学校で実施される「モアレ検査」とは。側弯症と診断されたらどうすればいい?
小・中学校で定期的に行われる健診の一つに、「モアレ検査」があります。側弯症の疑いがあるかどうかを調べる検査ですが、どのように行われるか知っていますか? そもそも側弯症とは何なのか、検査に引っかかったらどうすれば良いのか…。京都下鴨病院・烏丸御池整形外科クリニック理事の森 大祐先生に教えてもらいました。
目次
モアレ検査ってどんな検査? 何が分かるの?
モアレ検査とは、脊柱側弯症(以下、側弯症)の疑いがあるかどうかを調べる検査のこと。
「3Dバックスキャナー®」(一般医療機器)により、体の背面や高さ、形状をLED光で三次元測定し、そのデータをもとにモアレ縞を生成することで判断します。「モアレ縞」は地図の等高線のように描出された縞状の線で、背骨に沿って線が左右対称に広がっていれば陰性、左右非対称であれば陽性(側弯症の疑いがある)となります。
側弯症は早期に発見し、適切な治療と経過観察を行うことで重症化することを防ぐことができるため、児童・生徒の健康診断として検診の実施が義務づけられています。また、2016年には「運動器学校検診」が導入され、家庭での評価と学校医による視触診が行われています。
しかしながら、その検査方法に地域差があるのも事実。3DバックスキャナーTMの導入が低い地域では、「立位検査」や「前屈検査」という機器を用いない簡易的な検査しか行うことができません。モアレ検査に比べると精度も低くなるため、正確な陽性率を把握できないという点は、現在問題視されていることでもあります。
ちなみに、東京都の場合は「公益財団法人 東京都予防医学協会」が都内の公立小中学校および一部の私立学校について、脊柱側弯症専門医と連携し、年間約6万件の一次検査を実施しています。
モアレ検査に引っかかったけど…そもそも側弯症ってなに?
では、そもそも側弯症とはどのような病気なのでしょうか。
脊柱側弯症とは…
脊柱(背骨)が側方へ曲がり、ねじれも加わる病気のこと。「Cobb角(コブ角)」と呼ばれる上下で最も傾いている背骨同士の角度で弯曲の大きさをチェックし、Cobb角が20°以上になると側弯症と診断されます。
小・中学生の側弯で最も多いのが「特発性側弯」
側弯症と一口に言っても、脊柱の曲がり方によって3つのパターンに分けられます。もととなる病気がある場合や生まれつき背骨に奇形がある場合、一時的に曲がってしまった場合もありますが、一番多いのが「特発性側弯症」。
側弯症には3つの種類がある
- 機能性側弯…運動習慣や姿勢、足の長さの違いなどにより脊柱のねじれが原因の弯曲。一時的な側弯状態で、椎間板ヘルニアなどによる原因になることも。
- 特発性側弯症…側弯症の80~85%がこのタイプ。原因は解明されていないが、生活習慣や姿勢などとの因果関係はない。
- 先天性側弯症…神経や筋障害の疾患を抱え、出生時から側弯が認められる。
機能性側弯に関しては、左右の筋バランスが整っていないことが原因であるため、意識をすれば治せる可能性があります。骨そのものに曲がりが生じている先天性側弯と特発性側弯が、本当の意味での側弯症。
特発性側弯の原因は明らかになっていないものの、小学校高学年から中学生くらいの思春期に多く発症するという特徴があります。また、日本では男子よりも女子の発症率が高く、女性ホルモンとの因果関係を指摘する医師もいますが、同じく正確な原因は解明されていません。
側弯症と診断される子どもの多くは軽度であり、重度まで進行する子は1%に満たないほどわずか。症状として挙げられるのは、背部痛や腰痛です。Cobb角が40~50°という重度になると、呼吸器障害が出現することもあります。しかし、多くの場合は無症状で生活に支障がありません。
特発性側弯症の好発が思春期であることから、モアレ検査はこの時期の年齢の子どもを対象に実施されることが多いのです。
現代人は、大人も子どももスマートフォンを持つ時代。タブレットやPC、ゲームなどをする時間も多いですよね。こうした生活習慣の変化により、子どもの姿勢の悪さは、10年前より増加傾向にあります。
それはつまり、子どもの機能性側弯が増える可能性があるということ。側弯症のうち「機能性側弯症」に関しては、姿勢や生活習慣との因果関係が強くあります。首や腰が痛いと訴える10代・20代が増えていることは、整形外科医として危惧するところです。
モアレ検査で“要再検査”。治療と経過観察の正しい選択とは
わが子が学校の検診で“要再検査”と診断された場合は、二次検査として整形外科を受診するのが一般的。「日本側弯症学会」の公式サイトでは受診できる医療機関を紹介しています。どの病院を受診すべきか迷う場合は、参考にしてみてください。
整形外科では、視診・触診・レントゲン検査などが行われます。視触診で、両肩の高さや前屈姿勢での左右の肩甲骨の突出具合などを確認。Cobb角で曲がり具合を正確に把握するため、レントゲン撮影での検査をします。
病院で検査となると、親も子も不安になるものですが、検査は1分程度。病院の待ち時間を除けば30分程度あれば終了します。大げさな検査ではないので安心してくださいね。
