「義務教育は高校まででいい」「公立のレベルが落ちる」…東京都の【授業料無償化】について、保護者のホンネを聞いた
東京都の「授業料の実質無償化」が2024年度より始まります。「ソクラテスのたまご」は、中高大学生の保護者120人に、同制度に関するアンケート調査を実施。今回は、制度の概要とともに、賛成派・反対派それぞれの意見を紹介します。
東京都が、2024年度より実施する授業料の実質無償化。「子どもたちが希望する進路を選択できるように」と所得制限も撤廃しました。
家庭の負担軽減はもちろん、少子化対策としても期待されていますが、街には賛成・反対さまざまな声があふれています。
東京都の「授業料無償化」とは
2024年度より授業料を実質無償化の対象となる学校は以下の通り。
- 都立・私立高校
- 都立大学
- 都立産業技術大学院大学
- 都立産業技術高等専門学校
実質無償化を受けられる条件は、「保護者が都内に住んでいること」。所得制限はありません。
都内に住んでいれば、都内の高校はもちろん、都外の私立高校も対象です。(※都立大学などは「生活費を負担する親や親族などが都内に住んでいること」が条件。ただし、世帯年収が478万円未満の世帯は、親の居住場所を問わず対象となる)
所得制限を撤廃した理由は、「家庭の状況にかかわらず、子どもたちが希望する進路を選択できるようにするため」「子どもたちに安心して学べる環境を提供するため」とされています。
撤廃には約555億円の予算がかかりますが(令和6年度・新年度予算案)、支援対象となる子どもは増えます。
具体的には、
- 都立高校4万4000人
- 私立高校9万9000人
- 都立大学、都立産業技術大学院大学、都立産業技術高等専門学校 合計1000人
が新たに支援対象になるそうです。
高校の授業料の支援は、大阪府も検討中です。所得制限を撤廃して、対象学年を広げたり、段階的に無償化したりする案をすすめています。
しかし発足段階なので、この「授業料の実質無償化」によって進路を変える生徒がどれほどいるのか、効果の検証が求められます。また授業料以外にも費用がかかる場面がたくさんあるため、別のサポートも必要でしょう。
「授業料の実質無償化」、街の声は?
授業料の実質無償化は、家庭の負担を軽減したり、子どもたちの選択肢を増やしたり、少子化対策になったり、いくつものメリットが期待されています。
「ソクラテスのたまご」が中高大学生の保護者に行ったアンケート調査では、「賛成=84、反対=12、どちらでもない=24」と、賛成が8割以上でした。
授業料の実質無償化について、賛成派・反対派それぞれの声を紹介します。
<賛成>
【義務教育は高校まででいいと思うから】
経済的に高校に行けない子供を助けて欲しいから。国で義務教育は高校までとしてほしい。中学卒業だけでは社会人として生きていくにはまだ早すぎると思うからです。物価高が続いていて、少子化を食い止めるにはこういった補助はおおいにやるべきだと思う。
高校まで卒業しないと、就職の枠がとても狭いので、逆に高校は義務教育くらいの考えでもいいと思うから。金銭面で選択肢が狭くなるのは、子どももかわいそうだと思うし、学びは、国でサポートしてほしいと思います。
今の時代高校は卒業しておかないと就職もできなさそうなので。でもどちらかというと、東京都だけではなく日本全国の高校の授業料無償化してほしいです。高校は東京都にだけあるものではなく、日本全国にあるんだから、どこも平等にしてほしい。
「本当は進学したかったけれど」と、家庭の経済的事情により中学卒業後に就職する子は少なくありません。一方、転職は中卒だと不利になることも多いので、思うような人生を歩めない子も多いでしょう。高校授業料が実質無償化すれば、子どもたちの選択の幅が広がりそうです。
【高校まで通える子が増えるから】
高校まで通える子供が増えると思う。金銭面を理由に高校を諦めなければいけない子供が減るし、子供の進路の選択肢が広がると思う。無償化で子供たちが教育を受けられる制度はせめて高校までは導入するべきだと思います。
学費の問題で高校にすら行けない子供が現実にいるので未来ある若者の選択肢をもっともっと広げてあげたい。学費以外にも高校生活は色々とお金がかかる。家の息子の時は電車の定期代と部活の遠征費が馬鹿になりませんでした。
