小学生の算数|図形問題が苦手な理由や子どもに合った勉強法を解説
算数の図形問題が苦手な小学生。どこでつまづいているのか、なぜ分からないのか理解できていますか? そこで、小学校非常勤講師、教育ICTコンサルタンの清水智さんが小学生の図形問題について解説。あなたの子どものつまづきポイントを見つける方法や、子どもに合った勉強法まで教えます。
目次
小学1年生で学ぶ内容とつまずきへのアドバイス
小学中の算数には図形問題が各学年で出てきますが、苦手意識をもっている子は少なくありません。ですが、保護者からすると「どこにつまずいているか分からない」という場合もあるのではないでしょうか。何につまずいているのか分からなければ、アドバイスもできませんよね。そこで、まずは小学生の各学年で何を学び、つまづきやすいポイントはどこなのかを克服アドバイスとともに紹介していきましょう。
小学校1年生では、 図形を理解していく基礎を学びます。具体的には、「形とその特徴の捉え方」「形の構成と分解」「方向やものの位置」について勉強していきます。物の形に着目して特徴を捉えたり、形の構成について考えたりする力を育くみます。
小学1年生は算数を学習するスタートの時期です。楽しいと思える時間を大事にしたいものです。特に図形問題では、長さや広さ、かさの概念を形成していく時期となり、2年生で学ぶ長さの測定”にもつながるように、長い・短いや広い・狭い、浅い・深いという概念を肌感覚で理解することが重要です。
苦手になりやすい図形問題のポイント
小学1年生がつまずきやすいのは、「どちらが広いか比べて考える」という大きさ比べです。
広さを比べるには、比べる物を重ねて、1つの頂点・2つの辺をそろえることで比べやすくなると実感することが重要です。「重ねる」「端っこを揃える」「同じ向きにする」など、比較するときのポイントを言語化して教えてあげることで、比較することを理解しやすくなります。
つまづいたらやってみよう!
悩んだら具体物操作
教科書などの問題でつまずく場合は、問題に書かれている図形をコピーして切り取り、実際に動かしたり、重ねるなどの体験することが理解につながります。
直接比較が出来ないときこそチャンス
1つ1つの大きさが揃っているアイテム(平面図形)を準備し、1あたり量がいくつ分(1アイテムを任意単位とする)ことで、面積を比較することができることを理解させます。いくつ分が同じであれば、見た目が違っていても広さは同じというところに、数学的な面白さを見出すかもしれません。
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清水さんへの相談ページを見てみる小学2年生で学ぶ内容とつまずきへのアドバイス
小学2年生では、 三角形や四角形な どの図形について学びます。具体的には、三角形、四角形(正方形、長方形、直角三角形)の形についてや、正方形や長方形の面で構成される箱の形について勉強していきます。
図形の特徴を図形を構成する要素に着目して捉えたり、身の回りの事象を図形の性質から考察したりする力を育みます。
具体的な平面図形や立体図形の学習が始まる2年生では、3年生以降に向けて図形の名称や辺、頂点といった用語を確実におさえておく必要があります。図形で使用する言語を確実に理解しておくことで、3年生以降の問題把握や自力で問題を解いていく際に圧倒的な効果が出ます。
家庭では、お風呂場にあるアイテムを使って辺や頂点を表す部分の確認したり、街中の建物から分かる、正方形や長方形、直角三角形などの模様を発見するなど、日常生活の中にあるものを算数的なメガネで見る練習をしてみてください。
また、方眼紙などのしきつめ(タイル張りの模様など、同じ形を並べて模様をつくったもの)を使って遊び心を持ちながら学ぶことで、3年生での三角形のしきつめ、4年生での四角形のしきつめにもつながっていきます。
苦手になりやすい図形のポイントとアドバイス
小学2年生が苦手になりやすのは、「はこづくり(本物の箱を分解、組み立て、分解する)」という単元です。
理解するためには、本物体験を積み重ねていくことがとても重要です。
- 長方形だけ
- 長方形と正方形の組み合わせ
- 正方形だけ
3つのパターンが出てくるので、必要な面をどのように捉えていいのかを迷う場面が見られます。
2年生で扱う立体は日常生活でもよく見られるものが多いので、下記のような方法で具体的な物を通して体験えをしながら理解していきましょう
つまづいたらやってみよう!
