室が充実し過ぎると子どもは個室から出て来る必要性がなくなり、次第に出て来なくなります。ですから、学習環境の使い分けをケースバイケースで使い分けができるようにするためにも、個室を中心に据えるのではなく、あくまでも個室は最低限のスペースに留め、パソコンや学習道具などはリビングに収納するようにしていくことをお勧めします。 そして過ごしやすいスペースはリビングという環境ができていれば自然と家族が集まり、コミュニケーションも増え、家族間の親和性を高めることにも繋がりますので、リビング学習を考えることによって学力だけではない家族のあり方まで考えるきっかけになればと思います。 ※1、2:「住まいにおける子どもの居どころ調査」京都女子大学片山研究室 積水ハウス住生活研究所(2007年)

諸葛 正弥

大手進学塾で長年指導を行ない、2007年に「イラスト図解でわかるプロ教師力アップ術55」(明治図書)を出版。教育委員会・各種学校などで教員研修を行ないながら、私立中高一貫校の学校改革などを手掛けている。また、「ロボット教室」や「学習教室まなび-スタイル」の運営、「よい子を育む家」の監修なども行ない、教育について幅広く活動を行っている。

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