わが子のいじめ問題が解決しない! 学校以外で相談できる場所が知りたい【連載 いじめのトリセツ Vol.3】
いじめ解決のスペシャリスト・栗岡まゆみさんの連載3回目のテーマは、“いじめ相談のできる場所”。いじめは起きた学校(場所)で解決すべきものですが、「学校に相談しても解決しない」と悩む保護者は多いようです。その場合は果たしてどこに、誰に相談するのが良いのでしょうか。どのように解決の糸口を見いだせば良いのでしょうか。
目次
いじめを学校に相談しているが、解決しない!
いじめ防止対策推進法第8条には、「学校及び学校の教職員の責務として、いじめ防止及び早期発見に取り組むとともに、児童などがいじめを受けていると思われるときには、適切かつ迅速にこれに対処する責務を有する」と定められています。
いじめ解決の原則は、早期発見・早期解決。
- 被害者の心を守り、保護すること
- 現在行われているいじめを止めること
- 加害者への聞き取りと毅然とした指導・反省・謝罪
- 被害者・加害者の心のケア
- 再発防止を講じること
これが、いじめ解決のプロセスです。
いじめ解決の鍵となるのは、いじめの客観的な事実確認。そして、学校に相談しても思うような解決ができないときには、信頼できる外部の相談窓口に相談することが必要です。
しかし、いじめを学校で解決できないという状況はなぜ発生するのでしょうか。
なぜ、いじめを学校に相談しても解決しないのか?
いじめの解決を難しくする理由の一つとしてあるのが、先生が見ていない場所でいじめが起こることが多いということ。また、LINEなど外から見えないいじめや無視などの精神的ないじめは、証拠がないということが解決を一番難しくする問題です。
しかしながら、いじめが起こる場所は学校の中では“教室”が74.8%と圧倒的です。いじめが起こる時間帯は、休み時間に多いということも分かっています。つまり、教師が教室を外す時間、誰も監督者がいない時間帯です。
国立教育政策研究所の調査によると、小学4年から中学3年までの6年間で、一度でも仲間外れ・かげぐち・悪口などのいじめを受けたことのある児童・生徒は9割、また、いじめたことのある児童・生徒も9割いることが明らかになっています。
これはいじめが日常的に起こる現状、“いじめっ子”にも“いじめられっ子”にもなる可能性があることを示しています。
教師がいな場所でのいじめの場合、被害者が相談して、教師がいじめ事実を加害者に確認しても「やっていない」と認めなかったり、加害者が複数の場合は口裏を合わせて認めなかったり「遊んでいただけ」「ふざけていただけ」といじめ事実を認めないケースもあります。この事実確認の部分に生じる壁や双方の相違が、解決を困難にしているのです。
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栗岡まゆみさんへの相談ページを見てみる教室で起きたいじめ、子どもは誰に相談するのか?
児童・生徒が教室の中でいじめにあった時、誰に相談するでしょうか?
