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2023.01.31

学校に行く必要はない? 不登校の子どものための「本当によい進路選択」とは

令和3年度の小中学校の不登校児童生徒数は過去最高となりました。不登校は年々深刻化しており、社会全体で考えなければいけない問題です。
2022年11月に著書『不登校からの進学受験ガイド』を発売した個別指導塾ココロミル塾長の山田佳央氏に、「学校に行く必要は、本当にないのか」という問題についてお聞きしました。

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学校に行かなくても、自律できるのならいいけれど……

ーー最近、有名YouTuberや実業家が「学校なんて行かなくてもいい」と言っているのを耳にします。山田さんはこのことについてどうお考えですか?

「学校に行かなくてもよいのではないか」ということは、塾の生徒からも相談されます。私は、自分のことをしっかり管理し、自律できていて、学校以外の場所で「自分を成長させる何か」をやり続けることができる子ならば、必ずしも学校に行く必要はないと思います。例えば塾で勉強していたり、地域のチームに所属してスポーツをしていたりということを続けられるのならばよいのではないでしょうか。

しかし、本当に自律できる子どもはかなりレアケースです。現実問題、自由な時間を有効活用して、自分で自分を成長させることができる子どもはほとんどいないと思います。

ーーそれは、受験などをして名門校を目指す子どもだとしても、でしょうか?

小中学生くらいの時点では、自律できるかどうかに学力はさほど関係ないでしょう。私の運営する塾は新宿にもあるのですが、そこには東大を目指すような子どもしか入れない、いわゆる「難関塾」があります。そこに通う子たちですら、日々塾に通って授業前後には近くのカフェで勉強しています。つまり、どんなに学力がある子でも、周りの空気や環境のおかげで頑張れているという側面があるんです。

ーーなるほど。とすると、そういう場を提供する親や周りのサポートが重要になりますね。

そうですね。ある程度強制力のある(定期的に通う必要のある)場所を用意することが必要だと思います。学校に行くことが難しければ、塾を活用したり、最近は無料の適応指導教室やフリースクールなどもあるようなので、そういったところをぜひ探してあげてほしいですね。

コロナ禍で増えた「学校に行かない」という選択の先

ーーコロナ禍では、不登校の子どもがぐっと増えています。

私の感覚ですが、コロナ禍以降、学校に行かないという選択肢が以前よりライトになっているように感じます。「感染が怖いから行かない」というお子さんがとても増えました。それが一概によくないこととは言えませんし、場合によっては必要な判断だとも思います。

しかし、不登校となり勉強に追いつくのが困難になったり、出席日数が足りないことを理由に進路の選択肢を狭めてしまう子が現れているのも事実です。

ーー選択肢の範囲を狭めてしまう、というと?

例えばですが、最近通信制高校が乱立しています。コロナ禍ということもあり、オンラインで授業を受けられるという形式が好評なようです。通信制高校は一部をのぞいてほぼ試験がなく、誰でも入れるため「不登校で出席日数が足りず、内申点に不安があるから通信にしよう」と安易に通信制高校への進学を考える子どもや保護者がすごく増えているんですよね。

ーーたしかに、リモート授業が当たり前になったからこそ、親の視点からすると「リモートでも学校の勉強を受けてくれるのはうれしい」と思う気がします。

もちろん、家から出るのが難しいなど、本当に通信制高校が必要な方ももちろんいます。しかし、オンライン授業やオンデマンドによる配信授業で成績が上がったり知識がしっかりつくという子は稀です。

私の塾にも「子どもが通信制高校のオンライン指導で学んでいるが、成績が全く上がらない」という相談が増えています。実際に大学の進学率は10%程度しかありません(公立の通信制高校の場合)が、子どもの多くは通信制高校から大学へ行ける生徒はごく少数であるという現実を知らないのです。

「◯◯大学に行きたい」などの明確な目標を持って勉強をしている子でないと、オンライン授業で効果を実感するのはかなり難しいでしょう。そういった事実を知らないと、オンラインで通える通信制高校は子どもにも親にも魅力的に映ってしまうんですよね。ここは最も注意すべき点です。

ーーコロナ禍で教育業界でもオンラインやリモートが広がり、その良さばかりを見ていた気がします。

実際、そういう方は多いです。不登校の子どもに「無理しなくていいんだよ」というのは簡単ですが、その前にもっといい選択肢がないか一緒に考えてあげてほしいです。そういった思いを込めて、自著『不登校からの進学受験ガイド』では、不登校の子どもに中学受験や高卒認定試験を勧める理由などをまとめています。

『不登校からの進学受験ガイド』(ユサブル) 1760円

目の前にいる人は、子どもの将来を一緒に考えてくれている?

ーー不登校の子どもの勉強や進路選択をサポートする上で、保護者が気をつけたいポイントはありますか?

ひとつは「相談する相手が子どもの将来まで考えてくれているかを見極める」ことですね。先日、高校受験を控えた子どもとその保護者が、私の塾に進路相談に来られました。その子は年間で数週間程度学校を休んでいましたが、偏差値は約55と、学力は決して低くはありませんでした。そんな子が、出席日数を理由に学校の教師から通信制高校を勧められていたんです。

年間でほんの十数日休んだだけで、受験が必要ない通信制高校を勧められたということに、正直かなり驚きました。私は思わず「まずは受験に挑戦した方がいい。通信は受験に失敗したら、もしくは合格した学校が合わなければいつでも入れる。今ではないよ」とアドバイスしました。

ーーその親子のように、学校の先生に進められたら「そっちに行こうかな」と思ってしまいそうです。

そうですよね。私は、このケースから、学校の先生は必ずしも子ども一人一人の将来を考えてくれているわけではないのだなと思いました。受験をさせて失敗してしまったら、それこそ教師の責任と言われてしまう可能性がありますから、「目先の受験をどう失敗させないか」ということに重きおいている場合があるのです。

学校の先生に、一般企業への就職活動や勤務経験のある人はほぼいないと思います。だからリスクを取らない選択肢を与えるような進路指導をするのではないかと思います。しかし、親子はそれを知らずに先生の言うことが最善だと捉えてしまいます。その親子もまさに「先生が勧めてくれたし、通信もいろんなことを学べそうで悪くない」というふうに考えていました。

「本当にいい選択肢」を選ぶ大事な要素とは

ーーいろいろな状況の子どもに合わせた選択肢が増える一方で、それが本当に子どものための選択になっているかを見極めることが重要なのですね。

そうですね。それがふたつめの留意点「安易に所属する場所を決めないこと」です。出席日数が足りなかったり、内申点が低くても、選択肢はたくさんあります。また、「学校に行かなくてもいい」ことを選択する以外に、「この学校なら行きたい」というところに自ら挑戦する道があることも忘れないでほしいですね。

選択肢は増えていますが、「よい選択肢」が増えているわけではないという事実を、親子で知ることが重要です。不登校の子どもに「無理をしない選択」「試験がない選択」をさせることは簡単です。だからこそ「簡単に選べる選択肢が本当によい選択なのか?」「この選択によって、子どもの未来によりよい選択肢が増えるのか?」ということを、無理のない範囲でいったん立ち止まって考えてみてほしいのです。

ーー大学名が見られることはみんな意識しますが、高校まではそこまで関係ないのではと思っていました。

私の塾に相談に来られる方でも、そう思われている方が多いです。しかし、面接という情報が少ない場では、高校までの学歴も、大きな判断要素になります。将来、自分の生き方の可能性を広げるという意味でも、ただ耳障りがいいだけの選択をしないでほしいなと思います。

<参考資料>
PR TIMES(株式会社ココロミル)
文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」

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