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2024.08.28

生きづらいのは親のせい?発達障害の親の特徴や影響、親との付き合い方などについて解説

「日々生活している中で、大変なことが多い」「生きづらさをたびたび感じる」といった悩みを持っている方もいることでしょう。そしてそんな悩みの背景には、「親が発達障害だった」または「自身が発達障害だった」ということがある場合も少なくありません。
そこで今回は、親が発達障害の場合その子どもにどんな影響があるのか、また発達障害の親とはどのように関わればいいのか、ということを中心に解説していきます。ぜひ参考にしてください。

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この記事を執筆したのは…

藤原美保さん

療育20年、放課後デイ10年運営のベテラン。子どもの「できない」に悩む親へ、行動の原因と対策に徹底的にサポート。幼少期にこそできる家庭内療育を提供。発達障害の子への性教育も。

そもそも発達障害とは?

alt発達障害

発達障害とは、身体が成長する過程において「神経発達が典型的ではない発達の仕方をする」ことによって日常生活において学習、行動、社会的な相互作用、コミュニケーションなどの様々な社会活動に困難さを感じる人のことを指します。

自閉スペクトラム症(ASD)

社会的な相互作用やコミュニケーションにおける困難、特定の興味や行動の繰り返しが特徴です。

注意欠陥・多動性障害(ADHD)

注意力の持続が難しい、過度に活動的になる、衝動的な行動を取りやすいなどの特徴があります。

学習障害(LD)

読み書きや計算などの特定の学習分野において著しい困難を伴う障害です。

知的障害

 知的機能が平均よりも大幅に低く、日常生活において支援が必要な状態を指します。

しかしながらこれらの障害が同時に存在する重複するケースも多数あります。そのうえ環境要因なども影響するので医師が診断をする際には幼い頃からの既往歴などを鑑みる必要があります。そのため診断までに時間がかかるケースが多いのです。

発達障害の診断にあたって基準となるものについて

なお医療機関などで、発達障害を診断するにあたり基準としているものは主に以下の2つです。

DSM-5(精神障害の診断と統計マニュアル 第5版)…アメリカ精神医学会が発行しているこのマニュアルは、日本でも精神科医が診断に利用しています。

ICD-11(国際疾病分類 第11版)…ICDは、世界保健機関(WHO)が発行している国際的な疾病分類の基準です。日本でもICD-11が使用されており、特に医療機関や行政機関における診断や統計に用いられます。ICD-11では自閉症スペクトラムに含まれる多様な症状を包括的に扱うために自閉症、アスペルガー症候群などを「自閉スペクトラム症」として一括りにされています。

発達障害のある親の特徴とその影響

発達障害のある親は、子育てにおいて特有の課題に直面することが多く、これが子どもにどのような影響を及ぼすかは重要な問題です。以下は、発達障害を持つ親の典型的な特徴と、それが子どもにどのように影響を与えるかについてです。

1. 自閉スペクトラム症(ASD)の場合

自閉スペクトラム症を持つ親は、社会的な相互作用や感情の読み取りが難しいことが多く、子どもとのコミュニケーションや感情的なつながりに影響を与えることがあります。
例えば、子どもが感情を表現しても、それを適切に理解したり共感したりすることが難しく、結果として子どもは孤独感を覚えることがあります。

また、ASDの親は日常生活のルーチンや規則に対して強いこだわりを持つことがあり、子どもの予測不能な行動が強いストレスの原因となることが少なくありません。

さらに、ASDを持つ親は音や光、触覚に対して過敏であることが多く、子どもの日常的な行動(例えば大声で話す、激しい遊びをするなど)が親にとって強いストレスとなることがあります。

2. 注意欠陥・多動性障害(ADHD)の場合

注意欠陥・多動性障害を持つ親は、注意の持続が難しく、子どもに対して継続的な注意を払うことが困難な場合があります。これは、特に子どもの安全を確保する必要がある場合に問題となり、親が注意を払えないことで事故やトラブルが発生する可能性があります。