学校で起こるいじめ解決は担任の教師ですが、児童・生徒の相談先が教師ではないのも事実です。
東京都教育委員会が2014年に行った都内の児童・生徒、教員、保護者ら1万4687人を対象に実施した調査結果では、いじめられた経験は小学生の7割、中高生の6割が「ある」と回答。このうち、いじめられたことを誰かに相談した児童・生徒の割合は45.6%。特別支援学校(50.0 %)や小学校(44.7%)に比べ、中学校(33.6%)や高校(34.2%)は「相談した」という割合が低く、相談した相手は保護者が最も多いという結果でした。
いじめを相談できない理由として挙げられたのは「被害が悪化するから」が75.4%、次いで「だれかに言ってもいじめは解決しないから」が54.3%を占めました。
2020年7月に亡くなった岐阜市立中学校3年の男子生徒へのいじめは、100人近くの生徒が見聞きしていたにも関わらず、担任に知らせた生徒はわずか2人だったと報道されています。
私が受けた相談の中にも「いじめを相談しても、話を聞くだけで先生は止めてくれない」という子どもの声、「学校にいじめ解決の相談をしても、なかなか解決しない」という親の声も少なくありません。
中には「学校にわが子のいじめを相談したら、お宅のお子さんの側にも問題があります」と、家庭の教育を見直すことをアドバイスされ話が進まず、辛い思いをした保護者もいます。
いじめの相談に来てくれた男の子は、「もっともっと、子どもたちが頼れて、相談に乗ってくれて、助けてくれる先生がいてほしい」と話していました。
「先生なら、きっと、いじめを止めてくれる」「先生なら、きっと力になってくれる」と思われることが、いじめ解決の前提になります。相談できる、生徒の心に寄り添う教育現場、信頼関係の築き、いじめをなくそうとする情熱とともに、確かな解決スキルが学校側に強く求められます。
いじめは“発見しにくい”、“外に現れにくい”問題であることも事実。いじめた側が認めないことに加え、いじめた側の親の感情のもつれも絡み合い、解決を困難にしていきます。絡まり合う感情のもつれた糸を解すのは唯一、善悪の正しい対応と“いじめは許さない”という教師の毅然とした態度です。
けれど、思うように進まないときには外部の信頼できる第三者機関(相談窓口)の仲介による透明性・公平性のある解決が必要になります。
いじめ相談で頼りたい窓口を7つ紹介
私は、児童・生徒に「あなたは一人ではない。あなたの命を守る大人が必ずいる。だから、一人で悩まないで相談する勇気を!」と伝え続けてきました。そして「あなたのことを一番愛しているお父さん・お母さん、あなた方の命を守りたいと思っている学校の先生に、必ず相談して」ということも伝えています。
けれど、親や学校の先生に相談する勇気がなかったとしても、相談窓口があります。もし、「わが子がいじめられているかも?」と感じる何かしらのサインがある場合は、以下の相談窓口を参考にしてみてくださいね。
(1)子ども・保護者どちらも相談可。「24時間子供SOSダイヤル」
「24時間子供SOSダイヤル」は、文部科学省管轄の相談窓口。いじめ問題をはじめとする悩みに対して、子ども自身あるいは保護者がいつでも相談できます。都道府県および指定都市教育委員会が、夜間・休日を含めて24時間対応。電話をかけると、相談者の所在地の教育委員会相談機関に接続されます。
平成28年度の文部科学省の報告では、相談件数は、年間約4万件。
(2)児童・生徒本人が相談できる教育委員会管轄の対面窓口
各自治体の教育委員会では、児童・生徒本人が相談できる対面相談窓口を設置しています。
例えば、東京都には「東京都教育相談センター」があります.
