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2021.06.23

子どもの集中力が続かないのはなぜ? 原因と解決法を専門家が解説します

家庭での宿題や学校の授業中、集中力が続かない。集中が続かないため、物事がスムーズに進まない…。そんなわが子の集中力のなさに不安を感じる親は多いものです。集中力が続かない理由はあるのでしょうか。集中力は成長とともに身に着くものなのでしょうか。児童発達支援の専門家・伊藤ひなたさんに教えてもらいました。

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そもそも“集中力がある”とはどういうこと?

「うちの子は集中力がない」と、心配する親は少なくないでしょう。では、そもそも集中力とはいったいどのようなものなのでしょうか。まずはここから解説しましょう。

 人間には脳の前頭前野に注意機能が備わっています。その注意機能には、

  • 選択(Selectivity)
    対象を絞り、その対象物や者に自らの注意を向けている状態。教壇に立つ先生の話を聞くということは、先生を対象として選択しているということ。
  • 集中の維持またはヴィジランス(Sustaining concentration or vigilance)
    先生が自分に関心のない話題をしていても、その話に集中できる力。
  • 注意の切り替え(Siwitching attention)
  • 転導性(Distractibility)
    場面に合わせて注意を切り替える能力。例えば友達との会話が盛り上がると内容はどんどん発展していくが、その内容に沿って注意を切り替えて会話のテーマに沿った応答ができること。
  • 意の程度の調整(Modulating the intensity of the attention)
    自分とは全く関係のない、不必要な音や視界を切り離す力。例えば先生が大事な話をしている時、外から聞こえる工事現場の音に注意が向いてしまうと話を聞き逃してしまう。そうならないために「今は特に先生に集中しよう」と、関係のない刺激をシャットダウンし注意力を調整する力。
  • 憶過程への注意(attention to memorial processes)
    試験勉強などで「前回ここを間違えたから、今度は気を付けよう」とする意識。
  • 中力(Focusing)
    ある物事に意識や注意を当てる力。

といったさまざまな要素が含まれ、集中力(Focusing)はこれら注意機能の一つ。そして、この注意機能全てが学習をする際に必要な能力になります。

そしてもう一つ、脳には大事な機能があります。前頭前野にある背外側という部位が持つ、ワーキングメモリーという能力です。ワーキングメモリーとは、物事を頭の中で処理する力のこと。一斉指示の理解、その指示の実行を指します。

学校で先生から「1時間目は〇〇して、その次のBの時間で△を△します」と言われたとしましょう。「はい」と元気良く返事をしたものの、指示の内容が多すぎて優先順位が分からず結局できなかったというのは、ワーキングメモリーが原因の場合があります。

注意機能とワーキングメモリーが学習に必要な能力ですが、集中力がない子、注意の切り替えが難しい子、ワーキングメモリーだけが苦手な子など、子どもによってその原因となるのはさまざまです。

つまり、“集中力がない”と一括りにするのではなく、個別の学習方法を見つける=学習に必要な能力の何を苦手としているのかを見つける必要があるということです。

わが子の集中力が続かない…その原因とは?

子どもの注意機能は、加齢によって上達していくことが実験で報告されています。子どもの注意機能を調べる検査としては神経心理学検査が多く扱われ、「Trail Making Test」(TMT)などがあります。この検査では課題の完成までの時間や誤反応数を評価することにより、短期記憶であるワーキングメモリーの速度や正確さを測ります。

健常者である6歳から29歳の325人を対象にTMTを実施した結果、課題の完成までの時間は年齢によって有意な発達的変化が認められました。6歳~7歳ではミスが多かったり課題の切り替えに時間が多くかかっていたりしますが、14歳までには急速に短縮することや、14歳以降の課題の成績はほぼ一定になったと報告されています。

つまり、子どもがまだ小学生の間は「集中力がないな」と感じても、その多くはそれほど心配する必要がないということ。年齢が上がるにつれて、徐々に集中力が身に着いていくことがほとんどでしょう。