さらに、ADHDの親は衝動的な行動が特徴であり、感情的な反応が激しい場合があり、これが子どもに対して一貫性のない対応を引き起こすことがあります。

こうした行動は、子どもに混乱や不安を与え、親子関係に悪影響を及ぼすことが考えられます。また、ADHDの親はスケジュール管理が苦手であり、家事や子どもの学校行事などのスケジュールを適切に管理できないことが多く見られます。こういったケースは家庭内に混乱を生じさせ、子どもにとって精神的に安定した環境が保たれなくなることがあるのです。

3. 学習障害(LD)の場合

学習障害を持つ親は、特定の学習領域での困難を抱えているため、子どもの学習面でのサポートや学校からの連絡の対応に影響を及ぼすことがあります。

親が自分の学習能力に自信を持てない場合、子どもに対して同じ不安を投影することがあり、過度に勉強を強要したり、逆に必要な支援を提供できなかったりすることがあります。その結果、子どもが学習に対して不安を抱いたり、学習意欲を失ったりするリスクが高まります。

4. 知的障害の場合

知的障害を持つ親の場合、その障害の程度によっては、家庭全体が外部からのサポートを必要とすることがあります。例えば知的障害の親は、子どもの基本的な生活習慣を教えることが難しい、危険から守れないなどこれらが子どもの成長や発達に影響を与えることがあります。
また、家庭内でのコミュニケーションが制限されるため、子どもが外部の支援を受ける機会が限られる可能性もあります。

発達障害のある親を持つ子どもによく見られる傾向

適切な支援を受けられないまま親になった発達障害の方が親となった場合、その子どもはどうしても心理的・社会的な影響を受けます。その中には次のような傾向が見られる場合があります。

1. 自己評価の低さ

親との感情的な交流が十分でない場合、子どもは感情的に抑圧された生活を送りやすくなり、自分の感情を適切に表現することが難しくなる場合があります。特に、感情表現に対して親からのフィードバックが少ない場合、子どもは自分の感情や行動に対して適切な評価を受ける機会が減り、自己肯定感や自尊心の形成に悪影響を及ぼします。

その結果、子どもは自分の価値を低く見積もりがちになり、自己評価が低くなる傾向が強まります。自己評価の低さは、成長過程においてさまざまな面で子どもに不利益をもたらし、社会生活や人間関係においても困難を引き起こす場合があります。

2. 共感性の欠如

発達障害を持つ親の中には、共感性が低い場合があり、その結果、子どもに対して適切な理解や共感を示すことが難しいことがあります。親が子どもの感情やニーズを理解できない場合、子どもは自分が大切にされていないと感じることがあり、これが子どもの共感性の発達にも悪影響を及ぼします。

共感性の欠如は、子どもが他者との健全な関係性を築く上で大きな障壁となり、将来的に社会生活での孤立やトラブルを引き起こす要因となり得るのです。

3. 集団行動の困難さ

親が集団行動を苦手とする場合、その影響が子どもに及ぶことが多く、子ども自身も対人関係のスキルに課題を感じることがあります。特に、社会的なスキルや集団での振る舞いが難しい場合、子どもは学校や地域社会での人間関係を築くことが難しくなり、孤立感が高まります。集団行動の困難さは、子どもの社会的適応能力に直接的な影響を与え、長期的には社会的な孤立や精神的な健康問題を引き起こすリスクにつながります。

適切な支援を受けられないまま親になった発達障害の方が親となった場合、家庭内での関係性や環境を適切に構築することが難しくなることがあります。周囲の理解を得られない状況が続くと、家庭内の不安定さが増し、親子共に安心感を持つことが難しくなります。こうした状況が長期にわたると、親子のパワーバランスから虐待に繋がる場合があります。

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発達障害は遺伝するのか?

