いじめ・ネットトラブルの被害児童・生徒に向けた、大手保険会社の保険特約。「要る?」「要らない?」保護者の声は……
子どものいじめやネットトラブルが年々増加し、社会課題となっています。こうした状況に対応するため、東京海上日動火災保険が、被害児童・生徒が対策や再発防止を講じるための費用を補償する特約を販売すると発表しました。全国の子育て世代は、この新しい保険特約についてどう思うのでしょうか? 「ソクラテスのたまご」がアンケートを実施しました。賛成と反対、それぞれの声を紹介します。
目次
「いじめ・嫌がらせ」に対応する補償特約とは
東京海上日動火災保険が2023年10月1日から新たに販売を開始するのは、児童・生徒がいじめ、嫌がらせ、ストーカー行為等の被害を受けた場合、再発防止のための防犯対策費用、転校やカウンセリングのために負担した費用について、1事故あたり20万円を限度に補償する「トラブル対策費用補償特約」という保険の特約です。
近年、学校等におけるいじめやSNS等のネットトラブルが社会課題となっています。
小中高校および特別支援学校における2021年度のいじめ認知件数は、2010年度の約8倍の61万5351件。インターネット違法・有害情報相談センターへ寄せられた2021年度の相談件数は2010年度の約5倍になるなど、いじめやネットトラブルの件数は増加しています。
これらが背景となり生まれた「トラブル対策費用補償特約」の具体的な内容は下記の通りです。
補償対象となる被害
・不当行為による自由、名誉、プライバシーまたは肖像権の侵害
・痴漢
・ストーカー行為
・いじめ
・嫌がらせ
・身体の障害
・財物の損壊
支払いの対象となる費用
■防犯対策費用
・防犯装置の設置
・ドアロックの交換費用
■転校費用
・転校先の制服・教材等、学校から購入の指示があったものの購入費用
・入学金
■カウンセリング費用
・臨床心理士によるカウンセリング費用
契約対象
学校、PTA等が契約者となり、その児童・生徒等を保険の対象となる人(被保険者)とする団体契約(商品名:団体総合生活保険・こども傷害補償)
販売期間
2023年10月1日保険始期契約から
概算保険料
月額120円
※契約条件によって異なる
※セットで加入する「弁護士費用等補償特約(人格権侵害等)」を合わせた保険料
いじめや嫌がらせ、ストーカー行為等の被害については、警察へ提出した被害届等によって、その事実を客観的に証明できる場合に対象となります。
団体総合生活保険に付帯する特約であるため、個人での契約はできませんが、この新しく販売される保険の特約について、全国の子育て世代はどう感じているのでしょうか?
「トラブル対策費用補償特約」について保護者の賛否は?
今回、「ソクラテスのたまご」は全国の小中学生の子どもを持つ子育て世代101人に「トラブル対策費用補償特約」についてどう思うか、独自のアンケートを実施しました。
その結果、「必要」は51%、「必要ない」は12%、「どちらでもない」は37%となりました。
「補償してくれるのはありがたい」という賛成意見が多い中、「いじめの解決にはつながらない」という反対意見も。それぞれ立場の人たちの具体的な声を紹介します。
「トラブル対策費用補償特約」について賛成、その理由
賛成意見の中で多かったのは、「いじめの被害に遭ってしまったとき、費用面の補償があると助かる」という声です。また、第三者が介入し、事実確認をすることで、いじめの解決や再発防止につながるのではないかと考える人もいました。
タブレットや通学バック・体操服や制服等、高額なものを壊されたときに保険を使って買い直しができると親としては助かります。物の補償だけでなく再発防止が一番大切なので、その費用も補償してくれる保険があると心強いと思います。
(40代前半・女性・佐賀県)
保険に入っていることによって、親自身のいじめ等に対する対策が明確になると思う。そして相手にもはっきりこの保険のこの補償内容は、貴方の子供が行った行為です。とはっきり提示できるのはかなり強みになると思う。第三者が介入するのは大切。
(40代後半・女性・北海道)
いじめなどに遭った時、ただ途方にくれるだけにならなさそうと思うからです。どのように動けばいいかアドバイスもくれそうですし、第三者の機関としてとても大事だと思います。また当事者の代わりに話し合ってくれたりするなら、お互い感情論のぶつかり合いにならずに済みそうだからです。
(30代後半・女性・愛知県)
私の娘もいじめを受けていました。そのときに訴えようと思ったけど、費用面でそこまでほ踏み出せなかったです。だけど、相手のいじめてた人にちゃんと自覚してもらって他の人をいじめることがないよう、徹底的に対策をしておけばよかったとも思います。
(40代後半・女性・広島県)
「トラブル対策費用補償特約」について反対、その理由
反対意見で多かったのが、「いじめの根本的な解決にはならない」という声です。被害者が保険金をもらったところで、心の傷は消えないので、話し合いできちんと解決するべきと考える人が多いようです。
いじめや嫌がらせが実際に行われているという事実を証明するのは非常に難しいことだし、それがあるからといっていじめの撲滅につながるとは思えないので、この商品は保険会社の新たなもうけ対策にすぎないような気がしているからです。
(40代後半・女性・東京都)
お金ではなく話し合いで解決することが重要だと思うので、補償は必要ないんじゃないかと思います。トラブル対策の何にお金を掛けるのかにもよりますが、お金を掛けなければいけない対策というのはそれほどないのではないかと思うので必要ないのではないでしょうか?
(40代後半・男性・大阪府)
いじめ・嫌がらせは、根本を直す必要があるにもかかわらず、いじめられた側(被害者)がお金等を貰ったところで心を直せるわけでもなく、ズレているように感じているため。
(20代前半・男性・兵庫県)
難しい問題ですが、保険を使わなくても解決できるような世の中のしくみにはならないものでしょうか?とってもレアなケースで学校・教育委員会・大人たちで解決すべき問題だと思うので必要ないと考えます。
(40代後半・女性・北海道)
「どちらでもない」の回答で多かったのは、「いじめ・嫌がらせの線引きや、どこまでを補償の対象とするのかという判断が難しいのではないか」という意見でした。被害者が救われ、いじめの解決や再発防止につながるサービスになることを期待したいですね。
<参考資料>
・東京海上日動火災保険株式会社 いじめやネットトラブルに対応する「トラブル対策費用補償特約」の販売開始(PR TIMES)
・文部科学省 「令和3年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について」
・インターネット違法・有害情報相談センター(総務省委託事業) 「令和3年度 インターネット上の違法・有害情報対応相談業務等請負業務報告書(概要版)」
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