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2021.02.10

冬の公園で昆虫を探そう!/昆虫ハンター・牧田 習と行くフィールドワーク

昆虫ハンター・牧田 習さん連載「好きが仕事になりました」Vol.8。冬になるとなかなか虫を見かけなくなりますが、彼らはどこに行っているのでしょうか? そして、どのように越冬するのでしょうか? 牧田さんと一緒に、冬の公園で昆虫観察! 子どもたちが大好きなあの虫もたくさん見つけられました。

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昆虫は冬でも見つかる? どんな虫と出合える?

寒い季節になると普段、生活している中ではなかなか昆虫を見ることはできませんよね。冬に昆虫採集する子どもも、なかなかいないのではないでしょうか。

でも、実は冬でも昆虫は見つけられます! 僕は、冬の間も近所の公園から山奥までいろいろなところに行きます。学校や仕事がない日は、だいたい昆虫採集していますね(笑)。

暖かい季節では見られない、昆虫の一面をのぞくことができますよ!

今回、牧田さんと一緒に虫探しをしてくれたのは、昆虫好きの小学4年生・ゆいと君。毎夏のカブトムシ・クワガタ飼育はもちろん、学校帰りに捕まえたいろいろな昆虫の飼育経験があります。牧田さんのソクたま連載も毎回、楽しみに読んでくれているそう。

訪れたのは、東京都内にある公園。東京ドーム約3個分の広さもある公園内の雑木林で、冬越しする昆虫を探してきました。牧田さんの昆虫採集姿、初公開! 牧田さんの解説とともに、お楽しみください!

冬の公園で過ごす昆虫たち

成虫のまま越冬する昆虫もいれば、冬が来る前に死んでしまう昆虫も多くいます。けれど、そういった昆虫もさなぎ・繭・幼虫・卵といった形態で次の季節へ命をつないでいるんです。

今回は、

  • クワガタムシ(成虫・幼虫)
  • カブトムシ(幼虫)
  • オサムシ(成虫)

この3つの虫が冬越しする姿を探してみました。

もちろん、それ以外にもまだまだ昆虫はいるよう。

「成虫のまま冬を越すチョウやガ、カミキリムシ・シデムシ・ゾウムシ・アリ・ゴミムシなど、たくさんの昆虫が冬越ししているんですよ。(牧田さん ※以下、省略)

冬の昆虫観察の前に覚えておきたいポイント

【1】公園の決まりを確認しておこう

公園によって、ルールはいろいろあります。昆虫採集自体を禁止している公園土を掘るのがNGという公園、また、昆虫採集がOKという公園でも土を掘った場合は元に戻し、木を切ったり環境破壊につながったりするようなことをしてはいけません。

昆虫観察をしたい公園がどのようなルールを設けているかは、事前に確認しておいてくださいね。また、公園はたくさんの人が利用する公共施設。周りに迷惑がかかるような行動はしないように気を付けましょう。

【2】昆虫がいるスポットの目星をつけよう

昆虫が冬越しする場所は、朽ち木や樹皮の下、土の中など。すべり台やブランコのある遊戯施設やベンチなどの休憩施設、テニスコートといった運動施設などの整備されている場所にはいません。

また、そういった場所で昆虫探しをするのは他の人の邪魔になったりけがやトラブルの原因になったりすることもあります。昆虫がいるスポットについては、後で詳しく解説しましょう。

【3】冬の昆虫観察“三種の神器”を用意しよう

目に見える場所で昆虫探しをする場合は、山や森でない限り虫かご一つでOKなことがほとんどですよね。けれど、冬の昆虫観察は公園とはいえ人の手があまり入らない場所で行うことになります。次の3つのアイテムを用意するのがおすすめです。

①長靴

冬の土の上は落ち葉で覆われていますが、それゆえ湿度がありあっという間に靴が汚れてしまいます。長靴、あるいは汚れても良い靴が◎。手を洗う場所がない場合は、軍手も便利です。冬には、防寒の役目も

②スコップ・ピッケル

朽ち木を砕く際に必要になるのが、ピッケル(左)。ただし、刃物の種類になるので子どもだけで使うのは危険です。また、扱いが難しい場合もあるので子どもはスコップがおすすめ。

③懐中電灯

朽ち木や切り株、樹皮の下などは、昼間でも明度が高くない場所で使います。光を当てることで、虫の見逃しも減ります!