悩んだら実物を触る
上記の3パターンの平面図形を事前に用意しておき、問題に出てくる図形がどれなのかを悩んだら、いつでも触って確認を取ることができる環境を用意しておくことが重要です。特に、反対の面(平行関係)も同じ大きさ・形であることの理解につながります。
工作用紙で実際に作ってみる
工作用紙を使って、自由に図形を作ってみるという経験も重要です。辺の長さをマス目で確実に測れるので、方眼入りの工作用紙がおすすめです。
小学3年生で学ぶ内容とつまずきへのアドバイス
小学3年生では、二等辺三角形、正三角形、円、球などの図形について学びます。平面図形の特徴を図形を構成する要素に着目して捉えたり、 身の回りの事象を図形の性質から考察したりする力を育みます。
三角定規やコンパスを使い始めるので、使い方自体のスキルアップを図るために何度も練習しましょう。できるだけ平らな学習環境で実施し(凸凹していない机、コンパスが差しやすい紙質のプリントやテキストなど)、模様づくりや作図などを通して、道具として使いこなせるようにしましょう。
また、3年生の図形問題には、円、半径、直径という言葉が出てきます。それぞれの意味をよく理解することも大切です。授業で扱う時間は短いですが、球はどこで切っても断面が円になるという概念は、子どもにとって立体図形に対する興味が深まる機会になるかもしれません。
苦手になりやすい図形のポイントとアドバイス
小学3年生で確実に習得しておきたいのは、コンパスを使って円を描くという円の作図です。手先の感覚を確実にしていくことは、4年生以降の作図においての基礎能力です。きれいな円=正円(できるだけゆがみや途切れがない円)を描けるように下記をおさえておきましょう。
つまづいたらやってみよう!
描く前
学校で購入したコンパスと同じ製品を家庭でも使うようにしましょう。持ち帰り等をしなくて済みますし、何よりもメンテナンス中の代替品としての利用も可能になります。使用頻度が多くなる学習時期には、硬さを調整するネジの緩みがあったり、鉛筆(芯)が少なくなることもあるので保護者がチェックしてあげましょう。
描いている時
コンパスを使うときは、コンパスの針を紙に刺すときは、針先の方を持ち、書き始めるときは、持ち手部分を持つことで安定して描くことができます。また、進行方向(右利きながら時計回り・左利きなら反時計周り)の回転方向もきちんと覚えておきましょう。
小学4年生で学ぶ内容とつまずきへのアドバイス
小学4年生になると、下記のように図形について学ぶ内容が一気に増えます。
- 平行四辺形,ひし形,台形など の平面図形 直線の平行や垂直の関係/平行四 辺形,ひし形,台形
- 立方体,直方体などの立体図形 立方体,直方体/直線や平面の平 行や垂直の関係/見取図,展開図
- ものの位置の表し方
- 平面図形の面積 面積の単位(㎠,㎡,㎢)と測定 /正方形,長方形の面積
- 角の大きさ
- 回転の大きさ/角の大きさの単位 と測定
4年生では直方体の見取図や展開図の作図、さらには角の測定も出てきます。見取図や展開図は、これまでに学んできた長さの測定(2年生)やコンパスの利用(4年生)を活用するだけでなく、5年生で学ぶ平行線や垂線の作図などにも関わってくるので丁寧に学んでおきたい単元です。
また、角の測定は、分度器の0度をどこに合わせるのか、分度器の向きはどのようにしたらよいのかということを抑えておくことが、5年生以降の学びに欠かせません。
苦手になりやすい図形のポイントとアドバイス
小学4年生でつまずきやすいのは、図から平行・垂直な直線を見つけることです。
平行な直線、垂直な直線を書く技術が高まることで、実生活の中での直線における平行・垂直の関係を見ることができるようになっていきます。「生活の中では垂直も平行も理解できているのに、勉強の図面になると苦手…」という場合は、感覚的に平行・垂直を判断しているのかもしれません。感覚ではなく理解することを目指しましょう。
つまづいたらやってみよう!
