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2020.06.15

「共働きなのになんで私ばっかり!」”夫婦会議”で夫への不満を解消しよう

「何で私ばっかり…」という心の声は、夫婦を続けている中で誰もが一度は呟いたことのあるものなのではないでしょうか。連載「専門家が答える 夫婦関係のコーチング」、4回目となる今回は夫が子育てに対してどこか他人事だという妻の悩み。最近の夫婦関係において“夫はソト、妻はウチ”という考えは薄らいできたように感じますが、本当のところはどうなのでしょうか。

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今回のお悩み

小2の子どもが学校に行き渋るようになりました。いじめなどは特になく、何となく行きたくないのだそうです。毎朝、気乗りしない感じでモタモタしている子どもをなんとか盛り立てて学校に行かせようとしていますが、うまくいく日もいかない日も…。現在、学校を週に1~2回休んでいます。わが家は共働きですが私ひとりが対応し、夫はいつもどおり出社。相談してもどこか他人事で、自分が私の代わりに対応しようとは露ほども思っていません。私の親には「子どものために仕事を辞めろ」と言われるし、職場からもあまり理解を得られていません。「なんで私ばっかり?」と辛くなります。(妻40歳、夫40歳、長男13歳、長女8歳)

なんで私ばっかり…そんな夫婦関係を変えるカギを握るのは“夫婦会議” 

子どものことで悩み、けれどご主人も親も理解してくれない…。とてもしんどい状況ですね。この悩みから私が受け取れるのは、“夫に変わってほしい”という思いです。

これまで何度も話してきたように、“相手を変える=コントロールする”ことはできません。けれども、人は“変わりたくないわけではなく、人に変えられるのが嫌”なのです。

では、どこに解決の糸口を見出すのか。

それは、やはり“対話”です。今まで家族会議を提案してきましたが、今回のお悩みのような場合は夫婦水入らずでの夫婦会議をお勧めします。

そして、夫婦会議の中には

①相手を考えながら気持ちを伝えること
②相手に気持ちを吐き出してもらうこと

この2つのエッセンスを盛り込んでみてはいかがでしょうか。

①相手の気持ち考えて、自分の気持ちを伝える

相談者さんは、ご主人に対して「私は辛いんだ」という気持ちをちゃんと伝えているでしょうか?

“ちゃんと”というのは「私は被害者で、あなたは加害者だ」「共働きなのに、なんで私ばっかり」「あなただけ何もしないなんてずるい」などと伝えることではありません。「あなたが悪い」という相手を責めるメッセージではなく、あくまで冷静に自分の辛い気持ちや悩みを打ち明けてみてほしいのです。

「共働きなのにあなたは子どもに対して他人事だよね。どうしたらいいの、私?」と問い詰めても、良い方向には進みません。逆の立場で考えてみましょう。自分が相手に同じことを言われたら、良い気持ちがしませんよね。また、相談者さんのご主人は“良い父親”というもののイメージができていないとも感じます。イメージできていないことを行動するのは難しいですから、「〇〇してほしい」という要望と「夫婦で子どものサポートをした方がこういうメリットがあるよ」といった理由を具体的に話し合ってみると突破口が見えるかもしれません。

夫婦というのは近すぎる存在のため、どうしても感情が優先してしまうことが多いもの。しかし、例えばビジネスシーンでの交渉や調整事に置き換えてみるとどうでしょうか。相手と交渉や調整をする時、「〇〇さんは、こういう場合には△△と伝えた方がスムーズだな」「こういう言い方をしたら、相手が快く思わないな」と考えますよね。

つまり、夫婦会議における対話の中で自分を客観視してみてほしいのです。自分の発言が相手にどのようなインパクトを与えるのかということは、夫婦では身近過ぎてなかなか考えることは少ないかもしれません。相手に気持ちを伝える前に、まずは「自分が、この状況でこう言われたらどう思うかな?」と心の中で考えてみましょう。

②先に相手に気持ちを吐き出してもらう

関係性的に話し合いができない、もしくは自分の気持ちを伝えるのが難しいというのであれば、先にご主人の気持ちを聞いてみるのはどうでしょうか。

相手が自分に対して思っていること、不満に感じていることを全て出し切ってもらうのです。スッキリしてもらった後の方が相手の気持ちを受け止める余裕が生まれますし、相談者さん自身もご主人の気持ちで見逃している部分があるかもしれません。

「そうはいっても、なかなかそんな風にはできないよ」と感じるかもしれません。「うちの夫は話し合いというと嫌な顔をする」「なんとか夫を変えるには…」というご相談をよく受けますが、難しい問題です。そもそも、人を変えることはできません。自分に置き換えても、自分を誰かに意図的に変えられると思うと違和感がありませんか? いろいろな思想があると思いますが、私は関係性を改善したいなら向き合い、対話することをお勧めしています。言いたいことを言わずに我慢する、他のことで気を紛らわすという選択もあると思います。しかし、限られた人生、そのままでいいでしょうか? やはり今の状況を変えたいと考えているのなら、どこかのタイミングで腹を決めて行動し頑張る、つまりは対話をすることが必要だと思っています。

非常事態に備えるために、夫婦会議で“憲法”を作ろう!

