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2022.08.09

小中学生の「マスク依存症」外せない子の心のケア、学校生活について精神科医がアドバイス

長かったマスク生活。徐々にマスク着用要請が緩和されていく中、マスクを手放せない子どもの存在があらわになってきています。「もしかして、マスク依存?」「このままマスクが手放せなかったらどうなるの?」と不安を感じている保護者に向けて、まえまえ先生こと児童精神科医の前田佳宏さんがアドバイスします。

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話を伺った人

前田佳宏さん児童精神科医

ADHD、HSP、ASDに関連した愛着障害とトラウマをケアする、子どもと大人の精神科医。東大医局所属で現在は和クリニック院長。自身も心理療法の研修を受け、認知行動療法、家族療法、マインドフルネス、精神分析、トラウマケアを統合したケアを提供する。愛着トラウマの回復と支援を目指すケアコミュニティ「しなやかこころラボ」を2022年10月に公開予定。メンタルヘルスや哲学カフェを時々開催しています。Twitter,LINE@

マスクを外せない(マスク依存症の)理由とは

2年以上にわたるコロナ感染予防によるマスクの推奨。「顔パンツ」という言葉も生まれるほど、マスクを着けているのに慣れてしまい、人前で素顔を見せることが下着を脱ぐのと同じくらい恥ずかしいと感じる中高生が増えているそう。

しかし、児童精神科医の前田佳宏さんは、マスク依存症は新型コロナ以前からあったと話します。

「新型コロナ以前から、さまざまな理由で”伊達マスク”が手放せない人たちはいました。ですが、”伊達マスク”には『周りにどう思われるだろう』という心配がありました。しかし、新型コロナによってマスクへの抵抗はなくなり、不安への対処法としてマスクを選びやすくなったのだと思います。

また、元々、外見や対人関係など何かしらの不安を抱えていた人が、感染予防をきっかけにマスクを顔を隠すことで安心感を得られることを知り、”マスクを外す=安心を手放す”ことができなくなったこともあります。

このようにマスクを外せない理由が不安にある場合、マスクを着ける・外すという行動ではなく、『どうしてマスクを外せないのか』という理由に目を向けないと解消へは向かいません」(前田医師、以下略)

では、マスクを外せなくなってしまう理由にはどのようなことなのでしょうか。

【理由①】赤面恐怖症

不安や緊張のあまり人前に出ると赤面してしまう人がいますが、赤面してしまうことに恐怖を感じてしまうのが赤面恐怖症です。

「顔が赤くなったのが見られるのが怖い、嫌だというのが赤面恐怖症です。中には、マスクがある生活なら困らないので、精神安定剤などの薬が減らせる人もいます」

【理由②】醜形恐怖症

実際には周囲は感じていないような外見上の欠点にとらわれて、実生活に支障がある醜形恐怖症。メディアなどでは、醜形恐怖症というと整形をする女性などが取り上げられることも多いですが、中高生の場合は自分の意志で整形することもできず、ひとりで思い悩み、マスクで顔を隠すことで過ごせている子もいるそう。

「醜形恐怖症が理由で児童精神科を受診する中高生は多いですね。周りに対してどう思われているのか、どう評価されているのかということを気にしてしまうからなのですが、周りがケアしないまま放っておくと統合失調症になってしまう子もいます」

【理由③】表情・感情を隠したい

人は言葉だけでなく、表情でも感情表現をし、コミュニケーションを取ります。しかし、自分の感情表現に自信がない場合、周囲がどんなリアクションを求めているか分からない場合、マスクで表情を隠し、感情表現を避けることで自分を守ることができます。

「自分がどう思っているかを周囲に見せなければ、周囲が自分をジャッジする材料がなくなり、どう思われているか不安に思う必要がなくなります。隠すということは楽なんです」

上記のようなはっきりとして理由を自覚していなかったり、感情を言語化できなかったりする「なんとなく外せない子」もいますが、前田医師は総じて「マスクを外さなければならないことが頭では分かっていても、不安が勝ってしまって外すことができない状態」と話します。

マスクを外す必要性が分かっている子に対して、さらに「~だから外しなさい」と言っても外せるわけではありません。では、不安をコントロールしていくためにはどうすればいいのでしょうか。

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【対処法①】考え方のクセを変えていく

マスク依存症のように”周囲にどう思われているのか”ということが不安な人に対して有効なアプローチのひとつが認知行動療法です。

認知行動療法とは

ものの考え方や受け取り方を少しずつ変えていくことで問問題の解決や気持ちが楽になるように導いていく療法。

「マスク依存症の場合は、マスクを外すときの気持ち、考え方を聞きます。例えば、『マスクを外すと周りからどう思われそうだと思うの?』と聞くと、子どもは『嫌な顔だなと思われそう』『嫌われそう』などネガティブな発言をすることでしょう。

