インターナショナルスクールとは?授業内容や学生の様子、学費などを解説します
インターナショナルスクールと聞くと、どんなイメージをしますか? 「バイリンガルや芸能人の子が通うところ?」「誰でも入学できるの?」など、知っているつもりでも実はよく分からないインターナショナルスクールについて、インターナショナルスクールの元経営者であり国際教育研究家の村田学さんが解説します。
目次
インターナショナルスクールとは
日本のインターナショナルスクールは、日本に滞在する駐在員の子ども向けの“スクール”として開校し、主に英語で学ぶ教育機関です(※1)。インターナショナルスクールは、日本だけではなく海外のさまざまな国にあります。
日本のインターナショナルスクールの歴史は実に古く、1872年に「サンモール・インターナショナルスクール」の前身校が横浜に創立されたことが分かっています。実は、東大の創設より古い歴史があるんですよ。
その後、貿易が盛んな横浜、神戸などにインターナショナルスクール(外国人学校)が開校されていきましたが、第一次、第二次世界大戦に入ると世情により次々と閉校していきました。
再び、日本のインターナショナルスクールが開校していくのは戦後です。GHQの占領下に「アメリカンスクール」という名称で全国に増えていきました。そして、高度成長期を迎えた1970年に代は、日本で最初の国際バカロレア認定校(※2)「セントメリーズインターナショナルスクール」が開校しました。
※1:フランス語、ドイツ語などのインターナショナルスクールもあります
※2:国際バカロレア認定校とは、世界共通の大学受験資格を得られる国際的な教育プログラムを受けられる学校のことです。
国際バカロレアについての記事はこちら
インターナショナルスクールを選ぶ理由とは
インターナショナルスクールを経営し、進学相談なども対応してきた経験から言い表すとインターナショナルスクールを選ぶ家庭の多くが“英語で学んで将来は、国内外で活躍できる子になって欲しい”と考えているように感じます。
インターナショナルスクールは、英語で授業を受けるため英語力が磨かれます。さらに“探究型”と呼ばれるテーマ学習に近い学びを実践しているスクールが少なくありません。問題発見力と問題解決能力を英語で身につけられることを魅力だと考えているようです。
芸能人の子どもが多い理由とは
また、インターナショナルスクールというと通っていると芸能人やその子ども、アスリートなどの著名人が通うところいう印象の人もいるのではないでしょうか。
彼らがなぜ、インターナショナルスクールを選ぶのか、その理由のひとつは、インターナショナルスクールは教員がほぼ外国人だからです。有名人もしくは、有名人の子であっても先入観なく見てもらえると考えるようです。
また、インターナショナルスクールには大使館職員や駐在員の子どもなどが通っているため、安全対策や個人情報の保護に強いのも特徴です。
インターナショナルスクールへ入学するために
では、インターナショナルスクールは、国内外で活躍する人に育てたいと望めば誰でも入学できるのでしょうか。
入学には英語力と数理能力が必要
インターナショナルスクール(小学部、中学部、高等部)で学ぶためには、日本の学校基準ではなく、国際基準レベルで考えた学年相当の英語力と数理能力が必要です。そのため入学試験では、算数、英作文などの筆記試験と面接試験を行います。
また、英語力など能力的な要件を満たしていても、スクール側が日本語の環境で学んだほうが子どものためになると判断した場合、入学を断ることもあります。
インターナショナルの入学時期は?
