仕組みを知って効率アップ! 暗記マスターを育てる虎の巻
英単語、漢字、歴史年表、古典文法など、勉強をする際に暗記は避けて通ることができない作業です。しかし、“暗記をする”とは、どういうことかを理解をしている人は意外と少ないようです。暗記に必要なのは、知識を引き出すアウトプット力です。暗記力を高めるために、暗記について改めて考えてみましょう。
大切なのは知識を取り出しやすくするためのきっかけづくり
暗記といえば、“知識を頭の中に叩き込む”すなわちインプットするというイメージが強いかも知れません。
しかし、実際に求められているのは逆のこと。必要なときに適切に知識を引き出すアウトプットする力が要求されています。つまり、暗記をするということは、“いかに思い出しやすくするか”ということなのです。
つまり、暗記したはずなのに思ったように成果が出ないというのは、単純に頭に入れるためだけに作業をしているからなのです。 では、思い出しやすくする工夫とはどのようなものなのでしょうか。それは“思い出しやすくするきっかけを作っておくこと”です。なじみがあるものでいえば、語呂合わせはいい例であり、その響きと知識を関連付けておくことで思い出すきっかけを作っています。
また、語呂合わせと並行して、ほかの知識との関連性やエピソードなども併せて思考していくと、より思い出すきっかけが増えて深い理解と定着につながりやすくなっていきます。 例えば、理科でBTB液の反応は「黄色さん(酸)緑にチュー(中)して、あれから(アルカリ)ブルー(青)」というような語呂合わせで暗記をしておいて、“リトマス試験紙の反応もアルカリ性は青だから、BTB液と共通だな”、などの情報も追加すれば、より知識の定着が深まっていくはずです。
事態の必然性を活用して暗記力を高める
アメリカの心理学者J・D・ブランスフォードの研究(※)を紹介したいと思います。まずは次の文を覚えて下さい。
①背の高い人が花火を買った。
②はげ頭の人が新聞を読んだ。
③ふざけた人が指輪を好んだ。
④腹のすいた人がネクタイを買った。
⑤背の低い人がほうきを使った。
⑥力の強い人が本を流し読みした。
上記を暗記する際に下記の流れで暗記する方が多いのではないでしょうか。
背の高い人を想像
↓
身近な人物、または著名人で背の高い人を思い浮かべる
↓
その人物が花火を買っている姿を想像する
さらに“背が高いとはどれくらいを指すのか”とか“花火はどのような花火なのか”など具体的に考えておくことでより定着しやすくするという方法です。
しかし、ブランスフォードは“そもそもどうして背の高い人が花火を買ったのか”を考えることを提案しました。背の低い人や太った人ではなく、背の高い人でなければならない“必然性を持つ事態”を考えるということです。 上記であれば、棚の最も高い所に置いてあった花火を背の高い人がひょいっと取って買ったという事態を考えてみるという具合に関連付けるのです。 同じように②のケースでは、はげ頭の人がカツラの広告を見るために新聞を読んだ、というように人が“必然性のある事態”を思い浮かべることによって記憶が飛躍的に向上するということを実験的に明らかにしました。
暗記に必要な力は語彙力や表現力
これまで説明してきたように「暗記する」という行為を分析してみると、結局、暗記は言語活動なのではないか、という印象が強くなります。
思い出すきっかけを作るために関連性を作ったり、エピソードなどを追加したり、他の知識との共通項を見出したり、そしてブランスフォードのように必然性のある事態を思い浮かべてストーリーを創作したり、いずれも言語による紐づけを行なう作業といえるでしょう。
そうなると、暗記をする上で重要になる力は言語を扱う力であり語彙力や表現力の幅が広い方がより暗記をする上での言語活動を豊かにすることにつながっていくと考えられます。つまり、子どもたちの学力を向上させる基本はやはり国語力にあるのではないでしょうか。 個人的な主観が入っていますが、中途半端に英語教育に力を注ぐことよりも必要なのは言語力です。国語はすべての教科の土台となる、というのは言い過ぎではないと私は考えます。
※「わかり方の探究」佐伯胖、小学館(2004)より引用
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大手進学塾で長年指導を行ない、2007年に「イラスト図解でわかるプロ教師力アップ術55」(明治図書)を出版。教育委員会・各種学校などで教員研修を行ないながら、私立中高一貫校の学校改革などを手掛けている。また、「ロボット教室」や「学習教室まなび-スタイル」の運営、「よい子を育む家」の監修なども行ない、教育について幅広く活動を行っている。