方眼(マス目)付き問題を解く(平行な関係を見つける問題)
算数では、見た目だけで解くことは得策ではありません。「平行・垂直」の概念を活用しながら解くために、方眼(マス目)が入っている問題を使うことで、直線の傾きへの理解が深まり、同じ条件の直線を見つけられるようになります。
三角定規セットを使う(垂直を見つける問題)
平行・垂直の作図でも活用した、三角定規セットをずらして使う方法の応用です。直線自体が垂直に交わっていない・問題用紙の外に垂直に交わる点がある問題においては特に有効です。
小学5年生で学ぶ内容とつまずきへのアドバイス
小学5年生では、下記のようなことを学びます。
- 平面図形の性質 図形の形や大きさが決まる要素と 図形の合同/多角形についての簡 単な性質/正多角形/円周率
- 立体図形の性質 角柱や円柱
- 平面図形の面積 三角形,平行四辺形,ひし形及び 台形の面積の計算による求め方
- 立体図形の体積 体積の単位(㎤,㎥)と測定 立方体及び直方体の体積の計算に よる求め方
5年生では、面積だけではなく直方体の体積や合同な図形の作図、角柱・円柱の見取図・展開図について学んでいきます。
また、正多角形の内角の和や円周率なども登場します。それぞれは単体での学習ということではなく、これまで学んできたことの積み重ね(例:体積=底面積×高さ)や、関係づけ(例:長方形や三角形の面積の求め方を活用して台形の面積の求める)になります。
そのため、それぞれの学習でつまずくことがあるのであれば、4年生以前の学習に戻ることが大事になります。
つまづいている図形問題を細分化し、どこが要因なのかを一つ一つ丁寧に探し出すことが必要になります。例えば、内角の和についての理解不足が見られる場合は、対角線や角の測定(ともに4年生)、頂点という言葉の意味を理解できているか(2年生)ということに戻って学び直しをしましょう。
苦手になりやすい図形のポイントとアドバイス
小学5年生でつまずきやすいのは、半円を組み合わせた図形のまわりの長さを求めることです。
ひとつの式で答えを求めようとしても解けない問題も少なくありません。4年生で習った「L字型の長方形の面積」を思い出させながら、ひとつずつ丁寧に長さを求めていくようにしましょう。粘り強く問題を解いていくことを学ぶ大事な機会です。
つまづいたらやってみよう
それぞれの円の長さに印をつける
ひとつの問題にいくつかの円や半円が出てくる場合、赤・青・黄色で色を変えたり、実線・波線・破線のように印をつけて、長さの違いを明確にすると解きやすくなります。
それぞれの円の長さは別々に求める
テスト以外で問題を解く際は、円周の長さ(直径✕3,14)の公式は見ながら解いても構いません。まずは、それぞれの長さを別々に求めることを大事にしましょう。
小学6年生で学ぶ内容とつまずきへのアドバイス
小学6年生では、下記のことを学びます。
- 縮図や拡大図,対称な図形
- 概形とおよその面積
- 円の面積の求め方
- 角柱及び円柱の体積の求め方
円の面積や角柱・円柱の体積など、5年生までに学んできたことの積み重ねが重要になってきます。さらに、線の対称・点の対称、拡大・縮小などは総まとめともいえる学習内容なので、つまずきがみられる場合は、比較的簡単な問題からスモールステップアップが必要です。
特に、拡大・縮小に関しては、これまでの作図スキルの総まとめになるので、道具を正しく扱うことや長さを求める計算をていねいに行っていきましょう。
苦手になりやすい図形のポイントとアドバイス
小学6年生でつまずきやすいのは、いろいろな立体の体積の出し方です。体積は、”底面✕高さ”という式で求めていきますが、立体の向きが変わってしまうと体積での底面を読み間違いしてしまうことがあります。
つまづいたらやってみよう!
