「あなたを虐待した親もまた、未成年期に虐待を受けていましたか?」虐待サバイバーの回答は……
20万7659件……何の数字だと思いますか?
これは、令和3年度の児童相談所における児童虐待相談の対応件数です(厚生労働省の発表による)。
この結果を受けて、親子関係心理学の専門家・三凛さとしさんは「自身の虐待経験と親子連鎖」について調査しました。その驚くべき結果と、悲しい連鎖を止めるための方法とは?
児童虐待相談の対応件数、20万7659件
連日悲しいニュースが後を絶ちません。児童相談所が相談対応した件数は、令和3年度の速報値で20万7659件。これは過去最多の数値ですが、相談さえできない子どもがいることを考えると、本当はもっと多いことが予想されます。
親子関係心理学の専門家でライフコーチの三凛さとしさんは、虐待の実態について調査するべく、全国4000名の男女(20歳以上50歳未満、子どもあり)に対してアンケート調査を行いました。
実は三凛さとしさん自身、家庭内トラウマにより心に傷を負った1人。しかしその経験を活かし、親子関係心理学の専門家になり、これまで9万人以上の親子を救ってきたそうです。2022年に出版された『親子の法則 人生の悩みが消える「親捨て」のススメ』(KADOKAWA)は大きな話題を呼びました。
10人に1人は未成年期に虐待を受けている
まず「未成年期に虐待を受けていたことはあるか?」という質問から。
アンケート結果はこのようになりました。
ほぼ10人に1人が「自分自身が受けていた」という結果に。また身内が虐待されるのを目撃した方も少なくないようです。
ではその虐待がどのようなものかというと……
「身体的虐待」が最多で、女性は「心理的虐待」の回答率も高めでした。
ひと昔前まで「しつけ」という言葉で済んでいたようなことでも、令和の今は虐待に当たることもあります。もしかすると、やった親側に自覚はないものの「今だったら虐待に相当する」という事例も多いのかもしれません。
虐待は連鎖するのか?
「親の背中を見て子は育つ」といいますが、実際のところ、虐待をした本人(親)は、自分の親にもそのような仕打ちを受けていたのでしょうか?
「(回答者の)親は未成年期に虐待を受けていましたか?」の質問は、このような結果となりました。
虐待を受けていない男女は、「両親とも受けていない」「わからない」の回答率が高めです。一方、虐待を受けていた男女は、親の一方、あるいは両方が同じように虐待を受けていた傾向が少なくないようです。
予想より低めの数値に驚きましたが、果たして我が子に虐待するような親が、虐待相手に対して自分の心の傷をカミングアウトするのかどうか、少々疑問が残るところ。そのあたりの真実が「わからない」の回答率に集約されている気がします。
幼少期の家庭環境は、その後の人格形成に大きな影響を及ぼします。犯罪や非行などわかりやすい反抗をすることもありますが、いじめのように弱い者をターゲットにしてストレスを発散するケースも。そして成長して親になったら我が子にも同じように……。
「虐待は親から子へと連鎖すると思いますか?」の問いに対しては、このような結果となりました。
こちらは、虐待された経験の有無を問わず、回答の傾向が同じようになりました。およそ半数は「連鎖すると思う」、しかし2割程度は「連鎖するとは思わない」と回答しています。
連鎖するかしないか、その分かれ道になるのは「虐待された方の気持ちのベクトルがどこに向かうか」ではないでしょうか。
虐待された子どもの心が向かう先は……
虐待された子どもは、心に大きな傷を負います。自分を愛せず、価値のない人間だと投げやりになることもあるでしょう。そのとき、その心が向かうのは「外側」「内側」のどちらなのか?
先ほどの例ではないですが、犯罪やいじめなど「外側」に発散するのか、それとも「内側」でひたすら自分を責めて塞ぎ込むのか。
「外側」に向かう方なら、虐待の連鎖の可能性はかなり高いかもしれません。しかし「内側」に向かうなら「こんな思いをするのは自分だけで十分だ。自分の子には絶対に同じことはしない」と、連鎖を意図的にストップする気がします。
もしかしたら「連鎖の歯止め」に自分の存在意義をようやく見出すかもしれませんね……。「今まで、生きているだけで苦しかった。でもようやくわかった。この子を幸せにするために自分は生まれてきたのだ」と。
アンケート結果より、自分自身や兄弟姉妹が虐待された経験を持つ方のうち、半数が「自分も子どもが生まれたら虐待するかもしれない」と考えていることが示唆されました。ぜひ「内側」に思いを巡らせて、「自分が連鎖をストップさせる」という強い意志を持った親になってくれることを願ってやみません。
虐待の連鎖を止めるため3つの方法
三凛さとしさんは、虐待の連鎖を止めるための方法を3つ提唱しています。
1つめは、親が自分のストレスを管理すること。マッサージやストレッチ、運動、ヨガ、瞑想など、リラックスできる方法を見つけるのです。ストレスが軽減されるなら、「友人とおしゃべり」「カラオケに行く」「ショッピングで大量買い」なども良さそうです。
2つめは、専門家のサポートを受けること。児童相談所はもちろん、地域の母子健康センターなど相談機関はいくつもあります。時間がなければSNSで思いの丈を吐き出すのも良いでしょう。他者の力を借りて、親も子も幸せになれる方法が見つかることを願います。
3つめは、親が自分の親と“心理的な和解”をすすめること。三凛さとしさんは、今まで抱えていた親への恨みを解消すれば、自分の子どもに対する考え方や言動が変わってくると言います。三凛さとしさんの著書の中で具体的な方法が紹介されているそうですよ。
児童相談所の相談対応件数は右肩上がりに伸びています。心に傷を負った子どもが、「自分がされたことを人にしてやろう」と思うのか、それとも「自分がされて辛かったことは絶対人にするもんか」と心に決めるのか。
子育ては思い通りにいかないことばかり。社会のルールが理解できない幼少期はもちろん、ある程度成長してからの反抗期など、壁の連続でイライラしてしまうのも自然なことでしょう。
もし「我が子に虐待しそう」と思ったら、すぐに専門家に相談してください。今は24時間受け付けているコールセンターもあります。
心の傷は、ナイフではなく、バネに。新しい家庭が、小さな命が、どうか幸せな色で彩られますように。
<参考資料>
・PR TIMES(合同会社serendipity)
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