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2024.07.29

不登校の中学生の原因や親ができる対応は?受験・進路への影響や相談先も解説

不登校という言葉を身近に耳にする方も多くなったのではないでしょうか。けれど、子どもが不登校になってしまった親の苦しみやもがきは、当事者にしか理解しづらい現状もあります。
今回は養護教諭として保健室から子どもたちと向き合ってきた経験と、その後に公認心理師として親子カウンセリングに携わってきた経験から見えた視点で中学生の不登校についてお伝えします。
この記事をきっかけに、少しでも現状を理解し、子どもたちの生きやすい環境が増えていくことを願っています。

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記事を執筆したのは…

高橋智世先生

不登校支援・養護教員を務め、不登校や発達の凸凹に悩む親子をケアしてきた公認心理師。明るく優しい笑顔で気持ちがラクになるコツを教えてくれます。

クラスで2人は不登校状態?中学生の不登校の現状

「令和4年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」(文部科学省発表)によると、小・中学校における不登校児童生徒数は29万9048人。前年度から5万4108人(22.1%)も増加し、過去最多となりました。小学生と中学生を比べてみるとどうでしょうか。以下をご覧ください。

小学校→10万5112人(前年度比29.0%増)
60人に1人の割合です。
中学校→19万3936人((前年度比18.7%増)
17人に1人の割合です。

この人数を見ただけでも、あなたの身近にも不登校になっている子どもがいることがわかります。しかし、不登校の数にカウントされるのは、次の定義に該当する子どもだけです。

不登校にカウントされる条件とは?

「何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、登校しないあるいはしたくともできない状況にあるために年間30日以上欠席した者のうち、病気や経済的な理由による者を除いたもの」に当てはまる児童生徒だけが「不登校」としてカウントされているのです。

実際に学校に行けず、その背景が「学校に行きたくない」という心理的要因だったとしても「お腹が痛くて休みます」「体調不良で休みます」と連絡してしまうと、体調不良とみなされ不登校にはカウントされないのが現状です。

また欠席理由別の報告書やデータ作成は養護教諭(保健室の先生)が行っているところが多いのですが、各学級の欠席者数と理由を取りまとめ、データを入力するという作業で、このデータが教育委員会にリアルタイムで共有されている自治体もあれば、年に1回の文部科学省からのアンケートに回答する形で不登校の児童生徒数を報告する自治体もあります。

ですので、例えば欠席連絡をとった教職員が「今の連絡は体調不良だな」と認識すれば、「不登校」ではなく「体調不良」としてカウントされ、それが続いたとしても、なかなか「不登校」としてのカウント報告には上げられないのです。

そのため、実際には不登校状態の子どもや隠れ不登校は40万人以上いるのではないかと言われています。

若年層の「引きこもり」も増えている

外出をほとんどしない状態が長期間続くいわゆる「ひきもり」の人は、15歳から64歳までの年齢層の2%余りにあたる推計146万人に上ることが、内閣府が去年11月に行ったアンケート調査でわかりました(内閣府による令和4年こども・若者に関する調査より)。学校に通っていた子どもが不登校状態になり、そこから引きこもりになってしまうケースも少なくはありません。

けれども不登校になったからといって引きこもりになってしまうわけではないのです。

不登校状態の時期にどんな関わり方をするか、どこでどんな過ごし方をするのかという環境調整をしてあげることで、不登校状態の出口は新たな才能の発見や、探究活動、進学や起業にもつながります。

不登校からの引きこもり状態になってしまう子を減らすためにも、「現状を知る」ということが大きな一歩になります。

中学生の不登校の原因とは?

不登校の原因は1つではなく複数の要因が関係しているのですが、まずは調査結果を見てみましょう。
これは文部科学省が行った令和2年の調査です。

中学生に聞いた「最初に学校に行きづらくなったきっかけはなんですか?」             1位:32.6%
身 体 の 不 調 (学 校 に 行 こ う と す る と お な か が 痛 く な った な ど)             2位:27.6%
勉 強 が 分 か ら な い (授 業 が お も し ろ く な か った 、成 績 が よ く な か った 、 テ ス ト の 点 が よ く な か った な ど )
3位 27.5%
先 生 の こ と (先 生 と 合 わ な か った 、 先 生 が 怖 か った 、体 罰 が あ った な ど )
4位 25.6%
友達のこと(いじめ以外)
5位 25.5%(同率)
友達のこと(いじめ)
生活リズムの乱れ
6位 22.9%
きっかけが何かわからない

