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ソクたま会議室
2022.02.10
テーマ: ウィズコロナ時代の教育・子育てを考えよう

生活の変化が与えた家庭への影響、再確認した”家族という存在”の大きさ

新井 寛規

新井寛規

市家庭相談員として、家族にまつわるさまざまな問題と向き合ってきた新井寛規さん。新型コロナウィルスは、家族の問題にどのような影響を与えたのでしょうか。また、ウィズコロナの生活の中で、ストレスを子どもにぶつけないためにどうすればよいのでしょうか。

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記事を執筆したのは…

新井寛規さん

小規模フリースクール「ろぐはうす」センター長。小学校教員、児童養護施設児童指導員、学童保育士、市家庭相談員を経て、2018年大阪府に学習生活支援センターろぐはうすを設立。現在、大学教育学部非常勤教員、保育士・教員養成専門学校の教員、保育士国家試験予備校非常勤講師、市府県放課後支援員研修講師、市府県子育て支援員研修講師、保育教育児童福祉コンサルティング、啓発活動を行っているほか、「境界に生きるー。」(UTSUWA出版)などの著書も手掛けている。

コロナ禍による生活の変化

この数年、新型コロナウィルスが蔓延したことによって、世の中にはさまざまな変化がありました。

大きなところでは社会や政治、身近なところでは、仕事、学校、習い事、そして1番近い親、子ども、家族の生活が変化したのではないでしょうか。

「夫がリモートワークで1日中家で仕事をしている」
「残業がなくなり、早く家に帰ってくることができるようになった」
「子どもが通う保育所で感染者が出てしまい、家で育児をしなくてはならないという日が増えた」

など、当てはまる人も多いのではないでしょうか。

家族の生活が変われば、日々の家族との関わり方も変わります。コロナ前は「家族全員が1日中家で一緒に過ごす日」なんてなかったという人も家族と一緒に過ごす増えたと思います。

家庭は多くの人にとって毎日帰る場所であり、家族はほぼ毎日顔を合わせる存在です。1番大切な人間関係といってもよいでしょう。

ですが、コロナ禍の間、私の運営する子育て家庭支援団体への相談数は、前年度の約2倍に増えました。具体的には下記のような内容が、多く寄せられました。

  • 夫婦の不仲
  • 家庭不和
  • DV
  • 児童のうつ
  • 依存症(ゲーム、ネットなど)
  • 学習への不安

家の中で過ごす時間が増えたことで、以前よりも問題が深刻化しているケースもあります。

「児童のうつ」「依存症」などは、休校などが続いて登校ができず、学校という場所が不安定になってしまったという要因が考えられ、「学習への不安」は授業形態が変わった(オンライン授業など)ことが影響していると思われます。

「依存症」も、1日中家にいてやることがなく、ゲームや動画ばかり見てしまうといった環境が原因かもしれません。

ただ、上記にある「家庭不和」「夫婦の不仲」のような問題は、「コロナ禍だから」と断定することはできないと思っています。

相談内容を聞いていると、トリガー(引き金)が”コロナ禍の生活やストレス”だっただけで、元々あった課題が表面に出てきてしまったという印象を受ける場合も多かったからです。

一方、コロナ禍のストレスは、DVや虐待ととても関係があります

コロナ禍のDVの状況とは

コロナ禍において、家庭内に起こっているDVの相談者数が多くのメディアで取り上げられました。

内閣府男女共同参画局のホームページを見ると、コロナ禍のDV(配偶者暴力)相談件数は増加しています。

さらに、全国の配偶者暴力相談支援センターや「DV相談プラス」に寄せられた相談件数を合わせると、令和2(2020)年度は19万30件で前年度比の約1.6倍に増加しています。

また、警察庁が2021年3月に公表している配偶者からの暴力事案等の相談等状況によると、2020年の相談等件数は8万2643件となっており、前年よりも436件増えています。

これは2001年の配偶者暴力防止法施行後、最多となります。これらのデータを見ると、確かにコロナ禍のDV相談数は増加しています。

では、実際に家庭支援の現場はどうだったのかというと、やはり減っている印象はありません。さらにいえば、コロナ禍には問題が”見えにくなってしまっている“という印象が強くあり、実際はもっと増えているのではないかと感じています。

なぜなら、コロナ禍のDVには”環境による要因”と”環境が人に与える心理的要因”があり、それらが外からの発覚や介入と妨げている可能性があるからです。

環境要因

  • 被害者が加害者の暴力が外からの判断が非常に見えにくい
  • 被害者が外にSOSを出しづらい
  • 被害者が外に逃げにくい
  • マスク着用で被害者の感情が読み取りにくい

