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2021.04.26

通所受給者証とは?取得方法やメリット・デメリットを解説

放課後等デイサービスを利用する際などに必要になる受給者証。発達障害やグレーゾーンなどの子が、特性に合った支援を受ける際に必要になる証明書です。取得するためにはどんなな手続きを取り、どんなメリットがあるのかを元教員のユミバヒカリさんが解説します。取得することで何が変わるのか、子どもの今、将来にどのようなメリット、デメリットがあるのでしょうか。

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受給者証は福祉サービスを受けるための証明書

そもそも、受給者証とは福祉サービスを行政の給付を受けながら利用するための証明書(市区町村が交付)になります。

小中学生の保護者であれば「子どもに合った発達支援サービスを受けたい」「放課後等デイサービスを利用したい」といったタイミングで知ることが多いかもしれません。

受給者証は、自動で交付されるものではないため、取得を希望する場合は住んでいる市区町村の担当窓口(福祉課や発達支援センターなど)で申請や手続きをする必要があります。

また、受給者証といっても、医療や福祉など、分野によって種類が異なっており、福祉分野の場合は「障害福祉サービス受給者証」に分類されるケースが多いようです。

さらに、「障害福祉サービス受給者証」の中でも、利用するサービスによって必要となる受給者証が更に細分化されています。

わが子の場合、どの受給者証になるのかなど、個別の詳細は、上記の窓口へ相談するのがよいでしょう。

今回の記事では、小中学生の保護者からの関心が高いと思われ”児童発達支援”や”放課後等デイサービス”を利用したい場合に必要となる受給者証について解説していきますね。

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障害児通所支援受給者証とは

発達支援や放課後等デイサービスなどは、「通所支援」というサービスに分類され、利用するためには「障害児通所支援受給者証」が必要です。

「障害児通所支援受給者証」を取得することで、行政の援助を受けながら児童福祉法に基づいて運営される通所支援のサービスを利用することができるようになります。

受給者証の形態は市区町村によって異なりますが、一般的に下記のようなことが記載されます。

受給者証に記載される内容

  • 保護者と子どもの氏名
  • 生年月日
  • 住所
  • 利用サービスの種類
  • 支給量
  • 適用期間
  • 負担上限月額 など

通所受給者証を取得できる子とは

障害児通所支援受給者証の交付対象となる子は以下の通りです。

  • 身体に障害のある児童
  • 知的障害のある児童
  • 精神に障害のある児童(発達障害児を含む)
  • 治療方法が確立していない疾病その他の特殊の疾病がある児童
    (令和元年7月から361疾病が対象。見直し等により、対象難病は変更がある場合がある)
  • 療育を受けなければ福祉を損なうおそれのある児童

申請があった場合、市区町村は申請に係る児童が給付の対象となるかどうかを確認します。

医学的診断名や障害者手帳を有することは必ずしも必要というわけではなく、専門家の意見書や各種検診、園や学校、家庭での様子などが勘案されます

したがって、「手帳を取得できなかった」「手帳の取得には気持ち的に抵抗や不安があるが、療育を受けさせたい」といった場合も取得できます。

ただし、自治体によっては診断書や手帳の所持を必須要件としている場合もあるので確認する必要があります。

通所受給者証が活用できる支援・施設とは

障害児通所支援受給者証の対象となる福祉サービスは以下になります。対象や内容が異なるため、利用を希望する通所支援の種類ごとに支給申請を行う必要があります。

放課後等デイサービス(6~満18歳まで)

<対象>
学校(幼稚園・大学を除く)に就学していて、放課後や休日に支援が必要と認められた児童生徒
<内容>
生活能力の向上のために必要な訓練、社会との交流の促進、そのほか必要な支援を実施
※必要性が認められた場合は満20歳まで利用できます

放課後等デイサービスについては、以下の記事で詳しく解説しています。

放課後等デイサービスとは|学童との違いや料金、支援内容などを分かりやすく解説します
放課後等デイサービスとは|学童との違いや料金、支援内容などを分かりやすく解説します
共働きの家庭が小学生の子を放課後預ける学童。ですが、中には、子どもの特性が強く学童ではなく放課後等デイサービスを利用する家庭もあります。そもそも、放課後等デイサ.....

医療型児童発達支援(満18歳まで)

<対象>
肢体不自由があり理学療法等の機能訓練や医療的管理下での支援が必要であると認められた子ども
<内容>
児童発達支援に加え治療の提供

保育所等訪問支援(満18歳まで)

<対象>
保育所その他の児童が集団生活を営む施設として、厚生労働省令で定めるものに通っている子、または乳児院その他の児童が集団生活を営む施設として、厚生労働省令で定めるものに入所している子で、当該施設において専門的な支援が必要と認められた子 
<内容>
集団生活を営む施設を訪問し、ほかの児童との集団生活への適応のための専門的な支援を実施

居宅訪問型児童発達支援(満18歳まで)

