不登校の悩みの相談先はどこ?6つの支援先と相談するメリット
不登校の相談や支援は、学校以外にもさまざまな場所で行われています。今回は不登校のカウンセリングが受けられる相談窓口や支援先について、それぞれの特徴を不登校支援団体代表の五十嵐麻弥子さんが解説します。
「このままずっと学校に行かなくなったらどうしよう…」とお子さんの不登校に不安を感じる方は参考にしてください。
目次
不登校は珍しくない!受け皿はたくさんある
子どもが不登校になったとき、まず思い浮かべて欲しいのは、現在の日本の不登校児童・生徒の多さです。
「学校へ行くのは当たり前」という先入観が私たち親世代には少なからずあるのではないでしょうか。 しかし、不登校は年々増え続けており、文科省の資料によると令和4年度の時点で中学生の約16人にひとりが不登校という状況になっています。
しかも、2020年(令和2年)度以降はコロナ禍の影響もあり、さらに多くの子どもたちが不登校になりつつあるといわれています。つまり、不登校は社会の中で“特別なもの”ではなくなりつつあるのです。
とはいえ、いざ子どもが学校へ行かなくなり、当たり前と思っていた日常が急に当たり前でなくなると、どんな保護者でもうろたえてしまうものです。
しかし、これまで数多くの不登校のケースを見てきましたが、いくら子どもをなだめすかしたり、叱ったり、泣き落としたり、無理やりひっぱったりしても、子どもは学校へ行けるようになりません。
むしろ、このような行動を取るほど、保護者も子どもも不安が高まり、どうしていいかわからなくなってしまうでしょう。
そんなとき、不登校への不安を解消して前に進むための方法のひとつとして、第三者への相談が挙げられます。不登校の親子の受け皿にはさまざまな支援先や相談窓口があるので、本人や保護者の希望や状況にあわせて選ぶことが大切です。
不登校について相談するメリット
そもそも、不登校について第三者に相談することにはどのようなメリットがあるのでしょうか。相談することで、親と子どもそれぞれに以下のような効果が期待できます。
第三者に不登校の相談をするメリット
- 不登校を乗り越える方法や考え方を知ることができる
- 子どもが、学校以外にも自分の居場所があることがわかる
- 不登校への不安を軽減し、希望を感じられる
一般的に子どもの生きている世界は非常に限られており、学校へ行けないというだけですべての道が断たれたと考え、絶望してしまいがちです。また、自分の居場所がどこにもないことに、焦りや強い不安を感じるものです。しかし、第三者に相談することで、さまざまな方法や考え方があること、学校以外にも自分の居場所があることがわかります。
保護者も同様で、一人で悩んでいると見えにくくなることが、他者からの指摘で気づくことがあります。また、無理だと思っていたことが、相談してみたらあっさり受け入れてもらえることもあるでしょう。
親子ともども、不登校への不安を軽減し決して絶望することはないと、未来へ希望を感じることができるようになるはずです。
【相談先①】学校
子どもが不登校になった場合にまず相談先の候補になるのは、子どもが在籍している学校です。不登校の相談先として、学校には以下のような特徴があります。
学校のメリット
- 別室登校などの対応について相談できる
- 心理の専門職であるスクールカウンセラーが相談に乗ってくれる
学校のデメリット
- スクールカウンセラーは面談の予約が取りにくいことがある
学校へ相談する場合は、次のような対応や支援を相談してみてはいかがでしょう。
教室以外の居場所を相談してみる
「教室へ入るのは難しいけれども学校へは行きたい」「出席日数を減らしたくない」といった場合、保健室や図書室、コンピュータルーム、教育相談室などの空き教室にいさせてもらえないか学校に相談してみるのもよいでしょう。
このようなお願いは、担任教師や学年主任にするのもいいのですが、教室利用の権限は校長にある場合が多いので、直接校長に話をしてみるのもひとつの手です。
スクールカウンセラーによる心のケア
学級担任のほか、悩み事を相談したいときはスクールカウンセラーを活用します。直接学校に言いにくいことがあるときなども、スクールカウンセラーが間に入ってくれたりします。
