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2021.03.12

小学生が哲学!?アーダコーダに聞いた家庭で「こども哲学」を行う方法と伸びる力

子どもたちが身近にある答えのないテーマについて考え、意見を交わす「こども哲学」。考える力を育みたいと考える保護者から人気を集めています。そんな中、全国各地でさまざまなワークショップを開催しているのがNPO法人「こども哲学おとな哲学アーダコーダ」。「こども哲学」ムーブメントを牽引する同団体の代表理事・角田将太郎さんに、「こども哲学」による子どもの成長や家庭で「子ども哲学」を行う方法を聞きました。

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「こども哲学」とは

「哲学というと、哲学者の難しい言葉、意味深な言葉をイメージする人もいるかもしれません。ですが、『こども哲学』における”哲学”とは、答えがひとつとは限らないような問いについて考えるということです」と話すのは、NPO法人「こども哲学 おとな哲学 アーダコーダ」の角田将太郎さんです。

「こども哲学」は1970年代にコロンビア大学の哲学科の教授である マシュー・リップマンがこどもたちと哲学対話を行ったことから始まりました。その後、ヨーロッパにも広がっていき、日本で実践されるようになったのは2000年代に入ってから。アーダコーダの副理事であり哲学者の河野哲也さんなどが国内で実践を続けていくうちに学校などから「こども哲学を取り入れたい」という声が高まっていきました。

こども哲学が関心を集める理由とは

また、このように『こども哲学』への関心が高まっている理由は大きく分けて3うあると思うと話す角田さん。

「1つめの理由は社会のグローバル化ですね。これからは自分とは全く違うバックグラウンドを持つ海外の人たちと協力していく時代です。いろんな考え方、価値観を受け止めた上で自分の意見をもてるように考えていける力が大切だということが重視され始めたということがあると思います。

2つめは人工知能が発展してきたということ。明確な答えが設定された問いについては、機械や人工知能が人間以上の能力で解いていくようになっています。しかし、問いを立てる力というのは人間でなければできないことであり、子どもの問いを立てる力(創造力)も重要ですよね。

3つめは「子どもの主体性やその子なりの考えを尊重したい」と思う大人が増えてきたということがあります。このような子どもたちと関わる人の意識の変化というのも、こども哲学への関心へと繋がっているのではないでしょうか」(角田さん、以下略)

話を伺った人

角田将太郎さんNPO法人「こども哲学おとな哲学アーダコーダ」代表理事

2017年1月からインターン生としてアーダコーダに参画。東京大学教養学部で哲学を学び、卒業後は当団体事務局を務め、2019年7月より現職。

こども哲学を実践する方法とは

さまざま時代のニーズに合い注目を高める「こども哲学」ですが、具体的にどのようなことを行うのででしょう。

小学生なら約10人、1テーマ20分ぐらい話し合う

「アーダコーダの場合は、全員が発言できて、人の意見を聞く時間をもてるような人数と時間配分を考えています。例えば、小学生なら10人程度のグループで1テーマ30分程度、幼児であれば4~5人のグループで1テーマ20分程度で設定しています」

一方、中高校生であれば1クラス(30~40人)で1時間程度話し合うなど、議論する時間は集中力が続く程度の時間で年齢に応じて変えていくことができるそう。

「一緒に話し合う子どもたちの年齢は、同じくらいのほうが言語感覚や会話のスピードが合うので議論が成立しやすいですが、年齢が離れているほど斬新な考え方や多様な意見が集まってくるので年齢幅が広くてもおもしろい時間になると思います」

テーマは身近なものが意見が出やすい

テーマは基本的に子どもたちの生活に関係するような身近なものから入っていくことが多いそう。

「こども哲学」のテーマ例

<小学生の場合>

  • 友達の数は多いほうがいい?
  • 仲が悪い友達とも一緒にいないとダメ?
  • ウソをつくことは悪いこと?
  • どうしてケンカをしたらいけないの?
<中学生の場合>
  • なぜ制服のスカートが短いことがいけないの?
  • なぜ学校にスマホを持っていってはいけないの?
  • なぜ年上には敬語を使わないといけないの?