外出する回数が減ったことで人に会うことや相談がしにくくなっただけでなく、人と関わったり話をしたりすることで、誰かが気付く機会も少なくなっています。また、マスクに隠れた顔では表情が伝わりにくいため、つらさや困っていることが他人から分かりにくいということがあります。

心的要因

  • 被害者が加害者と1日中同じ空間(家など)で過ごすという恐怖が続く
  • 被害者の逃げ場がないことによる不安などから、心理的ストレスがかかる
  • コロナ禍で仕事や収入が減ったり、外出ができない状況があるため、加害者の心的ストレス要因が増え、さらなるDVを生んでしまう

上記の中でも、特に“環境による要因”の特徴のせいでDVが見えにくくなっていると思います。先ほど紹介した数値は氷山の一角に過ぎません。

近年、昔ならDVに泣き寝入りをしていた人が、「声を挙げていいんだ」と思える社会に少しずつ改善していっている感がありましたが、コロナ禍の影響によって上記のような「見えにくさ」がある以上、表沙汰にはなっていないDV被害者もまだまだたくさんいます。

新型コロナウィルスの終息はまだ見えていません。コロナ禍による制限などが続く以上、社会の鬱屈した状況が、加害者のストレス因子となり、DV被害者を生む状況も続くと考えられます。

コロナ禍によって大幅に増えた「隠れ虐待」

DVは増加していくという話をしましたが、DVが子育て家庭内で起こると、児童虐待へつながるという二次的な課題もあります。

子どもがDVを見ることは、”面前DV”という心理的虐待のひとつです。夫婦間でのDVが増えることは、児童虐待が増えることでもあるのです。

厚生労働省子ども家庭局の発表によると、令和2年度の虐待相談数は、身体的虐待が9000人、心理的虐待が12000人も前年より増えています。

一方で、「増加率は例年通りで、特別増加はしていない」「世界と比較すると日本は虐待が少ない方ではないか」という意見もあります。

確かに、増加率だけ見ると、コロナ渦だから大幅に増加しているとはいえないかもしれません。しかし、私はコロナ渦によってDVと同じように虐待も発見しづらくなっていると考えています。

発見しづらい虐待、すなわち「隠れ虐待」はコロナ禍以前から課題となっていました。

外では、普通に見えたり、場合によってはとても優しそうに見えたりする親が、家の中では豹変して暴力的になり、子どもたちに酷い虐待をしているというケースです。

隠れ虐待は外側からの発見がとても難しいことが特徴で、多くの場合、子どもたちの勇気ある小さなSOSを周囲の大人たちが汲み取ることで発覚してきました。コロナ禍においては外出自粛やステイホームの呼びかけ声はとても大きく強いため、小さく弱い子育て家庭のSOSに周囲の大人が気付きにくくなったということです。

単純に子どもを”見守る目”が激減している状況を考えれば、新型コロナウイルスは、悲惨な事件が起こりやすい状況や環境をもたらしたといっても良いでしょう。

“見守る目”が激減している最大の理由は、地域の虐待早期発見のための機能が、コロナ禍によって低下したことにあると思っています。

今から約20年前、厚生労働省は文部科学省と協力し、学校教員、保育所の保育士、市の職員や地域の関係者とのネットワーク(「要保護児童対策地域協議会」)をつくりました。

子どもたちの日々の様子を確認して、虐待の早期防止を行うためのネットワークです。

同ネットワークにより、学校、保育所、幼稚園などの学校機関や子育て機関などが連携してモニタリング(見守り)をすることで、多くの虐待を早期に発見してきました。

ですが、コロナ禍で学校が休校になり、外出自粛によって子どもたちが外に出にくい状況では、見守り機能が上手く機能しません。虐待を早期発見するシステムそのものが崩れてしまったのです。コロナ禍が続く限り、児童虐待も無くなることのない重要な課題といえます。

ストレスフルな時代にDVや虐待につなげない4つの工夫

コロナ禍による家族間のストレスが、DVや虐待につながることは、とても悲しいことです。そこで、今すぐ実践できる家庭間でのストレスをためない工夫をご紹介します。

【工夫①】他人の意見に惑わされない

コロナ禍によって巣ごもり需要が増えたことで、インターネットへのアクセス数が平均1時間強増えたというデータもある程です。インターネットはいつでもすぐに調べものができて便利な反面、多様な意見に惑わされてしまいます。

育児も仕事も美容も完璧な、ママインフルエンサーなどの、キラキラ輝く写真や投稿を見ると、自分と比較して辛い気持ちになってしまうこともあります。ですが、自分は自分です。惑わされずに今大事なことに目を向けましょう