スクールカウンセラーとは、学校で生徒や保護者、ときには教職員からの相談にも乗ってくれる心理学の専門職員です。不登校はもちろん、心の不調・友達関係や親子関係のトラブルなどに加え、近年では発達障害に関する相談に乗ってくれるスクールカウンセラーも増えてきました。
スクールカウンセラーへの相談は、直接申し込みをすることもできますし、担任教師を通してお願いすることもできます。
スクールカウンセラーは子ども本人だけでなく保護者も利用することができます。本人が嫌がった場合は保護者だけでも面談を受けてみましょう。保護者が子どもへの接し方を学ぶことで、保護者はもちろん子ども本人の不安感・孤独感も和らぐはずです。
ただし、スクールカウンセラーはスクールカウンセラーの出勤が1~2週間に1回というケースもあり、、なかなか面談の予約がとれないことも珍しくありません。
いったん学校を休んでしまうと罪悪感や恐怖感が募ってどうしても学校へ足が向かないこともあります。無理に学校へ行かせるのではなく、カウンセラーの力も借りながら本人の意思を受け止め、尊重していきましょう。
<関連記事:スクールカウンセラーについて詳しくはこちら>
【相談先②】教育支援センター・教育相談所・適応指導教室
別室登校やスクールカウンセラーの面談のために学校へいくのが難しいときは、行政の相談窓口を利用する方法があります。
行政の相談窓口のメリット
- カウンセリングなどが無料で受けられる
- 適応指導教室では学校以外の場で勉強などの指導が受けられる
行政の相談窓口のデメリット
- 定員に限りがあるなど、なかなか通えない場合がある
- 利用のための審査に時間がかかる
例えば、自治体の教育委員会が管轄する「教育支援センター」「教育相談所」といった名称の機関があり、不登校の相談を受け付けているだけでなく、「適応指導教室」という施設を設置しています。
適応指導教室とは?
適応指導教室は、子どもの情緒の安定や基礎学力の補充、生活習慣の安定などを目的として自治体が設置している施設です。こちらに通っていると、在籍校で「出席」とカウントしてくれるケースが多いといえます。
子どもが「どこかへ通ってみたい」「勉強したい」と言い出したときには、少人数で不登校の子どもを見てくれる適応指導教室を利用するとよいでしょう。
「適応指導教室」のカウンセリングや心理教育は、保護者と子ども別々の心理士のもと受けることになります。スクールカウンセラーと同様、子どもが参加できない場合は保護者だけでも受けられます。おおむね週1回、または2週間に1回のペースで1時間程度の面談が行われます。
ただし、すべての自治体に導入されていないこと、さらに、設置されている自治体でも定員があるため、なかなか通うことができないケースもあります。
また、利用するためには審査があって時間がかかるため、審査が通った時には子どもの気持ちが変わり「やっぱり行けない」となってしまうことも…。行政の柔軟な対応が求められています。
また、「教育支援センター」「教育相談所」「適応指導教室」など、名称や支援内容が自治体によって異なります。自治体のホームページから探していくよりも、検索エンジンで「〇〇市(区町村) 不登校支援」といったキーワードで検索した方が、より早く情報が見つかります。
【相談先③】民間のカウンセリングサービス
公的機関のほかにも子どもや保護者のカウンセリングを行ってくれる民間のサービスがあります。
民間のカウンセリングサービスのメリット
- 相性のよいカウンセラーを選べる
- 自宅からオンラインで相談できるサービスもある
民間のカウンセリングサービスのデメリット
- 費用がかかる
悩み事を抱えてナーバスになっているときは、特にカウンセラーとの相性が気になります。実際、スクールカウンセラーや行政の心理カウンセラーと相性が合わないこともあるものです。また、行政の施設が通いにくい場所にあるというケースもあるでしょう。
そのようなときは通いやすい民間のカウンセリングサービスも有効です。なかには、ビデオ通話やLINEなどのテキストメッセージなど、自宅からオンラインで相談が実施できるサービスもあります。
注意点として、公的機関のカウンセリングは無料ですが、民間のカウンセリングには費用がかかります。心理士の持っている資格や実績によって費用には差がありますが、30分、50分、90分など、時間単位で費用が発生するシステムが多く、おおむね都市部では50分1万円程度~、地方では6000円程度~かかるようです。
