否定されて育った子どもの特徴は?子どもを否定しないため親ができることなどについて解説
子育てに関する相談の中で、子どもへの接し方に迷う保護者は少なくありません。「褒めることができない」という悩みは昔から多いものの、最近増加傾向にあるのが「つい否定的な声掛けをしてしまう」「どのように注意すれば良いのかわからない」という声です。
ただ子どもが否定されて育つと、どんな影響があるか気がかりですよね。また、子どもを否定する親自身が生きづらさを抱えている、というケースも少なくないものです。
そこで今回は、否定されて育った子どもの特徴やそもそも子どを否定するとはどういうことか、子どもを否定する親の心理や対処法などについて、詳しく説明します。ぜひ参考にしてください。
目次
否定されて育った子どもはどうなるの?
否定され続ける程度や子どもの資質により、差があることが前提にありますが、長期間にわたり親から否定的な声掛けや冷たい態度を受け続けてきた子どもは、精神面や身体面に影響を受けることがあります。
精神面
否定的な声掛けを受け続けることで、自己評価の低下や不安感の増加、攻撃的・反抗的な行動、対人関係の困難さやさらには社会的スキルにも影響し、将来的には社会的な不安や抑うつ症状に繋がる可能性があります。
身体面
慢性的なストレスにさらされることで、ホルモンバランスの乱れや免疫機能の低下、心疾患や胃腸障害のリスクが増加するだけでなく、ストレスによって睡眠障害を引き起こす場合があります。それにより成長ホルモンの分泌が阻害されると、身体的な成長や発達の遅れなど広範囲にわたる身体的な問題に繋がる可能性があります。
否定されて育った子どもの特徴とは?
大人から頭ごなしに否定的な声掛けをされ続けてきた子どもは、行動面にも特徴が現れることがあります。それは個々に異なる形で現れることがあり、特に思春期になると、攻撃的な行動が目立つようになったり、内向的になったりする場合があります。そしてそれが長期間にわたり続くと希死念慮に囚われる危険性さえあるのです。
攻撃的な行動
フラストレーションや怒りを他者に向けて攻撃的な言動が見られ、暴力的な言動や物を壊すなどの過剰な反応を示すことがあります。また、否定的な経験が積み重なることで、大人や権威に対しても自分の意見や感情が抑圧されることへの防衛反応として反抗的な行動を見せることもあります。
希死念慮や摂食障害
攻撃的な行動が外に向く場合と同様に、長期間にわたって人格否定や抑圧を受け続けた子どもは、摂食障害と言う形で表面化したり、無意識のうちに希死念慮が形成されたりすることがあります。自分を大切にできず、自己嫌悪に陥り、内向きに攻撃が向かうと深刻なケースに発展することもあります。
回避行動
否定されることを恐れるあまり、自分を守るために、失敗や批判を避けようとし、新しい挑戦を回避する傾向があります。不安から様々な場面で消極的になり、責任やリスクを避ける行動が目立ちます。また、人から注意を受けた際に自分を守るための言い訳が多くなることもあります。
自己主張の欠如
否定的な声掛けによって自尊心が低下すると、自分の意見や感情を表に出すことを避けるようになります。他者に過度に合わせようとしたり、依存的な傾向が見られ、自己主張や自己決定が乏しくなる場合があります。
他者からの評価に振り回される
自己評価が低い人は、他者から認められてもそれを受け入れるのが難しく、他人に対して懐疑的になる傾向があります。そのため周囲の人の目や感情を過剰に気にしてしまい、必要以上に自己犠牲を払うことが多く、結果として他者に利用されやすくなることがあります。
人間関係の構築の難しさ
自信を持てず、他者との関係性を築くことに不安が強い場合、交流を避けるようになることがあります。これにより、内向的で孤立した行動が目立ち、友人関係や社会的な人間関係の形成がうまくできない場合があります。
そもそも「子どもを否定する」とはどういうことか?
