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2022.02.28

「金融教育」が必修化するのはなぜ?日本の小中高校生が身につけるべき「金融リテラシー」とは

2022年4月から、高校で「金融教育」が必修になることが話題になっています。
早いうちからお金に関する教育をしていきたいと考えていても、どのようにアプローチすればいいかわからないという人も多いのではないでしょうか。
この記事では、金融教育必修化の背景や日本の金融教育の現状、親子で金融を学ぶ方法などを解説します。

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「金融教育」が必修になる理由

高校で「金融教育」が必修になる背景には、2022年4月から成人年齢が20歳から18歳に引き下げられることがあります。

成人年齢引き下げによって、18歳という高校卒業前、あるいは卒業して間もない時点でクレジットカードやローン契約、金融商品の取引などを親の同意なく行えるようになります。

このため社会経験がなく、知識不足な若者が高額な商品を売りつけられたり、詐欺に巻き込まれるなどのトラブルが増加する恐れがあります。

成人する18歳までに一人ひとりが金融に対する知識と判断力を持つことや、トラブルに対処する方法を身につけることが急務となったのです。

日本で金融教育が行われなかったのはなぜ?

日本では今まで子どもたちに対して、あまり金融教育をしてきませんでした。日本でこの令和の時代まで金融教育が義務化されなかったのは、一体なぜなのでしょうか?

その理由に一つに、大人たち自身も幼い頃から金融教育を受けてこなかったということがあります。

昔から日本においてお金は「汚いもの」「不浄なもの」と考えられることが多く、今までお金についての話題は避けられる傾向にありました。

お金の話を子どもの前でするものではない、お金を儲けるのは悪いことなどとする価値観が強かったために、学校で扱われるのは概念的な経済についてや税制、財政の仕組みなどに留まり、投資や株式、投資信託といった個人の資産形成については扱われてこなかったのです。

2019年に金融広報中央委員によって行われた「金融リテラシー調査」によれば、金融教育を行うべきだと考える人の中で、実際に学校などで金融教育を受ける機会があったと回答した人はわずか8.5%でした。

金融教育の現状

国際的に見て、日本の若年層の金融リテラシーは低く、特に複利やインフレ、分散投資に関する質問の回答率は欧米国と比べ20%以上も下回るという項目もありました。

子どもたちへの金融教育は十分でなく、金融リテラシーの水準も高いとはいえないというのが日本の現状です。

欧米などでは、金融教育は子どもの頃から行うべきだという考えが社会全体にあります。

アメリカを例にとると、学校で金融教育を行う内容については州によって独自に決められます。

それなのにアメリカ全体での金融リテラシーが高いのは、企業や団体による金融教育の支援が多くあるためです。

アメリカでは、個人・学校に関わらず無料で使用できる金融教育のためのプログラムやゲームが提供されており、これらを使って金融リテラシーを学んでいくのです。

高校生が習う「金融教育」の内容は?

では、実際に高校生が習う「金融教育」の内容はどのようなものなのでしょうか。

「金融教育」の教科は家庭科? 

「金融教育」は家庭科で行われることになります。

金融教育は、税制のしくみや法律についてを学習する「公民」がある社会科で習うのではというイメージがないでしょうか。家庭科で学ぶことを意外に感じた人もいるかもしれません。

