学校への不信感をなくしたい! 先生とのすれ違いを防ぐために保護者ができること
子どもの学校での様子が気になる時は保護者なら誰しもあると思います。面談や家庭訪問など担任教師から話を聞く機会はありますが、教師から聞く話に違和感を感じることやタイムリーな対応を求めたいときもありますよね。そんなとき、どのような対応を取るのがいいのでしょうか。お互いに信頼し合いながら、子どもたちの成長を見守っていくためにできることを教師経験を踏まえて紹介します。
目次
【実例/フリースクール】不信感のせいで不登校という結果に
まずは、筆者がフリースクールで勤務していた時に出会った小学生保護者の事例を紹介します。
ある保護者が子ども同士のケンカをきっかけに学校へ連絡をしました。その保護者は、自分の子どもがコミュニケーションを苦手としている認識があったため「ケンカになったということは、周囲の子どもたちとの関係構築に対して(学校側に)配慮が足りなかったのではないか」と学校へ伝え、担任教師からは「今後は配慮をする」という回答があったそうです。
おそらく、担任教師の言う「配慮」という言葉には、今後の子どもたちの様子を見て随時対応していくという意図があったと思うのですが、保護者が望んでいたのは「まず相手の子どもに指導を加える」ということでした。保護者は、想像とは違った学校側の対応に不信感が募り、結局、子どもを登校させることができなくなってしまいました。
この事例は、“保護者が求める学校の対応” “実際の学校の対応” が異なっていたため、不登校という結果に至るまでこじれてしまいました。
教師が気づかないところで生まれた保護者の不信感に対して、学校は対策を取ることができないこともあります。では、このように保護者から学校へ何か伝えたいことがある場合、教師や保護者はどうすればよいのでしょうか。
心配事は事前に伝えておくことで教師と視点を共有できる
実は、学校側ではこのような保護者との認識の違いを生まないようにさまざまな対策をとり始めているところもあります。
ある自治体では、保護者との連携の手引きを作成。電話対応と傾聴の重要性や事実関係の確認など、担任が行う初期対応から、学校全体で協力体制をつくる二次対応まで流れをまとめています。ほかにも、学校独自の研修として、元客室乗務員などお客様対応のプロを招いて対応方法の実践を行うなど、ハイレベルな対応に取り組んでいる学校もあるようです。
このような対策は、すでに起きてしまったトラブルの対応だけでなくトラブルを未然に防ぐためにも求められています。誰もがスマホを持つ時代となり、学校に登校している時間以外の子どもたちの様子まで教師が把握しなければならなりません。その点においても、保護者と教師が情報を共有する重要性が高まっているのです。
しかし、1クラスには約30人が在籍しています。学校生活の中で“小さな気付き”があっても担任教師が全家庭へ電話連絡をすることは難しく、電話連絡は緊急の場合のみとなっているのが現状です。
ただし、保護者にとって緊急と感じるのはどんなことなのかを教師が把握していなければ、保護者にとって緊急でも教師は連絡することはできません。そのため、保護者側から、気になること、気にしてほしいことがあれば連絡ノート(子どもに見られたくないなら手紙)に書くなどして、保護者の思いや心配事を伝えておきましょう。そうすれば、教師はどのレベルから緊急(電話)連絡をすればいいのか判断がつきやすくなります。
家庭での様子や内面については、どうしても本人や保護者の発信がないと判断しかねます。家族だからわかる異変などを早めに情報共有できていると、学校生活にも活かせて担任教師もほかの教員や保健室への協力を求めるなど対応を考えることができます。
信頼関係をつくるための3項目とプラスアルファ
ここで、埼玉県のある小学校の取り組みをまとめた実践研究を紹介します。