出典元:令和2年度不登校児童生徒の実態調査 結果の概要

この調査結果を見て気づいた方もいらっしゃるかもしれませんが、中学生になると、小学生のように素直に「嫌だ」「嫌いだ」「行きたくない」という感情を感じれらなくなって、「行きたくないけれど行かなければならない」というような葛藤が心の中に生まれだします。そのために、心に疲れが出てきて身体の不調として現れることが多いのです。
心が発達している証でもあるのですが1位に「身体の不調」がきているところが中学生の特徴です。

また2位と3位は関連をしているという見方もできます。苦手だと感じた先生がいる場合に、授業の内容が頭に入ってこなくて学業不振に繋がったり、または苦手な教科を理解しようと頑張っても先生がサポートをしてくれなくて先生が苦手になることもあります。
「頑張ってもわからない」または「そもそも集団で教室にいることが苦手である」という学業に関連する困難さを抱えている場合には、LDやADHD・ASDなどの発達障がいが関連して本人の困りごととなっていることも多いです。

そして、保健室に来る子どもたちにおいても、とても多いのが「何かわからないけれどしんどい」と訴える子どもたちです。困り事がある中で、自分だけでどうにかしようと葛藤や模索を続けた結果、心身ともに無気力になってしまい、「なぜだかわからないけれど学校に行けなくなった」という子どももとても多くいます。

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中学生の不登校のきっかけに「男女の差」はあるのか

「不登校になったきっかけや不登校の人数に大きな男女差がある」という調査結果はありませんが、4000人以上の不登校の親子と関わってきた経験をもとにお話しさせていただくと、女の子は「コミュニケーション」がもとになった困難や環境との不一致によって不登校になってしまうことが多いようです。コミュニケーションにおいてのトラブルや困難さを感じた最初のきっかけは小学校5年生頃が多く、固定された女子の仲良しグループが確立してしまう時期と重なっています。
なんらかのコミュニケーションのかけ違いやトラブルによって、仲良しの友人との間に溝ができてしまったり、仲良くできる友達が見つからなかったりすることで学校に行きにくくなってしまう子をたくさん見てきました。

男の子は、ネット上のトラブルによる心の傷がきっかけとなり不登校になる子が多い印象です。直接はあまり話さないけれど、LINEグループや、オンラインゲーム上での会話やオンラインゲームに誘われたかどうかなど、オンライン上でのつながり方において心に傷をおってしまった、といったケースです。また、部活や勉強などで「自分の頑張り」と「周りの評価」に差があったときに感じた恥ずかしさや自信喪失がきっかけとなって、無気力になってしまう子も多いようです。

男女別のお話をしましたが、自分の性別に関係しない悩みを持っている子も多いものです。女の子だからとか男の子だからとかで背景を探るよりも、本人が何に困っていて、何をどうしたいのかに焦点を当てて寄り添い、環境を整えてあげることが最も大切です。

不登校の子の進路について

文部科学省の調査によると、中学生のときに不登校だった人の約80%は、20歳のときに進学や就労をしています。

【中学時代に不登校経験者の、20歳時点の就学・就職の割合】
就業のみ…34.5%
就学のみ…27.8%
就業、就学…19.6%

中学時代に不登校だった子も、中学卒業後5年以内には就職または進学をしているケースがほとんどなのです。

また、進学後の状況や感想についてのアンケートではこんな調査結果もあります。
(参考:「不登校に関する実態調査」 ~平成18年度不登校生徒に関する追跡調査報告書~)

▶︎学校で信頼できる人に出会えた(68.0%)
▶︎自分の力や性格に合った学校でめぐり会えた(70.9%)
▶︎学校の雰囲気が自分に合っていた(65.3%)

最近では不登校に対して理解のある高校も増えており、大学入試のスタイルも、学力だけではなくこれまで挑戦してきたことや特技のアピールを重視する「総合型選抜入試」での受験割合も増えているので、中学時に不登校だったからといってその後の進学の幅が狭くなったり、就職に悪影響があったりということは少なくなっています。

