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2021.04.16

いじめ問題の現状。なぜ学校でいじめがなくならないのか?<後編>【連載 いじめのトリセツ Vol.2】

栗岡まゆみさんの連載2回目。前編ではいじめ問題に取り組む社会の動きといじめがなくならない原因について解説しました。後編では、「いじめゼロ」を目指す栗岡さんの考えるいじめ問題の今後、わが子をいじめから守るために親がすべきことを考えます。

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いじめの新たなかたち「ネットいじめ」が問題を複雑化

 2019年度のいじめ認知件数が前年より6万8563件増え、過去最多の61万2496件報告されました。小学校で増加傾向にあり、特に低学年で多い状況となっています。

子どもたちを取り巻く環境の変化により、携帯電話やスマートフォンを持つ小・中学生が多くなりましたよね。そんな中で最近、深刻化しているのが「ネットいじめ」。ネットいじめの認知件数は、2019年度に1万7924件と過去最多を記録。2014年度と比べると2倍以上の件数になっているのです。

中でも、人気のSNS「LINE」でのトラブルが多く報告されています。友達間のグループLINEは仲間意識が強くなりますが、そこから締め出されたときの疎外感は大きいものです。ささいな発言で強制的に”退会”させたり誰か一人をわざと外してグループを作ったりといった「LINE外し」、メッセージを読んで既読がついても返信がない「既読スルー」などがあります。

しかしながら、これらは外からは見えづらいため発見の遅れにつながります。SNSという“閉鎖空間”が学校の認知のハードルとなり、水面下で行われることが多く把握できない実態が指摘されているのです。また、直接会うことなく24時間どこでもいじめを行うことができるため、誰がいじめているのか分からないという面もあります。

まずは親子でネットリテラシーを共有しよう

ネットいじめは、子どもたちがネットリテラシーを持たぬまま携帯電話やスマートフォンを持つことが問題です。また、大人より子どもの方がSNSなどのアプリに詳しいことも問題でしょう。

携帯電話やスマートフォンを子どもに持たせる場合、親の管理は必須です。リビングなど親が見える場所で使用する、使用時間を決めるといったルールは欠かせません。そのルールが守れないときには、使用を禁止するといった約束事も大切です。インターネットの世界が身近になったがゆえ、ネットモラルの教育は今まで以上に求められるのです。これが、ネットいじめをなくすスタートラインでもあります。

ネット上のマナーやルールを伝えてわが子がいじめの加害者になることを予防することも大切ですが、いじめの被害者になった場合も想定しておかなければなりません。例えば、スクリーンショットで該当画面を撮影して保存する。トーク履歴を削除している場合でも、トーク履歴の復元は可能です。それが、いじめの証拠となります。また、いじめられていることを相談する勇気を持つことも子どもには伝えておきたいところです。

いじめを減らすために学校に求められること

いじめは起こり得るものだという認識は大切です。けれど一方で、いじめを解決する学校が良い学校だという認識は、さらに大切だと思うのです。いじめは学校で起こるもので、それを解決する鍵はやはりそのクラスの担任の先生であり、学校長だということです。

本章では、いじめを今後減らすために学校ができることについて考えます。

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「いじめは絶対に許さない!」という毅然とした態度

新学期がスタートして少しクラスに慣れた頃、友達はできますがいじめも起こりやすくなります。担任の先生は新学年がスタートする際に、「私は、いじめは絶対に許さない!」という宣言をクラスで行うことが大切です。ささいなことでも相談してほしいことを伝え、子どもの心に寄り添い必ず守るという宣言です。

子どもたちは、大人をよく見ています。先生の価値観の強さは、“先生は必ずいじめを解決してくれる”という信頼を作ります。そして、子どもたちの“いじめたい”という心の抑止力にもなるのです。

