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2020.12.10

ペアレント・トレーニングとは?
【Vol.2】全ての子育てにスキルを生かす

発達障害を持つ子どもを育てる親や養育者に向けて開発された「ペアレント・トレーニング」。前回の記事では、ペアレント・トレーニングの概要を解説。2回目となる今回は“子育てに悩む”全ての保護者に役立つ、精研式(まめの木式)ペアレント・トレーニングのノウハウを紹介します。ぜひ、普段の子育ての参考にしてくださいね。

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監修者

河内美恵さん国立障害者リハビリテーションセンター病院
臨床心理 主任心理判定専門職 (発達障害・支援センター併任)

東京学芸大学大学院教育学研究科学校教育専攻心理学講座修士課程修了。国立精神・神経センター精神保健研究所、中央大学、東京都公立小学校スクールカウンセラー、まめの木クリニック・発達臨床研究所等を経て現在に至る。専門は発達臨床心理学。日本を代表する精研式(まめの木式)ペアレント・トレーニングの実践者でもある。著書に『こうすればうまくいく 発達障害のペアレント・トレーニング実践マニュアル』『保育士・教師のためのティーチャーズ・トレーニング 発達障害のある子への効果的な対応を学ぶ』(共に中央法規出版)、『スクールカウンセラー活用マニュアル』(コレール社)、『読んで学べる ADHDの理解と対応(訳書)』(明石書店)など。

目次

子どもの行動を3つに分けよう

前回の記事では、現時点でペアレント・トレーニング(以下、ペアトレ)を受けられるのは“発達障害のある子どもとその疑いのある子どもを持つ保護者”に限定されていると解説しました。

けれど“親はほめ上手に、子どもはほめられ上手に”というペアトレの主軸となるアプローチはどの家庭にも生かせるものです。

そこで、今回は「まずはここから始めてほしい!」子育てに役立つ、ペアトレのスキルをいくつか解説しましょう。

ペアトレの概要についての解説はコチラ
ペアレント・トレーニングとは? Vol.1 親も子もより穏やかに過ごせるように

まずは、子どもを“行動”で見られるようになることが重要です。

ここでいう“行動”とは、「目に見えるもの、聞こえるもの、数えられるもの、英語でいうなら『do』で表せる動詞」のことを指します。

普段の生活における子どもの行動を、次の3つに分けてみましょう。

  1. 好ましい行動
  2. 好ましくない行動
  3. 危険な行動・許しがたい行動

1.「好ましい行動」とは

好ましい行動とは、親が良いな・好きだな・望ましいな・続けてほしいなと感じるような行動のことです。こういった行動に対しては後々、「ほめる」という対応を行っていきます。

しかし、“テストが100点だった”とか“習い事で賞を獲得した”という大きい出来事や、めったに子どもがしない行動だけを「好ましい行動」として待っていては、なかなかほめられないかもしれません。

“自分の使った食器を片付けた”とか“学校のプリントを忘れずに手渡してくれた”など、ほんのささいなことでOK。普段している当たり前の行動だけど、子どもが今していて「やめてほしくない行動」「もっと増やしてほしい行動」も、この「好ましい行動」に入れるのが大切なポイント! そうすると子どもの良い行動が自然と目に入るようになり、子どもをほめるチャンスも増えていくのだそう。

2.好ましくない行動とは

「好ましくない行動」とは、子どもが今していて「やめてほしいな」「減らしてほしいな」「お母さんこうされると嫌なんだよな」と感じる行動のことです。

3.危険な行動・許しがたい行動とは

「危険な行動・許しがたい行動」とは、“道路に飛び出す”、“友達を叩く”など人を傷つけたり物を壊したりするような行動や何度注意してもやめない行動、人として許しがたいといった行動などを指します。

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: 3384816_s.jpg

行動を3つに分ける際は、必ず紙に書いて分けてみることが大切なのだそう。頭の中で漠然と分けずに、下記のような表を紙に書いて「行動」で書き出してみましょう。

好ましい行動好ましくない行動危険な・許しがたい行動




こうやって3つに分けてみると「好ましい行動」が案外多いなとか、「危険な行動・許しがたい行動」が多いと思っていたけど、ほとんどは「好ましくない行動」かも、といったことを感じる人が少なくないそう。

ぜひ一度、子どもの行動を3つに分けて書き出し、客観的に眺めてみましょう。

「好ましい行動」をほめましょう

子どもは、親に自分の良い部分を注目してもらうのがうれしいものです。ほめられればその行動が増えていくのも、当然のこととしてうなずけますよね。そして、子どもはほめられる回数が増えると「親に認められた」と感じ、自信を身に着け、最終的には自分で自分をほめられるようになっていくことができるそう。