【東京都教育相談センター】
電話相談・対面相談のどちらも対応可能。原則、都内在住の幼児~高校生・保護者・教職員からの相談を24時間体制で受け付けています。
(3)18歳までの子ども専用ダイヤル「チャイルドライン」
「チャイルドライン」は、18歳までの子どもが対象の電話・チャット・ウェブからの相談窓口。世界の約70ヶ国90ヵ所に設置されており、世界のチャイルドライン連盟CHI(世界子どもヘルプライン)が行う事業です。日本では34都道府県64ヵ所に設置されています。日本のチャイルドラインが受けた年間相談件数(電話)は、12万件。子どもの声を聞いて子どもの心に寄り添う窓口です。
(4)自殺予防から始まった活動「 日本いのちの電話連盟」
「一般社団法人 日本いのちの電話連盟」は、1953年にロンドンで開始された自殺予防のための電話相談に端を発する相談窓口。2020年現在、日本の連盟加盟センターは50ヵ所。6000人の相談員が活動しています。
(5)いじめ・体罰・虐待を解決へと導く「子どもの人権110番
「子どもの人権110番」は法務局・地方法務局の職員、人権擁護委員が話を聞き、子どもと一緒に解決策を考えます。
「学校がいじめに対し、必要な措置を講じてくれない」というある相談では、法務局の担当官が調査を行い、保護者・学校側との話し合いを仲介。保護者と学校側との間で生じた誤解が解けたことで良好な関係が築かれ、いじめが解消したそう。
(6)警察官や心理職が対応「都道府県警察の少年相談窓口」
各都道府県警察では、子どものことで悩む親と悩みを抱える子ども、学校関係者のための「都道府県警察の少年相談窓口」を開設しています。24時間対応で、専門の担当者(心理職や警察官)が対応します。
(7)SNSでの相談も可能「東京メンタルヘルス・スクエア」
LINE・Twitter・チャットなど、SNSを介して相談できるのが「NPO法人 東京メンタルヘルス・スクエア」。悩みを抱える子どもにとって、誰かに相談するというのはとても勇気の要る行為です。警戒心や不安感もあるでしょう。相談方法がフレキシブルに選択できるので、“相談する”ことへのハードルを感じさせません。
わが子がいじめ問題を相談してくれない時、親はどうするべき?
子どもがいじめを相談する相手として選ぶのは、“親”が最も多いということは先述の調査で明らかです。けれど、いじめられている子どもの多くはいじめられていることを親になかなか言いません。親に相談できない理由としては、
- 「親に心配をかけたくない」という気持ちがある。
- 親に「チクる」」ことで、いじめが加速する可能性を心配している。
- いじめられていることを知られるのが恥ずかしい。
- いじめられていることを報告することで、いろいろ聞かれるのが嫌。
などを挙げることができます。
それでも子どもは「どこかに自分を助けてくれる大人はいないか「信じられる大人は誰なのか」を求め、必ず「助けて!」というサインを出しています。
子どもの様子に次のような変化が見られたら、その“サイン”かもしれません。
- 急に元気がなくなる。
- 帰宅後、すぐに部屋に閉じこもる。
- 理由の分からない成績の低下。
- 親の前で携帯電話・スマートフォンを見ることが減る。
- 教科書に落書きがある。
- 頭痛や体の不調を訴え、学校を休みたがる。
もし、このような変化が一つでも感られるのであればさりげなく学校での様子を聞いてみてください。なかなか話してくれない子どもは多いと思いますが、子どもをしっかり観察することは必要です。そして何より一番大切になるのが、「何があっても、必ずあなたを守る!」という気持ちを伝えることです。
また、学校の友達のお母さん同士のネットワークを作っておくことも大切です。共働きだったり校区を超えて学校に通学したりすると、保護者同士のネットワークが希薄になりがちです。そしてそのことが、いじめの発見を遅らせることにもなるといわれています。
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栗岡まゆみさんへの相談ページを見てみるわが子が“いじめ”を打ち明けてくれたときには…
「言ってくれてありがとう。すごく勇気がいったでしょ」 これで、やっと助けられる。抱きしめたい心を抑えて、そっと声をかけました。
これは、わが子の様子から「いじめられているんじゃないか?」と不安な気持ちを持ちながらも、子どもが親に打ち明けるまで見守っていた母の言葉です。
また、ある青年からはいじめを乗り越えたエピソードを聞いたことがあります。
「いじめられて心が傷ついたら、ものすごく自信がなくなって『自分はダメなんだ』と強く否定しました。そんなときに母が「あなたは素晴らしいからね」と素晴らしいところをたくさん、たくさん褒めてくれました。何度も何度も、素晴らしいところを褒めてくれました。その母のおかげで、乗り越えることができたように思います」
わが子を愛する親の愛が、静かに力強くいじめから子どもを守るのです。
いじめ相談窓口では、どんな対応をしてくれる?
