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2024.07.19

登校拒否とは?不登校との違いや小中学生に多い原因、親にできる対応も解説

「登校拒否」という言葉には、「学校に行きたがらない」「学校へ行くことを嫌がる」といった意味合いがありますが、「登校拒否」と「不登校」の違いとは何なのか、「登校拒否」の原因は何かと疑問に思うかもしれません。また「登校拒否」をする子どものことを気軽に相談したいとお悩みの人もいることでしょう。この記事では「登校拒否」の定義から、「登校拒否」をする子どもへの接し方や対応、そして「登校拒否」の相談先といったことなどについて解説します。まずは興味のあるところから読み進めていってくださいね。

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記事を執筆したのは…

佐々木ゆりさん

公認心理師、臨床発達心理士。保育士歴は20年。現在は療育スタッフとして発達障害を持つお子さんやその家族と関わっています。発達と保育を軸に、直接支援はもちろん、webライター、保育士になりたい人の支援、保育士さん支援など幅広いキャリアを展開中です。

登校拒否の定義

「登校拒否」とは以下のように定義されています。

何らかの心理的、情緒的、身体的若しくは社会的要因又は背景によって、児童生徒が出席しない又はすることができない状況(病気又は経済的理由による場合を除く。)

この定義は「e-ヘルスネット」(厚生労働省が選定した各分野の有識者(情報専門委員)によって制作された公的な情報提供のサイト)にあり、「不登校」や「学校恐怖症」も同意義語であることが掲載されています。

「登校拒否」の歴史

1970年代から1990年代の初めごろまでは「登校拒否」、それ以降は「不登校」が使われています。文部科学省の統計でも、1998年に「学校嫌い」という表現から「不登校」に変わりました。「登校拒否」という言葉が使われる前は、「長期欠席」という言葉だけが使われていました。学校を休んでいる状態を表す言葉も時代と共に変化しているのですね。

登校拒否と不登校の違い

「うちの子は学校に行きたがらないけど、不登校ではないはず」「登校を嫌がっているのは不登校?」と登校拒否と不登校の違いが気になりませんか? 登校拒否と不登校は何が違うのか調べてみました。

登校拒否と不登校は同じ意味で使われている

「登校拒否」と「不登校」は、同じ意味で使われています。ただし、日本語のニュアンスとして受け取る印象は人によって異なりますし、「不登校」という言葉が使われる前に「登校拒否」という言葉があったことから、まったく一緒の意味ではないという考え方もあります。この記事では上記の定義(厚生労働省のe-ヘルスネット)に基づいて、「登校拒否」と「不登校」は同じ意味として、紹介していきます。

ただし、不登校の子は「年間30日以上欠席した者」

不登校と登校拒否は同じ意味であることがわかりました。ですが「不登校の子」については文部科学省の資料*1 に定義がありましたので、ご紹介します。

「不登校児童生徒」とは何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、登校しないあるいはしたくともできない状況にあるために年間30日以上欠席した者のうち、病気や経済的な理由による者を除いたもの」

登校拒否と不登校は同じ意味で使われていますが、不登校である状態については細かい定義があるのですね。

※不登校の原因・理由についての記事はこちら

不登校の原因・理由を解説|親が家庭でできる対応とNG行動とは?
不登校の原因・理由を解説|親が家庭でできる対応とNG行動とは?
不登校の原因は個人や家庭によってさまざま。この記事では「不登校の理由って何?」「親は不登校の子どもにどう接するべき?」と悩む保護者の方のために、文部科学省の調査.....

小学生の登校拒否の主な原因や現状

「なぜ登校を拒否するのか」と子どもにたずねても、何も答えてくれない。そんな状況はよくあるのではないでしょうか。大人に話したらいけないことを抱えているのではないかと不安になるのも当然かと思います。以下、「登校拒否」と「不登校」は同じ意味と考え、原因や現状を紹介していきます。

原因の1位は「無気力・不安」

文部科学省の調査*2 では、小学生における不登校の主な要因は「無気力・不安」でした。

「無気力・不安」の原因についても調査*3 が行われており、メンタルヘルスの問題ではなく、象徴的なきっかけ要因がない場合に「無気力・不安」を回答されやすい傾向であることがわかっています。子どもが学校に行きたくない原因はいくつもあり、そして複雑な様子です。

59人に1人が不登校

令和4年度では、約10万5千人が不登校、つまり小学生の59人に1人が不登校でした。それは2クラスに1人以上が不登校という状況だから驚きです。改めて数字で見てみると、とても身近な存在であることがわかりますね。