底面に模様・色をつける
底面がどこなのか、対応する高さがどこなのか視覚的にハッキリ確認してから解いてみましょう。
高さの途中で切る(スライス)
切り口が底面と同じであれば、向きは合っていることを覚えておきましょう。
中学での数学を見据えると、平面上でのイメージ力を高めるいいチャンスです。同じような問題をたくさん解いて身に付けましょう。自分で考えて問題を解いていくという算数における大事な力の育成につながります。
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清水さんへの相談ページを見てみる特性が気になる子への図形問題の教え方
特性は個々によって違うものなので学び方に正解はありません。ですが、子どもの思考を理解するためにも子どもの思考の順番に寄り添って一緒にゆっくり解いていくことをおすすめします。
例えば、下記のような方法をおすすめします。
- 同じノートやプリントを使う
- ヒントを書き込むときは子どもに許可をもらってから書き込む
- ヒントを書き込むときは、青・緑系の色を使う
- 教えるときは、対面に座るのは避け、隣り、またはL字型に座る
教えてくれる人が先に行き過ぎていない、すぐに聞ける関係・環境があると子どもは安心して学ぶことができます。また、一緒に学びを進めていくことで、子どもがどこでつまづいてくるのかが見えてくることがあります。
つまづきが見つかったら、その子の思考の傾向をふまえた上で理解しやすい学び方を考えていくことができます。
つまづきやすい文章問題に関しては、以下の記事をご覧ください。
苦手を克服するためのコツをアドバイス
苦手を克服するコツ、それはズバリ”風呂敷”です。この風呂敷のイメージは、私の勤務する自治体(長野県)で大事にしていることで、得意をとことん伸ばすことで苦手分野も徐々に上がってくるというものです。
風呂敷は、どの部分を摘んでも持ち上げることができます。中央でも、端っこでもつまみあげることで、風呂敷全体が持ち上がってきます。その”どこを持ち上げるか”が得意な分野です。得意な分野を持ち上げることで、子どもの自信が養われ、これまで持ち上がらなかった部分(苦手な分野)も持ち上がっていきます。
算数の図形問題につまづいている子どもの姿をみていると不安になることでしょう。しかし、学びのスピードには個人差があり、数ヵ月前までいくら説明しても理解できなかったことが、ある日突然できているなど子どもの成長はいい意味で予測がつきません。今、理解できていないからといって悲観する必要はありません。
また、算数や数学全体をの中で図形問題の割合はそこまで大きいわけではありません。さらにいえば、高校・大学入試に図形の問題が果たして何点になるのか想像してみてください。もし、図形問題が完璧に理解できていないのであれば、ほかの問題や教科で確実に点数をとっていくのもひとつの手段です。
図形問題はどうでもいい、分からないままでいいということではなく、「分からない」「解けない」ということに固執せず、広い視野で子どもの学びを見守っていってくださいね。
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東京都出身。大学卒業後、13年間東京都公立小学校(日野市・小笠原)で勤務。その後、小笠原から家族とともに長野県白馬村へ移住。教育現場・教育行政へのICTコンサルタントを行っている一方、県内の公立小学校非常勤講師や公立学校内の不登校児童生徒支援としての居場所づくりに従事している。(一社)エンターキー所属 Google認定教育者。趣味は外遊び全般(アウトドア好きが高じてログハウス住まい)。サッカーは一生の友人。