「そもそも哲学というものは、怒りや悲しみ、驚き、辛い気持ち、ポジティブな気持ちなど、強烈な感情から始まってきました。『こども哲学』でも子どもたちの感情がつき動くようなテーマがふさわしいと思います。小学生であれば友人関係についてだったり、中学生であれば学校や社会のルールだったりは意見が活発になりやすいですね」

結論は出さなくてもいい

上記のテーマ例を見てもわかるように「こども哲学」のテーマは大人でも簡単に答えがさせる内容ではありません。数十分意見を交わしたところで、「その場なりの結論も出ません」と角田さんは話します。

「みんなで考えている途中で終了時間がくると『え~もう終わっちゃうの?』という雰囲気になり、初めて参加した子どもたちは困惑しているのが分かります。でも、『こども哲学』に何回も参加するうちに、今回話した先のことは『答えは出なくても自分なりに考えていこう』という捉え方になっていくんです」

実際に「僕はこれからもずっとこの問いについて考えたいと思います。みんなも一緒に考えようね」と声をかけることもあると話す角田さん。ポイントは、子どもたちだけに考えさせるのではなく大人も一緒に考えていくという姿勢です。

「子どもたちが出した問いや意見に対して大人が正論やルールを教えるという関係だけではなく、一緒に考えてくれる関係の大人がいると子どもたちの思考や問いが柔軟で伸びやかなものになるのかなと思います。

小学校で行われた「こども哲学」の様子。4~5人のグループに分かれ、安心して会話できるように顔が見えるように円になって行っています

家庭に「こども哲学」を取り入れる3つのポイント

子どもにとって最も身近な存在である親が“一緒に考える”存在になれれば子どもの力はより伸ばせていけるのかもしれません。そこで家庭に「こども哲学」を取り入れる方法を聞きました。

【ポイント①】話し合うタイミングやテーマの見つけ方

「今から話し合いをしよう」とわざわざ時間をつくっても子どもが関心をもってくれるとは限りません。「生活の中で子どもに『これってどういうこと?』『何で?』と聞かれたときをスタート地点にして一緒に考えてみると子どもが考えやすいですよ」と角田さん。

「保護者は何か子どもから問いや悩みを打ち明けられたとき、失敗をしてほしくないし、傷ついてほしくないから『こうしたほうがいいよ』とアドバイスをすると思います。それは尊重すべき親心ですし、社会のマナーやルールをきちんと教えることも大切です。

ですが、例えば『こんなに学校に行きたくないのに、なぜ行かなくちゃいけないの?』というような、保護者自身も“正解”が分からないようなことを聞かれたときは、子どもと同じ目線に立って一緒に考えてみてください。

おそらく保護者の方は、子どもの状況や性格を考えて、納得させられるような説明をできるかもしれません。ですが、答えを与えるのではなく、『子どもの問いに対して一緒に考えるパートナーなんだ』という風に関係性を考えて話しをしていけば親子の会話が『こども哲学』として成立すると思います」

ただし、もし普段の会話の中でテーマが見つからないときは、上記に上げたテーマ例を参考にしてみるのもよいそうです。

【ポイント②】保護者が熱くなり過ぎない

親子だからこそ注意したいのが、子どもから意見を引き出そう、深く考えさせようと保護者が熱くなってしまうこと

「子どもから出た問いであっても、気が付いたら、すでに子どもは関心をなくしているということもあると思います。そんなときは、『今日は一生懸命考えたから、また続き考えようか』と切り上げていいと思います。子どもの集中力には限度がありますし、ひとことでも自分の言葉で“問い”や“意見”を言えたら十分です。

