子どもの豊かな心を育む「情操教育」とは?学びに向かう力や思考力、表現力も伸ばせる
子どもの心を豊かに育む「情操教育」をすることで、個性を伸ばし、価値観や道徳心を養うことができるといわれています。特に子どもの人格形成において重要な就学前から小学生までは、情操教育に最適な時期。情操教育がなぜ大切なのか、家庭でどのように取り入れることができるのか、ご紹介しましょう。
子育て情報などで「情操教育が大切」と耳にしたことはありませんか? 情操教育は家庭でも取り入れられる教育法ですが、具体的にどんな教育で、何をしたらいいのか分からないという方もいるかもしれません。今回は、情操教育の意味や目的、家庭で取り組めることなどをご紹介します。
目次
情操教育ってどんなもの?
まず、「情操教育とは何か」ということから見ていきましょう。情操教育の意味や目的、効果を知れば、情操教育の大枠が見えてくるはずです。
情操教育とは?
情操教育とは、子どもの「情操」を育てる教育のことです。情操とは、何かに触れて感動する心や他者への愛情・思いやりといった、「心」や「人間力」全般を意味します。
情操教育の目的や効果とは?
情操教育には、子どもの創造性や個性を伸ばし、価値観や道徳心を育てるという目的があります。
これらは、予測が困難で複雑性が高い、大きく変化していくこれからの社会において必要な資質や能力を育むための教育でもあります。
文部科学省は、これからの時代に求められる資質・能力を、以下の「三つの柱」としてまとめていますが、なかでも2つ目の「思考力・判断力・表現力」と3つ目の「学びに向かう力、人間性」は、情操教育によって大きく伸ばすことができるでしょう。
育成すべき資質・能力の「三つの柱」
- 何を知っているか、何ができるか(個別の知識・技能)
- 知っていること・できることをどう使うか(思考力・判断力・表現力等)
- どのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか(学びに向かう力、人間性等)
情操教育の4つの種類
情操教育は大きく4つの種類に分けられ、それぞれ培われるスキルが異なります。子どもの興味や保護者が期待する効果、成長段階に合わせて取り組むことを選んでいくと良いでしょう。
情操教育の4つの種類とその効果について見ていきましょう。
1. 美的情操教育
美的情操教育では、子どもの感受性や創造力を広げるのに役立ちます。「美しい」「きれい」など心の震えるような感覚が、豊かな心を育むのです。
期待できる効果
・芸術への興味関心を高める
・感受性を養う
2. 道徳的情操教育
人生は判断の連続です。正しく判断するためには、善悪の理解がないといけません。道徳的情操教育は、人としての生き方・あり方を知っていくための教育です。
期待できる効果
・善悪を考えて、それをもとに物事を判断できるようになる
・思いやりが身につく
・協調性を育む
3. 情緒的情操教育
情緒的情操教育は、自分も相手も動物も、命あるものを大事にしながら生きていくための教育です。「自分は自分のままでいい」「今のままで十分、価値のある人間だ」と思える自己肯定感も育まれます。同時に相手を尊重する心も養えます。
期待できる効果
・命の大切さを知る(自分の命、他人の命、動物の命など)
・日々の生活の中で相手を尊重できるようになる
4. 科学的情操教育
「知らないことを知ることが楽しい!」と思えたら、主体的に学び、行動できる子に成長していくでしょう。科学的情操教育は「なぜ?」「どうして?」を学びに変えていく教育です。
期待できる効果
・知的好奇心を満たせるので学ぶ意欲が向上する
・主体的に考えて実行する力が身につく
情操教育に適した年齢や時期は?
情操教育は、一般的に3歳~10歳頃に始めるのがよいとされています。3歳~とされているのは、他人の気持ちを推し量れるようになるのが、だいたい3歳頃だから。
ただ、子どもによって成長の度合いはまちまちです。年齢はあくまで目安でしかないので、情操教育を始める時期は子どもの様子を見ながら決めていきましょう。
情操教育をすることのメリット
情操教育には、前述の「三つの柱」の資質・能力を育てられるなど、さまざまなメリットがありますが、ここでは具体的な4つのメリットをご紹介します。
1.豊かな表現力が育つ
美的情操教育を行うと、美しいものを美しいと思える豊かな心が育ちます。感受性の高さは感性だけではなく創造力も育みます。これらは子どもの表現力を育ててくれるはずです。
2.社会性と協調性が向上する
道徳的情操教育を行うと、社会性や協調性が養われます。「自分で判断しながら他者と協調して生きていく」という、社会生活を送る上で欠かせない土台ができあがります。
3.相手を尊重できる
幼いと「自分が」「自分が」となりがちですが、情緒的情操教育をすることで相手を尊重する心を育めます。自分はもちろん、他者、動物、昆虫など、すべての生物の命を大切にできる、思いやりのある人に育つでしょう。
4.自分で考えて行動できる
科学的情操教育を行うことで、子どもは知的好奇心を満たされます。次から次に出る「なぜ?」「どうして?」の疑問が科学的に解明できたら、「なるほど、楽しい!」と感じるもの。「これはどうかな?」「こうしてみたらどうなる?」など思考↔︎行動の習慣の定着は、子どもの学びの根幹になりそうです。
家庭でできる情操教育
情操教育は、専門のスクールに通わなければできないというわけではありません。放課後や休日などに次のような学びを取り入れることで、家庭でも子どもの豊かな心や人間性を育むことができます。
自然との触れ合い
