“天才”は親が育てる! 天才料理人・こごまさんから学ぶ才能の見つけ方と伸ばし方
フードコーディネーターだった母親の影響を受け料理に興味を持ち、その才能が開花。天才料理少女としてメディアでも注目を浴びた「こごまちゃん」を知っていますか? 料理だけではなく学業や部活など、さまざまなことに積極的に取り組む彼女の姿勢は、子を持つ親なら関心が高いのではないでしょうか。今回は、「こごまちゃん」の家庭での教育から学ぶ、わが子の才能の伸ばし方を徹底分析します!
テレビや雑誌、書籍などでも取り上げられた「こごまさん」。保護者の中には知っている人も多いのではないでしょうか。
「こごま」というのは、天才料理人といわれる新倉茜音さんの愛称。「こごまさん」という愛称は、こごまさんのお母さんがゴマフアザラシの子どもに似ていて「ごまちゃん」と周囲から呼ばれていたこと、その娘だから「こごまさん」と呼ばれるようになったのだそう。
こごまさんの主な経歴
2008年 ウイズガス全国親子キッキングテストで優勝
2009年 8歳で日本酒検定5級(筆記試験)を最年少で合格
2010年 ハットリキッズ食育クッキングコンテストで優勝
2010年 TVチャンピオンの小学生料理人選手権で優勝
こごまさんは、料理の才能だけではなく学業や学校での活動も意欲的に取り組みます。小・中・高校ではバドミントン部の部長を、小・中学校では生徒会長を務めました。これは生来の素質もあったのでしょうが、私は両親、特にお母さんの子育てにも依拠する部分が大きいのではないかと考えました。
今回は、当時高校2年生だったこごまちゃんとお母さんへのインタビューから子どもの才能と教育について考えてみます。
目次
お母さんがこごまさんの才能を発掘した瞬間
お母さんがこごまさんの才能を発掘したのは、彼女が3歳の頃。
こごまさんが、おもちゃの包丁と野菜で遊んでいた時のことです。おもちゃの野菜には切り込みがあり、カットできる場所が決まっています。しかし、こごまさんはこの切り込みが気に入らず自分で好きなように切ってみたいという思いが強かったといいます。
そこでお母さんは本物の包丁、本物のキュウリや魚を与えてみました。しかし、幼い子どもに包丁を握らせることに不安や心配はなかったのでしょうか。
「けがはするものです。だったら、小さい頃から包丁を持たせてもいいかなと。まずは水分が多く切りやすい野菜を与え、慣れてきたら魚にも挑戦させました」(新倉ごまさん)
こごまさんはけがをすることもなく、本物のキュウリの小口切りができるようになります。そして、その小口切りをしたキュウリで浅漬けまで作ってしまうのです。お母さんが娘の意欲をつぶすことなく引き出し、ここからこごまさんの料理の才能が開花します。
こごまさんのエピソードから探る子どもの才能の伸ばし方
こごまさんのお母さん・新倉ごまさんは現在「あかね雲」という小料理屋を経営していますが、後藤紘一良先生のアシスタントをしていた経験もあります。「西の吉兆、東の胡蝶」と呼ばれる日本料理界・和食界の重鎮です。幼いこごまさんはお母さんと一緒に仕事場を訪れることが多く、彼女は後藤先生の包丁さばきに夢中だったそう。
「アシスタントだった私はこごまの相手をする余裕はありませんでしたが、こごまは後藤先生の手元から何から何まで、飽きずにずっと見ていました。料理教室が終わってからも、自分からスリッパの裏まで拭いたり、棚に潜って隅々まで拭いたり。後藤先生にも『この子はすごい!』と気に入ってもらえましたね」(新倉ごまさん)
こごまさんはその後「親子クッキング東京大会」をはじめ、数々の料理大会で優勝を収めます。また、料理大会に参加していく中で数々の著名な料理人との出会いもありました。
中でも、「分けとく山」で腕を振るう野崎洋光さんに対し「今までの常識にとらわれない革新的な考え方を持ち、とても理論的で納得するところが多くあるところを尊敬している」とこごまさんは教えてくれました。