家庭科は、もともと生活のために必要な知識を学ぶ科目です。家庭科といえば調理実習を思い出しがちですが、料理や被服の知識だけでなく家計収支についても勉強します。

家計の収支や消費行動など、身近なところから金融教育を行っていくというねらいがあります。

高校で行われる「金融教育」の内容 

文部科学省が定める学習指導要領によると、高校で行われる金融教育は大きく次の2つの項目に分けられます。

  • 家計管理への理解
  • 生涯を通した経済計画

具体的には、賃金に対する住居費や光熱費など生活にかかる費用の収支バランスや、突然病気や怪我になって収入がなくなったときなどのリスク管理の方法など。

また、生涯賃金を考えたライフステージの設定や投資や証券を利用した教育資金、老後の資金の作り方など生活に即した項目を勉強します。

小中高校生が身につけるべき「金融リテラシー」とは

最近、金融リテラシーという言葉を耳にする機会が多くなりました。金融リテラシーとは、金融に対する知識や考え方のことをいいます。

できるだけ早い時期から金融リテラシーを身につける必要性を感じるものの、年齢によって理解に差があるので、どの程度身につけておけばよいか悩みますよね。

金融広報中央委員会が発表している「金融リテラシー・マップ」を参考に、各年代でどのような金融リテラシーを身につければ良いかをまとめました。

小学生 

小学生では、お金を通して社会の中で生きていくための基本の力を身につけるということが目標になります。

具体的な行動としては、例として次のようなことが挙げられます。

  • 「欲しいもの(ニーズ)」と「必要なもの(ウォント)」の区別をつける
  • 働いてお金を得ることや先を見据えてお金を計画的に使うことを学ぶ
  • 貯蓄する大切さを知る
  • お金の貸し借りはしない
  • 困ったときはすぐ身近な人に相談する

まずは自分が持っているお金の使い方や、困ったときの対処法など身近なところから金融リテラシーを身につけていきます。

中学生 

中学生では自立のための力をつけていくために、家計や生活設計についても考えていきます。

  • 家計の収入・支出について理解する
  • 職業体験を通して自分が将来何の職業につきたいか考える
  • 将来の生活設計を立ててみる
  • リスクとリターンの関係について理解する
  • トラブルに遭遇したとき身近な人に相談するだけでなく、相談窓口を利用する

おこづかいの範囲だけでなく、家計のレベルまで考える対象を広げて自分の将来の生活設計や職業選択をしていきます。

高校生 

高校生では、社会人として自立するための社会的責任や生活設計を理解していきます。

  • 家計から自分にかかっている費用について知る
  • 生涯の収支を考えて生活設計ができる
  • 預金、株式、保険などの金融商品について知り、定期的な運用の大切さを学ぶ
  • トラブルに対応する具体的な方法を身につけ、実際に対処できるようにする

18歳から成人として認められるため、社会人としてどのように社会に貢献していくかということも学んでいきます。

小学生にも「金融教育」はできる?

2021年:子どもの金融教育に関する調査」(イー・ラーニング研究所調べ)によれば、全体の7割以上の親が子どもに「お金の教育」を行いたいと考えているという結果がでました。

コロナ禍で見通しが立ちにくい社会情勢や、キャッシュレス決済の急速な普及などを背景に、お金の教育に対する関心度が向上しているのです。

同調査では、お金の教育は幼少期から始めたほうが良いと回答する親が多い一方で、「子どもはお金の価値をわかっているか」という質問には8割以上の親が「いいえ」と回答していました。

できれば早いうちから金融教育を行いたいと考えているものの、親自身も学校などで教わっておらず金融リテラシーが低いために、家庭で子どもに教えることが難しい状況にあるようです。

小学生から金融教育できるゲーム、絵本

このような状況で、金融庁のホームページでは小学生から金融教育ができるように、楽しんで取り組めるゲームを提供しています。

金融教育を学べるゲーム

  • うんこドリル(生活編) 
  • カネールのKIN★YOUランド
  • ファイナンスらんど 

また、金融について学べる絵本もあります。こちらは小学校入学前からでも、興味をもたせる取り掛かりに良いでしょう。

金融教育に関する絵本

  • 「はじめてのおかねえほん」
  • 「ポーチとピース」

次から、それぞれ詳しく紹介していきます。

金融教育を学べるゲーム

うんこお金ドリル(生活編)

