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2024.06.18

夜尿症とはなにか?夜尿症の定義やおねしょとの違い、発達障害との関係などについて専門医が解説

夜寝ている間に無意識におしっこしてしまい、パジャマや布団などをぬらしてしまう「おねしょ」は、親であれば誰しもが直面するものです。しかし、ある程度の年齢になっても頻繁におねしょをするとなると、心配になりますよね。中には「夜尿症かも?」と思う方もいるかもしれません。

そこで今回、夜尿症・小児の排尿障害・小児の腎臓病を専門にし、多くの子どもの治療にあたってきた池田裕一先生(昭和大学横浜市北部病院こどもセンター・センター長)にお話を伺いました。この記事では、夜尿症の定義や原因、治療方法、さらに発達障害との関連性について詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。

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話を伺ったのは…

池田裕一医師

昭和大学医学部卒業。日本小児科学会専門医・指導医、日本腎臓病学会専門医・指導医。2005年より「おしっこトラブルどっとこむ」で、医学的に正しい視点から、子どもの夜尿症や日中のお漏らしの相談にのっている。テレビ(NHKなど)や新聞、雑誌などメディア出演多数。

夜尿症とは?

夜尿症とは、5歳以上の子どもが夜間に月1回以上おねしょをする状態のことです。一般的に、夜尿症は3ヶ月以上継続することが診断の基準とされており、年齢別では5歳で全体の15%、10歳で5%、15歳で2%ほどおり、決して珍しい症状ではありません。なお性別では男児が女児の約2倍にもおよびます。

おねしょと夜尿症の違い

おねしょは、赤ちゃんや幼児が寝ている間に自然におしっこをしてしまう現象を指します。おねしょは生理的なものであり発達の過程で起こるもので、大半の子どもは5歳までに排尿機能や神経学的な発達によって、おねしょをしなくなるものです。しかし、一部の子どもはこの時期を過ぎてもおねしょをし、この状態を夜尿症と呼びます。
おねしょの頻度が月に1、2回程度なら自然治癒を待っても問題ありませんが、毎日のように続く場合は早めに病院を受診することをおすすめします。

夜尿症の主な原因とは?

夜尿症の原因はいくつか考えられますが、主なものは以下になります。

①夜間多尿

通常、体は夜間に尿の生成を抑えるホルモン(抗利尿ホルモン)を分泌しますが、このホルモンの分泌が不足している場合、夜間に過剰におしっこが作られてしまいます。

②膀胱容量の不足

膀胱の容量が小さく、おしっこを十分に溜められないために、夜間に膀胱が満杯になりやすく、おねしょを引き起こします。

③覚醒障害

膀胱がいっぱいになると通常は脳が刺激を受けて目が覚めますが、夜尿症の 子どもはこの覚醒機能が未発達であるため、刺激に反応しにくく、おもらしをしてしまうのです。

なお夜尿症は、大人でも全体の1%、中学生ぐらいでも5%はいると言われています。

夜尿症の種類とは?

夜尿症は、その発症時期によって二つに分類されます。

①継続的な夜尿症(一次性夜尿症)

生まれてからずっと続いている夜尿症のことを指します。排尿制御の発達が遅れていることが、その主な原因です。

②突然の夜尿症(二次性夜尿症)

特定の原因(糖尿病、バセドウ病、精神的トラウマなど)によって引き起こされる夜尿症のことです。病気やストレスなどが引き金となり、夜尿症を発症します。

夜尿症の治療方法とは?

夜尿症の治療には以下の方法があります。

①薬物療法

抗利尿ホルモン剤や抗コリン薬などを使用します。抗利尿ホルモン剤は、夜間の尿生成を抑える効果があり、抗コリン薬は、膀胱の収縮を抑えて尿の保持を助けます。

②生活習慣の改善

夜間の水分摂取を制限し、寝る前に必ずトイレに行く習慣をつけることが重要です。また、規則正しい生活リズムを確立することも効果的です。

③行動療法

排尿をコントロールするためのトレーニングを行います。例えば、夜中に目覚まし時計を使い、定期的にトイレに行く訓練を行ったりします。

年齢別の治療の進め方

治療方法は子どもの年齢によって異なります。

①小学校未満の子どもの場合

基本的な夜尿症治療を行います。この年齢においては、生活習慣の改善と軽い行動療法が中心となります。

②小学生の子どもの場合

通常の夜尿症治療に加えて、薬物療法を併用することがあります。また家庭と学校が連携し、トイレ習慣を確立することも重要になってきます。

③中学生以上の子どもの場合

この年齢では、睡眠リズムの調整を重視します。例えば、夜更かしを避けて規則正しい睡眠パターンを維持する、といったことです。また、心理的なストレスを和らげる、避けることも大事です。

受診の目安と症状とは?

以下の症状がある場合、早めに医療機関を受診することをおすすめします。

①昼間のおもらしがある場合

昼間のおもらしがある場合、膀胱の機能に問題がある可能性があります。

②発達障害と診断されている・発達障害の可能性がある場合

発達障害と診断されていない場合でも、夜尿症を通じて発達障害のスクリーニングを行うことが有益です。

なお当院における過去5年間の統計では、夜尿症で困り来院した患者のうち3割以上に発達障害がみられましたが、適切な治療を受けた結果、ほとんどの子どもが夜尿症も発達障害も改善しました。

③中学生以上でも夜尿症が治らない場合

中学生以上で夜尿症の場合、睡眠障害との関連性が疑われます。

家庭でできる夜尿症の子どもへのサポートとは?