好ましい行動を増やすために、好ましい行動には“肯定的注目”を与えていきましょう。肯定的注目にはほめる・認める・興味や関心を示すなど、次に挙げた例のように、さまざまなバリエーションがあります。

  • ほめる:「もう宿題始めたの? えらいね!」
  • 励ます:「あと少しで宿題終わるね、頑張って!」
  • 子どもの行動に気が付いていることを知らせる:「宿題始めたんだね」
  • ほほ笑む:同時にVサインやOKサインなどを示すのも良い
  • 感謝する:「食器を片付けてくれてありがとう」
  • 興味や関心を示す:宿題をしている子どもに「難しい問題だね」「どんな問題かな?」
  • そっと体に触る:頭をなでる、肩に手を置く

また、肯定的な注目を与える=「ほめる」には、ちょっとしたコツがいくつかあります。例えば“宿題が完全に終わるのを待っていたら、途中で投げ出してしまいほめられない”ということはありませんか? 完全に課題が終わったときだけほめるのではなく、課題を始めたとき・しようとしているとき・しているとき・してほしくない行動をしていないときなどを捉えて、できるだけ早くほめましょう。

パーフェクトを待ってはいけません! ちょっとでもできることがあったら、ほめましょう。このことを、「25%ルール」と呼んでいるそう。子どもの小さな成功を見つけて、お子さんを25%でほめていきましょう!

ほめるときは、できれば視線を合わせて。穏やかな表情・穏やかな声の調子も大切です。長々とほめられても、子どもは何をほめられたのか分からないかもしれません。声掛けが長くなるとつい、皮肉やお説教が入ってしまうこともあるかも…。「すぐに着替えて偉いよ」「お箸を並べてくれたの? ありがとう」といったように、ほめ言葉は短く、具体的に行動でほめましょう。

派手にほめられることが好きな子もいますし、そっとほめられたい子もいます。その子の性格や感じ方、年齢に合わせたほめ方をしてみましょう。

子どもが喜ぶ「スペシャルタイム」で親はほめる練習を

「スペシャルタイム」とは、親と子が二人きりで子どもが好きなことをして遊べる時間のこと。親にとっては、子どもの行動を観察し、“どんなことをするのか”、“どんなことが好きなのか”などを観察しながら子どものいいところを探し、ほめる練習をする時間になります。

親の気持ちにゆとりのある時間と頻度で、週に何回、何曜日の何時に行うのかを親子で決めます。時間は15~20分程度がちょうどいいところ。短すぎると親も子も遊んだ感じが持てませんし、ほめる間もなく終わってしまうかもしれません。また長すぎると親が疲れてしまい、穏やかに、非指示的に関わることが難しくなってしまうからです。

スペシャルタイムのポイントは3つ。

  1. 事前に「スペシャルタイム」をすることを子どもに伝えること
  2. 子どもに主導権を与えること(遊びの内容、遊び方など)
  3. 親は指示や命令を出さないこと

スペシャルタイムの遊びとして、テレビゲームや携帯ゲームを望む子どもは少なくないでしょう。しかしそういったゲームの場合、言葉のやり取りはあっても互いの顔を見ながら遊ぶことが難しくなります。スペシャルタイムは、貴重な親子のコミュニケーションタイムでもあるので、カードゲームやボードゲーム、キャッチボール、鬼ごっこ、パズルなど相互にやり取りのできる遊びがおすすめです。

スペシャルタイムの間、親は「こっちのやり方の方がいいよ」「~しなさい」といった指示や命令、「間違っているよ」「下手だね」といった批判的・否定的コメントは避けましょう。子どもの遊び方を見ていると、つい口出ししてしまいたくなるのが親の性。しかし、スペシャルタイムでは子どもの好きなこと、子どものやりたいやり方で進める様子を観察し、子どもの良いところや新しい発見を見つけていくことが大切なのです。

「料理やお菓子作りなら顔を見ながらコミュニケーションが取れるから良いのでは?」と思う人がいるかもしれません。けれど、親が口や手を出さずに子ども主導で調理を行うというのはなかなか難しいものです。

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: 812468-1024x768.jpg

子どもへの接し方のコツ

子どもの好ましくない行動は“無視”しましょう

“宿題をせずに、テレビばかり見ている”とか“部屋を片付けないで、おもちゃを出しっぱなしにしている”など“やめてほしい”と感じる子どもの行動には親はつい注目してしまうもの。注意したり叱ったり、時には親自身イライラしてしまうこともあるでしょう。

