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2024.08.01

不登校から再登校へのきっかけとは?言動のサインや学校復帰できた事例も紹介

文部科学省の調査結果によると、令和4年度の不登校の小中学生の人数は過去最多。不登校は今、決して珍しいことではありません。ここでは、子どもたちが学校に行きづらくなった原因、また不登校から学校生活に戻れたきっかけについて詳しく解説します。学校と保護者の対応事例も紹介するので、ぜひ参考にしてください。

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監修

吉田純一さん公認心理師

36年間の中学校教員を経て、現在は教育現場で児童生徒、保護者、教職員のカウンセリングを行っている。今まで受けた相談件数は500件以上。共著に『環境授業に使える面白クイズ』(明治図書)『新しい問題解決学習の授業展開』(ぎょうせい)などがある。

不登校とはどんな状態?

文部科学省の調査では、病気や経済的な理由がなく、1年間で30日以上学校を欠席している状態を不登校と定義されています。

令和4年度に文部科学省が行った調査では、全国の小学校、中学校の不登校児童・生徒の数は過去最多の約29万9000件、また高校生の不登校の件数も過去最多となっています。

小学校・中学校における不登校の状況
引用:令和4年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要

件数は10年連続で増加しており、不登校はすでに「特別な事例」ではないといえるでしょう。

不登校になるきっかけや原因は?

令和2年に行われた文部科学省の調査によると、不登校の小学生・中学生が「最初に学校に行きづらいと感じ始めたきっかけ」は、割合が多いものから順に以下のようになっています。(※複数回答可)

小学生の不登校のきっかけ

最初に学校に行きづらいと感じ始めたきっかけ割合
1.先生のこと(先生と合わなかった、先生が怖かった、体罰があったなど)29.7%
2.身体の不調(学校に行こうとするとおなかが痛くなる)26.5%
3.生活リズムの乱れ(朝起きられなかったなど)25.7%
4.きっかけが何か自分でもよくわからない25.5%
5.友達のこと(いじめや嫌がらせがあった)21.7%
引用:令和2年度不登校児童生徒の実態調査 結果の概要

小学生では、先生と合わなかった、先生が怖かった、など「先生のこと」が1位となっています。また、身体の不調、生活リズムの乱れなども上位になっています。

割合を見ると、特定のきっかけが突出しているわけではなく、学校に行きづらいと感じ始めた要因は多岐にわたることがわかります。

<小学生の不登校に関する記事はこちら>
小学生の不登校の原因は?親ができる5つの対応や今後に向けたステップ
不登校の原因・理由を解説|親が家庭でできる対応とNG行動とは?

中学生の不登校のきっかけ

最初に学校に行きづらいと感じ始めたきっかけ割合
1.身体の不調(学校に行こうとするとおなかが痛くなる)32.6%
2.勉強が分からない(授業が面白くなかった、成績がよくなかった、テストの点がよくなかったなど)27.6%
3.先生のこと(先生と合わなかった、先生が怖かった、体罰があったなど)27.5%
4.友達のこと(いじめや嫌がらせがあった、以外)25.6%
5.生活リズムの乱れ(朝起きられなかったなど) 友達のこと(いじめや嫌がらせがあった)25.5%
引用:令和2年度不登校児童生徒の実態調査 結果の概要

中学生では、学校に行こうとするとおなかが痛くなる、といった「身体の不調」の割合がもっとも多くなっています。小学生と比べて大きく異なるのは「勉強が分からない」が上位に入っている点でしょう。

また、小学生、中学生のいずれも「きっかけが何か自分でもよくわからない」という回答が2割程度あり、自分自身でも何がきっかけになっているか明確に自覚していない場合も少なくありません。不登校のきっかけは複合的な場合もあり、ひとつの原因に限定できないことも多いのです。

<中学生の不登校に関する記事はこちら>
不登校の中学生の原因や親ができる対応は?受験・進路への影響や相談先も解説
学校に行きたくない…中学生の親の対処法は?理由を知る方法や休ませるときのポイント

不登校の子が再登校できるようになるきっかけの例

不登校の子が再登校できるようになるきっかけの例

不登校の子の居場所や受け皿の選択肢は増えており、元の学校への復帰が必ずしも最善の道とは限りません。しかし、無理のないタイミングが来たら学校に復帰してほしいと考える保護者の方もいるのではないでしょうか。

不登校の子が学校に戻るきっかけにはどのようなものがあるのでしょうか。不登校の子が再登校できるようになるきっかけの例を元教師で公認心理師の吉田先生にお聞きしました。

再登校できるようになるきっかけにもさまざまなパターンがあります。ここでは、不登校が始まった原因ごとに分けて紹介します。

1.友達とのトラブルが主な原因の場合

<再登校のきっかけの例>

  1. 休日に友達と遊ぶ
  2. 修学旅行や校外学習に参加する
  3. 保健室登校からはじめる
  4. 別室登校が認められる
  5. 友だちから連絡をもらう

不登校になった原因が友達との人間関係の場合、学校生活以外での友達との交流が再登校のきっかけになることがあります。また、保健室登校などを経て段階的に教室復帰を目指すことで元の学級に戻れることもあるでしょう。