二次検査は絶対に受けることを推奨します。一次検査で陽性の疑いがあると診断されても、二次検査で陰性と診断される場合は多くあります。また、先述したように側弯が進行していても痛みなどの症状が出ることはめったにありません。そのため、「特に異常は感じないし、大丈夫だろう」と勝手に判断する人も少なくありません。
しかし、側弯症は早期発見が何よりも重要。姿勢を正すことで、側弯症の進行を防ぐことはできません。マッサージやストレッチもあまり効果の期待できるものではありません。必要以上に心配する必要はありませんが、誤った自己判断で病気を進行させることもあるので、医師の診断に従って正しい知識を得ることも大切なのです。
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子育て・教育のお悩み相談室「ソクたま相談室」を見てみるCobb角20°以下は軽度の側弯症で“経過観察”
特発性側弯症と診断される子どもの多くは、曲がりの角度が20度以下の軽度であることが多いものです。この段階では、早急な治療は必要ありません。
幼児期や小学校低学年くらいの子であれば自然治癒、矯正力で真っすぐになる可能性もあります。思春期や成長が著しい段階では自然治癒は望めないため、経過観察をしっかり行うことが何よりも大切になります。病院や医師によって異なりますが、4ヵ月から半年に一度診するのが一般的です。
Cobb角20°以上は治療が必要。40°以上は手術が必要になることも
20°以上の曲がりがある場合は、治療が必要になります。現時点で痛みなどの支障がなくても、進行することで息切れ、高血圧、呼吸器障害など直接体に影響を及ぼすような障害を引き起こすことがあるからです。また、40°以上になると進行が止まらなくなるため注意が必要です。
側弯症の治療には、装具療法が推奨されています。歯の矯正と同じように、側弯症が発見されるのは成長期。進行を防止するため、骨成熟期の間は常時装着が必要になります。短時間で骨が変形することはないので、就寝時や体育、部活動の間は外してOK。その後、成長が止まり、側湾の進行も見られなければ徐々に装着時間を減らし、治療は終了します。
側弯症と診断されたことを過度に心配し、軽度であっても治療を希望する人がいます。しかし、装具はあくまで進行を予防するためのものであり、曲がりをゼロにするものではないということも覚えておきましょう。
Cobb角25°以上の子は心理的負担に注意が必要
側弯症は、子どもが感じる見た目への心的コンプレックスにも気を付けなければなりません。
曲がりが大きいと、水着や背中が見えるような洋服を着ると肩甲骨が出っ張っているように見えることがあります。おしゃれを楽しみたい年頃であり、他の子との違いを気にする年頃でもあるため、子ども自身が感じる心理的負担が大きい場合は、治療の必要がない段階で会っても専門医に相談することをおすすめします。
側弯症は早期発見が肝心。成長が止まれば進行しない!
先述したように側弯症には3つのタイプがあり、小中学生に多いのが「特発性側弯症」です。そして、多くは日常生活や体への支障がない軽度の場合が多いのです。
軽度の側弯のほとんどは、成長期の終了とともに進行の可能性がなくなり、将来的に何の障害も残しません。子どもに病気だという意識をもたせることなく、伸び伸びとした生活をさせながら経過を見守りましょう。
もちろん、初期段階で正しい判断を行わないと側弯を進行させることはあります。進行すれば、将来的に肩こり・頸部通・腰痛などの原因にもなりうるので、成長期が終了するまでは、定期的に受診することが大切です。
自宅でできる! 側弯症のチェック方法
家庭でも、前屈検査で側弯かどうかを確認することはできます。上半身裸になり、前屈した子どもの後ろに立って肩周辺や背中、腰部の順に左右の高さに差がないかをチェックしましょう。
思春期で前屈検査に抵抗がある子の場合は、コミュニケーションの中でさりげなくチェックしてもOK。「今日も元気に頑張って!」と、さりげなく肩甲骨に手を当てて骨を触ってみてください。両肩や両肩甲骨を触って高さが違う、背中をさすって背骨が真っすぐではないと思ったら、整形外科などの専門医に相談してみてください。
特発性側弯症には、生活習慣や姿勢との因果関係は認められません。けれども、極端に運動する機会が減るのはNG。基礎体力や柔軟性が衰え、早いと20代から、代謝が悪くなる30代以降になると肩こりや腰痛の原因になることがあるからです。側弯症による症状につなげないためにも、運動習慣も意識しましょう。
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岩手県出身。大学卒業後、ゲーム会社で広報宣伝職を経験した後、ママ向け雑誌やブライダル誌を手掛ける編プロに所属。現在はフリーランスのエディター&ライターとして活動中。一人息子の中学受験で気持ちに全く余裕がない中、唯一の癒しとなっているのが愛犬と過ごす時間です。