そこで、さらに『じゃあ、1クラスに30人いたら、何人がそう思うだろう?』と聞いてみてください。『30人』と答えてしまう子もいますが、現実的に考えてクラス全員がそう思うという考えは極端ですよね。このような考えのクセを変えていくのが認知行動療法です」

別の考え方とは、例えば『新型コロナが流行する前はマスクをしないで会っていたと思うけど、その中であなたの顔を嫌だと言った人はいる?』と聞き、もし、何人かに言われたことがあると言っても『それはクラスの何人中の何人だった?残りの人は大丈夫だったかもしれないよね。だとしたら、今のクラスの30人が嫌だと思うと決まった訳ではないんじゃない?』と言って、少しずつ考え方を変えていきます。

「ほかにも『あなたはマスクを外して嫌な顔の人がいたら、それを理由にひどいことをする?』と聞き、おそらく『しない』と答えるので、『あなたのように外見で人をいじめたりしない人がいる環境ならマスクを外せるね』と、不安なことが起こらない環境であれば大丈夫と気づいてもらう方法もあります」

【対処法②】行動して不安に慣れていく

もし考え方を変えることで「マスクを外してみてもいいかもしれない」という気持ちが芽生えても、実際に行動に移すには勇気がいります。

「行動を変えていくときは少しずつがいいので、まずは、この人だったら見せてもいいかなと思える人の前や、学校の休み時間に10秒間だけマスクを外す練習をしてみてください。学校や人前が難しかったら、誰もいない公園などでもいいです。どこまでできて、どこからが難しいのかという境目を見つけ、大丈夫な範囲での行動を繰り返して、不安に慣れていきます

マスク依存症がマスクを外す練習をするイメージ画像

【対処法③】マスクを外さない

ここまでマスクを外せるようになるための方法を紹介してきましたが、「マスクを外さないままのほうがいいケースもある」と話します。

「先ほどの認知行動療法では、実際には嫌なことを言う人がいない(本人の思い込み)という前提でしたが、学校でいじめが起きていたり、心無い言葉で傷つけてくる人がいたりする場合は、(極端な話ですが)卒業するまでマスクをしたままでもいいと思います」

原因が周囲の人や環境にある場合、マスク依存症でいることよりも、マスクを外してストレスにさらされ続けながら学校生活を送る方が結果的によくない可能性があるそう。

「自分を守るためにマスクを外せないのだとしたら、大事なのはマスクを外させることではなく、本人が安心してマスクを外せるような環境を作ることです。その環境が用意できてないのに無理に外させるのは一番危険だと思ってください」

マスクで防げていたストレスが降りかかってくることで、めまいや腹痛、吐き気を引き起こしたり、ひどいと統合失調症やうつ病になってしまうことも考えられれるそう。

「高校生までマスクを外せない子でも、大学生になると安心できる人間関係を自分で築けるようになり、マスクを外せる子もいます。そこからマスク無しの人生を始めても遅くはないですよね」

今は、マスクを手放せないわが子に不安を感じているかもしれませんが、焦らず見守ることが必要な場合もあると心構えをしておいたほうがよさそうです。

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学校生活はスクールカウンセラーに相談

子どもの気持ちを理解して尊重し、保護者はマスクをしたままでいいと思っても体育の時間など、「マスクを外したほうがいい」といわれる場面もあります。どうすればよいのでしょうか?

「まずは、学校の方針や学校生活の雰囲気も知っているスクールカウンセラーに相談してみるのはいかがでしょう。診断書がないと(学校生活での)特別な配慮ができないということもあると思いますが、必要あればスクールカウンセラーが医療機関も紹介してくれると思います。マスク依存症は病名ではないので、社会不安障害などの診断名がつくと思いますよ」

マスクをしたまま生活すること、不安を抱えながらマスクを外して生活すること、どちらを選んでもリスクはあるかもしれません。だからこそ、親は一般論や社会情勢に振り回されず、専門家とも協力しながら彼らの心に寄り添って歩んでいきたいですね。

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浜田彩

エディター、ライター、環境アレルギーアドバイザー。新聞社勤務を経て、女性のライフスタイルや医療、金融、教育、福祉関連の書籍・雑誌・Webサイト記事の編集・執筆を手掛ける。プライベートでは2児の母。

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