2023年度からスタートする「部活動の地域移行」ってなに? 保護者の期待と懸念
好きなスポーツに熱中し、仲間と喜びや悔しさを分かち合いながら、共に成長していく。そんな青春時代の思い出の1ページを彩る、部活動。しかし、現在、部活動の在り方がこれまでとは変わろうとしています。2023年度から始まる「部活動の地域移行」。部活動はどう変わっていくのでしょうか。
2023年度から始まる「部活動の地域移行」とは
「部活動の地域移行」が2023年度から始まる。そんなトピックを新聞やテレビ、インターネットで目にしたことがある人も多いのではないのでしょうか?
「部活動の地域移行」とは、公立中学校において、これまで教員が受け持っていた休日の運動部の部活動の指導を地域のスポーツクラブや民間企業、競技団体など、外部の団体に移行する改革のことです。移行先では、所属中学校のみならず、複数の中学校が合同で活動することもできます。文部科学省は、2025年度までに段階的に移行を進め、早期実現を目指す方針を示しています。
これまでの部活動の問題点
なぜ運動部の「部活動の地域移行」が導入されることになったのでしょうか。それは、これまでの部活動が抱える問題点に原点があります。
生徒が主体的に部活動に取り組むことによって、責任感や連帯感を養ったり、自主性を育成したりすることが期待できるとされています。「うんうん」とうなずかれる方も多いのではないでしょうか。
しかし、問題点も多いのが実情です。ご存じの通り、少子化は年々深刻化しています。中学校の生徒数が減り、活動の存続が厳しい自治体や部が増えているのです。やりたい部がなくなってしまった、人数がそろわないから試合に出られないといった状況に直面している生徒もいます。
また、指導者である教員の業務負担も過多になっています。授業終了後に、部活動の指導をすると、当然自身の抱える業務は後回しになります。残業時間は増え、長時間労働は免れません。休日も練習指導や大会の引率が求められるなど、プレイベート返上な働き方が強いられる場面も。ましてや、競技経験のない部の顧問を受け持つこともあります。指導力・技術力に関して十分な人材といえるのでしょうか。
「部活動の地域移行」に対する保護者の声
では、いよいよ始まる「部活動の地域移行」について、子どもをもつ保護者はどのように感じているのでしょうか。
イー・ラーニング研究所がおこなったアンケート調査によると、約9割が「賛成」という結果になりました。大半の保護者が肯定的に捉えているのですね。
「部活の地域移行について注目していることは何ですか」の質問には、「指導者のレベル」や「学校以外の友達との交流」に多くの票が集まりました。より専門的なスキルをもつ指導者に担当してもらえることや、学校以外にも人間関係を広げられる点に期待が高まっていることがわかります。一方で、「指導者の確保」を懸念する声も、4割ほどの保護者から寄せられました。
「部活動の地域移行」のメリットと懸念点
保護者の期待の声からもわかるように、「部活動の地域移行」を実施することで、「生徒」、「教員」両者にメリットがあると考えられます。
生徒側
- より専門的・技術的な指導を受けることが可能になる
- 学校の部活動にはない競技も選択できる
- 人数などの枠にとらわれにくくなり、参加できる大会が増える
- 人間関係を広げることができる
教員側
- 授業準備やその他の業務に充てる時間を増やしたり、残業時間を減らしたりできる
- プライベートを充実させることができる
- 経験のない競技を受け持つことがなくなり、ストレスや負担が軽減する
生徒たちは部活動をより充実させることが可能になり、教員は業務の一環であった部活動の負担を減らすことができるということですね。
一方で、すでに懸念されている点もあります。
費用や送迎など、家庭の負担が大きくなる
休日の部活動を地域の団体に移行することで、会費や指導料、施設利用料などの支払いが発生します。今までよりも、家庭の経済的負担は大きくなるでしょう。
また、学校ではなく、離れた場所で行うことになれば、送迎も必要になります。家庭の都合によっては、送迎が難しい場合もありますよね。経済状況や家庭環境を理由に参加できなくなる生徒が生じることも予期されます。
適切な人材が確保できない地域もある
居住地域や競技によっては、適切な人材が集まらない場合もあるでしょう。自分の地域では、指導者が見つからず、やりたい競技をあきらめなければならない場面も想定されます。
部活動の一環としての扱いとなると、専門的・技術的な指導に加え、教育者としての資質も兼ね備えていてほしいところ。そういった人材を十分に確保するのが容易ではないことは火を見るよりも明らかです。
「部活動の地域移行」が、あちこちの自治体で始まるのはもうすぐです。生徒たちも楽しみにしている部活動。持続可能な活動にしていくためには、学校・保護者・地域の協力や連携が必要となってきます。
この改革が、生徒たちにとっても、教員にとっても、よりよいものになりますように。実施した成果や感想、問題点など今後の動向も気になるところです。
<参考資料>
・教員人材センター「部活動の地域移行とは?地域移行が進む背景や課題について解説」
・PR TIMES(株式会社イー・ラーニング研究所)
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国立大学教育学部卒業。専門教科の国語を愛し、教科担当制の私立小学校にて勤務。好きな教材は「おにたのぼうし」。好きな文法は品詞分類。学級担任として、多くの子ども・保護者と関わる。現在は教員業の傍ら、教材執筆者・ライターとしても活動中。プライベートでは1児の母。