「勉強しなさい」と言うより効果的。「キャリア教育」の“ねらい”やメリット、効果とは?
2020年4月から全国の小学校・中学校・高校で本格的に導入された「キャリア教育」。新しく「キャリア・パスポート」の取り組みも始まりました。
しかし「キャリア教育」と聞いてピンとこない方もいるのではないでしょうか? そこで今回は、キャリア教育とは何か、キャリア教育のメリットや効果はどんなものなのか、を調べてみました。
目次
キャリア教育ってなに?
私たち親世代が子どものころにはなかった「キャリア教育」。この言葉を今回、初めて耳にしたという方もいるかもしれません。
株式会社ミライメイクが2021年11月の調査で、6歳~9歳までの子どもを持つ親に「2020年度から、小学校でキャリア教育が本格導入されていることを知っていますか?」と質問したところ、7割以上の方が「いいえ(73.8%)」と回答しました。
子どもたちの将来を見据えた指導方針にもかかわらず、家庭まで浸透していないのが現状のようです。
「キャリア教育」とは、いったい何なのでしょう?
文部科学省は、キャリア教育の定義を「一人一人の社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して、キャリア発達を促す教育」としています。
また、ここで言う“キャリア”とは、学歴や資格、職業などではなく、「人が生涯の中で様々な役割を果たす過程で、自らの役割の価値や自分と役割との関係を見出していく連なりや積み重ね」としています。
つまり「キャリア教育」とは、子どもたちが将来、社会の中で自分の役割を自分で見つけ、自分らしく生きるために必要な能力を育てるための指導のようです。
文部科学省は、この“自分らしく生きるために必要な能力”についても、具体的に4つ挙げています。
自分らしく生きるために必要な「4つの能力」とは?
1.人間関係形成・社会形成能力
さまざまな人の考えや立場を理解し,相手の意見を聞きながら、自分の考えを正確に伝えることができる力。また、自分の置かれている状況を受け止め、与えられた役割を果たしつつ、まわりと協力・協働して社会に参画し、これからの社会を積極的に形成することができる力。
2.自己理解・自己管理能力
自分が「できること」「したいこと」「意義を感じること」について、今後の自分自身の可能性を含めた肯定的な理解に基づき、社会との相互関係を保ちながら主体的に行動する力。自らの思考や感情を律し、成長のために進んで学ぼうとする力。
3.課題対応能力
さまざまな課題を発見・分析し、適切な計画を立てること。また、その課題を処理し、解決することができる力。
4.キャリアプランニング能力
「働くこと」の意義を理解し、自分が果たすべき立場や役割との関連を踏まえて、「働くこと」を位置づける力。多様な生き方に関するさまざまな情報を適切に取捨選択・活用しながら、主体的に判断してキャリアを形成していく力。
発達段階別「キャリア教育の目的」
キャリア教育は、子どもの発達段階に合わせて、小学校・中学校・高校と目指す内容が異なります。
小学校では、さまざまな職業があることに気づき、それぞれが社会でどのような役割を果たしているのかを知ることが目的とされています。
中学校では、職場体験、課外活動、委員会活動などを通して、働くことについて実践的に学び、学習と実社会を結び付けて考えるような取り組みが行われます。
そして高校では、自分が将来どのような社会人になるのか、どのように生きていきたいのかを真剣に考え、その後の就職あるいは資格の取得、高校や大学への進学を通じて自らの進路を選び取っていくことが目標になっています。
キャリア教育が求められている理由は?
では、なぜ今、小中高校の全課程で「キャリア教育」が導入されたのでしょうか?
