教育は未知にあふれている

ソクラテスのたまご

2019.09.10

小学校の通知票のつけかた、評価の仕方はどうなってるの?

小学校に通う子供が持って帰ってくる通知票。「よい」「普通」「もう少し」という項目になっているのではないでしょうか。現在は、他の子と比べません。保護者の中には「5・4・3・2・1」といったように、他の子と比較された評価を経験した方もいるのでは? 今回は昔と今とで異なる学校の通知票、どうして他の子とは比べない評価になったのかと評価の仕方の裏側をお伝えします!

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小学校の評価の方法は大きく分けると3つ

学校の先生が子どもの成績を出す方法は、大きく分けて①相対評価、②絶対評価、③個人内評価の3つがあります。

 

①相対評価

クラスの中(集団の中)で皆と比べたとき「あなたの順位はこの辺りですよ」と分かる評価の仕方。周りの子と比べて評価されます。「5・4・3・2・1」は、それぞれ何人までと決めてつける評価法です。したがって国語の100点満点のテストで毎回、自分は90点ばかりだったとしても一番成績が良いとされる「5」にならず「3」になってしまうような時もあります。周りと比べる評価のため極端な例ですが、周りの子の多くが100点を取っているといった時にはそうなってしまうこともあるでしょう。

 

②絶対評価

相対評価と対照的な位置にあるのが、周りの子とは比べない絶対評価。自分の成績が以前よりもどのくらい伸びたのか、または下がったによって評価する方法です。評価項目が一人ひとりの子どもによって設定するのではなく、評価する共通項目だけを決めておきます。国語であれば「漢字を正しく書くことができる」などと決め、どのくらい伸びたのかなどを「よい」(A)、「普通」(B)、「もう少し」(C)といったように3段階または5段階で評価します。周りと比較しないため極端な話、クラス全員が「A」という場合もあるでしょう。

 

③個人内評価

個人内評価も、その子の伸び率だけを評価する方法。絶対評価と異なるのは評価する項目がクラス共通であるのに対し、一人ひとり評価項目が異なるという点です。A君の評価項目は「漢字を間違えずに書ける」なのに対して、Bさんは「たくさんの漢字を使うことができる」というような例が挙げられます。

 

このように、評価の方法には3つあるのです。

 

 

今の小学校では「絶対評価」のはずだが…

小学校では以前は「相対評価」をしていましたが、現在は「相対評価」から「絶対評価」に変化しました。

 

中学受験のことを考えると「わが子がクラスの中でどのくらいの位置にいるのか知りたい」「相対評価のほうが良かった」という方もいるかもしれません。しかし塾とは違い、小学校では中学受験を意識した評価をしません。全員が受験をするわけではないからです。ではなぜ、「相対評価」から「絶対評価」に変わったのでしょうか。

 

文部科学省が提言する評価法の変化の理由について、簡単に解説すると…。

 

「相対評価」から「絶対評価」に変化した理由

①児童一人ひとりの進歩の状況や目標の実現状況を把握して学習指導の改善に生かすため
②学習指導要領に示された基礎的・基本的な学習内容を確実に習得したかどうかを図るため
③各学校段階の目標を実現しているかどうかを図るため
④習熟の状況に応じた指導などを重視しているため学習集団の構成も多様となるため
⑤少子化等によりかなりの広範囲の学校で児童生徒が減少しているため、集団に準拠した評価よりも目標に準拠した評価のほうがいいため

 

絶対評価では、評価項目に合わせて個人の伸び率だけを評価。相対評価のように「5」は何人まで、などと人数を決める必要はないのです。ところが、多くの小学校で純粋な絶対評価が行われていないのが現実です。では、いったいどんな評価をしているのでしょうか。

 

 

 

 

小学校で実際に行われている不思議な評価の仕方

現実には、「相対評価を加味した絶対評価」という不思議な評価が行われているのです。絶対評価を基本とするのですが、「A」の人数を決めてしまっていることもあるのです。

 

絶対評価ですから「A」が何人までなどと決める必要はないはずです。決めてしまえば絶対評価にはならないのです。それにもかかわらず、どうして人数を決めてしまうのでしょうか。

 

担任が指示されるのは、他のクラスと差をつけないためということ。例えば「1組では漢字の評価が全員Aなのに対して、2組では3人しかAがいない」というのはあまりにも差が大きすぎるというのです。それが、「相対評価を加味した絶対評価」にしてくださいと指示される理由です。要するに「A」といった評価の段階をそれぞれある程度、人数を他のクラスとそろえるということです。


