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2019.02.20

【オルタナティブ教育②】子どもの「好き」を育むサドベリースクール

現在の日本には、既存の学校教育にはないスタイルのオルタナティブ教育とよばれる教育理念や学校が存在します。そのなかで今回紹介するのは、子どもたちが好きなことに打ち込んでいくなかで学びを深めていく「サドベリースクール」。日本の学校にあるさまざまな“当たり前”がない同スクールでは何を学ぶことができるのでしょうか。

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既存の教育への疑問から生まれた教育理念

サドベリースクールとは、1968年にアメリカマサチューセッツ州ボストン郊外に設立された「サドベリー・バレー・スクール」の教育理念に共感し、運営している学校の総称であり、同じ理念・運営方法によるデモクラティックスクールを含めて日本に10校、世界8ヶ国に30数校あるといわれています。

設立の立役者は、ダニエル・グリーンバーグさん。大学で物理学の教授をしていたものの教師から言われたこと・与えられたことだけをこなす生徒たちをみて教育の在り方に疑問を抱いたそうです。

そこで彼は、“人はなぜ学ぶのか“”学校とは何か”ということについて論じ合い学校の概念をゼロから考えていったのです。

議論は、“子どもは好奇心と向上心を生まれもち、自ら学んでいく”“大人が強制せずとも、子どもはなりたい自分になるために自分に必要なものを学んでいく”という考えにたどり着き、この精神・理念こそが世界中にあるサドベリースクール運営の源となっています。

サドベリースクール(デモクラスティックスクール)は、多くの場合が自然に囲まれた大きな一軒家が学び場になっており、時間割や授業という概念、テスト、カリキュラム、教科書はありません。

では、登校中の子どもたちは、何をするのかというと、絵を描いたり、友達と自然の中で探検したり、自由に各自が好きなことに取り組みながらのびのび過ごします。理念の通り「好奇心」を大切にしながら興味があることに熱中し自ら学んでいく日々を過ごすのです。

自分の力で困難を切り開くという経験からの学び

好きなことを自由にできるサドベリースクールですが、子どもの望むものがすべて与えられる環境というわけではありません。

例えば、ギターを弾きたいと思ったとしましょう。サドベリースクールでは、ギターの弾き方を自ら率先して教えてくれる大人はいません。教則本が必要なら、校内で本を探して無ければ購入方法を考えて実践することが求められます。また、人に教えてもらうとしても、スクールのスタッフがギターを弾けるとは限りません。その場合は、専門家を紹介してもらったり、自分でアプローチをするなどギターを弾くために必要なことを自身の力で切り開かなければならないのです。

つまり、サドベリースクールには、“好きなことをする自由”ではなく“好きなことを実現するための方法を自分で考え、実践できる自由”があります。好きなことを通して「自分の力で困難なことを切り開く」という経験や自信を子ども自身に実感させことができるのです。

「好き」がベースのコミュニケーションから学べること

さらに、サドベリースクールには、クラスもありません。おおよそ4~19歳の子どもたちが同じ空間の中で好きなことを学んでいます。

知らないことを年上の子に教えてもらったり、年下の子の意外な発想に刺激を受けたりすることもできます。なにより、話したい人と話し遊びたい人と遊び自分の「好き」をベースとしたコミュニケーションなので、相手の発言や行動を能動的に受け入れやすく人間関係を深めやすいのです。

年齢・クラスという枠を取り払ったサドベリースクールでは、誰もが互いに影響を与え合う存在であるということを自然に学びながら成長していけるのではないでしょうか。

学校運営にも子どもの意見が取り入れられる

学校のルール決めや仲間と行動を起こすときにミーティングが設けられるのもサドベリースクールの特徴の1つです。

サドベリースクールでは、好きなことをする自由があるからこそ、子ども同士の自由が衝突してしまうこともあります。そんなときは、お互いに意見を言い合うことで、相手の好きなことを尊重することの大切さを学び、お互いが好きなことに打ち込むための方法を建設的に考える力が身につくのです。

また、学費や予算、開校日、スタッフの人選など、学校運営に関わる重要な事項やルールも子どもたちが参加するミーティングで決定されます。

しかも、年齢関係なくすべての子どもたちに意見を述べたり1票を投じたりする権利があり、民主的な自治が当たり前とされています。そして、意見が分かれたときもみんなが納得できるようとことん話し合うので行動が強制されると感じることはあまりありません。

このようにサドベリースクールでは、周りの人にも同等に自由があることを日々の生活の中から学ぶことで協調性や思いやりなどが身につきます。

また、子どもたちが自分たちも学校運営に関わる一員であると自覚することで、もっと自由によりよい環境で学びつづけていくにはどのようなコミュニティが必要かを“自分ゴト”として考えるようになるのだと思います。

まずは子どもの興味・関心を信頼してみよう

子どもが自由の意味を知りながら好きなことにとことん向き合えるサドベリースクールですが、日本では「公教育」ではなく、スクール数もまだ少ないのが現状。

それでもサドベリースクールの教育理念や学校での学びに魅力を感じるのなら、まずは家庭でできることから始めてみてはいかがでしょうか?

子どもが興味・関心があることに打ち込み始めたら口を出さずに信じて見守ってみてください。結果、子どもが欲求を実現するために思考を巡らせ、自分から動く姿勢が見られたら、サドベリースクール教育の方針が子どもに合っているということかもしれません。

好きなことに熱中することで子どもが自信ができ、自分の成長に可能性を感じる。そんな未来を自分で切り開いていく力が、サドベリースクールでは身につくのではないでしょうか。

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クリス

元小学校教諭のフリーライター。教職に疲れ現場を離れたはずが、気がつくと教育のニュースをチェックする日々。少しでも現場を経験した自分が教育現場のためにできることを考えた時に、先生と保護者、地域をつなげるリアルな教育情報を伝えたいと思い、ソクラテスのたまごに参画。とここまで真面目に書いたものの、普段は愛猫とたわむれるかアニメやマンガにおぼれる日々を送っている。 ブログ https://qris.hatenablog.com/top

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