人格否定
子どもが問題行動をした時に、大人がしがちな声掛けの中で、特に「あなたはダメだ」「何をやっても失敗する」といった人格を否定する言葉は、子どもの心に大きな傷を残します。例えば、「嘘をついた」ことに対して、「嘘をついたのね」という言葉は行動を指摘していますが、「嘘つきだ」という言葉は人格を否定し、その人自身を評価していることになります。前者は行動が問題であることを示しますが、後者はその行動によってその人自身が悪いと決めつける表現となります。
他者との比較
兄弟や家族間でもよく見られるパターンですが、「〇〇ちゃん(君)はできるのに、あなたはいつもできない」といった比較する発言は、学業や運動などで過度な期待を押し付けることになり、子ども自身の自己評価の低下を招きます。
強迫や条件付きの愛情
「言うことを聞かないならうちの子じゃない」「勉強しないなら出ていけ」といった発言は、子どもが親の期待に応えられない場合には愛される価値がないと感じさせる恐れを引き起こします。特に「出ていけ」と言われると子どもには逃げ場がなくなり、精神的に追い詰めることになります。これにより、親とのやり取りに対して恐怖心が芽生え本当の事を話さなくなる傾向が見られます。
子どもの感情を無視する
子どもの「楽しい」「嬉しい」といった感情は、親のそれとは異なることがあります。しかし、子どもの喜びを無視したり、くだらないとバカにしたり、冷たい態度で接すると、子どもは「自分は価値がない」と感じるようになります。親は子どもが楽しんでいることを「楽しいのね」と受け入れることが大切です。
関連記事はこちら「実は子どもを否定している……! 親が良かれと思って「つい言いがちなNG言葉」とは」
これって毒親…?子どもを否定する親の心理とは
では、親が子どもを否定する理由や、子どもを否定する行動の背景にあるものとは何でしょうか。いくつか考えられるものを挙げてみます。
子どもの評価を自分の評価と重ね合わせる
子どもへの社会的評価を自分自身の評価と同一視する親は、子どもを責めたり否定したりする傾向があります。例えば、子どもの成績が悪いと、その原因を自分の育て方にあると感じる親もいます。しかし、日常生活や家庭環境が子どもの健康に影響するほど乱れていない限り、学校の成績や先生からの評価は親の評価とは関係ありません。
特に親自身の承認欲求が強く、良い親だと認められたい、周囲から褒められたいという思いが強い場合、子どもを自分の理想に近づけるために過度な要求をしたり、否定的な言動が増えることがあります。
自身が否定されて育ってきた経験
親の中には、子どもにどう接して良いか分からない人もいます。自身が幼少期に、親の愛情が条件付きだと感じながら育った、または自分は愛されていなかったという想いがある場合、同じようになりたくないと思っていても、わが子に対して適切な対応の仕方が分からず、結果として否定的な態度を取ってしまうことがあります。これには、保護者自身が親から「大切にされている」という実感を持てないまま育った影響があるかもしれません。
子どもをコントロールしようとする
子どもを自分の思い通りにコントロールしようとする親は、否定的な言葉を使ったり、脅したりすることがあります。この「思い通りの子どもになって欲しい」という願望が行き過ぎると、子どもを責めたり、冷たい態度で接したりする場合があります。
感情のコントロールが未熟
親自身が子どもの頃に否定されたり抑圧されたりして育った場合、抑圧されてきた感情をコントロールするのが難しくなることがあります。その結果、非力な子どもに対して感情的に接し、自分の感情を抑えきれずに否定的な言葉や態度を取ってしまうことが多くなります。
毒親についての記事はこちら「【毒親チェック】毒親の4つのタイプと特徴・毒親にならない方法を専門家が解説」
子どもを否定しないためにできること
では、子どもを否定しないためにできることはとは何か、ここで考えてみましょう。
子どもの発達を学ぶ
まずは保護者自身が「子どもの発達」を学ぶことをおすすめします。学ぶことで、子どもの行動が個性なのか、年齢的に通過するものなのか、特性なのかを理解することができます。
子どもへの接し方を学ぶ
子どもへの接し方や対応が分からない場合は、声掛けの方法などを学びましょう。ネットや本、YouTubeなどでも知識を得ることができます。
またソクたま相談室には、子育てや教育の専門家が多く登録しています。具体的な悩みの相談には、ぜひご活用ください。
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藤原美保さんへの相談ページを見てみる否定されて育った親が生きづらさを解消するためにできること
自身の過去の経験を理解し、その影響を冷静に認識することが重要です。以下に具体的なステップを示します。生きづらさを軽減し、子どもとの健全な親子関係を築くための一例として参考にしてください。
自己理解と受容
否定的な声掛けを受けて育ったことで、攻撃的な行動や回避行動、自己主張の欠如などの特徴が現れることがありますが、まずは自分自身の感情や反応を理解することが大切です。過去の否定的な経験が現在の行動や思考にどのように影響しているかを認識することで、自分を責めずに感情をコントロールする第一歩となります。
カウンセリングや心理療法の活用
長期間にわたって受けた否定や抑圧が無意識のうちに希死念慮を育てているケースもあります。そのような場合には専門家の助けを借りることが有効です。自身に合ったカウンセリングや心理療法を受けることで、感情や思考を整理し、自分を大切にする感覚を取り戻す手助けになります。忘れないでいただきたいのは、自分だけでなく、多くの人がそこから抜け出すことができているという事実です。
自分自身の自己肯定感の向上
自己評価が低く、他者からの評価に振り回されやすい場合、自分の価値を積み上げる活動が必要です。他者の評価に依存せず、自分との約束を日々積み重ねることで、自己評価を高めることができます。
健全な親子関係の構築
否定的な態度で子どもを育てないためには、自分が受けた間違った子育ての仕方を見直すことが必要です。子どもには否定や批判ではなく、愛情や大切に思う気持ちを伝え、自尊心を育むよう努めることで、親自身も過去の否定的な影響を克服することができます。
まとめ
否定されて育った過去を乗り越えるためには、自分が受けた辛い現実に向き合うことが必要な場合もあります。しかし、子どもの発達や対応を学ぶことで、子どもの行動のほとんどは責めたり否定する必要がないことが分かります。そして自身の親の対応が無知であったことが分かり、幼い自分には何の罪もなかったことに気づくことができます。
自己理解と成長を通じて、子どもの未来に向けたポジティブな行動を取り、健全な子育てにしていきましょう。この記事が、今後子供と関わる上で少しでも役に立てれば嬉しいです。
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療育20年、放課後デイ10年運営のベテラン。子どもの「できない」に悩む親へ、行動の原因と対策に徹底的にサポート。幼少期にこそできる家庭内療育を提供。発達障害の子への性教育も。 これまでに、『発達障害の女の子のお母さんが、早めに知っておきたい「47のルール」』(エッセンシャル出版社)、『発達障害の女の子の「自立」のために親としてできること 』(PHP研究所)と2冊の本を執筆。現在も出版に向け本の執筆をつづけている中、子育てのポータルサイトにて発達障害の子の子育てコラムを連載中。