夜尿症の子どもをサポートするために、家庭でできることについて紹介します。

①水分管理をする

日中にしっかりと水分を摂らせ、夕方以降の水分の摂取を控えるようにしましょう。これにより、夜間の尿量を減らすことができます。

②トイレ習慣を確率させる

寝る前に必ずトイレに行く習慣をつけさせましょう。また、朝起きたときや食事の前後など、定期的にトイレに行く時間を設けると良いでしょう。

③夜尿症についてきちんと理解し、励ます

子どもが夜尿症を恥ずかしく思わないように、きちんと理解した上で接してあげましょう。夜尿症は、治療によりほとんどの子どもの症状が改善されます。精神状態も夜尿症の症状に影響を与えるため、子どもへの関わり方には気を付けたいものです。

④専門医に診てもらう

必要に応じて専門医を受診し、適切な治療を受けましょう。早めに診断してもらうことで、治療もスムーズに進みます。

発達障害の子どもが夜尿症を起こしやすい理由とは?

夜尿症は、発達障害と関連があるケースも少なからずあります。特に半年から1年経っても治らない難治性の夜尿症の場合、発達障害である可能性が高いと言われており、治療においては注意が必要です。

なお、発達障害の子が夜尿症を併発しやすいと言われる理由は、以下の通りです。

①睡眠障害との関連がある

発達障害の子どもは睡眠障害であることが多いのですが、睡眠障害があると、深い眠りに入りすぎてしまい、膀胱が満杯になっても目が覚めないことがあります。通常、膀胱がいっぱいになると脳が刺激を受けて目が覚めますが、発達障害の子どもはこの刺激に反応しにくい傾向があります。これにより、膀胱が満杯になっても覚醒せず、おもらしをしてしまうのです。

②生活習慣の指導が難しい

発達障害の子どもは、生活習慣の改善(例えば、寝る前のトイレや夜間の水分制限など)がうまくできないケースが目立ちます。そのために夜尿の管理が難しいことが多いものです。特にADHDの子どもは注意力が散漫で、親の指示を忘れやすい傾向があるのですが、そうなると夜尿症の治療もなかなか進みません。

③神経学的な発達の遅れがある

発達障害の子どもは、排尿をコントロールするための神経学的な発達が遅れていることがあります。これにより、夜間に膀胱からの信号を適切に処理できず、夜尿症を引き起こすことがあります。

④ストレスなど心理的要因

発達障害の子どもは日常生活でストレスがかかっていることが多く、それが夜尿症に影響を与えることがあります。家庭や学校でプレッシャーがかかったりすると、夜間の排尿パターンに影響を及ぼすことがあります。

発達障害の子どもへの夜尿症治療のアプローチとは?

夜尿症の治療は発達障害の子どもであっても、基本的には一般の治療と変わりません。ただし、個々の状況に応じてそのアプローチを調整することが重要です。
例えばADHDの子どもには、より細かく時間を区切ったスケジュール管理が必要な場合もありますし、発達障害に特化した心理療法や行動療法を併用することが効果的な場合もあります。

以下に、発達障害の子どもへの夜尿症治療において効果的なアプローチを挙げてみます。

①治療計画の個別化

発達障害の種類や症状の重さに応じて、治療計画を個別化します。例えば、ADHDの子どもには行動療法が、自閉スペクトラム症(ASD)の子どもには、ぱっと見て分かりやすいスケジュール表やリマインダーが有効である場合があります。

②家庭と学校が連携し、子どもをサポートする

発達障害の子どもの夜尿症の治療には、親をはじめとした周囲の人たちの協力が不可欠です。家庭と学校が連携し、子どもに一貫したサポートをすることで、夜尿症が改善されることがあります。例えば、家庭では定期的にトイレに行かせる、学校ではトイレ休憩の時間を設けてもらうなどといったことです。

なお、夜尿症と発達障害の治療を並行して進めることで、いずれもが大きく改善した例は多くあります。例えば、ADHDの子どもが夜尿症治療を受けることで日中の行動も落ち着き、学校生活が改善されたケースなどです。

夜尿症の治療が発達障害の子にもたらす副次的な効果とは?

適切な治療を行うことで、発達障害の子どもでも夜尿症の改善が見込めます。また夜尿症治療を進めることで、発達障害の症状も改善することがあります。では具体的にはどんな効果があるのでしょうか。

副次的な効果①睡眠の質がアップし、さまざまな能力が向上する

夜尿症が改善すると、子どもの睡眠の質がアップします。これにより、日中の集中力や行動が改善され、学校や家庭でそれまで以上に能力が発揮できる場合があります。

副次的な効果②心理的に安定する

夜尿症の悩みから解放された子どもは、自尊心が上がり、心理的に安定する傾向があります。そしてストレスや不安が軽減され、生活の質が向上します。

副次的な効果③社会的スキルの向上

夜尿症があることで行動が制限されていた子どもの場合、夜尿症が改善されることで、より自信を持って社会的な活動に参加できるようになります。友達との関係がよくなる場合もあるようです。

保護者の方へのメッセージ

夜尿症と発達障害を併発していても、適切な対応をすることで改善が見込めます。可能であれば専門医に診てもらい、治療や指導を受けてください。
夜尿症の悩みがなくなることで自信を取り戻し、生活の質が上がったお子さんの姿を今までたくさん見てきました。ぜひ、諦めずに前向きに取り組んでください。

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