『何気なく言ったひとことに大人が食いついてきて引いた…』みたいなことは子どもからよく聞きます。子どものテンションを見ながら話すようにしたほうがいいですね」

子どもが意見を言いやすい和やかな雰囲気で大人が接することも重要そう

【ポイント③】一緒に考えていることをメモをする

考えているうちに思考があらぬ方向に飛んで行ってしまうのは大人でもよくあることです。親子で対話をするなら、何について考えているのかが一目でわかるようにメモをしておくのがよいそう。

「例えば、節分のテーマで考えていたのに、考えているうちに節分→鬼→鬼滅の刃となって、『鬼滅の刃ってさ』と話し出してしまうことがあります。そんなときは大人が『あれ?今何の話をしていたんだっけ?』と話を戻そうとしても、子どもの興味は“節分”ではなく“鬼滅の刃”に向いてしまって戻るのは難しいんですよね。なので、子ども自身が、今何について考えていたのかということ、今いる地点がわかるようにしてあげるためにメモは役立つと思います」

【ポイント④】考えている間は急かさず待つこと

子どもと対話するときに大切なのは「待ってあげること」だと話す角田さん。

「子どもが自分の考えを話せるようになるために大事なのは、待ってあげるということ。自分なりの考えが、パッと出る子もいれば、ゆっくり出てくる子もいます。反応がないからといって、テーマや聞き方を変えたりするのではなく、少し待ってみるようにしましょう」

また、待っているときはじっと見ていると子どものプレッシャーになるのでそばにいてあげるくらいでいいそう。

考える力だけではなく聞く力も伸びていく

角田さんが「こども哲学」に関わるようになって約4年。成長していく子どもたちを見てきました。

「幼稚園の年中さんから4年通い続けている子がいるのですが、うらやましいぐらい自由な思想のまま小学生になっているんです。小学生になり学校で生活する時間が長くなっていくと、『こうしなければならない』『これは言ってはいけない』みたいな学校という社会の中で縛り(暗黙のルールや常識)のせいで自由な思考ができなくなっていくものなんです。

ですが、その子は疑問に思うことを言葉にできるだけでなく、ほかの人の意見を聞きながら自分の意見も言えるんです」

何気ないことに感じるかもしれませんが、「こども哲学」での経験で自分の考えだけが正解じゃないということをきちんと理解できているからこそ、ほかの子の考えをしっかりと聞くことができるし、自分なりの考えをしっかりと話すことができているのかもしれません。

『こども哲学』で身に付く一番の力は“考える力”だと思います。ですが、同じくらい“聞く力”も身に付くのだと思います。

ほかの人の考えていることが、自分が考える上でのヒントになる。そういうことが分かっていると、すべてのコミュニケーションが、“自分が成長する糧になる”と考えられるようになるのではないでしょうか。

そうなると、人とコミュニケーションをとることが楽しくなるし、人の話を“聞いてあげる”ではなく“聞かせてもらう”“理解したい”という態度、他人を尊重する姿勢が身に付いていくのではないかなと思います」

ただ、“考える”のではなくコミュニケーションの中で思考を伸ばしていくのはAIにはできないこと、そして、他人を尊重する力は国境に関係なく人と関係性を築く上で重要なスキルです。

まさにこれからの時代に生きる力を育むために「こども哲学」をワークショップや家庭で始めてみませんか。

取材・写真協力

NPO法人「こども哲学 おとな哲学 アーダコーダ」
アーダコーダでは、「こども哲学」の時間を提供するだけでなく、「こども哲学」を実践するファシリテーターを育成する講座も行っています。詳しくは、ホームページで確認をチェックしてみてください。

神田司

神田司

ソクラテスのたまご編集部の一員。大学卒業後、新聞社勤務を経てフリーランスへ転身。週刊誌、女性誌のほか書籍などの編集、執筆も手掛ける。プライベートでは2児の母であり、社会福祉士の資格取得に向けて勉強中。

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