2.学習のつまずきが主な原因の場合

<再登校のきっかけの例>

  1. 放課後登校で、教室で先生と話や勉強をする
  2. 宿題を個別の課題とする(しなくてもよいという選択が可能)
  3. 授業中に「分かりません」の発言が認められる
  4. 発表しないことを認め合う学級の雰囲気ができた
  5. 少人数授業に参加できた
  6. 別室授業の選択ができた

学習面のつまずきで学校から足が遠のいている子は「勉強がわからない自分はダメなんだ」「みんなについていけない」など、自分の学力や授業の時間に対して不安感や焦りを抱えていることも。

個別の学習支援で自信をつける、授業中のクラスの雰囲気の変化で不安が解消される、といったきっかけが学校復帰につながることがあります。

3.先生との関わりが主な原因の場合

<再登校のきっかけの例>

  1. まず、話しやすい先生とお話した
  2. 先生に話を聞いてもらうことができた
  3. 先生の別の一面を知った

文部科学省の調査では、先生との関わりは小学生の不登校のきっかけのなかで最も割合が高いものです。担任の先生に限らず、まず話しやすい先生とコミュニケーションを取ることで学校への復帰に近づく場合があります。

また、仮に不登校になった時点で担任の先生に苦手意識を持っていたとしても、じっくりと向き合うことで意識が変わることもあります。

4.家庭が主な原因の場合(家は自由で楽しい、家族関係が良くない等)

 <再登校のきっかけの例>

  1. 家でのゲームやYou tube、スマホ使用のルールを決めて守れた
  2. 生活時間のリズムが出来てきた(食事、風呂、就寝、起床等)
  3. お手伝いなど、家での役割を持つようになった
  4. 家族のことについて、相談ができた
  5. 親と離れて過ごす不安が軽くなった

生活リズムの乱れが原因になっている場合は、家庭での過ごし方を変えてみると再登校のきっかけになるかもしれません。

夜更かしして朝起きられないという状況であれば、子どもと一緒にゲームやYou tube、スマホの使用時間などのルールを決めるのも方法のひとつです。

<子どもの家庭での過ごし方に関する記事はこちら>
不登校にも繋がる起立性調節障害とは?中学生の「朝起きれない」にできる7つの対応【医師解説】
子どものYouTube依存を克服したい!親にできるスマホ対策
母子分離不安とは?原因は母親のせい?子どもが抱く『不安』の年齢別の特徴

不登校が終わり再登校に向かえるサイン

不登校が終わり再登校に向かえるサインとは?

不登校の子が心身の元気を取り戻し、再登校を目指せる段階になったとき、保護者が家庭で感じ取れる言動のサインはあるのでしょうか?日常生活から感じられる変化の例を紹介します。

再登校へ向けたサインの例

1.生活リズムの変化・昼夜逆転からの回復が見られる
・家族との対話が増える  
・活動量が増える…外出やお手伝いの増加
・趣味や興味関心が変化した 
2.感情の変化・イライラの様子が減った
・笑顔が増える
3.体調の変化・姿勢が良くなる、顔色が良くなる
・食欲がでてきた
4.登校の準備・持ち物、机、服装の整理をする
・学校の話題に関心をもつ
・友達との連絡をとる(とろうとする)
・教科書・ノートをそろえる
・学校の様子について尋ねる
・自主勉強を始める
・体力作りを始める

上記のようなサインから「心身のストレスが減ってきたのでは?」「体調が回復して前向きになってきたかも」と感じられたら、再登校に向けて動き出してみるとよいでしょう。

ただし、このとき「もう大丈夫だろう」と親が判断して無理に学校に行かせることは避けましょう。あくまで目安として、子どもとコミュニケーションを取りながら、焦らずに準備を進めることが大切です。

<不登校の子への対応に関する記事はこちら>
小学生の子どもが「学校に行きたくない」と言ったら?理由や親の対応を元教師がアドバイス
不登校の子にどう対応する?親の適切な接し方や行動、自己肯定感の守り方

不登校の子が学校復帰できた事例

ここからは、長年中学校の教員を務め、公認心理師としても不登校に関するカウンセリングを数多く行ってきた吉田先生が経験した事例を紹介します。

不登校の子が学校へ戻るまでの家庭や学校での対応をまとめているので、参考にしてみてください。

事例1:別室登校から段階的に教室復帰を目指した例(Aさん・中3女子)
授業中の失敗が怖くなり、授業に入れなくなったAさん。特に、指名されて発表の機会が多い英語や数学などの授業が怖いといいます。

保健室や別室で1日過ごすことも許されたので、2学期になるとそれが日常となりました。2学期の行事も終わり、進路が気になるころから教室への復帰を考えるようになりました。

最初は、美術や音楽の授業から、少しずつ教室に入るように。進路の指導などの学年集会にも参加(集団とは離れた場所で)するようになって、教室での時間も増えていきました。