お金がない家庭は高校も行く事が出来ません。高校も行かなければ就職先も限られてしまいます。収入がないからという理由で子どもの将来が決まるのはその子どもが可哀想だと思います。最低でも高校卒業してもらい、その後の人生が上手くいけば良いと思います。
「お金がないから高校に行けない」……そんな家庭を心配する声がたくさんありました。高校生活は何かとお金がかかるので、授業料だけでも無償になれば、進学という選択肢が視野に入るかもしれません。
【子どもの選択肢が増えるから】
公立は既に無償化されているので、私立も無償化されていいと思う。実際、親のお財布状況が高校選びの決定打になってしまい、本当に勉強したい分野を受験できずにいる子供が多くいるのは悲しいと思う。「私立に通う子は公立落ちた子」みたいになってしまうのが、残念だと思う。
一部でも負担がなくなることは親にとってとてもありがたいです。子どもにとっても進学先の選択肢が増える可能性があると思います。学歴社会ではなくなってきましたが、知識は大きな武器になります。お金を理由に進学を諦めることがなくなればよいと思います。
自分自身としては教育にかかる金銭的負担が大幅に減ることで特に子どもを持つ20代や30代の世代が抱える大きな不安は、子育てや教育にお金がかかるので通わせる学校の選択肢が広がる。子どもの将来のための目標にもつながるからです。
お金の問題を解決できることに評価する声が多くありました。選択肢が増えることで、子どもが自分の人生を歩んでくれたらうれしいですね。
その他にも、「海外では、幼稚園から大学まで公立教育の授業料は実質無償」という声などがありましたが、多くの方が「お金がないから」という理由で夢をあきらめざるを得なかった子が、高校に通うことで大きな夢をつかんでくれたら……という思いを持っているようです。
<反対>
神奈川県の中学校が今給食ではなくお弁当である理由が「人口が爆発的に増加したから」で、高校無償化を行うことによって近隣のファミリー世帯が一気に都内に集まると同じようなことが起きるのではないかと予測するから。いつの間にか高校授業料の無料はなくなり、中学生、小学生の給食も無くなり負担が増えるのではないかと懸念しているから。
自身が東京都民ではない。という理由が大きいです。その他の関東の住民にとっては同じ日本国民なのでなんでそんなに違うの?という疑問があります。自治体だけで考えることではなく、国全体で考えることだと思います。
税金収入が多いからなのか、東京都「だけ」というのが引っかかる。田舎の方に住まれてる方は無償化にならず、東京都だけ。とにかく不平等感が生まれる。極論、では都内に引っ越しをすればいいのか?!ということになる。
「高校授業料の実質無償化は賛成だが、特定の地域だけというのは不平等」という声が多くみられました。また、一時的な政策で終わるのではなく、永続的なサポートも求められます。
<どちらでもない>
どの家庭にも平等に教育の機会が開かれるべきだと思う。授業料が高すぎて、希望する私立学校に進学できないという世帯にとっては選択肢の幅が広がり、安心して教育を受けることができるから。ただ、所得制限なし、というのは逆に不平等ではないか、国の財源は限られているため、教育費用を心配しなくていいぐらいの所得がある家庭については全額無償化にあてはめる必要はないのかと思います。
全国的にも公立高校の生徒減少が問題になっている中、公私共に無償化することは多少の違和感は残る。設備や教育環境がより充実していると思われる私学に行く選択にまで、公費を投じることは、公立高校の存在を自らの手で落としている気がする。
東京都に税金収入がそれなりにあり無償化するからと言って東京都民全ての都民税を引き上げるようなことがないのであれば賛成ですが、それならば古い都立の高校のトイレを交換したり机やいすなどを新しくした方が、通う子どもにとってはありがたいのではないかと思います。
「所得制限を設けたほうがいいのでは?」「公立高校のレベルが落ちるのでは?」「無償化する前にやるべきことがあるのでは?」など、懸念点もちらほら。
東京都の「高校授業料の実質無償化」。誰もが100%納得のいく施策は存在しないかもしれません。<反対><どちらでもない>と答えた方々の的を得た数々の意見に、条件面やスタート時期などもう少し検討の余地があるようにも思えますが、実施することで救われる子どもは少なくなさそうです。
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