インターナショナルスクールは、世界から転勤族を受け入れるため、ほぼ一年中海外からの志願者に対して編入試験を実施しています。
また、国内の学校から編入する場合は、インターナショナルの新年度が始まる8月末もしくは9月からというのが基本です。
インターナショナルスクールのカリキュラムとは
インターナショナルスクールのカリキュラムは自由に組むことができ、創立理念とミッションと生徒構成などをもとに各学校がさまざまなカリキュラムを組み合わせて編成しています。主に下記のようなカリキュラムが選択されています。
ケンブリッジ国際カリキュラム
世界標準のカリキュラムのひとつである「ケンブリッジ国際カリキュラム」は、名前の通り、イギリスのケンブリッジ大学が開発したカリキュラムで、旧英国植民地など世界のインターナショナルスクールの1万校で採用されています。科目と科目横断型の学びが特徴的です。
国際バカロレア
同じく世界標準カリキュラムなのが「国際バカロレア」です。国連の文化・教育機関であるユネスコが母体となり開発したため国際平和などにも強く、探究型の学びが特徴です。世界中で約6000校のインターナショナルスクールが採用しています。
国際バカロレアについての記事はこちら
国家カリキュラムに準じたベースのカリキュラム
日本では、文科省による学習指導要領が統一のカリキュラムとされていますが、海外ではいくつものカリキュラム(国の定める基準をクリアしたもの)が使われており、インターナショナルスクールもそのうちのどれかを採用しています。また、インターナショナルスクールでは、他国のカリキュラムを採用することがあり、インド系インターナショナルスクールが採用するインド州政府のカリキュラムや、アメリカのインターナショナルスクールでは、アメリカの標準カリキュラムである「コモン・コア」を採用しているケース、カナダの州政府のカリキュラムなどを使用していくスクールが多いようです。
日本のインターナショナルスクールのカリキュラム
日本のインターナショナルスクールは、アメリカ系のインターナショナルスクールと国際バカロレアを導入したインターナショナルスクールが多いのが現状です。そのため、カリキュラムもアメリカ式の教育を取り入れているスクールと、国際バカロレアを取り入れているスクールが多いのが現状です。
ただ、海外のインターナショナルスクールではケンブリッジ国際カリキュラムが中心で、インド系インターナショナルスクールが増えている傾向があります。そのため、今後は日本でもイギリス発祥のケンブリッジ国際カリキュラムのインターナショナルスクールとインド系インターナショナルスクールも増えてくると考えられます。
どんな大学へ進学する?卒業後の進路とは
前述のとおり、インターナショナルスクールは、元々、外国人駐在員の子どものための教育機関として開校したため、日本の大学は、インターナショナルスクール卒業生に大学受験資格を与えていませんでした。
学校教育法の第1条に掲げられている教育施設(一条校)ではなく、高等学校を卒業と同等とされていなかったからです。
しかし、1981年より文科省は、国際バカロレアや海外の教育委員会から指定を受けたインターナショナルスクール高等部の卒業生は、高校を卒業したとと同等とする、としています。
そのため、インターナショナル高等部を卒業後、国内外の大学へ進学するケースが多いようです。また、インターナショナルスクール卒業生は、インターナショナルスクールと同じように英語で学べる環境を選ぶ傾向があります。
海外の大学へ進学する場合
私が見てきた限り、アメリカのハーバード大学やスタンフォード大学、カナダのトロント大学、マギル大学、イギリスのオックスフォード大学、ケンブリッジ大学など世界大学ランキングの上位大学に進学している生徒がいます。
海外の名門大学ほど多様性ある生徒構成を重視し、外国出身の枠を用意しているように感じます。日本の高校から海外の大学に進学し英語の授業についていける生徒は少数で、自然とインターナショナルスクール卒業生が“日本枠”で進学することが増えました。
また、各大学とも日本のインターナショナルスクールから代々卒業生が進学していることもあり、内申書、成績表などに信頼が置けることも海外の名門大学に合格者が多い理由のひとつです。
また、大学側は多様な生徒構成になることで、生徒同士が切磋琢磨しキャンパスがクリエイティブな環境になることで、イノベーションが生まれる循環サイクルが生み出せす狙いがあります。
日本の大学へ進学する場合
国内では上智大学、ICU(国際基督教大学)、慶應大学、早稲田大学、立命館大学、APU(立命館アジア太平洋大学)をはじめ、近年は、東京、大阪、岡山などの国立大学でも英語で学べるコースが増えたため進学しています。
各大学がインターナショナルスクール卒業生の高い能力に気付き、入試担当者がインターナショナルスクールで説明会を増やすなどリクルーティングに力を入れたこともあり、国内大学への進学率は増加傾向にあります。
海外(ボーディングスクール)へ編入するケースもある
インターナショナルスクール小学部の卒業生は、中学部から海外の寮制のインターナショナルスクールに編入するケースがあります。
寮制のインターナショナルスクールは、「ボーディングスクール」と呼ばれ、イギリスのチャールズ皇太子、ウィリアム王子、ヘンリー王子も中学校、高校で寮のあるボーディングスクールで学んでいます。
ボーディングスクールの良さは、上級生、下級生など寮生活でコミュニケーション能力とリーダーシップなどが身につきます。また、親元を離れることで自立した精神を育みます。
インターナショナルスクールのメリット・デメリットは?
