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2021.05.11

子どもの視力低下は仮性近視の可能性も! トレーニングで視力は回復する?

遠くを見るときに目を細める、注意してもテレビの画面に近づいて見る…。わが子の視力低下のサインに気付く親は多いものですが、子どもの場合「仮性近視」という一次的な視力低下の可能性もあるようです。仮性近視であれば、視力は回復するのでしょうか。視力低下を防ぐ術はあるのでしょうか。眼科専門医・林田康隆先生に教えてもらいました。

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監修者

林田康隆先生眼科専門医

Y’sサイエンスクリニック広尾院長・医学博士。日本眼科学会認定眼科専門医。兵庫医科大学医学部卒業。大阪大学大学院医学系研究科博士課程修了。眼表面の幹細胞研究に携わる、日本でも数少ない再生医療のスペシャリスト。メディアへの出演も多数、診療・手術に携わりながら最先端医療にも取り組んでいる。著書に『1日1分見るだけで目がよくなる28のすごい写真』『眼科専門医と考えた「測るだけ眼トレ」ブック』(ともにアスコム)など。
写真:Naomi Kawakami

近視は現代人の生活習慣病! 子どもの視力も年々低下傾向に

仮性近視とは、読んで字のごとく仮の近視状態のこと。つまり偽物であり症状は一過性なのです。仮性近視を解説する前に、まずは一般的な近視について解説しましょう。

近視とは…

近くの物は見えるが遠くの物はぼやけて見える症状で、一般的に日常生活で眼鏡をかけている人、“目が悪い”人の目の状態をいい、「軸性近視」という。「正視」(一般的にいう“目がいい”人のこと)では安静位で網膜上にピントが合う状態だが、近視は安静位で網膜よりも前にピントが合う状態。

そのために、眼鏡による補正が必要になるわけだが、本来の眼球が球体であるのに対して、近視は成長とともに前後に眼球が大きく伸びてしまいラグビーボールのようになってしまう。これは眼球の前後の長さである「眼軸長」が長くなることで起こるため、前述した“軸性近視”と表現されるわけである。

日本では、1960年代以降の高度成長期から徐々に近視が増えてきました。実際の論文になっているものとして、東アジア諸国で1960年には18歳までの近視率がざっくり言って10~30%であったのに、その50年後の2010年には各国で軒並み80~90%になっているというデータが出ています。

また、2016年に発表された論文では全人類の2000年での近視率が28.3%であったのに対して、統計学的推測で2050年には近視有病率が49.8%までになり、実に全人類の半分に近視を有するという衝撃の研究結果が報告されました。

さらにその2050年には、全人類の約1割が失明のリスクのある病態を発症しうる強度近視になるといいます。これは2016年の段階での統計的な結果であり、2020年初頭からのコロナ禍で画面を見つめ続ける割合が一気に増加していて、さらにはこの生活習慣は戻りにくいことを考えるとこの研究結果は結果的に大きく前倒しになる可能性もあります。少なくとも、目を取り巻く環境によって大きく左右されるものであることは知っておいてください。

もともと、人間の目の初期設定は遠くにピントを合わせた状態で、人類が狩猟生活を送っていた大昔は、遠くにピントが合わなければ獲物を見つけることができません。当時の人間にとって、目が悪いことは“死”を意味します。今日を生きるため、獲物を見つけるために、遠くを見る力はとても大事なことでした。

遠くにピントが合っている状態がデフォルトであるため、毛様体筋」という筋肉を収縮させることで、レンズの役目をしている「水晶体」を分厚くして近くにピントを合わせています。つまり、近くを見るたびに目の中の筋肉に力が入っているわけです。

昨年から続いているコロナ禍。当初、学校では休校措置が取られました。休校措置の解除後、学校の健診で視力の低下が見られる子どもがかなり多くいたというのは、読者の皆さんもニュースなどで知っているところでしょう。

日本では近視の疫学調査があまり進んでいませんでしたが、近年の慶應大学眼科の調査では東京都内の小学生の近視有病率が8割近くになっている報告もあります。

前回の「老眼」の記事でも解説しましたが、近年の近視人口の増加は近くを見つめる時代となった環境が原因であることは明白です。休校中に子どもたちの視力が低下したのは、ゲームをする時間やタブレット・スマートフォンを見る時間が増えたことにも起因すると考えます。