こごまさんが自主的・意欲的に学ぶようになったのは、お母さんが“やりたいことを自由にさせ、見守っていたから”だと感じます。3歳のわが子に本物の包丁を持たせたことからも、親が子どもを信頼しているということがうかがえます。
そして、こごまさん親子から受け取れるのは結果として“一人ひとりを尊重する”、“サポートする”、“その子の個性や特性を大切にする”という教育法、「モンテッソーリ教育」が生かされているということ。
「モンテッソーリ教育」とは
医師であり教育家であったマリア・モンテッソーリ博士が考案した教育法。教師(大人)の価値観で一方的に教え込もうとするのではなく、子どもの興味や発達段階を正しく理解し、子どもが触ってみたい、やってみたいと思う環境を適切に用意し、その環境と子どもを「提示」などによって結びつけ、子どもの自発的活動を促します。この教育法の確かさは、現代の大脳生理学、心理学、教育学などの面からも証明され、現在140以上の国にモンテッソーリ実践園が存在しているといわれ、世界をリードする人々が数多く育ってきています。
【引用元】日本モンテッソーリ教育綜合研究所
ここまでの内容を読んで、「こごまさんのお母さんだからできたのよ」「こごまさんが天才だからできたのよ」と感じた読者もいるかもしれません。
そこで、次章では家庭でできる子どもの“好き”や“やりたい”の見つけ方、伸ばし方、こごまちゃん親子から学ぶ家庭での教育をモンテッソーリ教育をヒントに解説しましょう。
家庭でできる子どもの“好き”・“やりたい”の見つけ方と伸ばし方
“好き”・“やりたい”(興味関心)の見つけ方
- 観察する
子どもの“好き”や“やりたい”を見つけるには、子どもがどんなことに興味を持っているのか観察することが必要になります。モンテッソーリの言葉に「子どもの努力を見逃さないよう子どもを観察しなさい」というものがありますが、子どもの好きなこと、やりたいことを見つけるのにピッタリです。こごまちゃんの場合は、おもちゃで野菜を切る遊びから始まっていたのは先述した通りですね。 - 習い事に注目する
子どもがピアノ、水泳、サッカーなど何らかの習い事をしているなら、その中から見つけるのが良いという話を聞いたことがあります。習い事にこだわらずとも近くの公園を散歩している時などに子どもが植物をじっとみていたら、「植物に興味があるのかな」と見つけることができます。
子どもの“好き”・“やりたい”の伸ばし方・育て方
- 見守る
子どもの興味・関心をを伸ばしたり育てたりするには“子どもの仕事を尊重し、質問したり、中断したりしないように”する。つまりは見守ってあげることが大切です。こごまさんのお母さんは娘が本物の包丁を持った時、途中で手を出したり中断させたりせずに黙って見守っていましたよね。 - 環境を整える
子どもが興味を持ったことに対しての環境を整えてあげることも大切です。こごまさん親子の例でみると、おもちゃの野菜や本物のキュウリ、魚を与えているところ、包丁を持たせているところが当てはまります。また、こごまさんが作業できる場所、時間も与えていました。“時間と物と場所”をそろえてあげるのが環境を整えるということになります。 - 成功体験を経験させる
子どもに成功体験を一度でも経験させると、自信を持たせることができます。「できた!」という思いから「また、やってみようかな」という思いが生まれてくるものです。お手伝いをしてくれた子どもに「助かったよ」と声を掛ける、算数の計算が1問正解できたら「すごいね!」と褒めてあげる。小さな成功体験で良いのです。 - 子どもの話をよく聞いてあげる
子どもの話は、必ず始めに共感してあげることが大切。もし言いたいことやアドバイスしたいことがあれば、子どもの話が一通り終わってからにしましょう。「イエス(共感する)バット(でもね)」法と呼ばれるものです。例えば、子どもが「漢字テスト、嫌だなあ」と言ったとしましょう。それに対していきなり「そんなこと言わずに、勉強しなさい」と言うのでなく、一度「漢字テスト、嫌なのね」と受け入れます。「覚えるの大変だもんね。でもね、みんなそうだよね」とこれだけ言って、子どもが自発的に勉強し始めるのを見守りましょう。モンテッソーリ教育の観点からみると、どう行動するかは子どもに任せ、見守った方が良いのです。 - 褒める