あまり差がありすぎると「A」の多いクラスの先生は教え方が上手な先生、「A」が少ないクラスは教え方がそれほど上手ではない先生というようにも考えられてきます。保護者からも「どうして1組はAが多いのに、2組ではAが少ないのですか」などと言われることもあるようです。

 

そもそも、絶対評価ですから「A」の人数に差が出てきても何の問題もないはず。その子の伸び率だけを評価すればいいのです。先生の中には、校長などから「あなたのクラスはAが多いので減らしてください」と実際に言われたという話もよく聞きます。しかし、この指導にはどうしても疑問が残ります。絶対評価になっていないからです。


現実的には「相対評価を加味した絶対評価」を行う小学校は、少なくありません。この評価の仕方に疑問を持つ教師も多くいます。「絶対評価」をするのであれば純粋に子供の伸び率だけを評価すべきでしょう。

 

 

「絶対評価」なら全員“A”でいい評価項目もあるはず

絶対評価では、学習指導要領に定められた4つの観点で評価します。「興味・関心」「思考・判断」「技能」「知識」です。この4つを基本として、各教科ごとに細かな評価項目を学校で決めます。例えば社会科の「興味・関心」であれば「社会のことがらに関心を持ち、意欲的に調べることができる」といったように通知票に記されこれをABCで評価するのです。

 

上記の4つの観点のうち差が出やすいのが、テストでは判断できず客観的に評価しにくい「興味・関心」かもしれません。もちろん、「興味・関心」も絶対評価。しかしながら、これだけはどうしても教師の主観が入ってしまいます。

 

そもそも「興味・関心」は絶対評価だろうとなんだろうと評価できない、と考えている先生は少なくありません。学校で算数の授業中、全く発言をしないから興味・関心がないとは限りません。休み時間、算数の学習漫画をよく見ていたとしたら興味・関心があることになります。先生が見ていなければ分からないことなのです。発言にしても、授業中に発言しないから関心、意欲がないとは言い切れません。このように考える先生の多くが「興味・関心」は全員「A」でいいと主張します。

 

ところが、子どもの発言の回数やノートなどを見て評価しようとする先生の中にはABCをきちんと分けてつける人もいます。子どものノートを評価すること自体は悪くはありません。ただ、それが「興味・関心」の評価として客観的な資料として使えるかどうかは別。教師の主観も入ってくると考えられるからです。そうすると全員「A」のクラスとそうでないクラスが出てきます。ここで差がつくのでしょう。これも「相対評価を加味した絶対評価」にしてほしいという理由なのでしょう。本来、このような項目は客観的に評価するのが難しいため“所見”にすべきなのではないでしょうか。

 

 

 

 

純粋な「絶対評価」へ!

文部科学省は「相対評価」ではなく「絶対評価」をするように提言しています。「相対評価を加味した絶対評価をしなさい」とは言っていません。

 

「相対評価」を加味してしまうと、子どもの伸び率が正確には出てこないということにもなりかねません。純粋な「絶対評価」でないと、本来であれば自分の子は「A」という評価をもらえるはずが「B」になってしまっているかもしれません。

 

例えば1学期、わが子の「漢字を正しく書くことができる」という項目の成績が「B」だったとします。1学期に何回か実施されたわが子の漢字テストの平均点は70点。2学期、わが子は漢字の練習を頑張り平均点が90点になりました。20点も平均点が伸びているのですから、「A」をもらってもいいはずの成績です。

 

ここに相対評価を加えたとします。周囲の子も平均点が伸びていたとしたら、「A」をもらえる人数が限定されてしまうため「B」のままになってしまうかもしれません。純粋な「絶対評価」でないと、自分の子の本当の伸び率が判断できないことになってしまいます。純粋な評価でない場合、文科省が提言している5つのポイントをクリアできなないことにもなるでしょう。


「相対評価を加味した絶対評価」に、疑問を抱く教師は多くいます。保護者も「他のクラスと評価に大きな差が出てくることもあったとしてもおかしくない」ということを認識しておくと良いかもしれません。

 

須貝 誠

須貝 誠

東京都小学校準常勤講師・塾講師・ライター。30校以上の教育現場で教えてきた経験があり、進学塾では主に国語を担当。教師が集まる民間教育団体であるTOSS相模原・和(のどか)会員として指導法を学んでいる。https://www.toss.or.jp/

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