本章えは、私が携わる「一般財団法人 いじめから子供を守ろうネットワーク」のいじめ解決プロセスを紹介しましょう。
第三者機関へのいじめ相談を考えている人は、参考にしてみてくださいね。
【1】いじめに立ち向かう勇気を親に決意させる
親には、「いじめに立ち向かう」という決意が求められます。その上で、保護者には以下の流れで子どもと向き合うことをアドバイスします。
- いじめの兆候・小さなサインを発見する。
- 「あなたは私が守る」と子どもに宣言する。
- いじめの被害事実を記録する。
3⃣の「いじめの被害事実を記録する」については、
- いつ・誰が・どこで・どのようないじめを行ったのか
- 加害者は一人か、複数化。全て実名で記入
- 目撃した子どもはいるか。いる場合は、誰なのか
- 具体的にどのようなことを言われたか、されたか
- ケガをさせられたことはあるか
- 子どもはどのように感じているか
- 学校や担任の対応はどのようなものだったか
といった内容を記録するようアドバイスしています。
いじめ問題の解決を困難にしているのは、“証拠がない”ことに尽きます。これを解決するためには、冷静な文書化が必要です。子どもがケガを負わされたことがあるならば病院で診断書をもらい、物を壊されていたらその証拠写真を撮るなど、客観的な証拠を集めます。
【2】いじめに対するアクションのアドバイスを行う
- いじめの事実を訴え、担任に相談する。
作成したいじめ被害事実を下にして担任に連絡をし、話し合います。 - 校長を交えて相談する。
担任に対応の期限を伝えて、こちらが願う対応が見られなかったときには校長に相談します。 - 加害者に謝罪させる
いじめられて心が傷ついた子どもの心を復活させるには、いじめた側が心から反省し「二度としない」と誓い、被害者に心から謝罪することが大切です。加害者が心から反省すると、再発はしないといわれています。加害者の心も救うことになるのです。 - 学校に再発防止策を作成してもらう。
休み時間中の見回り、その後のいじめ被害者や加害者の心のケア・いじめ防止の対策など。
学校に交渉する中で、要望に対応してくれない場合は外部機関に相談します。場合によっては、教育委員会・警察・マスコミ・議員・法務局などに連絡しても良いのです。「大事にしたくない」という気持ちを持つ人は少なくありませんが、いじめというものはそれほどまでに許されない行為なのです。
謝罪の場と再発防止までは学校の責任であり、そこまで共に見守り、乗り越えるのは子どもを守る親の責任といえるのではないでしょうか。解決に至らない場合は第三者機関の信頼できる相談窓口に相談し、連携をして早期解決を促すことが親の責務でもあります。
親がいじめに立ち向かうことで疲れてしまったら…
子どものいじめ問題のことで親が悩んだり孤立したり、苦しい立場や精神的に追い込まれたりすることもあるでしょう。
いじめ問題は、親だけではなかなか解決できません。けれど、学校に相談して思うような解決に向けての動きが見られない場合や、「お宅のお子さんにも原因があるんじゃないですか?」「聞き取りましたが、そんな事実はありません」といった対応、また、加害者の親から「うちの子は悪くない」などの言葉が返ってきた時、精神的なダメージを受けるのは子どもと同様、わが子を守るために勇気を出して立ち上がっている親自身です。
いじめ解決の正しい知識を持つことを第一に、学校に、公平で正しいジャッジを促してくれる機関に相談することが一番の力になります。
友人にそのつらい気持ちを聞いてもらうことは、そのダメージを和らげるものではあります。けれど、いじめ問題の解決にはいじめ相談窓口に相談すること、心のダメージからの復活やサポートは心理カウンセラーや心療内科医師といった専門家に相談することをおすすめします。
日本では、第三者に相談することについてまだまだ発展途上な状態にあるといえます。相談することは、決して恥ずかしいことでも間違っていることでもありません。「いじめを解決したい」「子どもを助けたい」、その強い思いさえあれば解決の糸口は見つかるはずです。
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