こういった行動に対しては、あえて“無視”という方法を取ります。

無視というとなんだか怖いイメージを抱かれる人がいるかもしれませんね。しかし、ここでいう無視はネグレクトのように子どもの存在を無視するのではなく、子どもの行動を無視する、つまり子どもの好ましくない行動に否定的な注目を与えずに見逃し(スルーする・気が付かないふりをする・聞き流す)ながら、好ましい行動が始まる、あるいは好ましくない行動をやめる(または減る)のを待ちます。

そして好ましい行動が見られたら、必ずほめる! これがとても重要です。

テレビを見るのをやめて宿題を始めたからほめる”など前後につながりのある行動はもちろん、“汚い言葉を使っていたけれど、その後に妹の世話をした”といったつながりのないことでも必ずほめてあげましょう。

効果的な指示の出し方

指示は、一方的に出すものではありません。子どもに届いてこそ、指示。そういった意味では、指示とは子どもがその時にやるべき行動を伝えるコミュニケーションの手段なのかもしれません。

指示にもほめる同様、コツがあります。以下に、効果的な指示の出し方を紹介しましょう。

名前を呼んで子どもの注意を引いてから指示は短く、そして子どもが分かりやすいよう具体的に行動で伝える必要があります。

指示を出すときは、「CCQ」=「Calm(あなた自身が穏やかに)、Close(子どもにもう少し近づいて)、Quiet(声のトーンを抑えて静かに)」が基本

例えばテレビを見ている子どもの背中に向かって、遠くのキッチンから「早くお風呂に入りなさい」と大声で指示を出しても効果がないかもしれません。子どものそばに行って、名前を呼んで注意を引き、視線が合うのを待って指示を出しましょう。

また、子どもの機嫌を伺いながら指示を出したり、迷いやためらいがあったりすると子どもにそれが伝わってしまいがち。「まだやらなくてもいいのかな」と、子どもが感じてしまうことも…。また「そろそろ宿題できる?」のように疑問形で指示を出すと、「できない」「まだ~」なんて返事が返ってくるかもしれません。指示を出すときは落ち着いて、きっぱりと、でも穏やかに言い切る口調を心掛けましょう。

「1回で言うことを聞いてよ」「何度言ったら分かるの?」といった発言を子どもに投げかけたことはありませんか? 子どもは一度の指示で従うとは限りません。時には何度も指示を繰り返す必要があるのです。指示を出すときは同様に、「CCQ」を忘れずに。

「予告」で心の準備

大人でも、好きなテレビ番組を見ていたり何かに集中したりしている時に邪魔されるのは嫌なものではないでしょうか。子どもなら、なおさらです。好きなコミックを読んでいて面白いところに親の指示で中断されるのは、面白くないですよね。

そういった場合に効果的なのが、「予告」です。今している行動をもうすぐやめて、他の行動に移らなければならないことをあらかじめ知らせるのです。

「あと10分したらテレビを終わりにして、お風呂に入ろうね」「滑り台を3回滑ったら、帰ろうね」など、終了時間を予告することで、子どもは行動を切り替える準備ができるのです。

指示のバリエーション「選択を与える」「~したら、~できる」という取り決め

「~しなさい」と言われると、なんだか「命令された」と感じる子も…。気持ち良く指示に従えるためのコツとして、自分が決める権利を与えられる「選択させる」という方法があります。

例えば「洋服に着替えて」という指示を出したいとき「黄色の洋服と、青の洋服どっちがいい?」など、子どもに選択肢を与える方法がそれです。子どもは自分が決める権利を与えられるので、比較的気持ちよく指示に従えるようです。

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あるいは「いますぐお風呂に入るなら、好きな入浴剤を入れていいよ」「宿題終わったら、スペシャルタイムできるよ」「など、「〇〇したら、〇〇できる」というご褒美を与えるというのも効果的な方法でしょう。

一見「物でつるのは良くないのでは?」と感じますが、大人でも「この仕事を仕上げたらコーヒー飲もう」とか、「衣替えやったら、撮りためたビデオを見よう」といった小さなご褒美が励みになることはありませんか? 子どもが頑張って腰を上げるために小さなご褒美を用意することは、子どもを動かす大きな励みになること間違いなしです。

ただ、気をつけたいのは子どもが指示に従って好ましい行動を行った後、ただ物を与えるだけではいけません。必ず「すぐにお風呂入って偉かったよ」とほめながら入浴剤を選ばせる、つまり「ほめる」が伴っていることが重要です。必ずほめるが伴っていれば、そのうちご褒美がなくても、あるいはご褒美に飽きても、その行動が習慣的に身に着き好ましい行動をするようになっていくそう。