悪口やからかいが、いじめの60%を占めています。例えば、「うざい」「きもい」「死ね」。

ある放課後スクールでの出来事です。男の子が、友達に「死ね!」と言ったのです。その瞬間、そばにいた指導員が「あなた今、何を言ったの?」「なんでそんなことを言ったの?」と真剣な表情で指摘しました。男の子は、その真剣さにたじろぎ泣き出しました。指導員は、「命はね、お父さん・お母さんからいただいたものなのよ。大切な命なの。そのまた先祖からいただいたのよ。あなたがその大切なお友達の命に、死ねということなんか絶対に言ってはいけない言葉なのよ」と諭しました。男の子は「ごめんなさい。二度と言いません」と大粒の涙をこぼし、真っ赤な顔をして謝りました。友達にも謝りました。指導員は、その男の子をギュッと抱きしめました。

この男の子は、二度と“死ね”という言葉を使わないでしょう。これが教育の力です。瞬間を逃さない、変化に敏感なまなざしが求められます。そして、感情的になっている心を一度、冷静に自分の言葉を振り返らせることが大切です。その後で、なぜ相手を傷つける言葉なのかを心で納得させる説得的な指導が求められます。心から理解して反省すると、次は自分で言葉をコントロールする自制心が生まれます。

子どもたちの将来を思えば、毅然とした指導ができます。子どもたちの素直な善悪を理解できる心の可能性を信じて、指導が行えるのだと思います。当然、この指導が行える前提には、一番大切な教師と子どもの間での信頼関係が存在しているのです。

いじめの加害者となる子どもの背景には、家庭の問題や社会の変化が関係することもあるでしょう。けれど、クラスや学校で起きるいじめの責任は教師にあるという自覚が、子どもたちを守る唯一のものです。

早期発見・早期対応

いじめは、放置するとエスカレートします。ネットいじめという外からは見えにくいいじめも増えています。相談すると「チクった」と言われて倍返しになるのが怖く、いじめられている事実を親や教師に言わないことも多いのです。けれど、いじめは早期発見・早期対応が重要。

学校では、定期的に無記名のアンケートや個別の面談を実施しています。子どもたちの発するメッセージやサインを見逃さないことも、学校側に求められることでしょう。

道徳の力

小学校では平成30年度から、中学校では平成31年度から「特別の教科 道徳」が始まりました。いじめに正面から向き合う「考え、議論する道徳」への転換が求められています。

いじめはよくないことと理解しても、複数の人間がいる“クラス”という集団の中で、個性の違う中で自分とは異なる他者をいじめて排除するという心理。自制心や共感性や善悪の価値観を伴う集団のルールという道徳心を育て、いじめの加害者・被害者・傍観者にさせない善悪の価値観を学ぶ実効性が強く教育現場に求められています。

いじめはよくないということは頭では理解できても、日常におけるさまざまな人間関係の中では心が納得できないことがたくさん出てきます。何度も何度も繰り返し、学ぶことが生徒指導や道徳授業で求められる教育の力です。

自分で考え心で納得できると、それは行動になります。それが“いじめない心”、“いじめたい気持ちに負けない心”、自制心や優しさにつながります。

わが子をいじめから守るために親に求められること

学校に行っている間のわが子の様子を、親は見ることはできません。けれど、家庭の中で子どもの小さな変化を見逃さないまなざしは必要です。

親にはなかなか言わないけれど、一方で、助けを求めるサインは出しているはずです。

例えば、

  • 朝、「頭が痛い・お腹が痛いから休みたい」と言う。
  • 遅刻や早退をする。
  • 食欲がなかったり、黙って食べるようになる。
  • 以前より、携帯電話(スマートフォン)を見ることが少ない。
  • 表情が暗い・笑わない。
  • 学校や友達の話題が減る。
  • ささいなことでイライラしたり、物に当たったりする。
  • 携帯電話(スマートフォン)の音に敏感に反応する。
  • 勉強に集中力がなくなる。成績が下がる。

