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ソクラテスのたまご

2019.09.18

【小児分泌科の医師に聞きました】低身長の基準や検査とは? 成長ホルモンや身長について知っておきたいこと

“子どもの成長は人それぞれ”ということが分かっていても、背が伸びないことに悩んでいる親子は少なくありません。インターネット上には、子どもの成長に良いと思わせるような栄養補助食品や成長ホルモン使用をうたった保険適用外治療の情報がいろいろ目に留まりますが、実際のところはどうなのでしょう。近年、関心が高まっている“子どもの低身長”について、虎の門病院 小児科・内分泌センターの伊藤純子医師に話を聞きました。

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子どもの身長が伸びるタイミングと仕組みとは

「高校時代に一気に10cm以上も身長が伸びました」

 

多くの大人がこんな話を一度は耳にしたことがあると思います。そのため、わが子の背が低くても「いつかは伸びるはず」と考えている保護者も少なくないことでしょう。しかし、人の身長がグンと伸びるタイミングは、乳児期と思春期の2回。つまり、小学生以上の場合、残されたタイミングは、思春期の1回になります。

 

思春期といえば、男の子なら声変わり、女の子なら胸がふくらんだり、月経が始まる時期。一般的に、男の子が11歳ごろ、女の子が10歳ごろから始まり(個人差があります)、数年かけて身体に変化をもたらしますが、その中には身長が伸びることも含まれています。つまり、高校生になって背が伸びたという人は、人よりも思春期を迎えるタイミングが遅かったということで、その割合は決して高くはないそうです。

 

「身長は、成長線と呼ばれる骨の端にある軟骨の部分が分裂増殖し、その部分が骨に置き換えられることで伸びます。この成長線はレントゲンで撮影すると黒い隙間に見えます。しかし、思春期の時期に骨が成熟すると、この隙間はなくなり、骨と骨の間は閉じた状態になります。そうなるともう身長は伸びません。思春期を終えて大人の骨になった後は、いくら期待をしても身長は伸びないのです」(伊藤先生)

 

 

 

成長の状態、タイミングを知ることができる成長曲線

しかし、身長の伸びには骨の状態が関係していることが分かっても、レントゲンを何度も撮影することはできませんよね。そこで、活用したいのが成長曲線です。

 

平成26年4月に文科省より公布された「学校保健安全法施行規則の一部を改正する省令」では、児童生徒等の健康診断について、子どもたちの発育を評価する上で、身長・体重成長曲線を積極的に活用するようにとされました。以降、校医による定期健診で成長曲線を用いる学校も増えており、場合によっては専門病院での受診をすすめられることもあります。

 

ただし、現状は、成長曲線をどのように取り入れて病院の受診を勧めるのかは学校や医師によって異なっているそう。子どもの身長が気になるのであれば、保護者自身が成長曲線の見方、注目ポイントを知っておいてもよさそうです。

※成長曲線のダウンロードはこちらから

 

「成長曲線で医師が見ているのは、平均ラインからどの程度離れているかという点と伸びるペースが変わっていないかという点。低身長であれば、身長が-2,0SDを下回っているかどうかです。伸びるペースについては、標準の曲線に沿って伸びていたのに、急に上がったり、横ばいになったりなど曲線に変化が出ていないかという点も気になります」(伊藤さん)

 

成長曲線が急に上向きになっているということは思春期の伸びのスパートであるということ。また、急に伸びが悪くなった場合、その原因がホルモンの低下であることがあり、成長曲線の変化をきっかけに病気がわかることもあるそうです。

 

 

 

低身長の診察内容、病院へ行くタイミングは?

では、低身長で受診する場合、病院ではどんな検査をするのでしょうか?

 

「まず、問診、成長曲線の確認、血液検査、骨の成熟度を見るために手のレントゲン撮影などを行います。問診では、出産時の体重や病歴、薬の服用歴なども聞きます。さらに詳しく調べた方が良い場合には、薬剤を投与して反応をみる成長ホルモンの分泌刺激試験を行います」(伊藤さん)。

 

実際には、これらの診察の結果、8割以上の子が遺伝などの体質的なものなのだそう。

 

「医師が診察するのは、背が伸ばせるかどうかではなく、病気を見逃さないためです。治療可能な病気・異常が見つければ治療を始めますが、背が低いことが体質的なものであれば、治療を行う必要はありませんし有効な治療もありません」(伊藤さん)

 

ちなみに、低身長の原因と考えられる病気・異常は下記になります。

 

・成長ホルモン分泌不全性低身長症

・ターナー症候群

・SGA性低身長症

・いろいろな主要臓器(腸、肝臓、心臓、腎臓など)の異常

・甲状腺ホルモンの不足

・プラダー・ウィリー症候群

・軟骨無形成症

・愛情遮断症候群 など

 

また、低身長の子が治療として受けているもので多いのが、成長ホルモンの治療ですが、治療の効果を得られるのは、骨が成熟する前(思春期を終える前)。「早期に治療を始めることで、標準身長へ近づく可能性が高くなります」(伊藤さん)

 

 

 

成長ホルモン治療で誰でも背が伸びるわけではない

しかし、勘違いされがちなのが、病気や異常がなくても、成長ホルモンさえ増やせば背は伸びるのではないか、ということ。

 

「成長ホルモンを打ったとしてもそれだけで背が伸びるわけではありません。そもそも、ホルモン分泌が正常な人に注射で少量の成長ホルモンを注入しても、その分自分が分泌している成長ホルモンが減るので身体に影響はありません。成長ホルモン分泌不全性低身長症などで成長ホルモンの分泌量が少ない場合は成長ホルモンの治療をすることで身長が伸びますが、そのときに使用する成長ホルモンの量は保険適用外の治療であれば毎月数十万円はかかるほど。それを定期的に何年も行なわなければ効果は得られません。また、“成長ホルモンを増やすサプリメント”」に身長を伸ばす効果はありません」(伊藤さん)

 

また、“背を伸ばすためにはカルシウムが必要”といった説は昔からありますが、その因果関係はないそう。「カルシウムは骨を丈夫にするために重要ですが、多く摂ったからと言って身長が伸びるわけではありません。身長を伸ばすための栄養としては、タンパク質や亜鉛などの各種ミネラル、ビタミンなどがすべて必要です。健康のためにもカルシウムを始め必要な栄養素をバランスよくとり、しっかり睡眠をとることは大切です。

思春期の女の子が、体重を気にしてやせ過ぎになってしまうことが問題になっています。身長が一番伸びる時期なので、この時期に体重が増えるのは当然だと思ってください。適切に体重が増えないと、身長が伸びないだけでなく骨密度も上がらず、将来骨粗鬆症になってしまいますよ」(伊藤さん)

 

子どもの背が伸びないと悩んでいたらサプリメントを試すより、まずは、成長曲線を見て平均からの差・伸びのペースを確認。気になる場合は、小児内分泌疾患を扱う専門医を受診して背が低いことが体質的なものか原因となる病気があるのかを知りましょう。

 

「ソクラテスのたまご」編集部

「ソクラテスのたまご」編集部

教育に関する有識者の皆さまと一緒に、子を持つお父さん・お母さんでもある「ソクラテスのたまご」編集部のメンバーが、子どものために大人が知っておきたいさまざまな情報を発信していきます。

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