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2023.12.27

特別支援学校は発達障害でも入学できる?入学条件や特別支援学級との違いを専門家が解説

子どもに発達障害がある場合、特別支援教育を検討する親御さんもいることでしょう。特別支援教育にはいくつかあり、その中で「特別支援学校」に興味を持った方もいるかもしれません。

ただ「発達障害の子は特別支援学校に通えるのか」「特別支援学校と特別支援学級の違いは?」など、不明点も多いですよね。
そんな疑問を解決するために、特別支援教育に関する豊富な経験、知識を持つ中村藍先生にお話を伺いました。ぜひ参考にしてください。

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監修者

中村 藍先生

支援級・通常級・支援学校等の教員経験20年以上のベテラン。その子に合う学びの場の提案と学校への交渉・相談の方法を、寄り添いながらも具体的に丁寧にアドバイスしてくれます。

特別支援教育には4種類ある

特別支援教育には、特別支援学校・特別支援学級・通級指導教室・支援を受けながら通常の学級で学ぶという、4つの選択肢があります。それぞれの特徴は以下の通りです。

1:特別支援学校…障害の程度が比較的重い子どもを対象として、専門性の高い教育を実施。ひとりひとりに応じた支援や配慮を優先したい場合や、身辺自立の指導に重きを置きたい場合に適しています。

2:特別支援学級…障害の種別ごとの学級を編制し、子どもひとりひとりに応じた教育を実施。同年代の子どもたちと共に学ぶこと、集団への適応を優先したい場合に適しています。

3:通級指導教室大部分の授業を在籍する通常の学級で行いながら、一部の時間で障害に応じた特別な指導を実施。通常の学級に在籍しつつ個別に指導・支援を受けたい場合に適しています。

4:支援を受けながら通常の学級で学ぶ…個々の障害に配慮しつつ通常の教育課程に基づく指導を行っています。

特別支援学校と特別支援学級の違いとは?

よく聞かれるのが「特別支援学校と特別支援学級の違いが分からない」というものです。ここではその違いについて説明します。

特別支援学校は、通常の学校とは別に存在する

特別支援学校は通常の学校とは別に存しており、小中学部は1クラスの定員が6名(高等部は8名・重度・重複障害がある場合は3名)です。教員の他にも子どもの学習や生活をサポートするスタッフや看護師など、児童生徒に関わる人が多くいます。
また特別支援学校は「生活面での自立」を目指し、「健康の保持」「環境の把握」「身体の動き」などに重きを置いた指導を行っています。

特別支援学級は、通常の学級と交流できる

一方で特別支援学級は通常の学校の中にあり、通常の学級で学習や生活の困難さが見られる児童のために、少人数(学級編成の標準が8名)で授業を行っています。学校生活の1日の流れは、通常の学級のスケジュールがベースになっており、朝の会や給食、掃除や一部の教科は、通常の学級で参加することが多いです。「交流及び共同学習」は特別支援学級の大きな特徴です。

特別支援学級の自立活動では「心理的な安定」「人間関係の形成」や「コミュニケーション」をテーマとした学習が多くなっています。また必要に応じて下の学年の内容を学習することもでき、知的障害者の児童に向けた学習指導要領を参考にすることもあります。

通常の学級の児童生徒と共に学ばせたい、生活面では困りごとが少なく教科学習を重視したいなどの場合は、特別支援学校よりも特別支援学級が適している可能性があります。

特別支援学校の入学条件とは?

学校教育法施行令 第二十二条の三※によると、以下の通りです。

【視覚障害者】
両眼の視力がおおむね〇・三未満のもの又は視力以外の視機能障害が高度のもののうち、拡大鏡等の使用によっても通常の文字、図形等の視覚による認識が不可能又は著しく困難な程度のもの

【聴覚障害者】
両耳の聴力レベルがおおむね六〇デシベル以上のもののうち、補聴器等の使用によっても通常の話声を解することが不可能又は著しく困難な程度のもの

【知的障害者】
一 知的発達の遅滞があり、他人との意思疎通が困難で日常生活を営むのに頻繁に援助を必要とする程度のもの
二 知的発達の遅滞の程度が前号に掲げる程度に達しないもののうち、社会生活への適応が著しく困難なもの