このような反応が見られたら、さりげなく「最近、学校は楽しい?」などと聞いてみてください。また、「困っていることがあるなら、必ずお父さんやお母さんが守るから相談してね」と伝えてあげてください。

“何があってもあなたを守る”という親の言葉が、子どもの心の砦となります。

もしわが子にいじめられている兆候がみられるのであれば、担任の先生に相談して事実の確認と解決に向けた対応をお願いしましょう。

「あなたは決して一人ではない」というメッセージ

「世界中でたったひとりになった気持ち」。これは、いじめで命を失った生徒の最後のメッセージです。

私たち大人ができることは、この孤独に対して「あなたは決して一人ではない」というメッセージを発信する存在であること。学校では先生で、家庭では親です。そして、そこにも言えないいじめには第三者機関の相談窓口で、地域の大人たちです。

心に寄り添うゲートキーパーになること、いじめから子どもを守る一人になることが私たち大人に求められることなのだと思います。子どもたちが「この人に相談すれば解決してくれる」と信頼できる大人になることが強く求められているのです。

わが子をいじめ加害者にしないために

いじめは、なくなるのか。その答えはシンプルです。いじめっ子がいなくなれば、いじめはなくなります。いじめない勇気を持てば、いじめはなくなります。けれど、いじめっ子は“いじめない”という選択肢を選べるのでしょうか。

わが子がいじめの被害者になることはもちろん、いじめの加害者になり得る可能性も親の心配するところでしょう。最後に、わが子をいじめの加害者にしないために親ができることを考えてみましょう。

子どもの心に宿る“ダイヤモンド”を見逃さないで

いじめっ子は、思うようにならない現実にストレスをためていることが多いものです。不満・不安・自信のなさを誰かをいじめること、“自分以下”を見つけることで心を満足させているのです。

他者との成績の比較、塾での成績の順位、クラブの中での優劣ではなく、本当の意味で“このままの自分で素晴らしい”と思える自己肯定感が必要です。わが子を信じる親の心やわが子の心に宿るダイヤモンド(素晴らしさ)を発見することが、子どもの自己肯定感の元になります。自己肯定感が高い子どもは、“自分以下”を見つけていじめて満足する必要がありません。

コミュニケーションのスタートにあるのは、信頼です。信頼を築くには、相手の長所を発見し認める心が大切です。子どもの得意なものを見つけて、それを褒めることから始めましょう! 褒めるときには心を込めて、スキンシップをしながら言葉をかけることが大切です。「あなたのことをしっかり見ている」という親の思いが、子どもに伝わるはずです。

“自立”した親の愛がいじめっ子にしない

子育てにおいて大切なのは、過保護・過干渉・放任・統制しないこと。“自立”する子育てです。“自分のことは自分でできる”という自立の心を育てることが、いじめ予防につながります。

けれど、これは日常の中で実践するのは難しい応用問題かもしれません。心配のあまり、転ばぬ先の杖として口を出したり指示を出してしまったりということはありませんか?

「早く起きなさい」「早くご飯を食べなさい」「早く行きなさい。もう時間よ」「早く宿題しなさい」「早くお風呂に入りなさい」「早く寝なさい」…。“早く~”という言葉掛けは、実は過保護・過干渉の親に一番多いものです。もちろん、この言葉もわが子を思ってのこと、わが子のためになると思っての親の愛情でしょう。

けれど、子どもの行動に指示ばかり出していると〝自立〟の心が育たなくなります。自分で考える前に、親が指示を出してしまうのですから…。けれど、学校に親はいません。社会に出れば、思うようにいかないことばかりです。

自立のできていない人は、

  • 人のせいにする
  • わがまま
  • 頑固
  • 気を遣いすぎる
  • 几帳面
  • 融通が利かない
  • 不安を抱きやすい
  • プライドが高い
  • 自信の欠如
  • 否定的な言葉に敏感
  • 傷つきやすい