昆虫を連れて帰って飼育したい場合は、昆虫ケースも忘れずに。

サイズは、昆虫1匹に対し幅18×奥行12×高さ13cmくらいの一番小さいサイズで十分。「捕まえた虫を何匹も入れたい!」と張り切る子どももいますが、大きすぎると持ち運びが大変です。また、昆虫は基本的に1ケース1匹で飼育するのがおすすめです。

【親子で楽しむカブトムシの幼虫の育て方/昆虫ハンター・牧田 習が成虫まで育てるコツを教えます!】

牧田さんの昆虫採集スタイル。黒のジャンプスーツに赤のバックパックがおしゃれです!

昆虫の冬ごもりスポットはこんな場所!

今回、昆虫探しスポットとして選んだのは16ヘクタールもの広さがある公園の雑木林の中。ある程度の目星をつけなければ、子どもの体力が持ちません! 牧田さんが観察できると予測した昆虫は、3種。

  • クワガタムシ(成虫・幼虫)
  • カブトムシの幼虫
  • オサムシ

この3種の昆虫は、こんな場所にいる可能性があります。

クワガタムシ(成虫・幼虫)

「クワガタムシは、成虫も幼虫も朽ち木の中で冬を過ごします。コクワガタやヒラタクワガタなどは、成虫の状態でじっと体を動かさずに暮らします。ノコギリクワガタやミヤマクワガタなどは、幼虫の状態で木を食べながら動き回っています」

ただし、全ての朽ち木にクワガタがいる! というわけではありません。

「上の写真を見ると、朽ち木の中が白いのが分かりますよね。これは、比較的まだ新しい朽ち木。クワガタはある程度、水分の含まれた軟らかい朽ち木を好みます。そのため、朽ち木の中が真っ白なものは熟成度が足りずすみかとしては選ばれない可能性が高いんです。逆に何年も経過しているような朽ち木だと木の中が黒く乾燥していて、これもまたクワガタは好みません」

「下の写真の朽ち木のように、ピッケルで削りやすい硬さで触ってみて水分の感じられるものは虫のすみかになっている可能性が高いです」

「この見極めが難しいかもしれませんが、ピッケルで少し削ってみると分かります。ピッケルの刃が立たないほど硬いものは見つからないことが多いでしょう朽ち木の表面が硬くても裏返すといい感じの軟らかさと湿度なこともあるので、裏返してみるのもおすすめです」

「また、朽ち木の中には上の写真のように小さな穴がいくつも空いているものがあります。これは、虫の通り道となった穴。この中に昆虫がいる可能性はありますが、食事が済んだ後に出ていった可能性もあるので中を開けてみないと分かりません」

カブトムシの幼虫

「カブトムシの幼虫は冬の間、クヌギやコナラのたくさんある雑木林の落ち葉の下の土で暮らしています。比較的、浅い場所で暮らしているのでスコップを使って幼虫を見つけることができますよ」

オサムシ

「下の写真のように1~2mほどの高さがある、植生豊かな斜面の土の下にもぐり、成虫の状態で冬を越していることが多いです。オサムシも、朽ち木の中に眠っているクワガタ同様、じっと動かずに固まって冬眠します」

「オサムシは自然界ではミミズやガの幼虫などを食べますが、昆虫ゼリーを与えて飼育することもできます。土と落ち葉が入った容器があれば、簡単に飼育することができますよ」

冬の昆虫観察で出合った昆虫・生き物たち

「本当に昆虫見つけられるかな?」と、はじめは不安気だったゆいと君。けれど、牧田さんに冬の昆虫探しのコツを分かりやすく伝授してもらい、目をキラキラと輝かせながらチャレンジ!

最初に、二人が目を付けたのはやはり朽ち木。表側、裏側の両方をピッケルで削っていきます。牧田さんにピッケルの使い方を教えてもらったゆいと君でしたが、やはり子どもの力ではまだまだ難しいよう。しっかり大人が監視するもとで使用する必要があるので、読者の皆さんも取り扱いには注意してくださいね。大人がある程度ピッケルで削れば、スコップでも削りやすくなりますよ。

また、ピッケルを使う際は虫を傷つけてしまわないように慎重にゆっくり削っていくことが大切なのだそう。

1本目の朽ち木は、残念ながら収穫ゼロ。でも、下の写真を見てください! 昆虫が木を食べた跡が残っていました。明るい茶色に変色している部分が、虫が食事をした痕跡です。

