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2021.04.02

中学生の拒食症|ダイエットとの違い、食べない子どもの心、親がすべきことを児童精神科医が解説します

太ってないのに「ダイエット」と言いながら食事をあまりとらない中学生の娘。ガリガリとまではいかないけれどどんなに痩せても納得いかない様子です。「もしかして拒食症なの?」「どんどん痩せていった先はどうなるの?」と不安になることはありませんか?どこに相談したらいいか分からないその気持ちにまえまえ先生こと児童精神科医の前田医師がアドバイスをします。

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拒食症の定義、症状とは

保護者からみればまったく太っていないのに痩せたがる年ごろの女の子。「キレイになりたい」という気持ちは理解できても、「健康第一」と考えるのが親心です。まずは、子どもが心配したほうがいい状態なのかを知るためにも拒食症とはどんな状態を指すのか知りましょう。

「基本的にはBMIが18.5より下回ると拒食症の対象に入ります」と前田さんは説明します。

BMIとは

BMIは現在の体重が健康的なものであるかどうかを判断する世界共通の基準であり、<体重(kg)÷身長(m)÷ 身長(m)>という式で算出できます。 日本では日本肥満学会が下記のような基準を設けています。

  • (痩せ型):18.5未満
  • 18.5以上、25未満
  • (1度):25以上、30未満
  • (2度):30以上、35未満
  • (3度):35以上、40未満
  • (4度):40以上

「よくいわれているのが、17.5以下になってくると成長が遅くなったり、骨粗鬆症になったりする可能性があり、15.5以下になったら命の危険があるので入院する必要があるといわれています。ただし、拒食症の診断や治療において重要なのはBMIの数値だけではありません。たとえBMI18.5であっても、『ダイエットをしたらほめられた!うれしい!でもお腹空いたな』というのであれば普通のダイエットの範囲です。ですが、BMI18.5の状態を『まだ全然痩せていない』と思い、『もっと痩せた状態こそが本当の私』『体重が戻った状態は私ではない』と強く思っていることが問題です」(前田さん、以下同)

話を伺った人

前田佳宏さん児童精神科医

通称まえまえ先生。精神保健指定医。東大医局所属。現在は都内で開業。発達障害、HSP、愛着障害などに悩む子どもと大人に、認知行動療法、家族療法、マインドフルネス、精神分析、ソマティック療法、自我状態療法を統合したケアを提供。子どもとのコミュニケーションを変えるコーチング学習サロン『しなここラボ』を立上げ、価値を押し付けず問いを深めあう哲学対話『ゲーテカフェ』を主宰。カフェと旅と作品鑑賞が好き。Twitter,LINE@

問題は「食べない」ことではなく「なぜ食べたくないのか」

また、拒食症を疑ったりダイエットをやめさせたいと思ったりすると、つい「ちゃんと食べなさい」「これはカロリーが低いから食べて」など、保護者は食べることをすすめようとしてしまいがちですが、この行動に「あまり意味や効果がない」と前田さん。

『食べるor食べない』という行動だけに焦点を当てた会話になると、その裏にある気持ちに目を向けられなくなってしまうんですよね。子どもの行動をコントロールしようとするお母さんとその行動が自分の意志ではもう止められない、お母さんの言う通りにはできない子どもという図式です。

もちろん、お母さんとしては『痩せすぎはよくない』と、普通の倫理観をもって子どものために言っていると思うのですが、子どもには本人なりに“食べられない理由”があるはずです。そこに目を向けずに行動面ばかりに注目しても行動は変わりません。むしろ余計に悪化することもありますよ」

“食べられない理由”は本人が自覚をしていない深層心理に及ぶ可能性もあり、本人が自分の行動をコントロールできないのかもしれません。

「痩せたいと思うきっかけは、単純にダイエットに見えているかもしれません。ですが、食べるかどうかよりも“痩せている自分をキープすること”に執着している状態は心の中で何か起きているはずです」

子ども自身も食べていないせいで頭が回らなかったり、体が思うように動かったりして、自分の異常さに多少は自覚があるかもしれません。少なくても食べなければいつか死ぬということは本能として分かっているはずです。それでも、本能に抗ってまで「食べない」「痩せなければならない」となるのは、やはり普通の心理状態ではないのではないでしょうか。

拒食症は本人ではコントロールできない問題です。いくら周囲が『食べようね』と言っても良くなりません。『子どもの中で何か起きているんだな』という視点で見て、耳を傾けるということが大事です。本人の困りごととか、気持ちに寄り添ってみないと拒食症は解決へ進みづらいですよ」

拒食症になりやすい子のタイプ、原因とは

拒食症になってしまうほど、誰にもいえない思いを抱えてしまうような子は「真面目な子が多い傾向がある」とのこと。

「摂食障害は患者さんごとにそれぞれのストーリーがあるので一概にはいえませんが、例えば学校でトラブルがあって『行きたくない』と思っていても、頑張って学校に行こうとするタイプの子が多いですね。身体を壊してでも親にいい子と思われるような行動をとろうとする傾向があります。社会や家族の中で自分はこういう役割を背負わなければいけない、期待に応えなくてはいけないと思っているんですよね。

そして、『学校へ行きたくない』と言うなど、自分の気持ちに素直になることで期待に応えられないなら、『本当の自分は嫌い』『自分はダメだから厳しくしなければいけない』と思うのです。また、『嫌いな自分の世話はしない』『自分を大事にしない』というセルフネグレクトになるパターンもあります」