【肢体不自由者】
一 肢体不自由の状態が補装具の使用によっても歩行、筆記等日常生活における基本的な動作が不可能又は困難な程度のもの
二 肢体不自由の状態が前号に掲げる程度に達しないもののうち、常時の医学的観察指導を必要とする程度のもの

【病弱者】
一 慢性の呼吸器疾患、腎臓疾患及び神経疾患、悪性新生物その他の疾患の状態が継続して医療又は生活規制を必要とする程度のもの
二 身体虚弱の状態が継続して生活規制を必要とする程度のもの

※【引用元】特別支援学校に就学する幼児児童生徒の障害の種類・程度 ○学校教育法施行令第二十二条の三

ただ上記のような基準はあるものの、最終的にどこに通うのかは「就学相談」で判断されます。そしてその判断基準は、必ずしもIQや障害の重さ、診断によるものだけではありません。

発達障害の子が、特別支援学校を選択した方がいいケースとは?

発達障害がある場合で、特別支援学校を選択した方がいいと思われるのは、以下の4つのケースです。

  1. …同年代の定型発達の子どもたちとの交流より、個に応じた支援を望む気持ちが強い場合
  2. 感覚の過敏さや気持ちの不安定さが強く、新しい環境に慣れるのが大変と思われる場合
  3. …家庭で排泄、着替え、食事などの身辺自立を教えるのが、とても大変だと感じている場合
  4. …子どものペースで学校生活を送らせたい、学習を進めてほしいと希望する場合

子どもをどこに通わせるのかを障害の程度のみで考える保護者が多いですが、障害の程度だけではなく総合的に見て、子どもに合っているのはどこか、じっくり考える必要があります。

発達障害の子どもが特別支援学校に通うメリット。実際の保護者の声は?

発達障害の子どもを特別支援学校に通わせるうえでのメリットを2つ紹介します。

子どものペースを尊重しながらじっくりと指導・支援してもらえる

子どもの障害や発達の程度などに合わせた指導、支援が受けられます。給食やトイレトレーニングなども、子どもの状態に合わせて丁寧に対応してもらえますし、授業やその他の活動時間も、通常の学級に比べるとかなりゆっくりと行われます。

ひとりひとりに応じたサポートが受けられることは、周りに合わせるのが難しい子どもにとって、大きなメリットと言えます。

自立活動教諭(作業療法士・言語聴覚士・理学療法士・臨床心理士など)の支援を受けられる

特別支援学級と特別支援学校との大きな違いに、自立活動教諭の存在があります。自立活動教諭とは、障害のある子どもの指導に関する専門性を高めるために配置されている専門家のことです。

何か疑問や不安があっても自立活動教諭に質問でき、的確な回答を得ることができますし、生活や学習に困難さのある子どもに対し、通常の学級では難しいサポートを得ることができます。


知識と経験の上でも専門性の高い先生たちからのサポートを受けられるというのは、親としてはとても安心感があります。

なお、特別支援学級に在籍している場合も、特別支援学校のコーディネーターなど専門職に相談することは可能です。

特別支援学校に通わせている保護者の声

子どもの不安定さや育児の不安に寄り添っていることへの感謝の言葉は多く聞かれます。特に中学部や高等部から特別支援学校に入った場合などは、特別支援学級と比べて配慮が細やかであると感じる保護者も多いようです。

それまで在籍していた学校では不登校だったけれど、特別支援学校に入学後は問題なく通えている、という声もよく聞きます。

そして、教員の専門性の高さを喜ばれる声も多いです。「自宅では難しかった身辺自立のトレーニングが、学校でいっきに進んで成長を感じられた」といった感想をもらうこともあります。

特別支援学校での授業内容やカリキュラムについて

知的障害がある場合
特別支援学校の学習指導要領に則って教育活動を行います。そのため、普通の小学校のように「○年生でこれを学ぶ」ということは決まっていません(特別支援学級でもこれは同じですが、特別支援学級では当該学年の学習内容に加え、下学年の学習内容、特別支援学校の内容を学ぶ形になります)。

知的障害が重複していない場合
視覚障害、聴覚障害、肢体不自由、病弱の子どもについて知的障害が重複していない場合は、小中高等学校の学習指導要領に準じた学習を行います。

そして、その学年のカラーや子どもたちの実態に応じて授業内容やカリキュラムを調整します。

小学部・中学部・高等部まである学校も多いため、教員が長い期間での見通しを持って指導する傾向があるのも特徴です。

特別支援学校は高等部からでも入学できる?