私の個人的な感想ですが、費用はかかるものの民間のカウンセリングは、公的機関よりも手厚い印象があります。
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五十嵐麻弥子さんへの相談ページを見てみる【相談先④】医療機関
不登校の原因が実は病気に由来する場合やストレスなどメンタル面で不安がある場合は専門家である医師の力を借りることも考えましょう。
医療機関のメリット
- 心身の不調に対して医学的なアプローチができる
医療機関のデメリット
- 大きい病院は専門性が高い反面、治療内容と子どもの症状とのミスマッチや予約がなかなか取れない場合がある
精神的な不安、心配は心療内科や精神科へ
一方で、明らかに元気がなく、精神的に不安定な様子が見られたときは、心療内科や精神科にかかることも考えましょう。
- 家族と口を利かない
- ベッドや布団から起き上がれない
- 自分の部屋から出てこない
- ほとんど食事をとらない
- お風呂も入らない
- 歯も磨かない
以上のような状態が長引くときは、注意して子どもの様子をみましょう。
基本的に精神症状が強い時は精神科、頭痛や腹痛などの身体症状が強い時は心療内科にかかります。
精神科と聞くと敷居が高く感じるかもしれませんが、最近は子ども向けの児童精神科クリニックも街中で多く見られるようになりました。どこにかかったらわからないときは、まずかかりつけ医や子どものことをよく知る小児科医に相談して、専門医を紹介してもらいましょう。
大学病院、総合病院にかかるときの注意点
もし、大学病院や総合病院を選ぶ場合は、児童精神科、思春期心理科、不登校外来、思春期外来といった名称があるところを探します。
ただし、大きい病院は専門性が高い反面、治療内容と子どもの症状とのミスマッチや予約がなかなか取れないなどの可能性もあるため注意が必要です。
事前に電話をかけて「子どもの状況を話して診察してもらえるか」「診察はいつごろになるか」を確認した方が確実です。
さらに、大病院にかかる時は紹介状が必要なので、いったんかかりつけ医院や小児科で相談し、紹介状を書いてもらう必要があります。教育センターなどでカウンセリングを受けている場合は、心理士に紹介状を書いてもらうこともできます。
起きられない原因は起立性調節障害の場合も
思春期はホルモンバランスが急激に変化するため、自律神経系の症状が現れやすい時期です。症状が特に強く、頭痛・腹痛・吐き気・嘔吐・めまいなどが生じる「起立性調節障害」という病気があります。不登校の中には、この症状に苦しんでいる子がたくさんいます。
<関連記事:起立性調節障害について詳しくはこちら>
起立性調節障害の子は、体調不良で朝なかなか起きることができず、結果として学校へ行けなくなります。夕方になると体調が落ち着く場合が多いため、サボっていると勘違いされやすいのですが、朝は本当に体調が悪く起き上がることができません。そのような症状が見られたら、一度、小児科へ相談しましょう。
すぐ回復するケースは少ないので、焦らず子どもの体調を見守ってほしいと思います。遅い始業時間を選べる高校もあるので進学を心配し過ぎる必要はありません。
【相談先⑤】フリースクール、塾など
不登校が長引いてきたら、子どもの居場所や勉強面の支援も検討する必要があります。
フリースクールや塾のメリット
- 学校以外で勉強をサポートしてもらえる
- 子どもにとっての居場所ができる
フリースクールや塾のデメリット
- 費用がかかる
例えば、勉強の遅れが気になるときは、フリースクール、不登校児対応の塾・家庭教師のサービスがあります。
フリースクールは施設によって規模が違うだけでなく、学習に対する姿勢もさまざまです。学校のように学習カリキュラムを組んでいる施設、子どもの自主性に任せる施設、勉強する元気が出てくるまでの居場所を提供してくれる施設など、わが子の状況に合わせて探してみてください。
どのフリースクールも、スタッフは不登校の子どもたちのことをとてもよく理解しているので、大変頼りになります。
また、塾の場合は、不登校児専門とうたっているものもあれば、通常の塾内に不登校児のための時間を設けているところもあります。移動が気になるのであれば、オンライン授業を行っている塾や、不登校児への対応を研修で身に着けさせてから講師を派遣するという家庭教師センターを選択する方法もあります。
