子どものケガや事故を防ぐ「洋服選び」のポイントは? 小学校の卒業袴の注意点も
小学生の多くは、平日休日問わず、私服で過ごしています。なかには、おしゃれな洋服を着て自分なりのファッションを楽しんでいるという子どももいるのではないでしょうか。最近は、店舗だけではなく、ネットショップなどで安くておしゃれな海外の子ども服を購入できるようになりました。
一方で、洋服の形状や装飾で、大きな事故が発生したというケースも少なくありません。転んで怪我をしてしまったり、場合によっては首が絞まってしまったりするなど、命に関わる事故もあるようです。
そこで今回は、JISで定められている子ども服の安全基準と、子どもも大人も安心して着せられる洋服のポイントを紹介します。
子ども服の安全基準について
子ども服で「ヒヤリ」としたことがある親の割合
平成18年に東京都が行った調査で、「子ども服について、ヒヤリとした経験があるか」という質問に対して、77%もの保護者が「ある」と回答しています。そして、その中の6人に1人は、実際に子どもがケガをしてしまったのだそう。
具体的には、タイツや靴下ですべってしまった、大きな袖口がひっかかったなど様々ですが、やはり多いのは紐に関連する「ヒヤリ」。ドアにはさまったり、自転車に巻き込まれたり、事故の形は多岐にわたります。
海外では衣服の紐がスクールバスに挟まれたまま走行してしまい、子どもが亡くなってしまったという、考えただけでもゾッとするような事故が発生しています。
こういったことが起こらないよう、まずは「どんな服にそのような危険があるのか」「何を子ども服を選ぶ基準にしたらよいのか」を知るということが大事ですね。
JISで定められている子ども服の安全基準とは
上記のような危険な状況を一つでも減らすために、平成27年12月にJIS規格として制定されたのが「JIS L 4129」。
この規格に準拠した服は一定の安全性が保たれているということになります。「よいふく」の語呂合わせになっているので、覚えやすいですね。
しかし、JIS規格に法的な強制力はなく、あくまで国内の任意の規格です。そのため、海外ブランドの洋服や、国内でも一部のメーカーには準拠していない企業もあります。購入する際に不安な場合は、店員に確認をするといいかもしれません。
子ども服に定められた具体的なルール
JIS規格で定められているものは紐関連を中心に多岐にわたります。
また、様々な理由でJIS規格では規定を設けられなかったものの、企業努力として事故防止の工夫が施されているものもあります。
その一部を見てみましょう。
紐に関するルール
JIS規格のほとんどが紐、また紐状の要素に関する事項です。
具体的には、「ウエストを絞る紐は後部に垂れ下がるようにはしない(前でも長さ規定あり)」「ホルターネックやパーカーのフードの紐など、頭部近くの紐に自由幅(垂れ下がる部分)があってはいけない」「ズボンやスカートなどにつけるかざり紐は、縫い付けるなど垂れ下がらない形にする」「立体感のある装飾をつけない」などといった規定があります。
ファスナーやトグル掛けに関するルール
「ファスナーでケガをする可能性ってある?」と疑問に思われるかもしれませんが、転んだときに突起部分でケガをするおそれや、ドアノブなどに引っかかってしまう可能性があるため、「装飾のあるファスナーの引き手は、裾より10mm以上垂れ下がってはいけない」というルールがあります。
また冬物コートとしてダッフルコートを着るお子さんも多いのではないでしょうか。ダッフルコートのトグルを掛ける部分にも、自由幅がないようにするなどのルールがあります。
フードに関するルール
季節や性別を問わず、多くの服についているフードにも事故の危険性はあります。ドアノブに引っかかったり、友だちとじゃれあっているなかでつい引っ張ってしまい、窒息させてしまうなど、生死に関わる事故が起こる危険性をはらんでいます。
しかし、それと同時に、雨よけや日差しよけなど、実用的なメリットも多いのもフードの特徴です。そのためこの規格ではフードに規定を設けることは見送られました。
だからといって、何も対策がされていないわけではありません。
一部の企業では、「フードを首周りのポケットにしまえる」ようにしたり、「首の後ろでフードをリボンのようにまとめることができる」ようにするなど、事故防止に向けた努力がされています。
事故防止に「絶対」はない
以上のような規定や企業努力により、より安全な子ども服になるよう工夫、改善されています。しかし、だからといってあらゆる事故を完全に防げるわけではありません。
例えば、「子どもの成長を見越してあらかじめ大きいサイズの服を着せていたところ、裾を踏んで転んでしまった」「子どもの服には問題がなかったが、大人の服の紐が自転車に引っ掛かり、子どもと一緒に転倒した」など…。
ちょっとした転倒などはよく起こることですが、その要因を紐解くと、洋服の安全性が十分ではなかったという場合も少なくはないのです。
「JIS規格を満たしているから大丈夫」ではなく、最後は保護者のチェックで事故を未然に防げるようにしたいですね。
お古の子ども服をあげる場合、もらう場合はどうする?
親戚やきょうだい間で、着なくなった服をあげたりもらったりすることがあるかと思います。
その中にはJIS規格が制定される前のものや、そもそもJIS規格に準拠しているかわからないものが多く含まれているかと思います。
そのような場合は、子どもに着せる前に前述の項目などをチェックし、心配な装飾や調節ひもがあれば、縫い付ける、短く調節するなどの手を加えるとより安全に着せることができます。
特別な日に着る服について
着物やスポーツをするときの服に決まりはある?
七五三などの伝統儀式で着る服(着物など)や、競泳水着などの専門のスポーツできる衣料は、JIS規格の対象外とされています。
なぜかというと、そのような衣類を着る場合は原則的に保護者や指導者の監督下であることが多いためです。
何か危険な事故が起こりそう、または起こった場合は監督者が適切に対応して、未然に事故を防がなければなりません。
卒業式などで着る袴の注意点と対策
近年、小学校の卒業式で着用が増えている袴も、上記と同じく対象外の服となっています。
卒業式の袴は保護者や先生が近くにいるときに着るものですが、最近では袴を着て卒業式に出ることを控えるようにアナウンスしている学校も増えています。
それは一体なぜでしょうか。
理由は「華美になりすぎないように」「格差が生まれないように」など様々なことが挙げられていますが、
- お手洗いが一人でしにくい
- 慣れない袴の締め付けで体調を崩す
- 裾を踏んで転んでしまう可能性がある
- 着崩れたときに対応できない
といった理由もあるようです。
確かに、お手洗いに先生が一緒についていってあげるわけにはいきませんし、保護者は基本的に後ろでみていることが多いため、式中に様子をずっと見てあげるのは難しいですよね。
一生に一度の特別な日に特別な服を着せたいという場合は、着物や浴衣など、事前に季節ごとのイベントで着る機会を設けて慣れさせたり、自分で着崩れを直す方法などを覚えさせておくとよいでしょう。
また、着付けをするときに、苦しくないかしっかりと確認し、無理をさせないことも重要です。
衣食住という言葉があるように、生きていく上で切り離すことの出来ない衣類。
おしゃれ、かわいい、流行っているという観点ももちろん重要ですが、やはり子どもの安全を確保するための保護者としてのチェックポイントも持ちたいですね。
子どもは大人が想像もしないような動きをすることが多いもの。「多分大丈夫」という気持ちで着せずに、「安全面」という視点から、今ある子ども服を見直してみても良いかもしれません。
<参考文献>
・経済産業省「子ども服の安全基準、知っていますか?(JIS L4129)」
・JISとは(日本規格協会グループ)
・袴美人.com「小学校の卒業式で袴を着る場合の注意点(晴れ着の丸昌横浜店)」
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