このような特徴が表れます。親の考えを押し付けるのではなくて、子どもの考えに耳を傾ける習慣をつけましょう。

一方で、子どもが話を聞いてほしいときに「うるさい」「いま忙しいから」など子どもの“サイン”を拒絶したり放任するのはNGです。そうすると、子どもは学校のことや自分の気持ちを話してくれなくなるでしょう。「うんうん、そうなんだね」と子どもを見て話を聞いてあげる。抱きしめたり、頭をなでたり、肩を抱いたりのスキンシップは、自立のために必要な親の愛情表現です。

わが子の自立のために家庭でできることを3つ挙げてみましょう。

  1. 自分のことは自分でさせる。
  2. お手伝いをさせる。
  3. 友だちと遊ぶ。

「早く〇〇しなさい」といった指示を減らし、子ども自身で考えさせる習慣を少しずつ増やしてみましょう。また、自立した精神を支えるのが自制心です。例えば、「テレビを見たいけれど宿題が終わってからにしよう」という我慢の気持ち。いじめが許されない行為であるということを心で理解するために必要です。

「お手伝いよりも、勉強してほしい」と考える人もいるでしょう。また、「お手伝いする!」と言ってきた子どもに「できるの?」「危ないからダメ!」「時間がないから、また今度ね」などと拒否したことのある人もいるのではないでしょうか。そうすると、子どもはチャレンジすることを諦めます。お手伝いを通して、親への感謝の気持ちや「自分にできることはないか」と考えることのできる子どもに成長します。

人間関係を学ぶためには、遊びを通して友だちと関わる体験がとても大切です。我慢したり、集団のルールを身に着けたり、上級生や下級生という上下関係の中で自分の役割を身に着けたり、優しさや思いやりの心も育っていくのです。

いじめっ子に話を聞くと「あれは、いじめじゃない」「相手にも、悪いところがある」「先生だって、ちゃんと見ていない」など行ったことを認めず、自分を正当化する言い訳が出てきます。自分の言動が相手の心を傷つけたということに気が付き、心からの反省を促すことがいじめ再発防止に一番大切な教育です。いじめっ子の心の奥にあるストレス、“いじめたい”という心と真剣に向き合うことが求められます。

皆さんのお子さんの将来の夢は、どんなものでしょうか。一度、聞いてみてください! そして、お子さんには「なぜ、夢を描けるのかな?」と問いかけてみてください。そして、こんなふうに伝えましょう。

夢を描けるのは、心が元気だから。人間の心は一番、大切なもの。心が元気だから学校に行けるし勉強しようと思える。もし、いじめられて心が傷ついてしまったら、夢を描く心の力が失われてしまうよ。自分の夢が大切なように、友達の夢も大切。その夢を壊すいじめは、決して許されないこと。励まし合って、夢のために一緒に仲良く学ぶことが大切なんだよ。

いじめのない安全な学校や社会を作るためには、学校・家庭・地域の善悪の価値観と正しい対処が求められます。子どもの心と命と未来を守るためにできる一歩を、私たち大人一人ひとりが真剣に向き合うことが大切なのです。

【いじめ問題の現状。なぜ学校でいじめがなくならないのか?<前編>はこちら】

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栗岡まゆみ

栗岡まゆみ

一般財団法人いじめから子供を守ろう!ネットワーク東京代表、JAÐP認定チャイルドコーチングアドバイザー。いじめ相談の他、9000人の児童・生徒に夢を描く心の力でいじめのないクラス作り授業・親子コミュニケーションセミナー・教師向け研修・シンポジウムを行う。ラジオ教育番組パーソナリティー・ラジオ日本・エフエム三重・ラジオ大阪などの出演、新聞掲載等幅広く活動している。著書に『いじめゼロを目指して~いじめ防止授業5000人の現場から~』(文芸社)『いじめっ子・いじめられっ子にならない7つのルール』(kindle) など。 栗岡まゆみ公式サイト(https://www.kurioka-mayumi.org/)

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