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2022.02.16

コロナで前倒しに。親が知っておきたい「GIGAスクール」の目的とメリット・デメリット

今もなお猛威をふるう新型コロナウイルス感染症は、子どもたちの学びにも大きな影を落としました。2020年3月の全国一斉休校から、学校行事の短縮や給食の黙食など、さまざまな我慢を強いられていることと思います。
しかし、そんな逆境の中で大きく進歩したのが、学校のICTシステム。2018年の時点で政府は「令和5年までに、全学年の児童生徒一人一人がそれぞれ」端末を持つことを目指していましたが、現在では全国の小中学校の90%以上が、全学年もしくは一部の学年での利活用を達成しています。
今回は、GIGAスクール構想の概要と家庭の関わり方に迫ります。

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GIGAスクールとは

まずは基本的な内容からおさらいしましょう。

GIGAスクール構想とは、全国の小中高等学校に1人1台の端末と、高速大容量の通信ネットワークの整備をする取り組みのこと。

これまで小学校のネットワーク環境や端末の設備は、公立、私立などの学校差が激しく、設備が導入されたとしても活用されていないことの方が多くありました(新型コロナウイルス感染症が最初に流行したときも、公立と私立の対応スピードが話題になりました)。 

さらに、2018年のPISA(国際学力調査)のICT活用調査で、日本の子どもたちは「学習以外でのICT活用はほかのOECD加盟国の平均よりも高く」、「学習でのICT活用は他のOECD加盟国の平均よりも低い」という結果も明らかになりました。

このような状況を受けて、2019年、国は前述のような構想を打ち立てたのです。

GIGAスクールの目的

では、ICT端末を学校現場に導入することで得られる具体的な目的はなんでしょうか?

さまざまな要素がありますが、次にいくつかの例を挙げてみます。

個別最適化された学習環境の実現

これまでの学校での学習は、ひとりの先生が30人以上を机間指導(教室を回っての指導)する、発表はその瞬間にひとりだけ、理解度の度合いに関わらず同じスピードで授業を行うということが当たり前でした。

このような環境では、同じクラスの中で「できる子」と「できない子」が出てしまいますよね。

しかし、ICT端末を使えば、例えば子どもたちの意見を一斉に集約して、つまずいている子どもがいれば即座にフォローしてあげることができるようになります。

調べ学習や表現・制作の充実

これまでも学校設備としてパソコンがあり、それを使って調べ学習などをしてきましたが、ICT端末を「1人1台」、文房具のように配置することによって、より主体的に活動ができるようになります。

また、写真を撮ったり録音・録画機能を使うことで、主要教科のみでなく、図工や音楽でもさらに豊かな表現ができるようになることも期待されています。

情報モラル教育の促進

SNSが絡んだ子どもたちを巻き込む犯罪や事件は後を断ちません。基本的な情報モラルが身についていなければ、命に関わることもあります。

そのような安全教育の視点からも、ICT端末に慣れ親しむことは重要になってきます。

そのほかにも、学校行事や委員会、クラブ活動など教科外の活動がより子ども主体となることや、ICT端末を学習ツールとして使い慣れることが期待されています。

GIGAスクールの現状

GIGAスクール構想のメリット

GIGAスクールが導入された最大のメリットは、やはり「個別最適化」された学習が推進されてきていることにあります。

具体的な場面として、今まで周囲を気にして発言できなかった子が、タブレットの「意見集約アプリ」などで積極的に意見を言えるようになったり、算数や数学が得意な子が、プログラミング教育によってさらにその得意を伸ばしていったりする事例があります。

GIGAスクール構想のデメリット

もちろん、問題点や課題もあります。

ひとつでも不調なICT端末があれば、その対応に手を取られてしまうほか、教師の活用力不足、補助員不足などがあげられます。このあたりは、今後「GIGAスクールサポーター」など補助員の導入によって、一刻も早く改善されてほしいですね。

また、子どもの体調面について不安という方もいるのではないかと思います。

視力の低下や姿勢が悪くなる、また寝つきが悪くなるなどの心身への影響が考えられているほか、ブルーライトによる眼精疲労なども不安視されています。

しかし、視力低下のメカニズムや、屋外活動との関係、夜間のブルーライトの影響などは科学的に解明されていないことも多いそう。

とはいえ、最低限の注意を払い、健康を保って使用できるよう家庭でも気を付けたいですね。これは大人である親も気をつけることで、子どもにもよい影響を与えることができそうです。

