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2019.01.21

学級崩壊はなぜ起こる?小学校の体験談から考える原因と対応

「荒れているのは一部の子だけ…」。そう思っていたNさんの長男Yくんのクラスが学級崩壊に陥ったのは、小学5年のとき。授業中、半数の児童が教室不在で廊下から遊ぶ声やケンカする聞こえる毎日。なぜ学級崩壊は起こり、保護者はどう対応すべきなのか一緒に考えてみませんか。

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崩壊の中心は普通の児童

Yくんが通う小学校は、1学年3~4クラスと近隣と比べて大人数の小学校。入学当初から男子の間では取っ組み合いのケンカが起きるなどのトラブルもありましたが、それは一部の乱暴な子たちの話。Yくんは、ケンカに参加するタイプではなかったそう。

しかし、小学校5年生になると友だち同士のトラブルや授業態度について学校からNさんに電話がかかってくるようになりました。

「授業が始まっても教室に戻ってこないと思ったら、裏庭や体育館で遊んでいたり、『ぼくらの七日間戦争』に触発されて教室にバリケードをつくったり。そのたびに学校に赴いて謝罪しYにはカミナリを落とす日々でした」(Nさん、以下略)。

担任教師が教室に戻らないYくんたちグループを探しに出ている間に、教室内では殴り合いのケンカが始まったり、ほかの子たちも勝手に遊びに出かけてしまったり。

しかも、そんな状態がYくんのクラスだけではなく、小学校全体で起きていました。校長や教頭もどこかのクラスのフォローに回っており、Yくんのクラスをサポートできる人員はいなかったのです。

「実は、入学してからずっと問題を起こしていたのは一部の乱暴な子たちでした。なので、学校としては、乱暴な子たちへの対策を重視していたように感じます」。

しかし、Yくんのグループは、これまで問題を起こしたことはなかった、比較的学力の高い子どもたち。学校側からすると、ノーマークだった層が暴れ始めて手をこまねいている様子だったそうです。

「Yたちは、授業をどうやって潰すかをゲーム感覚で楽しみ、クラスメイトたちは、Yたちが今日は何をしてくれるのかと期待していた。私が中学生や高校生だった頃、クラスメイトが先生の話を誘導して授業を脱線させたり授業妨害をすることがありましたが、今は似たようなことが小学校で起こる時代なのだと思いました」

学級崩壊の予兆とは

Yくんたちに問題があったことは前提としながら、学校の方針についても疑問を感じたとNさん。

最初に違和感をもったのは、「Yが1年生のときだった」と話します。 「朝礼のように全校児童が並んで話を聞くとき、先生たちが話を聞く態度を指導している様子はありませんでした。先生の話は立って聞かなければならないはずが、疲れている様子もないのに自由に座っている子も結構いて。果たして先生の話を聞けるようになるのかなと思っていました」

さらに、Yくんが3年生のときは、児童たちの規律心と教師の認識にズレがあるように感じたそう。

「授業中に騒ぐ子がいると『教室の外に出て心を落ち着かせてきなさい』と廊下に出していたんです。小学3年生がひとりで心を落ち着かせることなんてできるのでしょうか? 実際、そのままどこかに遊びに行ってしまう子もいました。実は、Yの学校は授業開始のチャイムが鳴らない学校で、授業時間は先生のさじ加減で延長・短縮することが可能でした。授業中でさえ騒ぐような児童が、授業が終わった他クラスの友だちと廊下で会ったら、そりゃ一緒に遊んでしまうだろうなと思いました」

チャイムが鳴らないため、授業開始は各生徒が時計を見て行動をするというスタイルだったそうですが、校内に設置された時計の数は限られており、時計が見えない場所もたくさんあったそう。

Nさんは、時間を守らせるためにYくんに腕時計をつけることを申し出たそうですが学校側の答えは「NG」でした。

学級崩壊につながる環境

そのうち、学年全体の緊急保護者会が開かれて、Yくんたちのクラスは、保護者が交代で授業の様子を見に行くことになり、Nさんも行きました。

「授業が始まっても廊下では他クラスの子が騒いでいるような環境では、子どもが授業と休み時間の切り替えをするのは難しいだろうなと思いました。先生に『チャイムを鳴らしてほしい』と伝えたこともありましたが、近隣住民との調整もあるのか、簡単には決められないと言われました。また、ほかの子は親がいる場でおとなしくしているのに、Yは『親がいるときだけいい子のふりをするのはズルい』と言っており、親がいてもいつも通りにふるまっている。そのせいか学校から発達障害の専門医を受診するようにと促されました。ただ、塾では落ち着いて授業を受けられているので発達の問題だとは考えられず、受診はお断りしました」

その後、学校側からスクールソーシャルワーカー(SSW)を紹介され、両親揃って面談をし、SSWと一緒に授業を見学することになったそう。

「学校側としてはSSWを通して発達障害の受診をさせたかったようなのですが、授業を見学したSSWの意見は『環境にも要因があるのではないか』ということでした。というのも、授業中の様子を改めて観察すると、友だちと話すYのほかにも、消しゴムのカスを投げつけて特定の子をいじめているグループ、読書や工作など授業と関係ないことに没頭している子、廊下に出て殴り合いのケンカを始める子など、ダメな授業態度の見本市のよう。しかも、先生は諦めてしまっていたのか注意することもなく完全に放置していました」

その後、新たな対策が学校から示されることはなく、Yくんたちは6年生に昇級。すると、ウソのように学級崩壊はぴったりと収まったといいます。

学級崩壊を防ぐための対応

学級崩壊が収まった理由は、「Yくんたちのグループがクラス替えで分解されたこと」「担任教師の対応がよかったこと」「Yくんたちの心に変化があったのではないか」とNさんは話します。

「勝手な話ですが、本人いわく『授業妨害に飽きた』そうです。また、5年生の担任の先生は子どもの言うことをいちいち真に受けてムキになって高圧的に叱るか最初から無視するタイプでしたが、6年生の担任の先生は子どもの言うことを一度聞き入れてから、なぜダメなのかを説明するタイプでした。それが少なくともYにとってはよかったようです」

学級崩壊を振り返り、Yさんは話します。

「子どもの自主性が求められる時代ですが、それはルールが土台にあってこそ。親しみがある先生もすてきですが、児童になめられる可能性がありますよね。5年生の担任は児童から呼び捨てにされていましたが、それに笑顔で応えていました。教師と生徒の境界線があいまいだと先生の言葉に力がなくなり、学校で子どもの暴走を止めるものがなくなってしまうのかもしれません。家庭での教育ももちろん大切ですが、学校でのルールやけじめはきちんと守って行動するように、低学年のうちから意識付けをする指導を先生たちにもしてほしかったですね」

そんなYくんも今では中学生になっています。実は6年生に進級してから、念のために発達障害の検査を受けたYくん。Nさんが考えていた通り、障害の疑いはありませんでした。

「中学校で昔のYたちのように授業妨害を楽しんでいる子がいるようなのですが、『迷惑なヤツ』と感じているそう。かつての自分のことを重ね合わせ、反省しているみたいです。最近、下校中に5年時の担任と偶然会ったそうで、『あのときはごめんなさい。自分が悪かった』と謝って和解したそうですよ」

浜田彩

エディター、ライター、環境アレルギーアドバイザー。新聞社勤務を経て、女性のライフスタイルや医療、金融、教育、福祉関連の書籍・雑誌・Webサイト記事の編集・執筆を手掛ける。プライベートでは2児の母。

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