昔とは子育ての常識が違う!親に子どもを気持ちよく預ける・預かってもらうポイント
仕事や用事などが理由で子どもの面倒を見られなかったり、夏休みや冬休みといった長期休みに祖父母を頼る方もいるでしょう。しかし、子どもを預けたあとに「ケガをした」「価値観の違いで揉めた」などのトラブルになったという声も少なくありません。そこで、祖父母に子どもを預けるときに意識したいポイントについて、心理カウンセラーの神田裕子さんにお聞きしました。
目次
子どもの命や安全を守ることが重要
子どもを祖父母に預ける際に大切にすべきことは、何があるのでしょうか。一番大事なことは子どもの命や安全を守ることです。まずは、そのためにすべき2つのポイントを紹介します。
①命に関わる情報の共有
第一に、命に関わる重要な情報を共有してください。代表的なものはアレルギーに関することです。
孫にアレルギーがある事実を知らなければ、祖父母は好きなものを食べさせてしまいます。何気なく出した食べ物でじんましんが出たり、呼吸困難を起こしたりしたら、祖父母もパニックになるでしょう。最悪の場合は死に至るため、アレルギーに関しては特にしっかり伝えなければなりません。
一昔前は、アレルギーに関する情報が多く広まっていなかったため、現在も「好き嫌いの一種」程度の認識でいる人もいます。そのため、場合によってはアレルギーはどのようなものなのか、危険性も伝える必要があるでしょう。
②防犯・事故防止に関するルール決め
昔は、子どもだけで川遊びをしたり、出かけたりする場面が多くありました。地域全体で子どもを見守るのが一般的だったのも理由のひとつです。しかし、現代はそうではありません。昔に比べて不審者も増えており、あらゆる場所で危険が伴います。したがって、防犯や事故防止に関するルールをしっかり決めて、祖父母に伝えておくことが重要です。
具体例
- 川遊びをするとき:ラッシュガードを着せ、こまめに水分補給をさせる。
- トイレに行くとき:人が多い場所であっても一人で行かせない。
何かが起きてからでは遅いので、必ずルールを決めてから預けましょう。
夫婦で子育て方針のすり合わせをする
一番重要なのは「子どもの命や安全を守る」ことですが、預ける前に、改めて夫婦で子育ての方針のすり合わせをしておくことも大事です。
「甘やかさないでしっかりしつけないと」「子どもなんだから、自由にさせたっていいじゃないか」など、子育てに関しては夫婦間でも方針が異なる傾向があります。お互いの方向性を確認せずに祖父母に預けると、トラブルが起きたときに夫婦間でも揉める原因になってしまいます。
そのような状況を防ぐために、祖父母に預ける前に夫婦で我が家の方針を話し合ってみてください。そのうえで「基本的には自由にしてもらって構わないけれど、食事のマナーだけは必ず守らせる」「寝る時間と起きる時間だけは守らせる」など、祖父母に預ける際の方針も決めておくとよいでしょう。
気持ちよく預ける・預かってもらうための5箇条
夫婦間での子育て方針のすり合わせができたら、祖父母世帯との関係性について考えましょう。
ここからは、祖父母に気持ちよく預ける・預かってもらうための5箇条を紹介します。今後、祖父母と良好な関係を築くためにも重要なことをお伝えするので、ぜひ参考にしてください。
①最初に家でのルールや長期休み中の計画を伝える
まず、家でのルールや長期休み中の計画を伝えておきましょう。全項目を言葉で伝えるのは大変なので、あらかじめ紙にまとめて渡すのがおすすめです。紙があれば相手も忘れにくく、いつでも見返せます。
また、「添加物が入っているものや甘いお菓子を食べさせたくない」など、どうしてもやめてほしいことがある場合は、権威のある存在に止められていると伝えるのが効果的です。
例えば保育園や小学校、医師などの存在を理由にすると、祖父母も無理に食べさせようとしなくなります。どうしても言いにくかったり、言っても聞いてくれなかったりするときは、嘘も方便と割り切りましょう。
なお、ルールについては絶対に守ってほしいところを優先的に伝えてください。多すぎると対処しきれないため、あらかじめ優先順位を決めておくことが重要です。
②「親しき仲にも礼儀あり」を肝に銘じる
祖父母のように近しい関係だと、相手に対して礼儀を忘れてしまいがちです。「孫を預かってくれるのは当たり前」という態度を取られたら、祖父母もいい気持ちにはならないため、預かるのが嫌になってしまいます。身内だからこそ、礼儀を忘れないようにしましょう。特に、感謝の気持ちを伝えることを忘れないでください。
祖父母に子どもを預けるときには、相手の気持ちや状況を分析して対応するのがベター。例えば、孫を預かることに協力的なのか、それともしょうがなく預かるという姿勢なのか、祖父母の体調はどうなのかなど……。さまざまな点を考慮して預けるようにしましょう。