しかし、集中力の欠如の原因が発達段階に起因しない場合もあります。

【参考文献】眞田敏・新田真以・福田あやこ・津島靖子・荻野竜也(2012)「Trail Making Test指標の発達的変化の検討」)岡山大学大学院教育学研究科研究収録第150号.9-16)

【集中力が続かない原因①】認知特性による対象への興味の有無

知能指数と脳の個人差を表す、「認知特性」というものがあります。学校では全ての生徒の学習内容が偏らないように、均一に設定された授業カリキュラムを受けます。けれど、生徒の理解度はさまざまですよね。

知能指数とは、「IQ(Intelligence Quotient)」といわれるもの。専門機関などで実施される知能検査は「ウェクスラー(Wechsler)」といい、小学生であればウェクスラーの中でも「ウィスク第4版(WiscーIV)」が妥当な知能検査となります。

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日本で検査を受検する場合、知能検査の多くはこのWisc-Ⅳで知能指数を算出します。ただ算出された知能指数は子どもの実生活に即しているかどうかについて疑わしいところです。

例えばIQの平均は100前後ですが、IQが130の子どもが同じクラスの友達と興味や関心が合わなかったり、集団になじめなかったりといった場合があります。学校では集団生活が求められますが、突出した知識のために不登校になるケースもあるのです。IQが高ければ、実生活に問題がないという認識は誤りです。

一方で、認知特性とは個人の脳の特性のこと。何が得意で何が苦手かについて、数字や折れ線グラフで把握できるようになっています。認知機能には個人によって特性があるために、学校の授業の理解度と認知力には個人差が生じます。国語が得意だと言語理解が高くなるし、算数が苦手ならワーキングメモリーは低いことが考えられます。

このように個人には得意・不得意があり、それが学力にも反映されます。対象への興味の有無は、こういった認知の強みと弱みが影響していることもあるでしょう。

【集中力が続かない原因②】生活習慣

生活習慣と認知機能の関連については、多くの研究報告があります。日本では毎年、子どもの学力について文部科学省が全国学力・学習状況調査を実施しています。大阪府で子どもの学力・体力の低下が問題視されたのは、記憶に新しいですね。

養護教諭が中心となって食事・運動・睡眠といった生活習慣の重要性を小学校の授業で取り上げ、PDCAサイクル(*)を導入しました。子どもたち自らが1週間ごとに起床時間・メディア使用時間・就寝時間・朝食の摂取・運動時間についての振り返りと反省を行い、次週の課題や目標設定といった取り組みを実施しました。その結果、生活習慣を改善することで体力の向上のみならず集中力が高まる傾向がみられたという報告があります。

*PDCAサイクル…Plan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Action(改善)の頭文字を取ったもので、継続的にその質を管理するための手法。

【参考文献】鹿野晶子,鈴木広哉,野井真吾(2015)小学生における高次神経活動の実態とそれに及ぼす生活状況の検討:go/no-go課題における誤反応数と型判定の結果を基に.発育発達研究第66号.16-29

【集中力が続かない原因③】発達障害

発達障害は、個人のやる気の有無や性格が原因ではありません。脳の特性により学力に影響を及ぼします。

例えば、自閉症は対人関係の障害が根幹にありますが、数字が大好きだったり電車や部品などある特定の分野に限定した知識を持っていたりすることがあります。学校のテストで100点を取ることも多く、学力に問題がないような子もいます。けれど、対人関係に障害があるため教科書を読んで問題を解くことができても、椅子に座って人の話を聴くことができないことがあります。数字は得意で本人の学年以上の問題が解けるのに、話し言葉の発達が伴わないため友達や先生の話が理解できないことがあります。

注意欠陥多動性障害の場合、話し言葉の遅れはみられません。けれども、考えながら話したり説明したりする前に体が衝動的に動いてしまうので、話し言葉に名詞がない、話し相手と会話がかみ合わないためにチグハグな文章になることが多くみられます。ただし共同や協力活動ができるので、友達から手伝ってと言われたら手伝ってあげたり、一緒にゴールを目指して活動を成し遂げたりといったことができます。しかし、学校生活は注意機能をフルに活かして勉強をしていく場なので、テストや授業で好成績を出すことが困難。注意機能に障害があるため、大事な宿題や提出物の忘れ物が毎日あったり、そもそも気が付いていないこともあります。話し言葉に遅れが伴っていないことから、周りから理解が得られにくいことがあります。「頑張ったらできる」と大人から言われ、特性に合った解決法が分からないまま空回りな努力を積み重ねていることもあります。

集中力を身に着けるためには、それぞれの子どもの特性を理解した上で方法を考えることが必要です。次章で詳しく解説しましょう。

子どもの集中力を高める方法とは?