「これって老眼!? 30~40代の親必見! 今すぐできる老眼対策と予防法」

子どもの目の不調は近視以外にも…

また、現代病の一つである「ドライアイ」も学童期の子どもに増えています。これも、テレビゲームやパソコン、スマートフォンなどが原因となっていることが多いのです。夢中になって画面を見ていると、まばたきの回数が極端に減少します。

凝視(集中して物を見ること)すると、目を見開いてそのまばたきの一瞬すら惜しくなり、本能的にも瞬きの回数が減ってしまうこととなり、その状況が持続すれば、最終的にドライアイを発症してしまいます。

オンライン授業やGIGAスクール構想導入などにより、子どもたちの学習環境が大きな転換期を迎えています。けれど、もともと人間は遠くにピントを合わせることがデフォルト。社会の進歩(環境の激変)に人類の進化が追いつかず近視をはじめとする目の不調が顕著に現れ始めています

2016年に発表されたオーストラリアの研究論文では、2050年には世界人口の半分が近視になると指摘しています。現代の生活に合わせて目も働いてくれていますが、その分の代償は必ずあるということでしょう。

一度、軸性近視を起こしてしまった場合はレーシックなどの手術を行わない限り近視の症状が治ることはありません。けれど子どもの場合、一時的な「仮性近視」の可能性もあり、その場合は回復させることもできます。次章では、仮性近視について解説しましょう。

仮性近視と軸性近視はどう違う?

まず、子どもの視力が低下してきたサインとして挙げられるのは

  • 遠くを見る時、目を細めたり顔をしかめたりする
  • テレビを見る距離が近い

といったこと。遠くの景色や物を見たり、家の中でも離れた場所にあるカレンダーなどの小さな文字を見たりするときに目を細めているようなことがあれば、そのサインかもしれません。

学校の視力検査では、子どもの視力をA・B・C・Dで判定します。一般的にA判定以外は、経過をしっかり観察すること、早めに眼科を受診することが前提として大切でしょう。

近視は遺伝的要素と環境的要素の両方が関係しているといわれますが、小学校低学年以下の子どもや急激な視力低下を来した子どもの場合には、「仮性近視」の疑いがあります。

仮性近視とは…

毛様体筋の過度な収縮により、ピントを合わせる水晶体が膨らんでいる状態。それにより、一時的に遠くがぼやけてみえるような近視の症状が現れる。

一般的な近視(軸性近視)と仮性近視の違いは、その状態が一時的か永続的かという点。また、一時的な近視状態であれば眼球が変形しているということもないので生活習慣の改善でも回復が可能といえます。

パソコンやタブレット、スマートフォンなど目に訴えるようなデバイスが主流の今の時代は、目に負担をかけることばかりです。それ以外にも、今の子どもは勉強も忙しいですよね。家庭学習や通塾など、昔の子どもに比べて勉強時間が格段に多くやはりこちらも手元を見る作業になります。こうした手元ばかりを見る生活習慣によりピントの固着が生じ、仮性近視が起きるのです。

子どもの場合、脳との連携が未発達で不器用なので集中したり夢中になったりすると他の体の部位と同様に目にも力が入りすぎることが多いものです。手元を見る作業を終えても目の緊張のほぐし方が分からず、毛様体筋が固まったままになってしまうわけです。

子どもの視力低下が判明した時「自分の管理がしっかりできていなかった」と責任を感じるてしまう親もいるでしょうが、眼科で適切な治療を行うことでさらなる進行予防や発症予防をすることが可能ですので、諦めないでください! それがもし仮性近視だった場合は治療によって回復させることができるのです! 子どもは、大人よりも目の異常に気が付きにくいものです。何となく見えにくさがあっても、「こんなものかな」と親に伝えない子どももいるでしょう。だからこそ親は子どもの目の異常に気が付いたら、できるだけ早く眼科を受診することが大切です。

親は子どもが仮性近視かどうかを判断できない!

