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2023.05.28

SNS「お金がないのはその人の努力不足」→ 「お金がないのは恥ずかしい」助けを求められない子どもたち

「お金がないのはその人の努力不足」ーーそんなSNS上の声を気にして、お金に困っていてもSOSを出せない子どもたちがいることをご存じですか? 経済的に困窮している家庭であることを恥ずかしく感じる子も多いといいます。今話題の「お金にまつわる本」をテーマに、この問題を考えてみましょう。

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子どもでも読める「お金の本の決定版」が話題

2023年2月に発売された『僕らの未来が変わる お金と生き方の教室』(学研)が話題です。

ジャーナリストの池上彰さんが監修した本書は、お金にまつわるさまざまなテーマがイラスト図解でわかりやすく解説されており、発行部数は累計6万部を突破しています。

本書は、全6章から構成され、「お金とはなにか?」から始まり、「お金と世の中の仕組み」や、「生活費」「学歴と年収」「貯蓄」「投資」「社会保障」「格差」「貧困」「時間とお金」など、お金にまつわるあらゆるテーマを、マンガやイラスト図解でわかりやすく、ユーモアも交えながら解説。ふりがなが振られているため、小学生からでも理解しやすい内容になっています。

「お金の本の決定版」として、子どもから大人まで幅広い年代に支持を得ている一冊です。

お金の基本や社会問題など、あらゆるテーマをわかりやすく解説した『僕らの未来が変わる お金と生き方の教室』(出典:PR TIMES

「平均以下の生活水準」がもたらすもの

企画・編集を担当した宮崎純さんによれば、本書には「個人のお金の不安の解消だけではなく、自分以外の誰かの悩みにも目を向けてほしい」というメッセージも込められているそう。

本書の売上の一部は、日本国内の貧困家庭の支援活動に取り組む、認定NPO法人キッズドアに寄付されていることも特徴です。

厚生労働省が2019年に実施した「国民生活基礎調査」によると、子どもの相対的貧困率は13.5%。以前から、子どもの約7人に1人が貧困状態にあるという結果は変わっていません。

日本における子どもの貧困が見えづらい要因のひとつに、この「相対的貧困」があります。相対的貧困とは「命に関わるレベルで困窮しているわけではないが、国の平均と比較して生活水準が下回っている」状態のこと。

日本の貧困家庭に育つ子どもは、「進学問題」の前に、そもそも教育面において以下のような問題が起きやすいことが考えられます。

  • 塾に通えない
  • 自宅にWi-Fiがなく、家でPCやタブレットなどを使った学習ができない
  • 親が仕事などで家におらず、勉強を教えてもらえる機会が少ない
  • 基本的な学習習慣が身につきにくい
  • 親に学歴がなく、進学に関する意識が希薄

教育の機会を奪われやすいほか、大人になっても満足な収入を得られる仕事に就きにくいなどの「貧困の連鎖」にもつながりやすいといえます。

「お金がないのは恥ずべきこと」という風潮

SNS上では、お金がない人に対する批判的な意見も多く見受けられます。

たとえば、「お金がないのは本人の努力不足」「怠惰なだけ」「言い訳するな」などです。そういった風潮が、経済的に困窮する家庭の子どもや保護者が、お金に関する悩みを人に相談しづらくしている部分もあるでしょう。

キッズドアが2022年11月に実施した困窮子育て家庭への緊急アンケートでは、高校生を持つ家庭のうち約2割が、「経済的な理由で志望校をあきらめた」という回答をしたことがわかっています。

「キッズドアの学習支援会に来る高校生の多くは『お金がないことは恥ずかしいこと』だと考え、人生を悲観している。しかし、授業料の減免や奨学金制度などの制度を活用すれば進路をあきらめなくて済むケースもあるため、そういった制度についても教えています」と、キッズドア理事長の渡辺由美子さんは言います。

実際に、困窮家庭が受けられるサポートは決して少なくありません。塾に通う費用がない場合でも、キッズドアのようなNPO法人が実施する無料の学習支援を受ける方法もあります。

また、2020年4月からは、日本学生支援機構が、経済的に困窮する学生を対象とした新たな制度を開始しました。世帯収入の基準を満たし、きちんと学ぶ意欲がある学生を対象に、返済不要の給付金の支給、大学・専門学校等の授業料・入学金の免除又は減額を受けることができるようになっています。

お金について正しい理解が広がる社会に

困窮家庭のなかには、そもそも「金銭的なサポートを受けられる制度自体を知らない」ケースも、決して少なくはないでしょう。

「お金がないのは努力不足とは限らない」「努力しても貧困から抜け出せない家庭もある」という理解が広がっていけば、経済的に困っている家庭の子どもや保護者が相談するハードルも下がるはず。その結果、お金を理由に進学を断念しなくてよい方法もあるという「情報」をキャッチしやすくなることも考えられます。

子どものころから、本書の内容のような「お金の教育」が全員になされることで、お金に関する正しい理解が広がり、自分とは異なる立場にある人たちのことも考えることができる世の中になっていくのではないでしょうか。

<参考資料>
PR TIMES(株式会社 学研ホールディングス)
厚生労働省 2019年 国民生活基礎調査の概況
日本経済新聞 子どもの貧困率13.5% 7人に1人、改善せず
gooddoマガジン 日本でも増え続ける「子どもの貧困」問題とは?貧困の原因、支援方法は?
日本学生支援機構 給付奨学金(返済不要)

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