集中力が弱い子どもは、他に気を取られてやらなければいけないことが理解しにくい状態にあります。例えば、集中力が弱ければ椅子に座り続けるのも難しいのです。「早く遊びに行きたい」など、他のことに意識が向いていることはありますが、単純に椅子の座り心地が悪いといったことも理由となる場合があります。その場合は足元に脚台を置いたり、椅子にクッションを置いて高さ調整したりすると改善されることがあります。部屋の明るさも暗すぎたり、明るすぎたりしていないか調整してみてください。

さて、次に机の上を見てみましょう。集中力が弱い子どもは、細かいことが苦手です。つまり、後片付けができてない子が多いのです。勉強するときに“筆箱がない(学校に忘れている)”、“宿題のプリントがない”という子もいます。そういったことは、全て宿題や勉強を妨げる要因になってしまいす。

ランドセルの中身もチェックしてみましょう。教科書の下にプリントがたまっていませんか? そこも、確認してあげてください。「このくらい本人にさせるべきでは?」と思うかもしれませんが、苦手な子はこれが本当にできないものです。整理整頓をサポートしてあげると、本人は助かります。

集中力が弱い子は、机の上に物が多いと意識がそちらに向いてしまうことがあります。宿題がなかなか終わらないといった子どもは、違うものに意識が向いてしまっているかもしれません。そのため、机の上はできるだけ飾らない方が良いでしょう。

では、実際に集中力を高めるためにはどのような方法が効果的なのでしょうか。

ストップウォッチを利用する

集中力をつけるために、ストップウォッチを利用する方法があります。だらだらと時間がたってしまい、遊びに行く時間がなくなると勉強のモチベーションが下がってしまう子もいます。ストップウォッチを使うことで集中力が高まり、いつもより早く宿題を終わらせることができたという子は多くいます。

課題の量の可視化

課題の量を可視化しましょう。写真のような収納棚を使うのもおすすめ。一目で宿題の量を把握しやすくなるように、4~5段の引き出し付きを用意してもいいですね。1段ごとにプリントを1枚ずつ入れ、課題を終えるごとに棚に戻します。

ポイントは、外から中の量が見えること。

集中するのが苦手な子は、細かいことが苦手なので課題が多すぎるとモチベーションが下がってしまいます。整理して棚に入れることで上から順番に取り組めば良いということ、量を一目で把握し「4つしかない」と思うことで取り組みやすくなります。

ワーキングメモリーの弱さは、復習の頻度でカバー

「ワーキングメモリー」とは、短期記憶のこと。やる気の有無ではなく、脳の特性です。本人が努力しても、一度覚えてもすぐ忘れるといった場合はワーキングメモリーが苦手なのかもしれません。

例えば親が「〇〇しなさい」という指示に子どもが「分かった」と返事をしたけれど、ウロウロして「何をしたらいいんだっけ?」と聞いてくる状態です。これは、指示を忘れてしまっているということ。学習面では小学生の漢字や英語のスペルを覚える時、または新しい単元を学習するときにその特性が現れやすいですね。短期記憶が苦手だと、何度書いても覚えられません。

また、ワーキングメモリーが弱い子には字を丁寧に書けない特徴もみられます。先生の話を聞きながらノートを取るといった同時作業が難しく、字が乱雑になる場合が多いのです。字が汚いと自分の書いた字が読めないといったことも多く発生し、結果的に勉強へのモチベーションが下がることはあるでしょう。

