まずは知ることから始めよう! 子どもの悩みや社会問題がテーマのマンガ5選
いじめや貧困、虐待など子どもにまつわる問題が尽きない現代。自分の世界とは少し離れた現実(場所)で、子どもたちにどんなことが起きているのか興味はありませんか? その概要を比較的手軽に知るならマンガがおすすめ。物語として誇張している部分があるものの、さまざまな問題意識をもつきっかけにぴったりです。読む前と後では、社会の見え方が変わっているかも!?
目次
虐待に苦しむ親子の背景にあるものは…?
「新・ちいさいひと 青葉児童相談所物語」
作品の舞台は、最近、悲しい事件で注目を集めることが多い児童相談所。主人公である熱血児童福祉士の相川健太が、さまざまな虐待に苦しむ親子と向き合い、情熱と法律で救っていくストーリーです。
なかでも、ソクたま読者に特に注目してほしいのは、2巻に収録されている“教育虐待”をテーマにしたエピソード。“教育虐待”とは、過度な期待を抱く親が、期待通りの結果が出せないと激しく叱責し、子どもの人権を無視して勉強や習いごとを強要することです。
劇中では、母親に追い詰められた中学3年生の少年が自傷をしながら勉強に取り組み、壊れていきます。しかし、虐待する親=悪人、というだけで物語は思わりません。虐待が起きた背景にある夫婦関係についても描かれており、大人のケアについても描かれているのです。マンガの合間には、虐待の事例や子どもの人権に関するコラムもあり、虐待について深く理解することができます。
子どもを襲う心身の病がよく分かる
保健室の先生が主人公の「放課後カルテ」
主人公は、小児科医の牧野。たぐいまれなる観察眼があるものの無愛想で態度もでかい彼は、産休補助要員として小学校の保険室に配置されることに。最初は子どもたちから怖がられる存在だったも彼ですが、ふとした表情やしぐさから子どもたちが抱えている“大人には言えない悩み”を見抜き、医学知識を用いて解決していきます。
出てくる病気は一般的なものにとどまらず、産まれたばかりの妹に母親の愛情が取られてしまい心因性視覚障害(精神的なストレスのせいで一時的に”見ようとしない”状態になる目の心身症)になる子、不安のせいで学校にくると声が出なくなる場面緘黙症の子、テストや授業中も眠ってしまいクラスで孤立していく睡眠障害(ナルコレプシー)の子など、本当にさまざまで勉強になります。
しかし、この作品のオススメポイントは、子どもの病気に関する知識が増えるだけではありません。悩みを抱えながらも生きようとする少年少女を見ていると、普段は忘れがちな子どもの健気さを思い出すことができるのです。学校という狭い社会の中で、さまざまなことを感じ、考え、もがきながら成長している姿に何度も胸を打たれます。
さらに、最後はホッコリ温かな気持ちで終えられるのもポイント。読後には、いつもより少し優しい気持ちで子どもと向き合うことができるかもしれません。
貧困は子どもの生活をどう変えてしまうのか
生活保護がテーマの「健康で文化的な最低限度の生活」
2018年にドラマ化もされた作品。タイトルは、日本国憲法第25条第1項の条文「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」からつけられています。この条文を根拠に成り立っているのが生活保護制度であり、マンガの舞台は生活保護受給者を担当する福祉事務所です。
主人公は、福祉事務所生活課に配属された新人ケースワーカーの義経えみる。担当する受給者のなかには、自立へのプレッシャーからうつ病を発症して子どもに当たってしまう母親、親子2代で生活受給者となり貧困の連鎖から抜けられない家庭などが登場。ほかにも子どもが関わってくるエピソードが少なくありません。
また、一時期、不正受給が社会問題として取りざたされた生活保護ですが、この作品を読んでいると、なぜ彼らは生活保護を受けなければ生きていけないのか、生活保護にはどんな意味があるのかについて少し分かっていきます。社会的弱者を排除しない、広い視野をもった子どもに育てたいのであれば、親子で読んでみてもいい作品かもしれません。
希望や夢が言葉の刃になる子にとって学びとは
病院訪問教育を描く「マジスタ― 見崎先生の病院訪問授業」
テーマになっている病院訪問教育とは、長期入院する児童や生徒に対して病院まで教師を派遣して授業を行なう制度のこと。主人公である新人女性教師が、特別な心理状況にある生徒たちと接していく中で学校にはない教育のかたちを模索していく作品です。
最初のエピソードに登場するのは、事故で脚を失い、大好きな野球もできず絶望の中にいる少年。ある日、主人公は、先輩教師から「夢とか希望とか語ったりするな」「教師の言葉は話す教師のコトバは鋭い刃になる」とアドバイスされますが…。
当たり前の生活を失い、過酷な人生を背負った子どもたちにとって教育や勉強が果たす役割とは何かなど、保護者も勉強や教育について考えてしまう作品です。
小学校1年生から不登校になった作者の実話
「学校へ行けない僕と9人の先生」
小学1年生のまーくんは、ふとしたことで担任教師に殴られ学校へ行けなくなってしまい…。小~中学生の間、不登校だったまーくんが、9人の先生との出会いと別れを通じて成長していく物語です。
実は、この話は作者である棚園正一さんの実体験を基に描かれており、その分、苦しみ葛藤する子どもの心理描写がとてもリアル! 特に、学校べ行くことはとてもつらいのに「フツウにならなくちゃ。そのために学校へ行かなくちゃ」と葛藤する姿は、読んでいて胸が苦しくなります。
分かりたくてものぞけない子どもの心の中。不登校の子どもたちが何を感じ、考え、大人の何を見ているかを理解するヒントをくれる作品です。
自分の見えないところで子どもたちにはどんなことが起きているのか、そして、大人社会ではない世界で子どもたちを何を考えているのか、マンガを読むことで子どもを取り巻く環境や教育について考えるきっかけにしてみてはいかがでしょうか?
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エディター、ライター、環境アレルギーアドバイザー。新聞社勤務を経て、女性のライフスタイルや医療、金融、教育、福祉関連の書籍・雑誌・Webサイト記事の編集・執筆を手掛ける。プライベートでは2児の母。