その背景には、コンピューターやインターネットなどの情報技術が発達し、さまざまな仕事がIT化したことがあります。昔のように子どもたちが日常的に仕事をする大人の姿を目にする機会が少なくなったことも、要因のひとつです。
パソコンや携帯ひとつで買い物や仕事ができる時代。お店に行けばセルフレジがあり、仕事の会議は対面ではなくZoomで行われる。人と人とが関わる機会も減っています。
AIの進化により、今後も生活や仕事が大きく変化していくことが予想される世の中において、野村総合研究所とオックスフォード大学のマイケル・オズボーン教授が行った共同研究は、「2030年には日本人の仕事の49%が人工知能やロボットなどで代替可能になる」と伝えています。
また、人間関係をうまく築くことができない、自分で意思決定できない、自己肯定感を持つことができない、将来に希望を持つことができない子どもが増えていることが問題視されていることをご存じの方もいるでしょう。
新卒で入った企業を早期退職したり、定職に就かずにフリーターとして職を転々としたり、ニートや引きこもりになったりと、社会に不安を抱えた若者たちが仕事に就くことができず、「若年無業者」が増加傾向にあることも社会問題になっています。
想像もつかないほど目まぐるしく変化していくこの世の中を、子どもたちは生きていかなければなりません。そのためには、自分で今何をすべきかを考え、未来を切り拓く力が不可欠です。
変化を恐れずに何事にも前向きに対応していく力を育てることが、ますます必要になってくるでしょう。だからこそ今、「キャリア教育」がスタートしたのです。
親世代とは異なる常識・価値観の時代に
わが子が将来、仕事に困らないように育てたい。
自立し、不自由のない生活を送ってほしい。
子どもを持つ親の誰もが、わが子が将来自立して、やりがいのある仕事をし、安定した生活を送ってほしいと願っていることでしょう。
“良い”と言われる大学を出れば、“良い”と言われる企業に勤めることができ、右肩上がりの安定した収入を得ることができる時代もありました。しかし、これからの時代に、そのような保証はどこにもありません。
実際に、「これからの時代を生きる子どもたちには、親世代とは異なる教育が必要だ」と感じている方も多いようです。
株式会社ミライメイクが実施したアンケート調査によると、「これからの世代を担う子どもたちには、自分たちの時代(親世代)とは異なる形の教育が必要だと感じますか?」という質問に、『とてもそう思う(38.6%)』『ややそう思う(51.9%)』と回答した方が9割という結果となりました。
また、『とてもそう思う』『ややそう思う』と回答した方に、「自分たちの時代(親世代)とは異なる形の教育が必要だと思う理由を教えてください(複数回答可)」と質問したところ、『昔とは違う常識、価値観に変化してきている(67.4%)』『昔とは違う知識、スキルが求められる時代になっている(59.6%)』『人生の選択肢に多様性のある時代になっている(45.2%)』の順に多くなりました。
7割近くの方が、世の中が「昔とは違う常識や価値観に変化してきている」と感じているようです。また、知識・スキルといった面でも、昔とは求められる基準が変わってきていると思っている方が半数以上いるようです。
それでは、自分たちの時代とは異なる形の教育、つまり「キャリア教育」は、学校任せで良いのでしょうか。
実は、家庭でキャリア教育を行うことの効用もたくさんあるようです。また現在、親子で参加できるキャリア教育のオンラインスクールも誕生しています。
2022年4月に開校するキャリア探究学習「Dream Driven(ドリームドリブン)」の公式サイトと総合人材情報サービス・アイデムが行った調査から、キャリア教育を行うことで得られるメリットを紹介します。
キャリア教育のメリット
学習のモチベーションが高まる
「『なりたい職業がある』と答えた子の方が、毎日の勉強時間が30分増える」という調査結果があります。それは、「目標が明確になっているから」です。
目標を明確にし、そこから逆算して、「今、何を、どれだけ頑張ればよいのか」が分かると、子どもたちのやる気に火がつきます。
キャリア探求学習に「あと伸び力」の効果があると言われるのは、なりたい職業があると、主体的に勉強する時間が増えるからです。また、親子で将来について話す時間が多いほど、子どもの学習意欲は高まるようですよ。
早期に志望業界を意識できるようになる
株式会社アイデムが行った、「子どもの頃のキャリア教育と就職活動に関する調査」では、「子どもの頃に家庭内でキャリア教育を受けていると、より“今の仕事が充実している”と感じる傾向があり、大人の働いている姿を見る機会があった子どもは、早期に志望業界を意識している」ことが分かっています。
また、「就職活動に子どもの頃に受けたキャリア教育が活かされていた」と回答した割合も、実際にキャリア教育の機会があった回答者の方が高くなっています。
親がさまざまな職業や子どもの可能性について話をし、親子で将来のことを考えることは、子どもの将来に前向きに影響しているようです。
しかし、自分たちが受けていないキャリア教育を家庭で行うことは難しいと感じる方もいるのではないでしょうか。また、時代に即した学びを果たして自分が子どもに行うことができるだろうかと戸惑ってしまう方もいるかもしれません。
そんな方は、キャリア探究学習ができるサービスを活用するのも一つの手段です。
今回筆者が、一足先に2022年4月に新規開校するキャリア探究学習のオンラインスクール「Dream Driven(ドリームドリブン)」を息子たちと共に体験してきたので、後日レポートします。
<参考資料>
・文部科学省「キャリア教育の手引き」
・文部科学省「第1節キャリア教育の必要性と意義」
・「Dream Driven(ドリームドリブン)」公式サイト
・株式会社ミライメイク「90%以上の親が自分たちとは異なる形の教育が必要だと回答!子どもの「キャリア教育」のために、家庭でできる取り組みとは?」(PR TIMES)
・アイデム 人と仕事研究所「子供の頃のキャリア教育と就職活動に関する調査」
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