さらに、小中学校の現場で大きな課題としてあげられているのが、ICT端末の「持ち帰り関連」。これは、保護者にとって最も大きな関心ごとだと思います。

貸与されたタブレットとの付き合い方

事実、読者の子どもの学校でも、持ち帰りOKにしているところが多いのではないでしょうか。

文部科学省も、「端末を持ち帰り、自宅等での学習においても ICT 端末を活用することは有効であることから、(中略)端末の持ち帰りを安全・安心に行える環境づくりに取り組むこと」と明言しています。

家庭で使うときのルールの決め方

その際に気になるのは、やはり家庭で使うときのルールですよね。

文部科学省はその点について、学校側が家庭と使用ルールなどについて共通理解を図るようにすることを強く求めています。

万が一、学校から使用のルールについての連絡がない場合は一度問い合わせてみてもよいかもしれません。

学校からしっかりとルール説明がされている場合は、子どもと保護者間ではもちろん、家庭内の保護者同士でも確認することが重要です。

自治体によっては、使い方は学校で決め、家庭での使用時間は家庭で決める、というようなスタイルにしているところもあるようです。

家庭でのスマートフォンやタブレットの使用ルール同様、「使う時間、使う場所を守り、人に迷惑をかけるような使い方をしない」などのルールを決める必要がありそう。

あくまで学習に有効な使用となるように、学校と保護者が連携したいですね。

破損したらどうする?

保護者が恐れていることに、貸与されている端末を壊してしまったら…という不安があるのではないでしょうか。帰ってきてランドセルを放り投げたり、液晶画面をバシバシ強くタップしてしまうことによる故障は十分に考えられますよね。

破損、故障などの事態に対して、文部科学省は統一のルールを打ち出していません。対応の仕方は各自治体に判断が委ねられているようです。

不測の事態に備えて、破損した場合はどうなるのかということもしっかり確認しておきましょう。
 
例をあげると、茨城県つくば市では「通常使用の範囲内であれば、修理費用は市が負担」するものの、「『故意』または『重大な過失』による故障や破損の場合は、児童生徒(保護者)負担」としているようです。

国は、壊すことを恐れて使わないよりも積極的に使ってほしいとしていると共に、子ども一人ひとりが注意を払って使うように指導することを求めています。

「大切な学習道具だから、ほかのものと同じように丁寧に扱おうね」などの声かけをして、子どもの自覚を促すことも重要かもしれません。

家庭のネット環境が整っていない場合は?

いくら便利といっても、そもそも「家庭のネット環境が整っていない」「有線接続する方法しかなく、端末を持って帰ってきてもつなぐことができない」というご家庭もまだまだあります。

そういった家庭には、Wi-Fiルーターの貸与など、環境整備の補助をすることも明示されています。

「ネットが使えないから家では活用できない」という事態にならないよう、各自治体や学校で対応策があるはずなので、焦らずに確認してみましょう。

分からないことや不安なことも多いですが、子どもの学習にとってはメリットも大きい「GIGAスクール構想」

冒頭に示したPISAの調査結果についても、ただ悲観するのではなく、今後学習に活用する選択肢が広がれば、子どもたちの可能性がさらに広がるということがいえます。

学校と家庭が連携して子どもたちをサポートしつつ、今後さらに有効に活用できると良いですね。

<参考文献>
安心と成長の未来を拓く総合経済対策(令和元年12月5日閣議決定)
文部科学省「GIGAスクール構想の実現へ」
YouTube「適切な学校ICT環境整備に向けて」
文部科学省「GIGAスクール構想の下で整備された1人1台端末の積極的
な利活用等について(通知)」

つくば市総合教育研究所「GIGAスクール学習者用端末に関するQ&A」
文部科学省「端末利活用状況等の実態調査」
JIJIドットコム「タブレット破損、保護者負担も 自治体で対応分かれる―小中学生配備端末・全国調査」
国立教育政策研究所「OECD生徒の学力到達度調査」

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