<関連記事:不登校の塾選びについて詳しくはこちら>
【相談先⑥】不登校の親の会
私が主催しているような「不登校の親の会」も、不登校の家庭を支援する民間団体の一つです。
親の会のメリット
- 不登校の経験者の話や地域ならではの情報を聞ける
- 「辛いのは自分だけではない」と気持ちが安定する
親の会のデメリット
- 会の雰囲気や関係者との相性が合わない場合がある
子どもが不登校になると、保護者は孤独を感じやすくなります。そのようなとき、親の会に参加すると、自分たち親子だけが特別な経験をしているわけでないことがわかります。また、子どもへの対応に悩んだとき、学校以外の学習支援の情報や進学先の情報を知りたいときなども、経験者の具体的な話を聞くことができます。
保護者同士が交流することは、情報交換ができるとともに、「苦しい思いをしているのは自分だけではない」と気持ちの安定を図るのにも役立ちます。
「子どもがゲームばかりしていてイライラするけどどうしたらいいのか」「毎日学校に休みの連絡を入れるのが苦痛だけどやめてはいけないのか」といった、不登校児の保護者なら誰もが経験するような日常の悩みを聞いてもらい、経験者の話を聞いて解決への糸口とすることができます。
また、地元の親の会に参加していると、その地域ならではの情報が手に入りやすいというメリットもあります。
多くの親の会は、不登校を経験した保護者が立ち上げているため、それぞれ実体験があり、不登校の支援機関の情報や周辺の進学先などについて、より現状に沿った情報を得ることができるのです。自分の子どもに合った支援先を見つけるのに、地域の親の会はとても役立ちます。
独自のwebサイトやブログを持っている団体も多いので「地名 フリースクール」「地名 不登校 親の会」などと入力して検索するとよいでしょう。主催者のプロフィールを確認して、信頼できそうなところを選んでください。
SNSにもいろいろありますが、基本的に実名で登録しているFacebookは、比較的安心感があるといえるでしょう。
また、学校からの配布物に「親の会」などのチラシが入っていることもありますし、市区町村の役所や教育センターなどに、支援機関のチラシが置いてあることもあります。自治体の広報誌は、不登校関連のイベントが掲載されていることもあるので要チェックです。
少し注意してみると、情報は意外と身近にあるものです。いつもより少しアンテナを張って、情報を手に入れましょう。
また、フリースクールや親の会は、学校への復帰を第一に考えるところもあれば、無理に学校へは戻らず子どもの感性を大切にすることを考えるなど、団体によって方針が異なります。
スクールや会の雰囲気、関係者との相性もケースバイケースです。参加してみて気持ちに負担が生じるような場合や何か違うと感じるときは、無理に継続する必要はありません。
子どもや自分に合った支援先を見つけることが大切
ここまで様々な支援を紹介してきましたが、カウンセリングやフリースクール、塾などの学習サービスなどは無償ではありません。金額もさまざまです。
しかし、残念ながら「不登校である」ということに対して行政から金銭的な支援は望めません。最初から高額なサービスを選んでしまうと続けていくのが大変になっていきます。「支払い続けられそうか」という点も支援を選ぶうえで重要なポイントです。
実際、子どもがいつ、どのように元気になっていくかということは、家庭や子どもの特性によって千差万別です。「対応は早い方がいい」「この団体を選べば大丈夫」といった正解があるわけではありません。焦らずに子どもや自分に合った支援機関を見つけていってくださいね。
この記事を書いた五十嵐麻弥子さんに相談してみませんか?
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「ミモザの花~子どもの不登校を考える会」代表/エディター・ライター。出版社勤務を経てフリーエディター・ライターに。教育、医療、健康、日本史を専門に執筆多数。二人の息子が不登校になったのをきっかけに、不登校支援団体「ミモザの花~子どもの不登校を考える会」を主催。不登校支援イベント、お話会、個別相談、執筆、行政への働きかけなどの活動を展開。趣味のギターではバンドや弾き語りのライブ活動を行っている。