さて、最初に「子どもの行動を3つに分ける」というものを解説しましたが、お子さんに「危険な行動」「許しがたい行動」はあったでしょうか。けれど、こういった行動にも「ほめる」「無視」「指示」といったことで対応できることがほとんど。どうしても対応できない場合には「制限」という方法がありますが、テクニックとしてかなり難易度が高いものとなります。まずは、この記事で紹介したスキルを試してみてくださいね。

今回紹介したペアトレのスキルは、プログラムのほんの一部。また、基本的にはステップ・バイ・ステップで実践することがベストだということは覚えておいてくださいね。まずは、子どもの行動を3つに分けることから始めてください。

家庭でも学べる! ペアトレ本6選

ペアトレのプログラム内容をみると、「これ使えるかも!」「役に立ちそう!」と思うものがたくさんあります。そのため、プログラムの一部をかいつまんで子育てに取り入れようとしてしまう人がいるようです。しかし、これは厳禁。

正式なペアトレの全プログラムを終えるまでには、約半年ほどかかりますが、セッション1から順にステップ・バイ・ステップで段階的に積み上げていくことがとても大切なのだそう。

ペアトレは、今の段階ではいつでもどこでも誰もが受講できるものではありません。けれど、最近は自宅でペアトレを学べる優秀な本が豊富にそろいます。ペアトレを受講する時間がない人や「なんとなく、育てにくさを感じる」という人も、まずは自宅でペアトレの本を読んでみませんか。河内さんおすすめの6冊を紹介しましょう。

ペアトレの基本は、「ステップ・バイ・ステップ」。気になる部分だけ読むのではなく、必ず最初から読み進め、実践していく方法がおすすめです。

一気に読まずに一章読んだら実践、できたら二章に進み、一つのステップに2週間くらい設けて実践します。

また、頭の中で思っていることは週に1~2度でも良いので必ず書き出すようにしてくださいね。

【1】『読んで学べるADHDのペアレント・トレーニング~むずかしい子にやさしい子育』シンシア・ウィッタム著(明石書店)

カリフォルニア大学ロサンゼルス校のペアレント・トレーニングプログラムリーダー、シンシア・ウィッタム氏の著。日本のペアレント・トレーニングの基盤でもあります。精研式(まめの木式)・奈良式ペアレント・トレーニングの大元になったバイブル的な書。アメリカチックなかわいいイラスト入りで、楽しく学べる。ペアトレを学ぶ人、必読の書。

【2】『発達障害の育て方がわかる! ペアレント・トレーニング』上林靖子著(健康ライブラリー)

「ペアトレってどういうもの?」がイラストたっぷりに分かりやすくまとめられた一冊。ほめ方・指示の仕方・やる気の引き出し方など、子育てがラクになるテクニックを伝授してくれます。

【3】『マンガでわかるペアトレ 育てにくい子をほめる・のばす! 10のレッスン』らせんゆむ著・庄司敦子解説(合同出版)

著者は、実際にペアトレを受講した2児の母親。マンガで楽しく学べる一冊です。

【4】『保育士・教師のためのティーチャーズ・トレーニング 発達障害のある子への効果的な対応を学ぶ』河内美恵・楠田絵美・福田英子著 上林靖子監修(中央法規出版)

保育士や先生向けの本ですが、基本はペアトレと同じ。豊富な実践事例は、家庭での親子のやり取りにも役に立ちます。

【5】『困っている子をほめて育てる ペアレント・トレーニングガイドブック』岩坂英巳編(じほう)

幼児期から思春期までの子育て支援、発達支援をはじめ、子どもの成長支援に幅広く活用できるペアトレのノウハウを紹介しています。

【6】『肥前方式親訓練プログラム AD/HDをもつ子どものお母さんの学習室』伊藤啓介監修(二瓶社)

AD/HDについての正しい理解が得られるように、工夫や改善を重ねた親訓練プログラムの紹介書籍。親訓練の特徴や講義録、事例などが具体的に分かりやすく示されています。

「親としてこの接し方は正しいのかな?」「どうしてうちの子は素直に私の話を聞いてくれないんだろう」…子育て中の悩みは、一つ解決してもまた違う悩みがやってくるということが多いものですよね。ペアトレのノウハウを、子育てのヒントに役立ててみてくださいね。

【参考文献】
『こうすればうまくいく 発達障害のペアレント・トレーニング実践マニュアル』上林靖子監修/北道子・河内美恵・藤井和子著(中央法規出版)
『ペアレント・トレーニング実践ガイドブック』(作成:一般社団法人 日本発達障害者ネットワーク JDDnet 事業委員会/協力:日本ペアレント・トレーニング研究会)

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