【不登校・体験談】いじめと自責に苦しんだ僕が大きな自信をつかむまで
東京都在住のひろきさんは、会社員として営業職に従事する24歳。そんな彼には中学3年生の5月から卒業までの不登校経験があります。寝坊から始まった不登校は、暴力を伴ういじめへと発展。誰にも助けを求められず、学校に行けない自分を責め続けていたひろきさんは、不本意ながら定時制高校に入学することに。そこで彼は不登校の経験をバネに人生を好転させていきます。
目次
寝坊から始まった不登校が、いじめにまで発展
中学3年生の5月。前日に友達と夜遅くまでメールのやり取りで盛り上がっていたひろきさんは、翌朝寝坊してしまいます。この一回の遅刻を契機に、ひろきさんは遅刻・欠席を繰り返すようになりました。
「たまたま前日夜更かしして遅刻してから、生活のリズムを戻すのが難しくて、どんどん学校に行くのが面倒くさくなりました。最初の遅刻で登校した時間は、大体10時ごろだったと思うんですけど、だんだんと11時、給食の時間…と遅刻する時間が遅くなっていったんです。それから週に1日は朝から登校、もう1日は遅刻、残りは休むという生活が中学卒業まで続きました」
以前は、遅くとも夜10時には就寝する生活で、ゲームや友達とのメール交換も10時までに終わらせていたといいます。
今まで病気以外で休むこともなく、普通に学校に登校していたひろきさん。休みがちになる前にいじめやトラブルがあったわけでもなかったそう。ひろきさんの言うように、ただ「学校に行くのがめんどくさくなった」だけなのでしょうか?
実はひろきさんの不登校には、ある理由が関係していました。
「遅刻をするようになってから同じ学年のやんちゃグループに目をつけられて、遅刻・欠席した回数分、殴られるいじめが始まりました。登校すると『お前、今週は月曜日は遅刻、火曜日から木曜日は休んだよな。だから4回な』みたいな感じで、先生のいない、休み時間の教室で殴られていました」
突如として始まった、やんちゃグループからの暴力を伴ういじめ。殴られていることは誰にも言えなかった、と話すひろきさん。当時は「学校に通えてない自分がいけないんだ」と、殴られるのは当然だと思っていたそう。「学校に行ったら殴られる」との恐怖心から学校への足は遠のくものの、それを誰にも告げることもできず、家にも学校にも居場所がないと感じたひろきさんは、徐々に心をふさぎ込んでいきました。
「母親には『学校行け』とばかり言われるし、学校行ったら行ったで殴られるしで、あの時はどこにも居場所がなかったです。それが一番しんどかったですね」
週3の通塾、高校受験に向けて勤しむ日々
中学3年生となると、学校生活だけでなく進路も考える必要のある大切な時期。ひろきさんは中学に入学した時から、普通科の高校に進学したいと思っていました。不登校となっても通常のレールから外れる怖さがあり、その希望が揺らぐことはなかったそう。
しかし月日が経ってもいじめは止むこともなく、学校に登校できない日々が続きます。「このままでは良くない。学校に行かなきゃ」と焦る思いは日を追うごとに大きくなるものの、現状をなかなか打破することができずに苦しんでいました。その上、学校に行けていない自分を責める気持ちが強く、ふさぎ込んでしまい、勉強も全く手がつけられていませんでした。
そんな中、希望の進路に一歩でも近づけるよう、夏休みに入って高校受験対策塾に通いたいとお母さんに頼むことに。「塾に通うことで、少しでも今の状況が改善されるきっかけになれば」と、お母さんはひろきさんの塾通いを賛成してくれました。
「本来であれば学校で学習すべき内容を、僕は塾で勉強して学校に行ってない分を補っていました。仲の良い友達が通っている塾ということもあり、塾は休むことなく通ってましたね」
塾には週に3日通い、自宅では過去問を解くなど、自ら進んで勉強に勤しんでいたひろきさん。しかし努力虚しく、受験した高校には全て失敗してしまいました。
最終的にひろきさんが進路先に選んだのは、公立の定時制高校。