ほかにも、男性像や女性像に対しての嫌悪感があり、「女性になりたくない」など、自分を成長させないために食べない子もいます。

「子どもによって心の裏側にあるものはそれぞれ違うとしても、子どもの中で自分の価値が揺らいでいる可能性があります」

何らかの理由で、今回は食べられるようになって、「やっぱり、ただのダイエットだったのね」となるかもしれません。ですが、子どもの根本にある自己否定する気持ちを解決していなければ、「いつか自傷行為などの行動につながる可能性もある」と前田さんは話します。

では、拒食症の気配を感じた保護者はどのように子どもと向き合えばよいのでしょう。

食べない中学生ために保護者ができること

「拒食症は心理療法においても深刻なレベルだといわれており、普通の精神科医や心理療法が十分にできないところではなかなか改善していきません。そんな問題を家庭内だけで解決しようするのは難しいと思います」

深刻なレベルだからこそ、いくら保護者が「どうしたの?」と聞いて子どもが簡単に吐露できるのか疑問です。また、もし吐露しても保護者が万全なケアができるものではなさそうです。

「子どもの健康が脅かされている状態、余裕がない状態なので親御さんがうまく対応しきれないかもしれません。子どもだけでなく親御さんをケアしサポートするためにも第三者(精神科など)とつながることをおすすめします」

この記事で回答している前田佳宏さんに相談してみませんか?

ソクラテスのたまごの姉妹サービス「ウチのこは」なら、オンライン上で前田さんに子育ての悩みを相談できます。

前田佳宏さんへの相談ページを見てみる

迷ったら、深刻になる前に専門家へ相談しよう

前田さんは2つの相談先をおすすめします。

【相談先①】摂食障害の専門医

「拒食症に限らず摂食障害は薬があまり効果がなく、特殊な治療が必要です。インターネットなどで検索して数多くの症例を扱っている病院へ行った方がよいでしょう。

食べない=拒食症ではありません。保護者が「拒食症かも…」と思っても、一時的なストレスで食べられないという場合や内臓疾患などほかの病気が原因という場合もあります。そちらの分別をするためにも深刻な状態になる前に診てもらったほうがよいですね」

拒食症だと診断された場合、効果的な治療法は家族療法です。家族療法とは、個人ではなく家族を対象に心理療法を行っていくこと。

「家族療法では、拒食症という症状がその子が原因で起きたこと、その子だけの問題だと考えるのではなく、その子を取り巻くいろんな影響や関係性が最後にその子の症状として出てきたと考え、家族が理解できるように働きかけます。

すると、家族は、その子の『食べられない』という行動を見るのではなく、『そんな症状が出るほど言えない思いがあったんだ』『無理をしていたんだね』と、見方や扱いを変えていきます。

家族療法では、このようにその子を取り巻く環境を変えていくことで安全に発言できるように導いていき、もし家族が関わり方を変える必要があれば、どのように向き合えばいいかをアドバイスしていきます。

『いい子じゃなくてもいい』『本当の自分の気持ちを大切にしていいんだよ』ということを家族が伝えてその子を受け入れることで、子ども自身も『自分を大切にしていいんだな』と分かっていきます

また、拒食症が深刻な場合(BMI数値が15以下など)、入院治療をすすめられることがあります。

「入院治療では、内科、精神科、栄養士などがチームになって診ていきます。まずは、体重を回復していき、次に食行動を管理できることを目標にし、きちんと食べることができ、かといって無茶食いをしないよう、食べるという行為を自分でコントロールできるようになることを目指していきます」

【相談先②】自助グループ

拒食症は本当に心配がなくなるまでに数年かかることもあるそう。そのため、自助グループとつながることを前田さんはおすすめします。

「拒食症になる子の場合、複雑な病理を抱えているケースもあり、子どもから『死にたい』などと言われることもあるかもしれません。病院だけでなく相談しやすい場所はつくっておいたほうがいいです」

自助グループの方たちは自身もさまざまな経験をして、さまざまな方法を試してきているので医師とは違うアプローチのアドバイスももらえそうです。また、自助グループとつなることで病院などの情報収集もできそうです。

拒食症を疑ったときの3つのポイント

最後にここまでの情報を基に、拒食症を疑ったときにどのように対処していけばいいのか整理しましょう。

<ポイント1>子どもの心身の状態を知る

身長、体重をもとにBMI値を算出。18.5以上なら現時点で体の状態は心配なし。以下であれば注意しながら観察する。すぐにダイエットをやめて食べるようなら心配はないが、痩せ続けようとするのであれば摂食障害の専門医に相談をしてみる。BMIが15以下であれば入院の可能性が高い。

<ポイント2>子どもの気持ちを聞いてみる

食べないことを責めるのではなく、心に抱えているものはないのか聞いてみる。家族全体が変わっていくつもりで家族療法を受けてみる。

<ポイント3>家族だけで抱え込まない

拒食症であれば、心に深刻な問題を抱えている場合があります。数年にわたるケア、対処が必要になることも考えて自助グループとつながり、家族がつぶれてしまわないようにしましょう。

「拒食症は個々でパターンが違うため、相談しながらどうしていくのがいいのか模索していくことになります。いくら保護者が態度を変えたとしても、子どもがすぐに心を開いてくれることはないでしょう。理解する気持ちがあること、自分たちも変わっていこうと思っていることを、根気強く伝えていってくださいね」

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神田司

神田司

ソクラテスのたまご編集部の一員。大学卒業後、新聞社勤務を経てフリーランスへ転身。週刊誌、女性誌のほか書籍などの編集、執筆も手掛ける。プライベートでは2児の母であり、社会福祉士の資格取得に向けて勉強中。

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