いじめ急増に不登校も…「中1ギャップ」はなぜ起こる?親が知っておくべきこと
真新しい制服を着て、少し大人になった気分で迎える中学1年生の春。勉強のほかにも、部活動が始まったり、他校から来た子との友達の輪が広がったりするなど、期待に胸が膨らむことばかりです。しかし、そんな晴れやかな姿の裏で、小学校からの変化に心が追いつかず、学校に行きたくなくなってしまったり、いじめが起きてしまったりするという実態もあります。
今回はそんな「中1ギャップ」の内容を知り、子どもが安心して、できるだけスムーズに中学校生活になじめるようにするための家庭でのサポートについて紹介していきます。
中1ギャップとは?
文部科学省によると、中1ギャップの定義は明確には定められていません。
しかし一般的には、学校生活や授業のやり方が今までと異なることから、新しい環境(学習・生活・人間関係)になじめずに不登校になったり、いじめが急増したりするなどいろいろな問題が出てくる現象のことを指しています。
人によっては体調を崩してしまう場合もあるため、「最初のうちだけだから」「気持ちの問題」と楽観視したり放置したりするのは危険です。
また、コロナ禍により、本来は小学校生活で経験できるはずの学習や学校行事を行うことができない、今までと同じように友達と触れ合って学校生活を送ることができないという状況が続いており、それが「中学校で勉強についていけるだろうか」「友達をつくれるだろうか」という不安につながることもあるようです。
実際、ベネッセが2021年に行った調査では、コロナ禍での中学進学が不安という親子が約7割もいるという結果が出ました。
ただでさえストレスを抱えやすい時期にコロナ禍というイレギュラーが重なることで、不安を感じている親子はとても多いようです。
なぜ「中1ギャップ」が起こってしまうのか
中1ギャップの原因はさまざまですが、ここでは主な原因として、2つの内容を取り上げます。
ひとつは学校生活の大きな変化。
具体的には以下のような変化があります。
- 1単位時間の授業時間が45分から50分になる
- 教科担任制で授業ごとに教師が変わる
- 学期ごとに中間テストや定期テストがある
- 放課後にほぼ毎日部活がある(場合によっては土日も)
- 生徒会や学校行事など、学校内での役割が増える
ざっと思いつくだけでも、子どもたちの生活リズムとそれを取り巻く環境がこれだけ大きく変化しているのです。以上のことから、体力的にだけではなく精神的にも疲れてしまうということは十分にあり得ます。
もうひとつは、思春期による心の変化。
思春期は、周囲の影響を受けながら一人の大人としての自分を確立していく時期。周囲の環境や仲間集団からの影響を大きく受けやすい時期であるため、小学校から中学校へという環境の変化で精神が不安定になることも。
さらに、大人(親)から離れて自立したいという気持ちが芽生え、学校でのことをあまり話さなくなるのもこの時期の特徴です。以前より子どもの学校での様子が捉えにくくなり、親が知らない間に大きなストレスや不安を抱えているという事態も十分考えられます。
このふたつやそれ以外のさまざまな要因が重なって、負担を感じてしまうようになり、子どもによっては学校に居心地の悪さを感じてしまうのだそうです。
ギャップを感じている子は6割以上?