「ここにいるんじゃない!?」と、ゆいと君が切り株を見つけてくれました。ピッケルで少し削ってみると…ん~、少し硬すぎます。乾燥していて木の中の色も濃く、かなり年数が経っていることが分かりました。

ミヤマクワガタの幼虫と成虫

朽ち木、3本目! 期待大で削ってみると…。

いました! まだ、小さなクワガタの幼虫です。合計、5~6匹を発見。これだけ幼虫がいるということは、成虫がいる可能性も高くなります。

やはり、いました! メスのクワガタ。

さらに、同じ朽ち木には他の虫も同居していました。

スズメバチの女王蜂

スズメバチの女王蜂です。働き蜂たちは冬を越せませんが、新しい女王蜂は次の年の春に向けて、こうした朽ち木の中でじっと過ごしています。

「スズメバチに刺されると大変危険ですが、寒い時期のスズメバチは動きが鈍く刺されることはほとんどありません。とはいえ攻撃性の高い昆虫なので、刺激を与えず静かに観察してくださいね」

ムカデ

昆虫ではありませんが、ムカデを発見。

「冬眠とはいえおとなしくしているわけではなく、同じ朽ち木にいる他の虫たちを食べ尽くしてしまうことがあります。クワガタの幼虫たち、気をつけて~!」

ハサミムシ

細長く、平たい体のハサミムシ。動物の死骸や腐った植物、小さな昆虫などを食べます。冬眠ではなく、卵を産み付けるために朽ち木の中にいたと考えられます。

ミミズ

ミミズは昆虫ではなく、節足動物。ミミズは種類によって冬眠するもの、冬でも活動する物に分かれます。朽ち木の中にいたこのミミズは、冬眠中です。

カエル

朽ち木をひっくり返した時に見つけたのが、冬眠中の大きなカエル! あまりの不意打ちに、思わず牧田さんも声を上げてしまいました(笑)。

一つの朽ち木で見つかったのが、6種類もの生き物。まるでシェアハウスのようですね。

さて、先ほど傾斜になっている土の中で冬眠していると解説したオサムシ。残念ながら、今回の昆虫採集では見つけることができませんでした。傾斜になっている箇所をいくつか当たりましたが「土の中に石が多いためオサムシが好む環境ではなかったのかもしれない」と、牧田さんが分析してくれました。

その代わりに見つかったのが、オオヒラタシデムシです。

オオヒラタシデムシ

その名前を知っている人は少ないかもしれませんが、シデムシも昆虫の一種。オオヒラタシデムシは北海道から九州まで生息する身近な昆虫で、動物の死骸やごみに集まります。

今回、見つけたのは全部で7種類の昆虫・生き物。所要時間は、約1時間。このくらいの時間であれば、小学生でも疲れたり飽きたりすることも少ないのではないでしょうか。

訪れた公園内に人があまり入らない雑木林があったこと、朽ち木があちこちに転がっていたこと、そして、昆虫大好きゆいと君が頑張ってくれたことが今回の昆虫観察で功を奏した理由でしょう。

ゆいと君が、牧田さんに「虫がいる場所は絶対、分かるの? 捕まえられないことはないの?」と質問していました。

「もちろん、虫のいる場所に目星をつけるけれど絶対ではないよ。相手は自然界の虫だから、見つけられないこともいっぱいあるんだ。でも、見つけられない悔しさがあるからこそ、見つかったときのうれしさがあるんだよ」

真冬の外遊びは、親もなかなか腰が挙げられないかもしれません。けれど“冬でも大好きな昆虫に出合える経験は子どもにとって、旅行やおでかけと同じくらいとっておきの思い出になるのではないでしょうか。ぜひ、親子で冬の昆虫を観察してみてくださいね。

撮影/鈴木真貴
構成・執筆/濱岡操緒

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牧田 習

昆虫ハンター。1996年、兵庫県宝塚市生まれ。オスカープロモーション所属。2015年北海道大学 総合教育部入学後、理学部に転部。特技は三線、小学5年生時に取得したダイビングのライセンス資格を所持。現在、昆虫ハンターとして「猫のひたいほどワイド」(テレビ神奈川)水曜レギュラー出演の他、「3度の飯より昆虫が好き」(WEBザテレビジョン)にて現在連載中! その他、 テレビやラジオなど各メディアでも活躍中。2020年4月から東京大学大学院に在学中。

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