大切なのは、早い段階で本人の困りごとを見える化し、その困りごとを乗り越えるための練習をする場所や、困りごとを感じなくても良い環境に本人を移してあげることです。
それをすることによって自己肯定感が育ち、「他の人とは違うけれど、この方法なら挑戦したい」のように、自らの「やってみたい」が生まれます。その自発的欲求が進学や就職に前向きに繋がっていくのです。

不登校からの起業家という可能性もある

私が関わってきた元不登校(小学校も中学校もほとんど行けなかった子)の子のエピソードを紹介します。

「自分の部屋に閉じこもっていたからこそ、寂しくなってゲームをずっとしていた」と話していたその子。けれど、ゲームをする中で同じゲームに飽きてきて、新しいゲーム購入を親に伝える勇気もなかったので自分でゲームアプリを開発できないかと試行錯誤することに楽しみを感じたそうです。
それをしているうちに、自分の作ったゲームを面白いといって評価してくれるネット上の友達ができ、外の世界にも友人を作りたいと思えるきっかけになったらしいのです。
今ではその元不登校生はゲームアプリを開発する会社を起業し、たくさんの人の前で話せる大人に成長しています。

私も仕事上、たくさんの社長と話しますが、ベンチャー企業などの社長には「学校は苦手で行ってなかったよ」と話してくださる方が意外と多いのです。
自分に合っていない環境で我慢を続けるのではなく、自分に合った環境で興味や関心が深いことをとことんやることが将来に繋がっているんだなと感じる場面が多くあります。

不登校状態は心配なことばかりと感じられがちですが、不登校を選択する視点や意志には大きな可能性が隠れていることも多いのです。

中学生で不登校になったらその後の進路は?

中学時に不登校だった場合に、進路の選択肢は大きく分けて5つあります。

①高校へ進学

高校には公立高校、私立高校、通信制高校、定時制高校があります。「通信制高校に入学したら、卒業後に進学できない・就職できないのでは?」といったご相談を受けることも多いのですが、そんな時代はもう終わりました。
必要な単位だけを取得し、他の時間を自分の得意なことや資格取得にあてる充実した生活スタイルを求めて通信制高校を積極的に選択する人の比率は、東京都内では15人に1人とも言われています。

ですが、どうしても「家から通える全日制の高校に通いたい」と本人が主張する場合には備えて、親として心配になるのは出席認定や試験の受験頻度、そして課題の提出などですよね。
本人と相談する前に、保護者が学校やフリースクールで事前に以下を確認しておくと安心です。

志望校を決める前に確認をしておくこと

  • 内申点の状況(出席認定の条件と日数の現状)
  • 不登校状態でも進学できそうな高校のリスト
  • 内申書をあまり見ない高校のリスト
  • これから内申点を上げる方法や入試に必要な対策

②高等専修学校へ進学

高等専修学校とは専門学校と同じようなスタイルの高校で、専門学校よりも基礎的なことを学ぶ学校のことです。不登校のお子さんの中には「機械にだけは興味がある」「ゲームのことだけは会話が弾む」などある分野に特化して深い学びをしたいと感じている子も多くいます。そういった視点では選択肢のひとつとして探してみるのもいいでしょう。

③高等専門学校(高専)へ進学

高等専門学校(高専)とは、五教科などの一般科目と、専門科目の両方を学べる学校のことです。
高専の特徴には、即戦力として社会人としてデビューできるような教育内容をカリキュラムに入れているところも多くあります。最近では、神山まるごと高専などのように起業家精神を育てるプログラムが柱になっている学校も出てきています。

④高等学校卒業程度認定試験に合格し、その後の進路へすすむ

高等学校卒業程度認定試験(高卒認定、高認)とは、高校を卒業しなかった人や、高校に進学しなかった人たちの学力を測るための試験です。文部科学省が実施しており、試験に合格すると、高校卒業者と同等以上の学力があると認定され、高校を卒業しなくても、大学、短大、専門学校の受験が可能になります。高校を卒業後の進路がはっきりしているお子さまにとっては選択肢の1つになりますが、中学レベルの勉強が無理なくできていた人にしか難しい選択肢ともいえます。