普段から,学校に 出向き,学級担任とのコミュニケーションを十分取っており,学校の教育方針を十分理解している保護者の場合,比較的,スムーズに指導が通り,学校と家庭で協力体制ができ,子どもの指導に当たることができる。一方で,学校にあまり出向くこともなく担任とさえあまり話したことがない保護者の場合,保護者に学校の指導方針を伝え,協力を依頼するにとどまり,実際に学校が望むような協力が得られない場合がある。そのような保護者の場合,一方的に学校の言い分を伝えられたと感じる保護者もおり,児童と担任の関係だけでなく,保護者と担任の関係にも悪影響を及ぼす可能性もある。
城内君枝「学級担任による保護者との信頼関係づくりの工夫」より引用・要約
以上のように、保護者と学校の連携についてまとめており、保護者との信頼関係が重要であるとしています。
そして、「保護者との信頼関係を作るための3項目」として次のように挙げています。
①保護者が学校、教師に何を期待するのかを知る。
②誠実な対応をする。
③協働性で臨む。
①では、保護者の求める対応を見極めることが大切であるとしています。子ども同士のけんかを例にした場合、保護者によっては、「見守るだけでいい」「相手の子どもへの注意をしてほしい」「保護者からの注意も促してほしい」など、保護者が求める対応が異なります。
②の“誠実な対応”というのは当然ですが、一生懸命である先生ほど学校でできることにも限りがあることを忘れがちです。この線引きが非常に難しく、私の教員時代には「モンスターペアレント」に迎合しすぎてしまい、体を壊してしまう教員も実際に目にしてきました。
③は、担任一人での対応が難しく、時には学年全体・学校全体の相談が必要なこともあるということです。
そして、この論文では、この3つに加え、顔を合わせることへの重要性を挙げています。
保護者会でグループに分かれて子どもの短所や長所について話し合った経験はありませんか? 保護者会をお互いの協力依頼を伝える場にするのではなく、保護者同士や担任のことをよく知ってもらい関係性を築くことも保護者と教師のすれ違いを生まないために大切なのです。
伝えたいことははっきりと、ただし無理難題を押し付けない
次に、先ほど紹介した論文の「信頼関係を作るための3項目」をもとに保護者側からできるアプローチを考えてみましょう。
①保護者が学校、教師に何を期待するのかを知る。
どんな対応を求めているのか、はっきり伝えることが大切です。やみくもに伝えることや、察して動いてもらおうとすることは、教員の対応に意識の差がでてしまう恐れがあります。
②誠実な対応をする。
学校に対応はしてほしい、しかし限度もあるということを理解した上で伝えましょう。この理解が不足していると、無理難題を押し付けている印象を受け、教員側から保護者への不信感が生まれてしまいます。
③協働性で臨む。
保護者も協働性の意識が必要です。教員はサービス業に分類されることもありますが、子どもたちはお客様ではなく、共に成長をしていく存在です。学校でできることもあれば、保護者でなければできないこともあります。互いに協力する姿勢を見せあうことが信頼関係の構築に繋がります。
そして最後に、連絡の方法を考えることも大切です。やはり人間同士なので、思っていることを伝えるには顔を見ての連絡が一番です。出来る限り、面談・保護者会で伝えましょう。
もし、冒頭の事例で学校と保護者が今回の記事で述べたようなことを意識していたらどうでしょう。もしかすると結果は変わっていたかもしれないと思いませんか?
残念ながら、保護者から学校へ入る連絡はいい話よりも悪い話の方が多いです。保護者から連絡が入ると、教員としては「悪い話では?」とドキドキします。電話や手紙で伝えるときも受け取る側の気持ちを考えた上で伝えてください。教師とはいえ、ひとりの人間です。ともに子どもたちの成長を喜べるよう、お互いの気遣いをもって関わっていきましょう。
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専門分野:教育学(美術教育、社会教育、生涯学習) 自治体の事業を教育分野からお手伝いしています。 公立小中、通信制高校、サポート校、フリースクール、保育者養成専門学校での指導経験あり。16年間小学生から留学生までいろいろな児童、生徒と関わってきました。途中大学院へ行ってからは、学校教育と社会教育の繋がりについて研究しています。