<対象>
重度の障害の状態その他これに準ずるものとして厚生労働省令で定める状態にあり、児童発達支援、医療型児童発達支援又は放課後等デイサービスを受けるために外出することが著しく困難であると認められた子
<内容>
居宅を訪問し、日常生活における基本的な動作の指導、知識技能の付与、集団生活への適応訓練その他必要な支援を実施

支給量や自己負担額は子どもによって違う

受給者証に記載されている“支給量”とは、上記のような福祉サービスを利用する際に、使用できる日数のことです。

支給量以内の利用であれば、サービスの利用料の9割を自治体が負担、残りの1割を自己負担でサービスを利用することができます
(利用施設によっては、別途おやつ代などの実費負担が発生することがあります)

支給量の決定に際しては自治体ごとに判断基準が異なります。支給量について相談する際には、子どもの状況やサービスを利用しようと考えた経緯、希望するサービス利用の日数や時間を詳しく伝えることで、希望する利用日数に近づけるかもしれません。

また、支給量は1度決まったら不変というわけではありません。再度申請をし、認められれば変更も可能です。子どもや家庭の状況は刻々と変化するので、状況に応じて担当窓口に相談しましょう。

利用者負担額には上限がある

支給量とは別に、受給者証取得者には、負担する金額が大きくなりすぎないよう上限額が設けられています。利用者負担額は、世帯収入によって次のように設定されています。
                                    

  • 生活保護:生活保護受給世帯…0円
  • 低所得:住民税非課税世帯…0円
  • 一般1:市町村民税課税世帯で所得割額が28万円未満(収入が概ね890万円以下)の世帯…負担上限月額4600円
  • 一般2:上記以外の世帯…負担上限月額3万7200円                                

自己負担額の例を紹介

放課後等デイサービスA(利用料1回1000円、おやつ代100円)を利用する場合は下記のようになります。
                                     

  • 一般1に分類されるAさん(支給量は月20回で月に20回利用)
    利用料は1000円×20日=2万円となりますが、実際に支払うのは、負担上限額である4600円になります。別途、おやつ代(100円×20日分)2000円と合わせて、1ヵ月の支払いは6600円です。
                                      
  • 一般1に分類されるBさん(支給量は月20回で月に4回利用)
    利用料は1000円×4日=4000円、おやつ代2日分(200円)と合わせて、1ヵ月の支払いは4200円です。
                                     
  • 生活保護・低所得に分類されるCさん(支給量は月20回で月に10回利用)利用料は1000円×10日=1万円になりますが、負担上限額が0円のため、支払い額は、おやつ代(100円×10日分)1000円のみになります。           
                                    
  • 受給者証のないDさん(月に10回利用)
    利用料は1000円×10日=1万円と、おやつ代100円×10日分(1000円)で、1ヵ月の支払いは1万1000円になります。

なお、自治体によってはさらに細かく利用者負担上限額が設定されている場合もあります。ご自身の地域・利用施設がどうなのかは、個別に問い合わせてみてください。

受給者証と障害者手帳との違いとは

受給者証とよく混同されるものに、療育手帳や障害者手帳(身体・知的・精神など)があります。しかし、それは完全に別物であり、交付する目的や発行する機関に違いがあります。

  • 各種手帳とは
    “障害名や程度を証明するため”に“都道府県”が交付される証明書。
  • 受給者証とは
    “障害福祉サービスを利用するため”に“市区町村”から交付される証明書。

手帳は、あくまで障害名や障害の程度を証明するものであり、手帳を取得しているからといって援助を受けながら希望のサービスを利用できるわけではありません

つまり、次のようなことになります。

受給者証のみを取得している場合
→「行政の援助を受けながら」サービスを利用することができる。

手帳と受給者証を取得している場合
→「行政の援助を受けながら」サービスを利用することができる。

手帳のみを取得している場合
→サービスを利用することは可能だが、サービスの利用料金が「全額自己負担」となる。

手帳の有無に関わらず、行政の援助を受けながらサービスを利用したい場合は別途サービスに応じた受給者証の取得が必要となります。

受給者証取得への手続きを解説

受給者証を取得したいと思った場合、いきなり申請をする前に、まずは福祉課や発達支援センターなどに相談・確認しましょう。

各自治体によって手続き、給付決定の基準、必要書類(記載内容も含む)、受けることのできるサービスなどが異なります。事前に疑問点をある程度まとめた上で相談すると、効率よく知りたいことを教えてもらえます。

また、相談へ行く前に基本的な福祉サービスの知識を知っておきたいという場合は、各自治体が福祉制度の内容や要件をまとめた手引き書をチェックしてみてください。

自治体によって名称が異なりますが、「福祉ガイドブック」や「福祉のしおり」と呼ばれていることが多いようです。

インターネット上で検索する場合は「福祉のしおり ○○市」「福祉ガイドブック ○○市」などと検索すると見つかりやすいですよ。

では、いよいよ受給者証の申請手続きを紹介していきましょう。

<申請ステップ1>必要書類の提出

住んでいる市区町村の福祉課や発達支援センターなどで、利用を希望する通所支援の種類ごとに支給申請を行います。

自治体によっては、申請をする際に「どの事業所を利用したいか」も記載する必要があります。利用開始までの手続きがスムーズに行えるよう、具体的な利用の見通しが立っているのか、内定の確約は取れているのかなどを知るためです。