家の庭やベランダで、家庭菜園をしてみませんか? 子どもと成長を楽しむことで、自然への関心はもちろん、季節の移り変わりにも触れることができます。水やりや虫よけなど、毎日のお世話を通して命の大切さも知るでしょう。
読書や物語の読み聞かせ
想像を広げられたり感受性を豊かにしたりできる読書。幼いうちはもちろん、文字をある程度すらすら読めるようになってからも、保護者が読み聞かせをしてあげてください。読み終えた後に、「あのシーン、あなただったらどうする?」「あの時、〇〇(登場人物)はどんな気持ちだったのかな」など親子で話し合うと、さらに思考力や判断力、表現力が高まっていくでしょう。
アートや音楽を楽しむ
絵を描いたり音楽を楽しんだりするのもおすすめです。アート活動によって創造力が表現力が高まりますし、指先での作業は脳にも良い影響を与えます。音楽に親しめば、感受性やリズム感を高めることができるでしょう。「色の使い方を工夫する」「音楽に合わせてダンスする」などすれば、保護者も一緒に楽しめそうですね。
保育園や幼稚園、学校などで行われる情操教育
情操教育は、保育園、幼稚園、学校など、子どもたちが通う多くの施設でも取り入れられています。
たとえば国本小学校(東京都世田谷区)は、知育だけではなく情操教育も重視しています。社会で活躍する人材を育てるためには、心の成長も不可欠と考えているからです。
具体的には、以下のような情操教育を実施しています。
- 縦割り班:異なる学年と交流することで人間関係力を育む
- クラブ活動:自分の興味のあることを深く学ぶ
- 課題活動:授業内で行われるクラブ活動以外のスポーツ活動で汗を流す
- 児童会、委員会活動:公の場での話し方や主体性を育てる
保育園や幼稚園では、創作活動による情操教育が中心になるようです。
例えば、伝統文化や芸術文化、食文化など、さまざまな文化を擁する石川県金沢市では、「とびだせ!おどうぐ園づくり事業」をもとに、幼稚園が園ごとに趣向を凝らした情操教育をおこなっています。以下がその一例です。
- 彫刻家やアーティストなど専門の講師を招いて創作活動を実施する
- 外部講師の助力を得ながら、全員で巨大な恐竜を完成させる(ダンボール)
- 陶芸家を招いて陶芸教室を開催する
一般的な保育園、幼稚園のカリキュラムでは体験できないような自由度の高い創作活動ができるのがいいですね!
情操教育につながる習い事
情操教育は習い事でも培うことができます。情操教育に良いとされる習い事の中から3つピックアップしてご紹介しましょう。
1.音楽教室
音楽教室、特にピアノは、昔から定番の習い事のひとつ。良い音楽にたくさん触れることで、感性や表現力が育まれていきます。
音楽教室の習い事で期待できる効果は以下の通りです。
- 脳によい刺激がある
- 音感が身につく
- リズム感が身につく
- 表現力が身につく
2.絵画教室
絵画は自分の思いを表現する方法のひとつです。子どもの視点で捉えた世界は、大人が見てもおもしろいですよね。
絵画教室の習い事で期待できる効果は以下の通りです。
- 芸術的感性が身につく
- 表現力が身につく
- 自分の考えを形にできる
3.運動教室
サッカークラブや体操教室などの運動教室もおすすめです。運動が苦手なら、リトミックを選ぶと楽しく体を動かせますよ。
運動教室の習い事で期待できる効果は以下の通りです。
- 運動能力が向上する
- チャレンジ精神が身につく
- 簡単にあきらめない心が身につく
- 他者を思いやり、協力しながら行動できるようになる
情操教育を始める際のポイント
情操教育は、自然と触れ合うなど家庭でも実践しやすいものが多くありますが、始める際は以下のポイントを意識するといいでしょう。
子どもの興味を尊重する
子どもが興味のあることは何ですか? 例えば、芸術に興味のある子どもに対して、運動系の情操教育を施そうとするのは無理があるといえます。好きなことなら自然と長く続けられるもの。情操教育は子どもの“好きなこと”に乗っかる形ですすめるのがよいでしょう。
継続できるかどうかを重視する
情操教育は1日2日では完了しません。子どもの心や人間性は少しずつ育つため、情操教育するなら継続が前提です。
そのため、継続しにくいと思うものは避けた方がいいかもしれません。「美的情操教育をしたいから」と、遠方の絵画教室に申し込むと親子ともに疲れてしまうことにもなりかねないので、無理なく継続できるものを選びましょう。
バランスを意識する
また、バランスも大切です。ここまで見てきたように、情操教育の種類は大きく分けて4つあります。1つのスキルだけ集中して伸ばすよりも、他のスキルにもバランスよく触れていきましょう。
家族全体で取り組む
情操教育には保護者のサポートが欠かせません。家庭菜園でも習い事でも、親が関わらないと成り立ちませんよね。家族一丸となって、子どもの成長を支えてあげようという気持ちを大切にしたいものです。
子どもに合った情操教育で、可能性をぐんぐん伸ばしてあげたいですね。
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【参考サイト】
・おやこのへや|情操教育とは?家庭でできる取り組み例やメリット・デメリットなどを簡単に解説
・comotto|家庭でも実践できる「情操教育」とは?4つの種類や子どものためにできることをご紹介
・すたぺんドリル|情操教育は何をすればいい?幼児のうちからやっておきたい6つのこと
・帝京大学幼稚園|<豊かな心と体を育む体操教室>
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