インタナーショナルスクールに通うことで生じるメリットは、英語で探究的な思考法が身につき、独立心を持った子に育ちやすい環境であることです。
多様性ある同級生に囲まれて育つため、多様な価値観が存在する環境下で“対立ではなく互いに理解し、妥協点を見つけられること”を理解できる人物になっていくことでしょう。
また、論理的に主張の違いを理解し、その根拠を互いに納得できるレベルにまで落とし込むコミュニケーション能力が身につきます。
一方、デメリットは、徹底的な日本の集団主義に合わない傾向があります。
自由には責任が付きもののため、本人は自分で責任を持ってタイムスケジュール、判断、主張、行動をする能力を身につけていきます。そのことが返って日本の集団主義において合わないことがあります。
しかし、集団主義でも、国内のインターナショナルスクールからアメリカの陸軍士官学校などに合格していることからも英語文化圏の集団主義には相性が良いようです。
欧米の「個」を尊重することが原点の集団主義に対し、「個」を押さえることで規律を生み出す日本の徹底した集団主義には、インターナショナルスクールの卒業生は馴染めない傾向があります。
インターナショナルスクールの学費は?
インターナショナルスクールの小中高等部は、年間授業料が250万円〜300万円というのが授業料の目安です。
ほかにも夏休みにサマースクールに通わせると100万円ほど必要になることがあります。
インターナショナルスクールの学費が高い理由
日本の学校に比べて高くなるには理由があります。
【理由1】人件費がかかる
多くのインターナショナルスクールは、少人数制で教員と生徒の比率が1:18前後が一般的です。
日本の学校が1クラスが36人前後であることからも教員の人件費は日本の公立校に比べて2倍かかるといわれています。
また前述の通り、インターナショナルスクールの場合は、カリキュラムを自由に設計できる分、学校独自のカリキュラム開発の担当者などがいます。彼らが必要な学びをバージョンアップさせるためにカリキュラムを毎年、もしくは数年で変えていきます。
さらにカリキュラムや授業内容に沿ったリサーチ、タブレットとPC、ソフトウェアを管理する専門家がいます。
それら教職員もバイリンガル を優先的に採用するため、職員コストも余計に高くなり授業料が高くなるのです。
【理由2】補助金が出ない
一般的な日本の学校(一条校)の場合、税金の免除や国及び都道府県からの補助金が出ており、その割合は学校を運営する費用の約半分を補助金が賄っているほどです。
一方、多くのインターナショナルスクールの多くは国及び都道府県から補助金をほとんど受けていません。
インターナショナルスクールが向いている子とは
インターナショナルスクールが向いている子どもや家庭は、何事にも挑戦していくポジティブさがあることです。
多様な人とコミュニケーションすることが好きで、自ら動いていける子はインターナショナルスクールで伸びていきますが、指示待ちの子は向いていません。
また、インターナショナルスクールは、1日がかりの保護者会が行われることもあり、保護者も子どもの教育に深く関わる必要があります。もちろん保護者会も英語で行われます。
有給の取得や英語による1日がかりの英語の説明を苦としない家庭であることも必要です。しかし、積極的に教育に参加して子どもとともに成長することを望む家庭にとっては、インターナショナルスクールは理想的な学びの場になるはずです。
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アメリカ生まれ、日本育ちの国際教育評論家。元インターナショナルスクール経営者で、国際バカロレアの教員研修を修了している。人生初めての学校である幼稚園をわずか2日半で退学になった「爆速退学」経験者。インターナショナルスクールとEduTech系ベンチャー2社に出資している国際教育ベンチャー投資及び経営者でもある。海外から日本に参入したいインターナショナルスクールやEduTechベンチャーの広報補助も行っている。