金融庁

小学生からの反響が多いことで、一時期大きな話題になった「うんこドリル」。

漢字ドリルが有名ですが、金融庁とのコラボでお金のことを学べるドリルも登場しました。

パソコンやスマートフォンのブラウザから行うゲームで、うんこ先生からの問題を4択から1つ選択して答えます。

「生活編」と「経済編」の2種類があり、「生活編」では生活の中でお金をどのように扱っていくか、困ったことがおきたらどういう対処をすれば良いかなど、小学生が身につけたい金融リテラシーを楽しく学ぶことができます。

「経済編」ではクッキー屋さんを経営することを例に、社会と経済活動についての学習ができる内容になっています。

金融リテラシーの入門として、小学校低学年から楽しめます。

カネールのKIN★YOUランド

金融庁

金融の妖精カネールとゲームで金融について学べます。金融商品などについてもわかりやすく説明しているので、大人も勉強になります。

金融用語の説明など難しいコンテンツもあるので、小学校高学年からの印象です。

  • カネールのKIN★YOUランドはこちら

ファイナンスらんど

金融庁

財務省作成のコンテンツで、税や財政について学べるゲームやストーリーがたくさんあります。

特にゲームは、ルーレットを回してすごろくのコマを進めていく「ファイナンス・ルーレット」やミニゲームが6種類ある「ファイナンス・クリック」の2つがあり、飽きずに楽しく税金や財政について学べます。

税や財政という言葉は、大人でもとっつきにくさ、難しさを感じてしまう用語ですが、身近に感じさせるコンテンツになっています。

スマートフォンからも遊べますが、パソコンやタブレットなど大きい画面のほうが遊びやすいでしょう。

金融教育に関する絵本

「あそんでまなぶ はじめてのおかねえほん」

子どもたちに知っておいてもらいたいお金の基礎知識や使い方、考え方がまとめられた絵本です。

ストーリーをたどっていく内容だけでなくクイズや迷路など遊べる要素も盛りだくさんで、楽しんで読んでいくうちに知識が身についていきます。

本文が全てひらがななのはもちろん、数字の読み方にもふりがながついており、6才からでも一人で読めるような工夫がしてあります。幼年期からお金のことを教えていくのにぴったりな絵本です。

「ポーチとピース」

実業家で投資家でもある倉橋隆行氏が、「お金」と「投資」について子どもの頃から考えてもらうことを目的として作った絵本です。

りすの「お金持ちピース」とたぬきの「貧乏ポーチ」を登場人物として、なぜピースは豊かになったのか? ポーチはいつまでも貧乏なんだろう?ということを考えさせることで、お金と投資の使い方を学べます。

かわいらしい絵柄が目を引いて、親子でも楽しめそうですね。

親も金融教育の学び直しをしよう

子どもに金融に関する質問をされた時、あなたは迷わず答えることができるでしょうか。

子どもの金融リテラシーを高めたいならば、まずは親の金融リテラシーを高めていく必要があります。

金融教育はお金儲けの方法を教えるのではなく、自立した生活をしていくための力を培い、お金を通して社会のつながりを理解するという目的を持ちます。

お金の仕組みに関する知識は個人の資産を豊かにするためだけのものではなく、国全体を豊かにするために求められているものなのです。

親も子どもたちと一緒に、金融教育の学び直しをしていきたいですね。

<参考資料>
金融広報中央委員会 知るぽると「金融リテラシー調査(2019年)」
金融広報中央委員会 知るぽると「金融リテラシー・マップ」
金融広報中央委員会 知るぽると「金融教育のねらいと基本的性格」
株式会社イー・ラーニング研究所「2021年:子どもの金融教育に関する調査」(PR TIMES)
コエテコ「世界の金融教育|なぜ子どもに「お金の教育」が必要?日本の現状は?」
SankeiBiz「来春から高校で必修の「金融教育」 教える先生「家庭科」に疑問」
EL BORDE「高校で金融教育がスタート! 「投資は難しくてわからない」では置いていかれるかも?」
Money Motto「高校で「金融教育」必修化!大人も受けたくなる「お金の授業」の内容」

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