事例2:段階的な母子分離と周囲の励ましから登校できるようになった例(Bさん・小1男児)
Bさんは、母子分離ができていない傾向の子でした。入学式に参加した翌日に、インフルエンザにかかり1週間欠席。その後母と登校しますが、教室に入れず廊下で母子で時間を過ごしていました。その後、登校自体を渋るように。
学校生活に適応するための最初の1週間を欠席したことが教室に入れない大きな理由ですが、母子分離ができていないことが更に不登校の背景にありました。

先ずは、家の中で母と部屋を別にして過ごす、祖父母に預けて短時間母から分離するなど、家庭での母子分離から試みました。
また、学校でも最初に病気で抜けていた「学校に慣れる時間」を放課後に作り、個別に学ぶ時間を設けました。

Bさんは次第に教室に入れるようになり、2学期からは普通に登校できるようになりました。

事例3:興味のあることに注目させて壁を超えることができた例(Cさん・小1男児)
Cさんは朝の集団登校ができず、母の車で登校していました。学校に着いてからが大変で、泣きじゃくって抵抗するので、毎日車からの降車に数十分かかっていました。しかし、車を降りれば、比較的素直に教室に向かいます。

Cさんは野球が好きで、好きな阪神タイガースについては、過去1年間ぐらいのスコアーを記憶していて、「〇月△日の阪神対巨人の結果は?」と聞くと、「〇対◇で、阪神の勝ち」と応えます(発達特性がうかがえます)。

ある日の朝、ようやく車を降りて教室に向かう途中、校長室に阪神タイガースのマスコットの「トラッキー」を見つけて喜んでいました。次の日から、「(校長室の)トッラキーに挨拶しに行こう」というと、すんなりと降車するようになりました。

事例4:担任の先生に自分の気持ちを知ってもらったことが、喜びと安心につながった例(Dさん・中1女子)
朝になると「学校に行かない」と泣きじゃくっていたDさん。母親が、担任の先生にその様子を電話すると、先生が迎えに来て遅れて登校していました。しかし、次第に先生の迎えを嫌がり、登校できなくなっていきました。

ある朝、Dさんは電話での担任の誘いにも応じず欠席します。その日の放課後、担任が家庭訪問。その時担任は、黙ってDさんが学校で勉強が分からない事、友人がいない事、休み時間に独りぼっちになってしまうという話に耳を傾けました。
そして最後に「君は、学校がそんなにしんどかったんだね。」と、気持ちに共感する言葉を返すと、Dさんは担任の前で大泣き。

担任が帰った後、彼女は母に、「先生が、私の気持ちを分かってくれた」と、喜びを伝えました。次の日から、朝に大泣きすることが無くなり学校を休まなくなりました。

子ども自身には、現状を何とか乗り越えようとする気持ちがあります。たとえば、多くの学校で、環境が変わる入学や進級等を機に教室復帰、再登校できるようになる例も多くみられます。
現状を乗り越えようとするその気持ちをどのように引き出すか、という点が大切なのです。

<関連記事>
保健室登校とは?メリット・デメリットや教室復帰への5つのステップを解説
新年度は不登校から学校復帰するきっかけに?再登校へ向け親ができる対応

不登校の悩みはどうする?助けになった相談先

不登校になっても、別の形で学び続ける方法はあります。また、学校外での活動や人との交流などさまざまな経験を通して、再登校できるようになることもあるでしょう。

「特定非営利活動法人多様な学びプロジェクト」が不登校の子の保護者を対象に行った調査では、不登校の親子が利用している支援やサービスのうち「現在利用しているものについて、その状況に当てはまるもの」はこのような結果になりました。

不登校の家庭で利用しているものと状況
出典:PR TIMES

この調査では、実際に利用してみて助けになったかどうかについても質問しています。「教育支援センター(適応指導教室)」「スクールカウンセラー」などは、「利用して助けになった」という声が挙がる一方で、「利用したが助けにならなかった」の割合も同程度。
ときには上手くいかないケースもありますが、子どもが試したいというなら、まずは相談してみましょう。もし解決が難しそうなら、固執せずに次の手段に移ってみても良いのです。

一方、「フリースクール」「親の会」などは、「利用して助けになった」という声が多数。未利用の方も目立ちますが、思いきって相談してみると新しい道が開けるかもしれません。フリースクールでは経費が必要な場合が多いので、費用面について事前に確認しておきましょう。

子どもが在籍する学校と連携しながら、必要に応じて別の支援機関に相談してサポートを受けてみるのも、不登校を乗り越えていくためのひとつの方法と言えるでしょう。

<不登校の相談先についての記事はこちら>
不登校の悩みの相談先はどこ?6つの支援先と相談するメリット
不登校のカウンセリングって?親と子どもへの効果や相談事例も紹介
教育支援センター(適応指導教室)とは|どんな子が通ってる?メリット・デメリットは?
フリースクールとは?費用や進路、不登校の子が成長できる理由を元スタッフが解説

<参考資料>
令和4年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要
令和2年度不登校児童生徒の実態調査 結果の概要
PR TIMES(特定非営利活動法人多様な学びプロジェクト)

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