ワーキングメモリーが苦手な子の場合は、復習回数の頻度を増やすことがおすすめです。自分の書いた字が汚いために読解不可能な場合は、教科書の音読回数を増やしましょう。音読の効果としては、ノートに書いて覚えるより文字を音声にして聴覚から覚えていくことが有効になる場合があることが挙げられます。字が乱雑だったり書いても覚えられない子の場合は、声にして音声から記憶する方法に転換してみましょう。

自閉症の子は、スケジュール設定を行う

自閉症を持つ子どもは、一日の流れをスケジュール化すると行動しやすいといわれています。

例えば、

学校 → 15時帰宅 → 15:30宿題 → 16:00休憩

といったようにスケジュール設定し、写真を添えるのも〇。習慣やルーティンの実行に強いのが、自閉症児の特徴です。ただし、スケジュール通りにやることに強くこだわり、疲れていたり体調が悪かったりしても休むことができないというのも特徴として挙げられます。

そのため、スケジュールに柔軟性を持たせることも重要。スケジュールは必ず本人と一緒に作り、「今日、もし宿題がいつもより少なかったらどうする?」など、違うプランを用意しておくのが良いでしょう。

注意欠陥多動性障害(ADHD)の子には、課題の量とゴールの可視化

注意欠陥多動性障害の子どもは、細かいことを苦手とします。誤字脱字が多く、文字をきれいに書くことや符号探しといった単純作業が苦手で見落としが多くあります。指摘されることを嫌がり、そういった点を指摘するとモチベーションが下がってしまいます。指摘されて細かい見落としや間違いを正すことは本人の最も苦手とするところなので、指摘する回数は減らしましょう。

対応としては上述の収納棚などを使い、課題の量を可視化して終わりをはっきり見せること。見落としが多くなるための特訓としては、見つける練習を行います。『ウォーリーを探せ』や『ミッケ!』といった本を使って、遊びながら細かく絵を見分ける練習をするのも効果的です。

親の声掛け次第で子どもの集中力がアップすることも!

なかなか宿題に着手しない子どもを見て、つい叱ってしまう親は多いものです。叱ることで子どもを動かすというパターンになっている家庭もあるのではないでしょうか。

人間は、強化されると行動が増していきます。一方で、弱化されると減っていきます。“強化”というのは、行動の頻度が増えること。“弱化”は「しなければ良かった」という状態です。

どの親も、子どもが自ら意欲的に勉強することを望んでいることでしょう。しかしながら、保護者の声掛けが先行すれば子どもは親の声掛けがあると勉強するようになります。親は、子どもの自立を促すために途中で声をかけることをやめてしまいます。そうするとやはり、子どもは再び勉強をしなくなるのです。

では勉強しない子どもへの声掛けは、どのように行うのが正しいのでしょうか。

正解は、「勉強しなさい」という声掛けはしないこと。

まず、子どもに目標を聞いてみましょう。通知表や前回のテストを見ながら話し合ってもいいですね。「この前のテストは〇〇点だったね。今度は何点取る?」と、子どもに聞いてみましょう。もし子どもが前回は30点だったのに、100点を取るといった場合は目標の設定ミスになります。目標は、今の実力より少し上に設定することをおすすめします。

子どもが設定した目標に対し「70点なんてダメ。100点取りなさい」と言わずに、「応援してるね」と声をかけて子どもの意見を尊重してあげてくださいね。

子ども自らが勉強して目標に少しでも結果が近付いたなら、それ以後も自ら勉強し始めることは少なくありません。そして、少しでも成果があれば褒めてあげることが鉄則です。

行動は、見えないものが見えるようになれば必然と強化されていきます。

テストで問題が解けない(白紙) → 勉強する → テストの答案が埋まる(答えが見える)という感覚をつかむことができれば、勉強するという行動が強化されていきます。

伊藤 ひなた

伊藤 ひなた

臨床心理士・音楽療法士。児童発達支援や放課後等デイサービスで支援者として従事して10年、プライベートでは音楽療法の経営も行っている。専門は障害児の発生・発音の促進。歌を歌いながら発声練習をしたり、社会性を促進したりしています。子育てに関する悩み相談にも対応。

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