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2021.08.18

いじめは傍観者も悪い? 自分もいじめられるかも、いじめられる側も悪い…親ができる導き方とは

栗岡まゆみさんの連載4回目。今回は、読者の悩みに答えてもらいます。直接いじめに関わっていない“傍観者”といわれる立場にいる子の多くは、「何とかしたい」と悩みます。しかし、その一方で傍観者が加害者と同じポジションになってしまうケースも…。「傍観者も悪いの?」と疑問を抱き悩む子どもに、親はどう向き合うべきなのでしょうか。

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いじめは被害者・加害者・観衆・傍観者の四層構造で成立してしまう

今回の相談

娘の友達に、仲間外れにされている子がいます。娘はその子のことを嫌いではないので普通に接しようとしているのですが、それによって自分が仲間外れにされるのではないかと悩んでいます。“いじめっ子”ではない、周囲の子はどのように対応するのが正解なのでしょうか。(小学5年娘の母)

次の一コマは、ある小学校のクラスでの出来事です。

I子さんはおとなしく、なかなか友達はできませんが優しい女の子。同じクラスのM子さんは明るい性格の、元気な子です。明るく面白いトークで話題を振りまくM子さんの周りには、いつもクラスの仲間が集まります。I子さんはみんなの会話を遠巻きに見るだけではありますが、そんなクラスの雰囲気を楽しんでいました。

ある時、テストの点数が悪かったM子さんは自分より点数の低い友達をからかう発言をしました。それに対しAさんが「やめなさいよ!」と止めたことをきっかけに、数人のグループでM子さんへの悪口が始まりました。それがクラス中に広がってきたある時、B君が「ひどいんじゃないの?」と勇気ある一言を発します。しかし、その発言もむなしく悪口はさらに続きM子さんは孤立してしまいます。

IさんはB君のように発言する勇気はありませんが、このままではクラスの雰囲気がどんどん悪くなることを不安に感じ「私はどうしたらいいのだろう?」と悩んでいます。

いじめが起こった時に生まれるのが、4つの構造です。

  1. 被害者(いじめられている子)
  2. 加害者(いじめている子)
  3. いじめをはやし立てる観衆
  4. 何もしない(できない)傍観者

いじめが起こった時、傍観者といわれる周りの子どもたちはどのような対応をしているのでしょうか。厚生労働省の「平成21年度 全国家庭児童調査」の結果を見てみましょう。

止めようとする先生に知らせる友達に相談する特に何もしない
小学5~6年生24.1%39.7%22.1%14.1%
中学生25.1%25.1%39.7%21.8%
高校生14.8%14.8%44.3%25.8%

学校で起きたいじめは、教師が解決するというのが前提です。しかし「先生に知らせる」子の割合は、年齢が上がるにつれ下降しています。教師ではなく「友達に相談する」子は多いものの、「特になにもしない」という子も年齢とともに多くなる傾向にあります。

この記事を書いた栗岡まゆみさんに相談してみませんか?

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傍観者がいじめを促進することもある。しかし…

多くの学校で採用されている「いじめ防止基本方針」の中には、加害者だけではなく観衆や傍観者の立場にいる児童・生徒もまた、いじめに大きい影響を与えることが記載されています。

このケースでは、Aさんに賛同し、悪口を言ったりいじめを面白がって見ている“観衆”がいます。これはいじめを積極的に認め、促進する役割を担っていることになります。

また、いじめを見て見ぬふりをする傍観者暗黙的にそれを認め促進する役割を担うことがあります。また、加害者にとっては傍観者も加害者のように見えることもあるのです。

もちろん、気持ちの面で観衆と傍観者では大きく異なります。それゆえ、一概に「傍観者は悪い」と断言することはできません。しかしながら、いじめに関わっていなかったとしても結果的にいじめの促進作用に加担してしまうこともあるということは理解するべきことでしょう。

とはいえ、傍観者といってもひとくくりにできない部分が大きいことは否定できません。

傍観者には、

  1. 無関心なタイプ
  2. 行動できないタイプ

という二つのタイプがあります。無関心なタイプは周りの人間関係や出来事に関心がない子ども。周りでどんなにひどいことが行われていても、「自分には関係がない」と感じるタイプです。

行動できないタイプは、Iさんや相談者のお子さんのように「いじめは良くない」「何とかしたい」という正義感はあるけれど「次は自分がいじめられるかもしれない」といった葛藤がありどう行動すべきか分からない子どもたちです。

今回の相談では、お子さんがお母さんに相談しています。それは、自分一人ではどうすることもできないため大人に助けを求めているということ。アクションを起こしているので、いじめに加担するような傍観者とはいえません。

傍観者であることに悩むわが子。親はどうアドバイスする?