この悩みの中で、気になった点があります。「なんで私ばっかり」というメッセージからも、相談者さんは“夫が子育てに参加していない”と認識しているのではないでしょうか。

もしかしたら、“子どもが生まれてからこれまでの間に夫が育児に参加してくれている”と実感したことがないのかもしれません。

“一緒に育児という体験をしていきたい”ということが相談者さんの願いなら、そのための話し合いや準備を二人でしておいた方が良かったかなと思います。お子さんが生まれて自然に夫婦で連携して、スムーズに子育ての役割分担ができる夫婦は少ないでしょう。逆に、共働きでも育児休業などが取りやすい女性が主に育児をする期間が長くなることで、男性が“育児に参加できないという経験”をしているという可能性もあります。その場合、ご主人としてはこれまでの13年の間に“育児は妻がするもの”という意識が無自覚の前提になっているでしょうし、もしかすると父親として育児に参加したいという気持ちがあっても参加する機会がなかった可能性もあるのです。

今回のお悩みには一見、夫のステレオタイプ的な性別役割分業意識が関係しているように思えます。けれど、実は相談者さんである妻自身も「私が育児をやるべき」という価値観にどこかで縛られている部分があるのではないでしょうか。

お子さんの学校の行き渋りに対しても、相談者さんは「子どもを学校に何が何でも行かせなければならない」という呪縛にとらわれているように感じます。しかし、何度も言うように相手をコントロールするのは不可能。受動的ではなく、能動的にしか人は変わりません。学校に行かせることを目的とせず、なぜ行きたくないのかをまず寄り添い、理解すること。お子さんに強制するのではなく、自分がどんな願いを求めているか改めて言葉にしてみるのもいいでしょう。いずれにせよ、一度ゆっくりリラックスしてお子さんと話してみて欲しいかなと思います。

人は誰しも“~するべき”という価値観を持っています。しかし、そのことが自分の重石になってしまうこともあります。「母親だからこうすべき」という、無自覚の前提(価値観)に縛られている可能性もあるのです。

私はパートナーシップコーチとして活動する中で、長年「結婚したタイミングで、こういった価値観を互いに理解し、パートナーシップについて対話をしておく」ことをお勧めしています。仕事に例えるなら、一緒にチームを組む二人が対話ができない、互いに理解できないというのは良くありませんよね。今からでも、夫婦だけの“憲法”(ルール)を作ってみてはどうでしょうか。

決めたいことが多かったり要望が多くなったりすると再びトラブルの元になる可能性もあるので、シンプルでいいと思います。オススメなのは“非常事態に備えての約束事”、“喧嘩した時のルール”だけを決めておくこと。わが家の場合、ちょっとお互いかみ合わない時には”今は話すのをやめる“というのを決めています。かみ合わないのに無理にかみ合わせようとしても、火に油を注ぐようなことが多かったのですが、これを取り入れてから理由が分からない喧嘩はなくなったように思います。

夫婦会議がうまくいく3つのポイント

夫婦会議について、特に普段から対話をする習慣がない夫婦の場合はその方法にもひと工夫が必要です。

次の3つのポイントを覚えておいてくださいね。

  1. 夫婦会議の予告
    夫婦会議をすることを、事前に夫に話しておきます。男性は突発的なこと、不意打ちが女性よりも苦手だといわれています。状況を把握していたい、コントロールしたいという欲求からくるものなので夫にも“心の準備”を整えてもらった方が良いのです。いろいろな想定ができますが、「真剣に話したい」という気持ちをまずは伝えてみましょう。

     

  2. 相手ファーストを心掛ける
    夫婦会議(対話)がスタートしたら、まずは相手から話してもらいましょう。「突然、夫婦会議って言い出してびっくりしたでしょう?」と相手をおもんばかり会話を切り出したり、「時間とってくれてありがとう」と感謝を伝えるのも良いでしょう。

     

  3. ファイティングモードにならない
    話し合いの目的が、相手を打ち負かすことではなく理解し合いたいのだということを忘れないでくださいね。相手は「不満を言われるのだ…」とかたくなになっている可能性もあるので、“純粋な対話”であることを実感してもらえるとスムーズだと思います。

しかし、対話や自分の気持ちを言語化することが苦手な男性もいます。その場合は「私へのリクエストをください」というのもいいですね。「もうすぐあなたの誕生日だから、リクエストやアドバイスを何でも聞くよ!」というのも面白いかもしれません。

いろいろな工夫をしても“相手が協力的でない”、“話し合いの場に着いてくれない”ということもあるでしょう。その場合は、本当にこの後の人生を一緒に過ごしていくパートナーなのか考えてみてもいいと思います。我慢をすることが結婚生活の大半を占めるのは悲しいですよね。

最後に、このような夫婦の対話の前に一番に大切にしてほしいのはとにかく自分を認めてあげて欲しいのです無自覚の“~しなければならない”がいっぱいあるお母さんは、本当に大変です。だからこそ、人と比べてできていないことではなく、頑張っている自分をまるで親友を褒めるように大切にしていただきたいと思います。

<構成・執筆 ソクラテスのたまご編集部>

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白土詠胡

つなぐカンパニー代表。筑波大学出身。大学卒業後、大手人材サービス企業に就職した後、(株)リクルートマネジメントソリューションズ組織行動研究所研究員を経て、コンサルタント・コーチとして独立。大手企業~中小企業まで幅広く各種研修・コンサルティングを行いながら、夫婦関係やパートナーシップ・家族のより良い関係性をテーマに活動中。小学生の娘と保育園児の息子の育児にも奮闘中! 【つなぐカンパニーお問い合わせ eikoshirato@tunagu-all.jp】  サステナブルな社会を目指し、オーガニックな野菜の生産・販売などを行う(株)いかす(https://www.icas.jp.net/)にてワーキングマザー向けの食育イベントなど実施している。

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