そのため、申請を行う前に希望する施設(事業所)へは、見学や相談、体験入所をするようにしましょう。

<申請ステップ2>調査

申請した自治体の担当職員から面接や家庭訪問を受けます。

<申請ステップ3>利用計画案の作成・提出

「利用計画案」とは、地域生活の中で上手に福祉サービスを活用していくための計画です。子ども本人と家族の希望や解決すべき課題などを踏まえ、最も適切なサービスの組み合わせについて検討、作成します。

利用計画案の作成方法は、指定相談支援事業者に依頼し、作成してもらうのが主流です。

しかし、近隣に指定相談支援事業者がいない場合や希望する場合には「保護者自身がセルフプランで作成する」こともできます。

いずれかの方法で作成して提出します。提出された利用計画案は支給決定を勘案するための資料となります。

<申請ステップ4>支給決定・受給者証の交付を受ける

支給が決定したら、市区町村から受給者証が交付されます。申請から受給者証交付までの日数は2週間~1ヵ月という自治体が多いようです。詳細は住んでいる市区町村に問い合わせてみてください。

受給者証を取得したら利用希望の事業所へ受給者証を提示して利用契約を結びましょう。

その後、利用することが決定した具体的な事業所名や支援内容を記載した「利用計画」を作成、市区町村に提出し、サービス利用開始となります。

受給者証には更新が必要になる

受給者証は、一度取得すれば何年も使えるものではありません。適用期間があり、一定期間ごとに更新の手続きが必要です。

継続して療育が必要な場合は更新をしないと効力を失ってしまいますので、忘れずに更新手続きをしましょう。

療育が必要なくなった場合は受給者証を返却又は更新手続きをしないことを選択できます。子どもの様子を見ながら更新が必要かどうかを判断していきましょう。

また、市区町村をまたいで引っ越しをした場合や異なるサービスを受けたい場合は、その都度申請する必要があります。

受給者証を取得するメリット、デメリット

受給者取得のメリット、デメリットを紹介します。

【メリット①】金銭面の負担が軽減される

前述の通り、受給者証を取得していると1割負担でサービスを利用することができます。また、所得によって負担上限額も決まっているので、支給量以内の利用で利用料金が上限に達した場合は、超えた分の利用料の自己負担なくサービスを利用することができます。

【メリット②】発達段階や特性に応じた療育を受けることができる

利用計画を基に個々の実態に応じた支援が実施されるため、現在や将来の自立に向けた療育を受けることができます。また、一定期間ごとにモニタリング会議が実施され、刻々と変わる子どもの状況に応じて療育やサービスを利用することができます

【メリット③】家庭や学校以外とのつながりができる

受給者証の取得はサービス利用が前提となっているため、相談から受給者の取得にかけて人や施設、情報へのつながりが生まれます。

子ども・保護者が専門家や同じような悩みを持つ仲間と繋がることで不安が解消されることもメリットのひとつといえるでしょう。頼れる人や場所が、家庭や学校以外にもあると安心ですね。

【デメリット①】精神的な負担になる場合がある

受給者証を取得することで「自分の子どもは障害があるのか」「障害児というレッテルが貼られるのではないか」と感じる人もいます。

取得への葛藤や不安感が強い場合、その旨を窓口や事業所の担当者に伝えてみてください。どうしても気持ち的な負担感がぬぐえない場合は、納得できるタイミングまで時間を置くのもひとつの方法です。

【デメリット②】周囲の理解を得られない場合がある

子どもや申請者が納得していても、親族など周囲から理解を得られず辛い思いをすることがあります。大抵の場合、周囲が思い込みだけで言葉をかけてきていることが多いので、話せば分かってくれそうな人には、説明をすれば解決するケースもあります。

もし、難しそうな場合は、「そういう考えの人もいるんだな」「この人は何も知らないんだな」くらいに思って流しておきましょう。

障害福祉に関するサービスは、情報が手に入りにくく相談や申請をしないことになかなか始まらない難しさがあります。

子どもの発達について気になることがある場合は、自治体の担当窓口に気軽に問い合わせをしてみることをおすすめします。ひとりで抱え込まないでくださいね。

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参考資料>
障害児通所給付費に係る通所給付決定事務等について,令和3年4月(厚生労働省)
障害者総合支援法の対象疾病(難病等)(厚生労働省)
障害者福祉:障害児の利用者負担(厚生労働省)
障害のある子どもと保護者を支える早期療育:「障害児通所受給者証」に対する反応への認識に着目して(一瀬 早百合,2016)田園調布学園大学学術機関リポジトリ

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ユミバヒカリ

大学院修了後、公立学校教諭を経て現在は不登校児の支援に携わっている。小学校、中高(保体)、特別支援学校教諭免許所持。発達障害のある子どもへの接し方や、心理検査の活かし方など、「今ここにある悩み」に寄り添いながら、自らの経験と学術的な知見を元にしたアドバイスを行う。

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