「いじめは良くない、何とかしたいと思うけれどどのように行動したら良いか分からない」
「自分が行動を起こすことで孤立し、次のターゲットにされるかもしれない」

傍観者である相談者のお子さんは、そんな不安を抱いていますよね。でも、その心の内をお母さんに相談するというのは、とても勇気のあることです。また、お子さんが何もできないことに苦しんでいるのは、人の心の痛みが分かる優しい気持ちがあるからです。この点は、しっかり認めてあげてくださいね。

相談者の親子関係には「何でも話せる」という信頼関係が築けていると感じます。「親に話せば分かってくれる、守ってくれる」という信頼の表れです。

本来は、担任がいじめに気付くべきですし子どもに相談してもらう信頼も持つべきです。しかし、それができていないのであれば親がフォローするのはとても良いこと。先生に話すことで周りに知られてしまうことが心配ならば、親から先生に相談するのが子どもにとって一番安心で安全な方法でもあります。

「誰でも、次は自分がいじめられると思ったら怖いよ。お母さんも、何もできないかもしれない。でも、あなたは何もできなかったんじゃない。何かしたいと思ったけど、どうしたらいいか分からなかったんだよね。お母さんと一緒に考えよう」

こんなふうに、声をかけてあげてください。そして話してくれたことを認め、褒めてあげてくださいね。

いじめ問題の現状。なぜ学校でいじめがなくならないのか? <前編> 【連載 いじめのトリセツ Vol.2】
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傍観者のわが子に親は「しょうがない」と認めるのアリ?

実は、自分の周りで起きたいじめを日常の話題程度で話す子どもは少なくありません。もちろん、善悪の判断はあります。そこにあるのは“他人事”という気持ちと、“関わりたくない”という気持ちがひそんでいます。

親の中にも、いじめの傍観者になるのはやむを得ないことと考える人は少なくありません。理由は、子どもが一歩踏み出せないのと同じ。「いじめられている子を助けたら、次はわが子がターゲットにされる可能性がある」と心配になりますよね。

そんな親の複雑な気持ちはわが子を思うがゆえではありますが、「関わってはいけない」という発言は絶対にしてはいけません。親子で考え、子どもに考える余白やヒントを与えることが大切です。

前回の連載でも解説しましたが、いじめは許されない行為だという善悪の基準に、学校も家庭もブレを生じさせてはいけません。それが、いじめられている子、いじめている子、傍観者、観衆の全ての心を守ることになります。

わが子のいじめ問題が解決しない! 学校以外で相談できる場所が知りたい【連載 いじめのトリセツ  Vol.3】
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「いじめられる側にも問題がある」。子どもが感じるモヤモヤはどう解消させる?

いじめの加害者や観衆者はもちろん、傍観者の中には起こったいじめに対し「いじめられる原因を作ったから、仕方ない」と考える子も少なくありません。

私が行っている「いじめ防止授業」で、中学生500人にアンケートを行ったことがあります。「あなたは、いじめられる側にも問題があると思いますか?」という質問に対しては、次のような回答が得られました。

あなたは、いじめられる側にも問題があると思いますか?

問題がある…136人
少し問題がある…50人
ケース・バイ・ケース…66人
問題がない…134人
分からない…24人

「問題がある」と答えた理由については、

  • いじめられている相手も、恨みを買うようなことをことをしたと思う
  • 性格が悪い
  • イラつかせる行動をした

といったものが挙げられました。

逆に、「問題がない」と答えた理由については、

  • いかなる理由があっても、ダメ
  • 何か問題があったとしても、いじめていい理由にはならない
  • 何かのきっかけがあったとしても、いじめた時点でいじめた側の負け
  • 悪いところがあったとしても、そこだけを見ないで良いところを見れば、いじめは起きない

などが挙げられました。

このように生徒たちの答えの分かれるところもまた、いじめ問題の解決を難しくする原因となっています。

しかし“いじめられる側にも問題がある”という考えは、いじめられている子の心の傷をさらに大きくするものです。また、いじめている子や傍観者の言い訳や自己保身の考えにもなります。

冒頭の事例では、Mさんの行為に問題がありました。A子さんがMさんを注意したところまでは正しい行為です。しかし、その後のA子さんの言動やクラスメートの行動は、正しいものでしょうか?

「いじめられる側にも問題がある」「ケース・バイ・ケース」「分からない」と答えた生徒の価値観や考え方、モヤモヤした心を「いじめは絶対に許されない行為」であると心から理解してもらうこと。これが教師や親、周りの大人たちの役目であり、いじめを解決する鍵となります。

もちろん、モヤモヤした感情のある子に対し正面から否定してしまうと、反発心を生むことになるでしょう。したがって、「気持ちは分かるよ」といったん受け止めた上で正しい方向に導くことが大切です。

こんなふうに話しても、良いでしょう。

「でもね、だからといっていじめていい理由にはならないよ。悪口を言ったという行動、責任は自分自身にあるよ。それが原因で、M子さんは孤立しているんだよね。正しくない行動はいつか自分に返るから、M子さんにも行いを改めてもらえるように先生やお母さんと考えよう。そのために、クラスを良くするために、力を貸してくれないかな?」

いじめ問題の現状。なぜ学校でいじめがなくならないのか?<後編>【連載 いじめのトリセツ Vol.2】
いじめ問題の現状。なぜ学校でいじめがなくならないのか?<後編>【連載 いじめのトリセツ Vol.2】
栗岡まゆみさんの連載2回目。前編ではいじめ問題に取り組む社会の動きといじめがなくならない原因について解説しました。後編では、「いじめゼロ」を目指す栗岡さんの考え.....