中1ギャップを明確に調査しているものはありませんが、間接的に関係のある調査結果は多くあります。たとえば、中1ギャップの特徴として「勉強についていけるかどうか不安」といった、勉強面での不安感があります。
2004年にベネッセ教育研究開発センターが行った調査によると、「上手な勉強の仕方が分からない」という子どもの割合が、小学6年生は45.6%であったのに対し、中学1年生では65.3%に跳ね上がりました。
同じタイミングで行った「どうして勉強をしなければいけないのか分からない」という質問では、「そう思う」と答えた小学6年生では37.9%であったのに対し、中学1年生では51.7%にまで跳ね上がっています。
このことから、勉強でつまづくことが、小学校と中学校の大きなギャップを感じるきっかけのひとつであることが分かります。
そのほかの大きな問題として挙げられるのは、やはり人間関係です。新しい同級生や教科ごとに異なる先生に加え、先輩後輩の関係づくりも学校生活の大事な要素になります。
中学校では、部活や委員会、そのほかさまざまな活動で先輩の存在を意識して活動することが少なくありません。小学校時代にはそれほど重要視されていなかった先輩後輩という関係に戸惑い、過度に先輩の目を気にしてしまうことが、大きなストレスになることもあるようです。
家庭でできる中1ギャップを防ぐ方法
中1ギャップには複合的な理由があり、「これをしなければ」「これをすれば」防げるという方法を打ち出すことはなかなか難しいです。しかし、中学入学前後の家庭環境で子どもの心のストレスを軽減させてあげることはできます。
入学前にできること
中学校入学前には、一緒に中学校の雰囲気を調べたり、保護者説明会で得た情報(学校の雰囲気や、先生の雰囲気など)を子どもにも伝えると、子ども自身が中学校についてより具体的にイメージができます。
また、中学校の多くを占める部活動についても、興味があるものをネットや動画サイトで調べてみたり、学校公開日などに部活動を見学したりする方法も考えられます。
コロナ禍で学校への出入りが制限されており、情報収集も難しい部分がありますが、だからこそ親子で協力し、入学後をイメージできると良いですね。
入学後にできること
子どもにとって、家庭が安心できる「安全な場所」であることが何より大事です。ギャップを感じていたり、疲れているように見える場合は「大変だね」「お疲れ様」などと、共感する姿勢を示すだけでも心が軽くなりやすいようです。
家族での食事の時間に何気ない会話をしたり、休日には一緒に散歩をするなどするだけでもOK。それが子どもの心のエネルギーになるでしょう。
また、小学校高学年〜中学生はそれ以前と比べてひとりでできることが多くなっており、親自身、今までよりも子どもを注意深く見守ることが少なくなっているのではないでしょうか。
思春期により、親に以前のように話すことが少なくなる時期だからこそ、今一度子どもの様子を見守ってあげることも大事かもしれませんね。
親のNG対応
勉強面についても、困っている様子のときは手助けをしてあげたり、時には教科書を一緒に見て授業の内容について家庭の中の話題に出したりすると、子どもの学習への興味や理解を高めるきっかけにつながります。
避けたいのは、小学校までと異なる様子に親が焦ったりイライラしてしまうこと。勉強につまづいているときに方法を押し付けたり、「小学生の時のようにやればいいじゃない」などの声かけは避けましょう。
中学生になると自分なりの勉強方法を確立して、自分のペースに合わせて勉強をするようになってきます。まずは、本人がそのペースをつかむまでは見守っていてもよいかもしれません。
以上のような関わり方を心がけ、家族が「いつでも相談できる関係」であり、家庭が「安心できる場所」となるとよいですね。
中学1年生時期の心の変化やストレスは、ある程度は「起こって当たり前のこと」として心に留めておくと、いざ直面したときに焦らずに対応してあげることができます。
新しい環境への不安から起こってしまう中1ギャップですが、多くの子どもたちは不安以上に中学生活に希望や期待を抱いていることも事実です。
子どもたちにとって充実した中学生活となるよう、家庭でできる最大限のサポートをしてあげましょう。
<参考資料>
・ベネッセ教育情報サイト「もしや、うちの子も?!知っておきたい「中1ギャップ」」
・ベネッセ教育情報サイト「不安も大きい中学入学だからこそ、 中学生活をイメージすることが「中学準備」の第一歩」
・ベネッセ創業教育研究所「小中連携で変わる中学校教育」
・日経woman「いじめや不登校 「中1ギャップ」に親はどう向き合う」
・厚生労働省「思春期のこころの発達と問題行動の理解」
・文部科学省 国立教育科学研究所「中1ギャップ」の真実
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