⑤就職する・起業する

中卒での就職も、可能性としてはもちろんあります。ですが、高卒・大卒・専門学校卒などと比較して、「職種、正規雇用枠、給料などの選択肢が少ない」傾向にあるため、本人の希望にあった就職先を見つけることは難しいことも多いです。
実際に厚生労働省の統計によると、15~34歳までの若年労働者における正社員の割合は、中卒で「35.4%」なのに対し、高卒では「56.3%」、大卒で「80.9%」と、最終学歴によって大きな差があります(参考:厚生労働省「平成30年若年者雇用実態調査の概況」)。また、中学生起業家も存在し、起業という選択肢も広がってきています。ですが、本人が得意なことを仕事として発揮してそれをマネタイズ化することは決して簡単なことではありません。
サポートしてくれる環境があり、進みたい方向に進んでいく意欲を継続させるためにも、まずは、どこかの場所で学びを深めるという進路選択をし、心身ともに安定した際に新たな挑戦をすることをお勧めします。

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子どもが不登校になったときにしてはいけない5つのこと

これまでは背景や現状について触れてきましたが、不登校になっても、お子さんの未来の可能性は100人いれば100通りあります。あなたのお子さんの可能性は、あなた次第で小さくすることも、無限大にすることも可能なのです。

またここからは、「中学生のお子さんが不登校状態になったときに親がしてはいけない5つのこと」を紹介します。なおこちらは、私が創設したwell-beingを柱にしたフリースクールええがぁLABO(運営元NPO法人LINK HEART SCHOOL)において保護者にお伝えしていることです。

子どもが不登校になったときに親ができる4つの工夫

①「あなたがどんな時もあなたの味方だよ」を言葉や態度で毎日伝える

不登校だったけれど今は自分らしい進学や就職や起業をしている人と、不登校の時の傷を引きずって挑戦を恐れたまま大人になっている人との大きな違いは「自己肯定感が育まれているかどうか」に深く関わっています。
不登校になったり進学をする気力が感じられなかったりすると、親として不安になり焦ってしまうのは自然な反応です。けれど長い目で見れば今、この瞬間のお子さんをありのままに受け止めてあげることが、何よりも未来へ歩む土台になるのです。

②親だけで抱えるのではなく、早い段階で専門家を頼る

「自分の子どものことだから、自分でどうにか解決したい」と思う保護者はとても多くいます。また1人で子育てをしているひとり親家庭の場合、よりその気持ちが強い傾向にあるように思います。

ですが毎日学校に通っている中学生でも、思春期になった頃の関わり方は難しい場面が多いですよね。そんな中で学校に行かなくなってしまったときには、いろんな感情の吐口も家庭内になり、昼食の準備や学業の心配なども重なり、親御さんにはたくさんの負担が集中してしまうのが現状です。

深刻な状況に移行する前に予防策として、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー、そして学校外の専門家へ相談をし、いろいろな対策をしておくことをお勧めします。
自宅にいながらや、仕事の合間に相談をしたい方にはオンラインカウンセリングやオンライン相談をおすすめします。

③親自身がリラックスできる時間や空間を確保する

子どもがずっと家にいるとなると、心理的なストレスが蓄積されていくのが自然です。そして、その小さなストレスは知らないうちに積もり積もって、保護者がしんどくなってしまったり、夫婦喧嘩が増えてしまったりとトゲトゲした家庭環境を作り出してしまうことも多いのです。
子どもが「不登校」という状況を選んだからといって、親であるあなたが犠牲になることはありませんし、あなたが悪いのではないのです。

自分を責めたりイライラや不安が増えてしまう前に週に1日は子どもと離れて、自分のためにゆったりと過ごせる「自分を大切にする時間」を作ってください。
それであなたの心が安定することによって、またお子さんにとっても家庭が「安心できる環境」になり、自己肯定感の育成にもつながります。ご自身を大切にすることを第一に考えてくださいね。