いじめ防止授業を行った後、生徒たちから次のような感想が得られました。

  • いじめられる側にも原因があると思っていたけれど、いじめることと問題があることは分けて考えるという言葉は、改めて考えさせられるものでした。問題がある=いじめにはつながらないと思いました。
  • 今まで、いじめられている人にも原因があると思っていました。でも、それがいじめたい理由にはならないと気が付きました。

生徒たちの感想は、善悪の正しさを理解できる心があるということを表しています。一方的に大人の正しさを押し付けたり間違いを正したりするのではなく、まずは子どもの今の考えや正直な気持ちを受け止め、心に寄り添い、丁寧に対話しながら共に考えましょう。

大切なのは、“いじめはどんな理由があってもしてはならない”という揺らぎのない結論に導くサポートです。

いじめの傍観者でいたくない! 子どもが行動したいと思えるために

例えば電車で高齢者や赤ちゃんを抱っこしているお母さんを見た時、席を譲るか否かで悩み行動に移せなかったという経験はありませんか? そんな自分に、モヤモヤした気持ちを抱いたこともあるでしょう。

同じ空間にたくさんの人がいると、率先して行動できません。なぜなら、自分が動かなくても誰かが動いてくれるかもしれないし、目立ちたくない。周りの視線が気になるということもあるでしょう。

いじめもまた、同じです。いじめの場合は“チクった”ことで仕返しされる可能性もあります。だから、いじめの事実を先生や親に相談するというのは、本当に勇気の要る行為なのです。

しかし「いじめ防止対策推進法」では、“子どもたちは誰一人としていじめで苦しい思いをすることがあってはならない、いじめは絶対に許されない。大人はいじめを受けている子どもを必ず救い、いじめを防止する責任がある”と定められています。

いじめを通報した人もまた、いじめられている子と同じように守られるのです。

子どもから相談されたら、

  1. いつ
  2. どこで
  3. 誰が
  4. 誰から
  5. どんないじめをされたか
  6. いじめを見ていたのは、他に誰がいるか

上記の項目を教えてもらい、先生に伝えるように促してみませんか? もし、直接先生に伝えるのが難しいのであれば親から先生に伝えてあげても良いでしょう。子どもに約束してほしいのは、情報元が明らかになるようなことは絶対にしないということ。これは、先生にも約束してもらいましょう。

いじめられている子は、周りの生徒全てが敵に見えるほど苦しんでいます。報告することが一番ですが、声を掛けてあげるというアクションもその子の救いになります。クラスメートがいる中で話しかける勇気はなかなか持てないものですが、LINEなどで「大丈夫?」と心配している友達がいるということを伝える方法もあります。

学校で起きたいじめは、学校が解決すべきものです。けれど、そこには親の協力も必要。日頃から担任とコミュニケーションを取り、信頼を作る姿勢を示すのです。そのためには、保護者同士のネットワーク・情報交換も鍵となります。

あるお母さんは、クラスのいじめを知り他のお母さんたちとチームを組み、学校の見回りを実行しました。いじめられている生徒は、保護者がいてくれると安心します。また、いじめる側の抑止力にもなります。

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学校と保護者同士が信頼関係を築き一つの“チーム”であることがいじめの抑止力となり、早期にいじめを解決できることにつながります。

いじめは、いじめっ子がいじめない選択肢を取ればなくなるものです。けれど、もしいじめが発生してしまったら…。教師に相談する勇気を持ち、クラスみんなの勇気を少しずつ出し合えば、いじめられている子の心や命を守ることができます。

勇気ある小さな一歩が、いじめのないクラスを作る。わが子の迷いや悩みに寄り添い、「自分に何ができるか」を一緒に考えてあげてくださいね。

<構成:ソクラテスのたまご編集部>

栗岡まゆみ

栗岡まゆみ

一般財団法人いじめから子供を守ろう!ネットワーク東京代表、JAÐP認定チャイルドコーチングアドバイザー。いじめ相談の他、9000人の児童・生徒に夢を描く心の力でいじめのないクラス作り授業・親子コミュニケーションセミナー・教師向け研修・シンポジウムを行う。ラジオ教育番組パーソナリティー・ラジオ日本・エフエム三重・ラジオ大阪などの出演、新聞掲載等幅広く活動している。著書に『いじめゼロを目指して~いじめ防止授業5000人の現場から~』(文芸社)『いじめっ子・いじめられっ子にならない7つのルール』(kindle) など。 栗岡まゆみ公式サイト(https://www.kurioka-mayumi.org/)

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