【工夫②】諦める勇気を持つ

忙しい時に限って、子どもが癇癪を起こし、赤ちゃんが愚図ってなかなか泣き止まないという話をよく耳にします。そんな時は、諦めるという選択肢を増やしてみてください。

母や妻、父、夫という立場上、どうしてもしなければいけない仕事や家事があると思います。しかし、今一度、本当にしなければいけないことかどうかを考えてみてください。

明日に回せる仕事は回しても良いですし、ルーティンがあったとしても「今日はしない」という日をつくってみましょう。

【工夫③】ルールを減らす

みなさんの家庭では、家のルールはいくつありますか? 夫婦や親子で細かいルールをたくさん決めている人もいると思いますが、私はおススメしません。

なぜなら、細かいルールをたくさんつくってしまうと、「ルールを守らせること」や「ルールを守ること」が目的となってしまい、管理や遵守するだけでも大変な労力となってしまうからです。

また、人は一度でも”例外”を経験してしまうと、ルールを守るハードルがかなり下がってしまうものです。

私は「人に迷惑をかけない」「危険な場所に行かない」「人には優しくする」などの簡単で守りやすく、なおかついろいろなところで共通しているルールを徹底させた方が、結果的に良いと思います。

このようなルールを子育てにおける「シンプル・ルール」と呼びます。「人に優しくするということは、自分にも優しくしないといけないんだよ。だから自分の気持ちに嘘をついたらいけないよ」「危険な場所に行かないことで、お母さんたちはすごく助かるわ」など、シンプルルールは汎用性が高く、非常に応用がききます

【工夫④】他人に相談をする

私はいろいろな場所で相談することの大切さを伝えています。

コロナ禍においては、各市区町村がLINEなどのSNSを使った窓口をたくさん増やしました。LINEは国内流通アプリの中でも96%とトップクラスの普及率を誇り、相談するハードルが下がります。とても有効な手段といえるでしょう。

ただ、相談員との相性や、相談可能な時間などの問題もあります。困ったときの窓口は、いくつか知っておいても良いかもしれません。

<自治体の相談窓口例>
東京都子ゴコロ親ゴコロLINE 
子どもと親の相談らいん@おおさか

あなたも新井寛規さんに相談してみませんか?

ソクラテスのたまごの姉妹サービス「ウチのこは」なら、あなたの悩みや不安を新井寛規さんに直接相談できます(秘密厳守)。

新井寛規さんへの相談はこちらから

「耐える」より「許す」ことが重要

家族間のDVや虐待の増加など、家族の怖い部分を書いてきましたが、反対にこのコロナ禍の2年間は、家族の存在がいかに大切なものかということを再確認した期間でもありました。

家族とは他人の集合体です。全員が安心できる家庭を持つことは、仕事やプライベートなどの生活そのものの安定につながると思います。時代や価値観が変化していく中で、家族の形はとても多様化しました。

意識して自分なりの心地よい家族をつくっていくことは、とても難しいことです。”理想の家族”を考えすぎることも良くないのかもしれません。

今、身近にある大切な人やものを確認することで、気付けることやポジティブになれる発見もたくさんあります。

新型コロナウイルスは症状と同時に、たくさんの不安や恐怖を運んできます。不安や恐怖は体内に入ると咳や痰の代わりに愚痴や悪口を吐き出させ、熱の代わりにストレスで心身を支配し、怒り、悲しみ、不幸感などのネガティブ要素を生み出します。

政井マヤさんの記事の中でも触れられていましたが、子育て家庭は父母2人だけでは難しい場面も多く、たくさんの資源(人、モノ、情報、サービスなど)をうまく活用して乗り切るものです。

<政井マヤさんの記事はこちら>
「コロナ世代」と呼ばれる子どもたちが失った伸びやかさを取り戻したい

ですから、”今は耐える時”という考え方はおすすめできません。パンデミックは簡単に終息する問題ではなく、耐えてばかりでは心も身体も疲れてしまいます。

私自身も旅行や外出が大好きで、ストレスが溜まるほど、出かけたい衝動にかられますが、そんなときは、「なんとかなる」「できないなら他のことをしよう」と一呼吸置くようにしています。

 みなさんは、決して耐え過ぎず、がんばりすぎないでください。無理なことには、諦める勇気を持つこと。そして自分で思っている以上に、自分に優しくしてほしい。そんな自分を「許す」気持ちを大切にしてほしいと願います。

新井 寛規

新井 寛規

小規模フリースクール「ろぐはうす」センター長。家庭教育師。小学校教員、児童養護施設児童指導員、学童保育士、市家庭相談員を経て、2018年大阪府に学習生活支援センターろぐはうすを設立。現在、大学教育学部非常勤教員、保育士・教員養成専門学校の教員、保育士国家試験予備校非常勤講師、市府県放課後支援員研修講師、市府県子育て支援員研修講師、保育教育児童福祉コンサルティング、啓発活動を行っているほか、「境界に生きるー。」(UTSUWA出版)などの著書も手掛けている。

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