【本ソムリエがセレクト】小学生3,4年生を読書好きに育てる本5選(海外の作家編)
小学3,4年生は、これからの人生で“本を読む人”になるか“読まない人”になるかが決定される重要な時期です。対象学年の小説には漢字が増えてストーリーも複雑になっていきます。つまり、それだけ奥行きのある小説を読める年齢になってきているということです。そこで、多くの小学3・4年生が夢中になりやすく、読んだ経験がその後に生きていく本を海外の作家が書いた小説から5冊紹介します。
目次
物事の表面だけでなく内面を意識させる「解剖断面図間」
蒸気機関車や映画スタジオ、宇宙ステーションから人間のからだまで、様々なものの断面図が描かれる「解剖断面図間」(偕成社)絵:スティーブン・ビースティー文:リチャード・プラット。こんなにたくさんの部品が集まってひとつのものができているということに圧倒される図鑑です。
注目すべきは、建物の中にいる人たちも描れているという点。この人は何をしているのか、この場所は何のためにあるのかなどの説明とともに、それぞれが役割を果たし重要であるということがわかります。
また、見開きで描かれている“時代の移り変わり”という絵も圧巻。ビッグバンから始まって歴史が積み重なり、色々なものが埋まった地層の上に今の私たちの生活があるということがわかるのです。
物事の表面を見るだけでなく、内面を意識することによって理解が深まることをこの本は教えてくれます。子どもたちが日々の生活の中でふと「この中はどうなっているんだろう?」という好奇心をもつきっかけとなり、探求、想像する力が育まれます。
節度について考えるきっかけに「魔法があるなら」
ロンドンのデパートを舞台にした無鉄砲で超楽観主義のママとしっかり者のリビー、ちいさなアンジェリーンのありえない冒険を描いた物語「魔法があるなら」(PHP研究所)アレックス・シアラー。
なんでもそろっているデパートで生活することになった3人。キャンプ・アウトドア用品売り場のテントで眠り、おもちゃ売り場で人形遊びをして、食品売り場で賞味期限切れを探し、台所用品・家電売り場でチンして食べる。絶対にできないけど、誰もがやってみたかったことが体現できる話です。
やりたいことをしているのに、節度を守り、できるだけ他人に迷惑をかけない3人。自分の必要以上のものを欲しがらないこと。そして責任を果たすこと。過剰や飽食に慣れた現代の子供たちに考えてほしいテーマが隠れています。
社会のあり方について考えたくなる「レベル4 子どもたちの街」
「レベル4 子どもたちの街」(岩崎書店)アンドレアス・シュリューター。こちらも、デパートやショッピングモールで好きなことをしていく物語です。
主人公は、ベンという少年。手に入れたゲーム「こどもたちの街」の途中で、現実社会でも大人が消えてしまい、ベンと仲間たちは、食料の確保や子どもたちを学校に集める方法、動物園にいる動物たちの世話についてなど、さまざまな問題に直面します。
ゲームをクリアして日常に戻るために力を合わせる子どもたち。読みながら、協力することや考えることの大切さについて自然と学べるのではないでしょうか。社会の機能がマヒしてしまったとき、いったい何が必要となり、どうすれば手に入るのか。この本で疑似体験することにより、社会に対しての理解と感謝の気持ちが深まっていくことでしょう。
楽しく語彙を増やしていける「ドラゴン・スレイヤー・アカデミー」
臆病で優しいウィリーが主人公の「ドラゴン・スレイヤー・アカデミー」(岩崎書店)ケイト・マクミュラン。13人いる兄弟の中で一番気が弱く、家事を全部やらされても文句もいえない彼の夢は勇者になること。ある日、ドラゴン退治を教えてくれるという学校があることを知ったウィリーは、未来を変えるチャンスだと考えますが…。
登場するドラゴン退治の学校は、「ハリーポッター」のパロディのよう。金儲け主義の校長に、はちゃめちゃな先生たち…。ギャグでドラゴンを倒したり、王女様が男の子のふりをしてクラスに交じっていたりと、コミックのような展開で楽しさ満載です。
勇者になりたいと思っていても、やっぱり怖いものは怖いというウィリーに親近感を感じる子どもも多いのではないでしょうか。文章も読みやすく、3,4年生が語彙力をのばすのにはちょうどよいレベル。シリーズを読み進むうちに自然と読解力が身についていきます。
歴史を覚えるサポートになる「マジック・ツリーハウスシリーズ」
ジャックとアニーの兄妹が森の中で見つけたツリーハウスの魔法で、いろんな国のいろんな時代を冒険する「マジック・ツリーハウスシリーズ」(KADOKAWA)メアリー・ホープ・オズボーン。中世のお城や月の世界を訪れたり、実在の人物であるダ・ヴィンチや始皇帝、ナイチンゲールに出会ったり。日本に訪れて松尾芭蕉やサムライ、ニンジャが登場する話もありますよ。
おすすめポイントは、史実に基づく部分もあり、読むうちに歴史に親しみを感じるようになるとことろ。読んだときは細かい内容を覚えていなくても、のちに歴史の授業中に「聞いたことあるような…」と思い出しますよ。歴史は、その時代の世界観や人物像がイメージできると記憶に残りやすくなりますが、同書を読んでおくことで自然と授業で学ぶ歴史の背景を把握しておくこができますよ。
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教育・受験指導専門家の西村創が主宰する「西村教育研究チーム」のメンバー、フリーライター。大学卒業後、旅行会社へ就職した後に渡米。その後、ニューヨークのビジネススクールを経て、イスラム圏へ移住。6年間の外国生活で異文化コミュニケーション、ムスリム(イスラム教徒)の生活様式や考え方、イスラム教について知識などを身をもって学ぶ。現在は日本在住。ジャンルを問わず、年間100冊以上の本を読み、その人に合う本をおすすめする本のソムリエでもある。