発達障害は遺伝的要素が影響するため、親が発達障害を持つ場合、その子どもにも発達特性が見られることが少なくありません。特に神経発達の仕方の特性は遺伝要素が大きく影響します。親が発達障害を持つ場合、家庭内でのコミュニケーションや関係性において様々な問題が発生しやすいのは事実です。

自閉スペクトラム症(ASD)の遺伝確率

遺伝的要素が強く関与していることが明らかになっています。双子研究によれば、一卵性双生児で片方がASDである場合、もう片方もASDである確率はおおよそ60%から90%と言われています※1。

注意欠陥・多動性障害(ADHD)の遺伝確率

研究によると、ADHDを持つ親から生まれた子どもがADHDを持つ確率は、おおよそ25%から50%とされています※2。

学習障害(LD)の遺伝確率

学習障害(LD)についても遺伝的な影響があるとされています。特に、読字障害(ディスレクシア)の場合、親が同じ障害を持っていると、子どもにその障害が現れる可能性が40%から60%と報告されています※3。

なおこれらの数字を見るとお分かりいただけるかと思いますが、遺伝以外の要因もあります。時代背景やその国の文化や遺伝子異常、親の高齢など障害の要因は様々です。

発達障害のある親との付き合い方

発達障害のある親との付き合い方は、自分の立場や時期や状況によって対応が変わります。

特に、親から心理的、ネグレクト、身体的、性的な虐待を受けていた経験がある場合、まずは親との物理的な距離を置くことが推奨されます。自分自身が独立して既に家庭を持っている場合、親との関係が家庭に悪影響を及ぼしている場合は、自分自身と家族の精神的な健康を守るためにも、親から距離を取ることは非常に重要です。残念ながら、親を変えることはできません。親に対して期待を抱くことは、かえって問題を複雑化させるリスクがあります。

特に、子育ての支援を親に期待するのは控えた方が良いでしょう。子育ての時期は、自分の家庭を第一に考え、親に振り回されないようにすることが重要です。親と付き合うのは自分自身に余裕があり、逆に自分が親を「理解してあげよう」という立場になれるようになってからが良いと思います。

子どもの気持ちを理解できない親

発達障害のある親は、しばしば子どもの気持ちを理解することが難しいと感じることがあります。子どもは親から理解されたい、愛されたいと願うものですが、発達障害のある親はその感情をうまく理解できないことがあります。ある程度の年齢にさしかかると親に対して怒りや失望を感じたりすることがあります。
最近は「大人の発達障害」「毒親」「親ガチャ」などの言葉がSNSでもみられ、様々な情報が目に飛び込んできますが、家族の呟きからも親子関係で苦しんでいる方が発信されている様子がうかがえます。

しかし、子どもからすると驚くかもしれませんが、親自身は、自分の子どもを「大切にしていた」、「愛していた」と心から信じていることが多いのです。親本人としては自分の「愛情」がなぜ子どもに伝わらないのか?と思っているのです。つまり発達障害の特性ゆえに接し方が解らないのです。

障害特性によって、子どもの気持ちをイメージできず自分の意見の「押し付け」になってしまっていることに気づけていないのです。よく発達障害の家族の方がカサンドラ症候群になりやすいのはこういった理由からです。

発達障害の親に自分の気持ちを理解してもらいたいという願いは非常に困難で、その努力を続けることは自分自身を疲弊させるだけです。特に子育て中は自分のエネルギーを、自分や家族のために使うことをおすすめします。

カサンドラ症候群とは?

カサンドラ症候群は、パートナーや家族にASDなどの発達障害を持つ人がいる場合、適切な感情的つながりやコミュニケーションが取れないことから生じる心理的な症状を指します。症状には、孤独感、自尊心の低下、不安、うつ状態などが含まれ、これが長期間続くと精神的な健康に深刻な影響を与える可能性があります。

<関連記事はこちら>「もう疲れた…」発達障害児の親なら可能性がある「カサンドラ症候群」への対処法

まとめ

親が発達障害であることで生きづらさを感じている場合、誰かに話を聞いてもらうだけでも気持ちがラクになる、落ち着くことがあります。ただ周りの人に話を聞いてもらうのに抵抗がある、難しい場合もあるでしょう。そんなときはカウンセリングルームを訪れたり、オンラインカウンセリングを利用して専門家に相談することをおすすめします。

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※データ出典元                                        ※1 Archives of General Psychiatry J. Hallmayer, et al. (2011) ※2 Current Psychiatry Reports Faraone, S. V., et al. (2005)  ※3 Journal of Child Psychology and Psychiatry DeFries, J. C., et al. (2007)

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