学校の眼科健診の結果が良くなかったとか、何となく最近物が見づらそうに感じるとか、子どもに症状があると感じたら早めに眼科を受診しましょう。仮性近視かどうかというのは、眼科での適切な検査でなければ見極められません。

昔は近視を放置したり、「遺伝だからしょうがないよね」と諦めたりする人も多かったかもしれませんが、今はそうではありません。矯正し、しっかりと近視と向き合うことで適切にコントロールすることも可能なってきています。近視は、将来的に「網膜剥離」や「緑内障」の発症リスクを上げる原因にもなります。また、近視発症が若年であればあるほど成人以降の高度近視移行率は高まるため、それら失明を起こす可能性のある疾患の発症リスクは高まります。また、中国では都市部に住む人の失明の原因第1位となっているのが、近視なのです。

仮性近視は治せる! 軸性近視も進行予防できる! 治療法や治療期間は?

先述した通り、一般的な近視(軸性近視)はレーシックなどの手術を行わない限り完治させることは不可能です。しかし、仮性近視の場合は治せます。ただし、放置せずにできるだけ早く治療を始めることが大切です。治療が遅れることで、軸性近視に進行してしまう子どもも多くいます。

近視の治療法や進行予防法としては、眼科医の処方による点眼薬が有効な選択肢の一つといわれています。仮性近視については生活習慣の改善の他に、調節麻痺薬である「ミドリンM点眼」を就寝前に1日1回点眼することで仮性近視を軽減できます。

目の緊張状態をほぐし、筋肉をリラックスさせることで仮性近視を治療していきます。

治療期間は1~2ヵ月。点眼治療後、視力が回復しているかどうかの検査を行います。この時点で視力が回復していない場合は、残念ながら仮性近視ではなく軸性近視の診断となるでしょう。

軸性近視の場合でも、その進行を抑制できる治療は多数出てきています。調節を麻痺させる目薬を低濃度にした「0.01%アトロピン点眼薬(マイオピン)」では、近視の抑制効果があることが分かっています。また、「オルソケラトロジーと」いう就寝中に装着するコンタクトレンズもあります。その他、「多焦点コンタクトレンズ」の日中装用、「二重焦点眼鏡」の装用、そしてそれぞれの治療に点眼を併用するなど、眼科ではいろいろな治療が受けられるようになってきました。海外ではこれらの治療を積極的に受けられるよう、近視抑制プログラムに国を上げて学童期の子どもに対して取り組んでいる国も増えています。

子どもを近視から守る! 家庭でできる予防法とトレーニング

今の子どもは、目に負担の多い生活を送っています。読者のお子さんは、公園や外で遊ぶ機会はどのくらいあるでしょうか。友達との遊びもゲームばかりというお子さんも少なくないのではないでしょうか。

子どもの目を守ることとして、原始的ではありますが一番簡単かつ有効な方法としてあるのが“外遊び”。1日2時間は、太陽の光を浴びましょう。太陽光の中には「バイオレットライト」という近視を抑制する成分があり、屋外で過ごす時間が長いと近視になりにくいという調査結果も発表されています。

また、ゲームやタブレットなどで手元を見ていると猫背になりがちです。姿勢を良くすることも大切。なぜなら、背筋を伸ばすことで手元までの距離を取れることにもなるからです。画面までの距離は40㎝くらい、画面に対する視線は下向きにすることも大切です。

その上で、

  • 時間を制限する
  • 長時間の使用は避け、時間を区切って休憩を入れる
  • 「まばたき忘れないで」と、声を掛ける

といった、親の管理は必要です。

子どもの場合、特に最近のデジタルデバイスに取り囲まれた生活をしている中では圧倒的に仮性近視から始まるはずなんです。だからこそ、親が気付いてあげられるかどうかが大切になります。眼科に行く機会が少ないという人は多いと思いますが、定期的に視力を測るのも良いでしょう。視力は、日々変わります。“昨日は悪かったけど今日は回復している”ということもありますし、見ることを今より意識すると異常に気が付きやすくなります。

老眼の記事で紹介した「眼トレ」は、子どもの近視予防にも効果的です。ぜひ、親子で実践してみてくださいね。

子どもの目の健康についてもっと知りたい人は

林田先生監修の『「測るだけ眼トレ」ブック』。近視・疲れ目・ドライアイ・仮性近視など目の不調や視力悪化の悩みを「測る+鍛える」でスッキリさせる一冊。記事の中で紹介しきれなかった眼トレやアイケアについても、詳しく解説されています。

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