「受験で全部落ちて、行くところがなくなったので定時制に行ったんですけど、行く前はすごく嫌でしたね。定時制にあまり良いイメージを持っていませんでしたから。それに、皆と違う道に進むというのも嫌でした」
アルバイトや生徒会活動に熱中し、大きな自信をつかんだ高校時代
本人はしぶしぶ進学した、という定時制高校。出身中学からはひろきさん含め、5人が進学したそう。その5人の中にはひろきさんをいじめていた中心的人物である、Aも入っていました。
高校入学当初から同じ中学出身ということで、よく5人で行動していたようです。そこで意外なことに、ひろきさんとAは仲を深めていくこととなりました。
「中学の頃にAが仲良くしていた先生がいたんですけど、『先生から「ひろきを頼んだぞ。高校に行ったら良くしてやれよ」って言われたから』とAが話しかけてくれたんです。それからAと仲良くなりましたね」
Aの紹介で、5人で同じスーパーの品出しアルバイトを始めることに。これがひろきさんにとって初めてのアルバイトとなりました。朝からアルバイトがある時は、前日入りしてみんなでアルバイト先の休憩室で寝泊まりすることもあったそう。
「中学で不登校になって、将来真っ暗だと思っていたんですよ。もう人生終わった、と。でもアルバイトをすることで『こんな俺でも社会の役に立てるんだな』と思え、自信をつけることができました。仕事を任せてもらえるのも、役割を与えられ、自分を受け入れられたようでうれしかったですね。そこから人生が少しずつ好転していきました」
アルバイトの経験から自信を獲得していったひろきさんは、高校でもその力をどんどん発揮するようになります。
「かわいい先輩がいたから」という理由で、高校1年生の時に生徒会の一員になったひろきさん。高校3年生の時には思い切って生徒会長に立候補しました。
1クラスしかない定時制高校で、生徒会長に立候補したことをクラスのみんなに伝えると、「立候補者の中だったら、お前が一番生徒会長に向いてる」と口々にひろきさんを推薦する声が。その評判が他の学年にも広がり、最終的に一番多くの投票数を獲得、ひろきさんは晴れて生徒会長になりました。
「多くの人が僕を生徒会長に選んでくれたことはうれしかったですね。理由は自分では良く分かんないですけど、周りから『誰にでも分け隔てなく接することが出来るよな』と言われたことがあります。定時制は色んな年代・特性を持った人がいるので、それは大切だと思います」
学校制度に関しての意見が通って実際にルール化された時は、自分の考えを配信しそれを多くの人に伝えられたうれしさがあったそう。こうした精力的な生徒会長としての活動を通して、引っ込み思案だと思っていた性格がアクティブに行動できる性格へと変化していきました。
不登校経験を乗り越え、それを糧とした彼だからこそ伝えられること
その後私立大学に進学したひろきさんは、大学2年次に富士山登頂、大学3年次の夏休みに自転車で日本一周をするなど、活動的に行動し楽しく充実した大学生活を送ったそう。「中学生までは引っ込み思案でネガティブ思考が強かった」と話す彼ですが、活動の幅を広げられるようになったのは、高校時代アルバイトと生徒会の活動で培った自信があったから、と話してくれました。
中学時代よりも一回りも二回りも成長を遂げたひろきさんは、不登校当時について今、どのような思いを抱いているのでしょうか。
「あの時学校行っとけばよかったな、っていう後悔はやっぱりありますよ。でもそれ以上に自信がついてポジティブに物事を考えられるように、自分が変われたのがうれしいです。不登校時は自分を卑下してばかりでお先真っ暗と思っていましたけど、当時の自分には『世界はそんな狭くないぞ』と言いたいですね。僕を殴ったクラスメイトのことも、恨んではいません。Aとは今でもスノボに行ったり飲みに行ったりする仲です。殴ってたことに対して謝罪は一切ないですし、その話をしたこともないですけど、僕はそれでいいと思っています」
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