④子どもをサポートするチームを作る

子どもが不登校になったときに、心配なことはたくさんありますよね。大きく分けると以下のことになるかと思います。

A:学校とのやりとりに関すること

給食費やPTA会費について、行事ごとへの参加について(子どもに関する行事・親に関する行事)、家庭訪問や連絡の取り方や頻度についてなど

B:進路に関わること

出席認定や成績評価など内申点に関わること、どんな進路の可能性があるのか最新情報に関わることなど

C:ストレスや特性に関わること

児童精神科などに連れて行ったり、心理検査を受けたり、カウンセリングを受けさせる必要の有無など

D:家事や家計に関わること

昼食はどうするのか、仕事は休めるのか、休めない場合はどうしたらいいのか、仕事を休んで収入が減った分はどう補うのかなど

これらを1人で、あるいは夫婦で全て抱えてしまわないように各ジャンルごとに頼る先を決め、子どもを支えるチームのようなものを作っておくことが大切です。

例えばAとBはしっかり話し合い書面にし、学校に協力依頼を行う、Cは専門家に月1で通い、Dは弁当宅配サービスや家事代行を頼んだり福祉サービスで使えるものがないかを調べるなどです。
どんなときに誰を頼るのか、どこの機関が頼る先として合っているのかを決めるまでは、いろいろな負担があるかもしれませんが、ずっと家庭だけで抱えることのないように、チームづくりをするイメージを持って動いてみてくださいね。

フリースクールに通い出すと、ABCの全てが頼れたりする場合もあります。学校以外の居場所選びをするときのチェックポイントとしてもこのリストをお使いいただけます。

保健室の先生が語る不登校からの未来づくり

私はのべ10年保健室の先生として、教室に行けなくなってしまうたくさんの子どもたちと会話を続けてきて、みえてきたことがあります。それは、教室がしんどくなってしまう子どもたちは、「人と違う見方」ができる、ということです。
先生の態度の違和感や友情関係の歪さに敏感に気づいてしんどくなってしまったり、多数の人にはわからない感覚で世界を見ることができたり、突き出た才能があることによって多数から排除されるような経験をしてしまったりと、1人ひとりその事柄は違いますが、「人とは異なる視点を持てる才能がある」からこそ、集団教育の環境に適応しづらくなってしまうのです。
「助けて!」と子どもたちは小さくても見えにくくてもメッセージを発信しています。

私が養護教諭をやめ起業に至ったのは、この「他とは異なることが尊重されない苦しみ」があることにより、子どもたちを苦しめる環境が深刻化してきたからです。

子どもを「ありのままに」見ていない大人が増えている

2017年に10代の死因の1位が事故や病気ではなく自死になりました。私がとめどなく動き、講演や出前授業、そしてフリースクールの設立などいろいろな活動をしているのは、この現状をどうにか止めたいからです。けれど、いろいろな場所で活動をさせていただく中で気づいたことがあります。

それは、子どもたちを取り巻く現状が変わらない大きな要因に「大人たちにゆとりがないから」ということがあります。

子どものことを「見ていない」のではなく「ありのままが見えていない」のです。昔と比べると少子化が進み、子どもひとりに焦点を当てる大人の数自体は増えているはずです。けれど、「ありのままの相手を見る」のではなく「こうした方がいいだろう」「こうあるべきだ」というフィルターを通して子どもを見てしまっている学校環境が多いので、子どもたちの「ありのまま」とは遠ざかって行っているまま、不登校状態の子どもが増えているのだと思います。

子どもたちを「ありのまま」に見るには、心の目で見る必要があります。子どもが実際にとった行動や発言した言葉そのものではなく、「それはどんな思いや、どんな見え方から生まれているんだろう」という見方が必要になってくるのです。

この「ありのままを見る視点」を持つためには、大人自身が自分の気持ちを、自分の状態を認知していないといけません。このステップを飛ばしてしまうと「子どものために良かれと思った言葉や行動」が子どもを深く傷つけてしまうことにもつながるのです。

保健室の中で、どれだけの子どもたちの心の叫びを聴いたか。そして、どれだけ多くのお母さんやお父さんが自分自身を責める辛さをみてきたか。何年も経った今でも現状は大きくは変わっていません。

私たちにできることは、実はすごくシンプルで、自分を愛する方法、自分の心の健康をマネジメントする方法を身につける、ということです。そしてフラットな心で、目の前の子どもの「ありのままの姿」を感じて、「ありのままの姿が大好きよ」と伝えてあげてください。
あなたの目の前の子どもを「1人のかけがえのない人間」だと認識し、どんな感じ方をし、どんな世界が見えているのかということに興味を持って耳を傾けてあげてください。それだけで救われる子がたくさんいるはずです。

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高橋智世

公認心理師。大学在学中にベトナムで孤児院運営活動に携わり、その後、専門性を深めるために心と体の健康教育について学んだ後、家庭教師・塾講師・個別指導塾の教室長を経て、養護教諭として6年間勤務。10年以上の不登校支援・養護教諭の経験を活かし、不登校や発達の凸凹に悩む親子を多数サポートしている。

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