また、孫を預かると、食費やおもちゃ代といった出費が重なるものです。経済的な負担が大きくなるほど孫を預かるのが辛くなるため、少額でもお金を渡すことをおすすめします。「預かってもらって負担をかけるのだから、これだけでも受け取ってほしい」と伝えると、相手も受け取りやすくなるでしょう。もしくは、事前に費用分担を話し合うのがおすすめです。
③生活や体力の負荷をかけない
祖父母も働きに出たり趣味を楽しんだりと、自分たちの生活があります。家庭の事情もあるかとは思いますが、祖父母の生活を変える必要があるほどの長期間、もしくは頻繁に子どもを預けることは避けたいところです。
また、動きが活発な子どもと過ごすには、体力や気力が必要です。元気に見えていても、年々体力や気力が落ちている祖父母にとっては、1日面倒を見るのも大きな負担になると予想できます。特に夏休みの時期は夏バテや熱中症も心配なので、体力的な負荷をかけないように十分注意してください。
④子どもに日記をつけてもらう
「日記」というほどかしこまった形式でなくてよいので、日々起こった出来事を子どもに記録してもらいましょう。記録を見ると、祖父母の家で何があったのかを可視化できます。
また、日記は子どもから祖父母がどのように見えているのかを知るツールになるものです。親世帯はフィルターを外した祖父母の姿を認知できたり、祖父母も子どもからの印象を理解できたりするメリットがあります。
⑤責任は親にある
子どもを預けている間、面倒を見るのは祖父母です。しかし、最終的な責任は親にあると肝に銘じてください。何かが起きてからでは遅いので、アレルギーや防犯の話も含め、絶対に守ってほしいことなどはしっかり伝えましょう。
ちゃんと面倒を見てもらえるか不安があったり、お願い事を守ってくれなさそうと感じたりする場合は、「預けることをやめる」のも一つの選択肢です。「預けた後は祖父母の責任」ではなく、そもそも預けると決めた親の責任だと理解しておきましょう。
お互いに嫌な気分を残さないためにできること
子どもを預けた後、「ルールを守ってもらえたかな?」「祖父母のフォローをしておいた方がいいかな?」など、いろいろと気になることがありますよね。お互いのもやもやが残らないようにできることについても紹介します。
子どもが帰ってきたら価値観を修正する
子どもが祖父母の家で教えられたことが、我が家のルール・価値観に反する場合があります(ここで、子どもにつけてもらった日記が役に立つことがあります)。そのときは、早い段階で我が家のルール・価値観に修正しましょう。ただし、祖父母の悪口を言うのは控えてください。
祖父母の考え方について「そういう考え方もあるね」「素敵だね」などと伝えたうえで、「でも我が家のルールはこうだよ」「ここはおばあちゃんの家じゃないから、うちのルールで行動しようね」と修正するのがおすすめです。
祖父母の話をよく聴く
孫を預かる祖父母は、可愛い孫と共に過ごせる嬉しさだけでなく、思い通りにいかないストレスや疲れも感じるはずです。そのため、後日祖父母の話をよく聴く機会を設けてください。話を聴く機会がないと祖父母の中で愚痴やストレスがたまり、あとから不満を言われる可能性があります。
大人だけで祖父母宅に訪問するのが望ましいですが、難しい場合は子どもも連れていき、遊んでいる間に(子どもに聞こえないところで)話を聴きましょう。孫に対する愚痴や昔の子育ての話、祖父母なりの考えなど、相槌を打ちながら聞いてあげると相手は発散でき、不満が残りづらくなります。
預けたら文句は控える
子どもを預けた後、祖父母に対する不満を抱える人は少なくありません。しかし、預けたらできるだけ文句は言わないようにしてください。祖父母と自分たちは別の人間なので、すべてが理想通りに行くことのほうが稀です。
祖父母からすると、自分の時間を削って疲れながらも孫を見ていたのに、文句を言われたら心外でしょう。「次はもう預からない」と思う可能性もあります。「おもちゃの買いすぎ」など、どうしても目に余ることがある場合は、“文句”ではなく次回預ける際に“お願い”をしましょう。
感謝の気持ちを忘れずおおらかな気持ちで預けよう
祖父母が子どもを預かってくれるのは、当たり前のことではありません。常に感謝の気持ちを忘れず「ありがとう」と伝えることで、お互いに気持ちのよい関係を築けるでしょう。
なお、子どもと祖父母が共に過ごす時間は、親よりもずっと少ないです。祖父母に子どもを預けることは、親と違う価値観を持つ大人と接する貴重な機会ともいえます。できるだけおおらかな気持ちで預けて、見守ってあげましょう。命に関わることやどうしても守ってほしいこと以外は「しょうがない」と割り切る気持ちも大切です。
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