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2019.04.21

音読は効果がある?子どもの脳が活性化させる音読効果のメカニズム

国語の授業で昔からよくおこなわれている「音読」にはどのような意味があるのでしょうか。実は確かな効果があるのですが、そのメカニズムをきちんと理解して実施しているかどうかで、効果に大きな違いが生まれます。

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音読にどれほどの意味があるのか

今から10年ほど前、ある中学の国語の授業を見学する機会がありました。

それはいわゆる研究授業というもので、授業を多くの先生で見学し、その後に授業についての振り返りなどを行なう研修でした。

その際にまず先生はある物語文を読むにあたって、生徒に一人ずつ音読をさせていったのです。丸読みと呼ばれている方法で、「。」のところまで読んで、次の生徒がまた次の「。」まで読むという形式の音読でした。 実にその時間、15分。そして生徒が音読する声も小さく、まったく聞こえない。他の生徒は黙って教科書と睨めっこ。 果たしてこの音読には意味があるのだろうか、と感じてしまいました。

その後の振り返りで私は50分授業の中の15分という時間を割いた音読にどのような価値があると考えているのか、を尋ねてみることにしました。

すると、先生は少し考えて「生徒が本文を把握し易くするために読ませてます。」と回答しました。なるほど、確かに、音読することによって目と口と耳で文章に触れ、より内容が頭に入ってくるようになる、という効果はあるのかも知れません。

しかし、聞こえない音読で果たしてどれほどの効果があるのか。ましてや聞いているだけの大多数の生徒にとって、それだけの時間を割くほどの価値があったのか、大いに疑問を持ち、 「音読させている時の生徒の声がほとんど聞こえなかったのは残念です。聞こえない状況で聞いている他の生徒にとって、この時間は音読ではなく黙読の時間ですよね。

要するに15分の中の自分の番以外の大半の時間は黙読の時間な訳です。わずかな自分のパートを音読することにどれくらいの価値があるのでしょう。」と問うと先生は黙ってしまいました。 要は音読をさせることに対してそこまで深く考えてはいなかった、ということなのでしょう。

音読の効果

誤解が無いように付け加えますが、私は音読が無意味と思っている訳ではありません。むしろ必要だと思っています。 その効果をきちんと狙って音読をさせているかどうか、が重要な違いになるのだと思います。

音読をスムーズに行なうには、少し先の文まで含めて視野に入れて読む必要があり、それは発声と同時に、少し先の文を把握し、適切な区切りやイントネーションを判断するということを処理しなければならないのです。 これは純粋に脳のトレーニングの一種でもあり、音読する本人にとっては非常に脳を活性化させることができるという点においては有効なワークであるといえます。

しかし、音読を聞く側はどうでしょうか。ただ聞くだけの場合、発声が伴う訳でもなく、外的な動作はもちろんないので、内面的な聞くという処理のみに限定をされてしまいます。その意味で刺激も小さく音読を聞くという行為に有意な価値を見出すのは難しいと感じます。

日本と海外の音読を比較

日本における音読とは

ただ、ここに日本における音読への考え方が現れているのかも知れません。 日本の音読はいわば「発表会」であり、いかにスムーズに的確に読むことができたか、ということを目指すものであると言えます。ですから、発表者がいて、それ以外の人はきちんと耳を傾けて聞いてあげるのが礼儀という発想になるのです。 脳の活性化という点ではなく、相手の話をきちんと聞けるようになる、という側面ではとても教育的であるという見方もあるのです。

フィンランドにおける音読とは

フィンランドでは家庭教育の中に音読が根付いているようです。 まず、小学校の高学年ぐらいまでは親が家庭の中で読み聞かせを行ないます。それは読書を行なう習慣を作るための第一歩として本への関心を高め、良い出会いをさせるためでもあります。 それぐらい本を読むということを重視しているため、小学生の授業の中には読書授業もあり、そこでは教師がまず読み聞かせを行ない、その後、各自がリラックスして(寝転んだりソファで読むなども可)読書を行ない、そして、ペアになってそれぞれが音読するというワークを実施したりします。 要は音読とはそもそも相手に聞いてもらうためのものであり、お互いに本の内容を楽しむための手段という発想で、そこでは上手に読めたか、ということを問われるのではなく、純粋に分からなかった言葉はなかったか、などをチェックするのみです。

日本の音読の可能性

日本の音読は上手に読むということを求められるからこそ脳が活性化する、高いスキルが要求されるとは思いますが、どこかそこには形式張った儀礼的なつまらなさがあるように感じます。 文章の内容をきちんと把握するというのは、その内容に興味関心を持ってこそ、という発想に立てば、上手に読もうというだけではなく、まずはペアワークから始めて相手に聞かせてあげようというスタイルの音読のエッセンスを加えていくことで、日本の音読はもっと教育的な価値を高めることができるのではないでしょうか。

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諸葛 正弥

大手進学塾で長年指導を行ない、2007年に「イラスト図解でわかるプロ教師力アップ術55」(明治図書)を出版。教育委員会・各種学校などで教員研修を行ないながら、私立中高一貫校の学校改革などを手掛けている。また、「ロボット教室」や「学習教室まなび-スタイル」の運営、「よい子を育む家」の監修なども行ない、教育について幅広く活動を行っている。

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