中学生以下で発達障害はあるが知的に問題はなく、他の障害もない子どもの場合、特別支援学校に進むケースは少ないものです。しかしそんな子どもでも、高等部から特別支援学校に入学するケースがあります。また、特別支援学校分教室、インクルーシブ教育実践校もまだまだ数は少ないですが選択肢になります。

発達障害の特性が強くて中学で適応するのが難しく、いじめに遭ったり不登校になってしまったりしたから、というケースもありますが、進路を見据えて移ってきたケースも多くあります。


特別支援学校では卒業後の進路について手厚く指導してもらえるので、自分の特性に合った就労をサポートしてもらいたい、という理由で入学する子どもが多いのです。

特別支援学校(高等部)卒業後の進路について

特別支援学校(高等部)では、進路のサポートが手厚いのも特色です。
高校1年の段階から保護者とも面談を重ねますし、校内や校外での実習も複数行い、子どもに合った進路を見つけていきます。

一般就労(障害者枠など)以外にも、就労移行支援事業所、就労継続支援事業所(A型・B型)など複数の選択肢があります。また普通の大学、職業能力開発訓練校、専門学校に進学するケースもあります。知的に障害のない子どもの場合は一般就労を目指すことも多いです。

発達障害の子どもの進学先に迷ったらすべきこと

まずは自治体の就学相談を受けてください。その過程で特別支援学校や特別支援学級の見学のチャンスがあると思いますので、たくさん質問しながらじっくり見てみましょう。

就学相談の申し込み方法や時期は?

なお就学相談の時期や、就学相談の申し込みの方法や時期は自治体によって異なりますので、自治体に問い合わせてみてください。
必要に応じて受け付けてくれる自治体もありますが、じっくり考えて進学先を決めるためにもできるだけ早い時期に申し込みをし、就学相談を受けた方がいいでしょう。

就学相談の内容は?

まず面談を実施し、そこで子どもの得意不得意や困っていることなどを相談します。その後、発達検査や知能検査を行います。場合によっては行動、グループ観察が行われることもあります。この観察では、子どもの特性のあらわれ方や、周りと関わる様子についてチェックされます。そして就学相談で判断や提案を受けた後、どこに進学するかを最終決定するまで、じっくり考えましょう。

入学前に、ぜひ学校や学級の見学を

特別支援学級の場合は、在学中に通常の学級から転籍することも、またその逆に特別支援学級から通常の学級に転籍することも可能ですが、特別支援学校の場合は普通の学校への転出入に多くの手続きを要します。入学する前にしっかり考えて、慎重に決めましょう。

また就学相談に申し込めば、特別支援学級や特別支援学校の見学も可能です。

実際に見て初めて分かることもありますし、「思っていたのと違う」ということを防ぐためにも、入学前にぜひ見学をしてみてください。

子どもの様子をよく知る第三者の意見も参考に

また、子どもの様子をよく知る第三者の意見を聞くのもおすすめです。子どもが通う幼稚園や保育園の先生はたくさんの子どもを見ており、中立の立場で意見を言ってくれる場合があります。腹を割って「どの進学先がよさそうか」相談してみるのもおすすめです。療育センターなどに通っている場合も、先生に率直に聞いてみるといいのではないでしょうか。

発達障害の子どもの学級・学校選びで意識したいこと

それぞれの学級や学校に抱いているイメージに惑わされず、子どもの実態と、今の段階でどのような指導・支援が必要なのかを整理してみることが必要です。将来の姿はなかなかイメージしにくいので、先輩ママ・パパに聞いてみるのもおすすめです。その場合はできるだけお子さんと近い状態の方の例を見聞きできるといいと思います。

※特別支援教育の仕組みや内容は、自治体によって異なる場合があります。詳しくはお住まいの自治体にお問い合わせください。

<参考資料>文部科学省・特別支援教育の充実について
文部科学省・インクルーシブ教育システム構築モデル事業(指定地域・校)
文部科学省・特別支援教育の現状

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