子どもを褒める時には、以下のポイントがあります。【すぐに褒める】
昨日や一昨日など、前の出来事を褒めても(褒めないよりは良いですが)実感が涌きにくいもの。その場ですぐに褒めることを習慣にしてください。ただし、兄弟姉妹のいる家庭では褒め方に配慮が必要です。子どもが「お姉ちゃんばっかり褒められてる」などと感じないように気をつけなければいけません。お姉ちゃんだけそっと呼んで褒めてあげても良いでしょう。【おおげさに褒める】
私は何度も先輩教師から「褒める時は、おおげさに驚いてあげることが大切」だと教えられてきました。「よくできたねえ!」「すごいじゃない!」などと抑揚をつけて驚きながら褒めましょう。本気、本音で褒めていないと子どもはすぐに見抜くものです。【具体的に褒める】
どこが良かったのか、具体的に褒めてあげることができればさらに良いでしょう。子どもが描いた絵であれば、「空の色を上手に出せたね」というようにです。【成功するまでの努力も褒めてあげる】
例えば、子どもが割り算の筆算で正解を出したとします。子どもにとって、割り算の商(答え)を出すのは大変なこと。始めに“9”という商を立てたのに間違っていて、“8、7、6、5…”と一つずつ減らして“3”という正解にたどり着いたのなら、そこまで諦めずに頑張って正解を出せたこと、努力を続けて正解を出せたことを褒めてあげましょう。【間接的に褒める】
こごまさん親子に取材した時、お母さんが「この子は客観的に見ても才能がある」と話してくれました。こごまさんはすぐそばにいて、お母さんの言葉を聞いています。これが、間接的に褒めるということ。また、間接的に褒めると信憑性が高まるというのは心理学では「ウィンザー効果」と言われ、第三者から間接的に情報を伝達されることによりより信憑性や信頼感が増すという心理的効果を指します。家庭では、夫婦や家族同士の会話の中で子どもをさりげなく褒めることができます。子どもが別の部屋にいる時にそれとなく聞かせるのです。「お姉ちゃんがあなたのことを褒めていたわよ」と聞かせてみるのも良いでしょう。
こごまさん親子から私たちは何を学び、受け取れるか
最後に、こごまさん親子から学べる親子の関係性と子育てについて大切なことを3つまとめておきます。
- 子どもの好きなようにさせ信頼する
先述したように、こごまちゃんのお母さんはこごまさんが3歳の時から本物の包丁を持たせています。また、後藤さんの料理教室では娘に声を掛けることなく、じっと見守っていました。子どもを信頼することの大切さを学ぶことができます。また、子どもを信用しているからこそ好きなことをさせられるのでしょう。親なら誰しも子どものことを心配して、つい口出ししてしまったり手を貸してしまうこともあるもの。でも、時にはわが子を信じて見守ることも大切なのです。 - 子どもの好きなことができる環境を整える
こごまさんに与えた包丁も、好きなことのできる環境。本物のキュウリを切る時間も与えています。子どもが好きなことをできる“時間・物・場所”を整えてあげましょう。家事や仕事で時間がない、疲れている時も多いと思いますが、1日数分でも子ども“やりたいこと”に付き合ってみてくださいね。 - 子どもの意欲をつぶさない
親が子どもに「これをしなさい」「あれをしてはいけません」と指示や制限をするのでなく、好きなようにさせることで子どもの意欲をつぶさないことに繋がります。「これはちょっとまだ難しいかな」と感じることでも、一度は子どもの好きなようにやらせてみましょう。
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東京都小学校準常勤講師・塾講師・ライター。30校以上の教育現場で教えてきた経験があり、進学塾では主に国語を担当。教師が集まる民間教育団体であるTOSS相模原・和(のどか)会員として指導法を学んでいる。https://www.toss.or.jp/