不登校の約半分が90日以上欠席している

不登校の子は「30日以上欠席している子」でしたね。そしてなんと、不登校の44.6%が90日以上欠席しているというデータ*2 もあります。ただし、出席日数については、学校に登校した日数であり、例えば自宅においてICT等を活用した学習活動を指導要録上出席扱いとした場合など、出席扱いとした日数は含みません。「とりあえず学校にはいってほしい」といった親の思いとは異なり、登校拒否の長期化が進んでいる実態となっています。

中学生の登校拒否の主な原因や現状

小学校と比べて中学生は登校拒否の人数が多いことがわかっています。原因などはわかっているのでしょうか? ここでも資料*2 を元に、登校拒否の現状などを見ていきます。

中学生も「無気力・不安」が原因の1位

中学生の不登校の原因も小学生同様、「無気力・不安」が半数以上となっています。

小学生と異なるのは、「学業の不振」が4番目にはいっていることです。中学校は卒業後の進路を考える時期ですので、学業の心配をするきっかけは多いのかもしれません。

17人に1人以上が登校拒否をしている

令和4年度の調査では、約20万人が不登校、つまり中学生の17人に1人が不登校という結果でした。それは1クラスに2人以上不登校がいることになります。また調査では平成25年度から9年連続で不登校の子が増加。中学校入学後に不登校は増えていますから、わたしたちの想像以上に学校に行けていない子がおり、さらにそれは増え続けているという現状です。

不登校の約61%が90日以上欠席している

中学生も不登校の長期化が進んでいます。小学生よりも多い不登校の約61%が90日以上欠席していることがわかっています。不登校が長期化することで、「今から授業を受けてもわからないのではないか」「クラスメイトに話しかけられたらどう答えよう」と子どもたちが事前に不安になる要因は大きくなりやすいですよね。不安が重なると、ますます学校に行きたくないと思うのは自然な流れと言えましょう。次に親ができる対応をご紹介していきます。

登校拒否の子に親ができる対応とは

「登校拒否」の主な原因ははっきりしないことがわかりました。主な原因がはっきりしていなくても、いくつかの原因が複雑に絡み合っていることは事実です。ここでは、原因に関わらず登校拒否の子に親ができる対応、サポート方法を紹介していきます。

学校に行くことを親子で焦らない

なぜ、学校に行くことを親子で焦ってはいけないのでしょうか。それは、子どもの問題(もしくは親の問題)を整理する必要があるからです。厚生労働省の通知*4 にも「不登校児童生徒への支援は,「学校に登校する」という結果のみを目標にするのではなく,児童生徒が自らの進路を主体的に捉えて,社会的に自立することを目指す必要があること」とあります。つまり、学校に行くことだけを考えてはいけませんよ、ということです。

なぜ、我が子は学校に行くことを拒否しているのかを考え、子どもにあった対応するためにはある程度の時間が必要です。対応せず強制的に学校に復帰させることは、事態の悪化につながりかねません。登校を拒否する様子が見られたら、まず子どもの観察から始めましょう。

子どもを観察する

子どもが「拒否」しているものをリストアップしてみましょう。

  • 勉強についていけていない。だから「授業」を拒否?
  • 友だちと上手くやりとりできない。だから「友だち」を拒否?
  • 朝起きることができない。だから「朝起きる」ことを拒否?
  • 自分で判断できない。だから「親」と離れることを拒否?
  • 失敗が苦手。だから「失敗しそうな場面」を拒否?
  • うるさい音がつらい。だから「教室」を拒否?

家庭において子どもの嫌なもの、ストレスとなるものを取り除くことは簡単なことでしょう。それはつまり、子どもが拒否したいものを家庭で見つけることが難しいということです。学校の様子や習い事、外出先などの様子も観察して、子どもが拒否していることをいくつかリストアップしてみましょう。おそらく子どもが拒否することは1つではなく、また状況によっては大丈夫なこともあるでしょう。そういった細かい観察を行うことで、学校に行きたがらない原因について候補があがっていくのではないでしょうか。

家族だけで抱え込まない

解決手段が限られることから親子だけで問題解決しようとするとうまくいかないケースがあります。「担任の先生が知っているからそれで十分」「そもそもうちの子は誰にも話そうとしないから」と諦めるのではなく、勇気を出して家族以外の人に発信することが大切です。

身近な人に話して「登校拒否」から変わったケース

「登校拒否」をしていた小学校3年生のお話です。

このケースは「登校拒否」が続いたため、お母さんが以前通っていた学童の先生に学童をやめると連絡したことがきっかけでした。「学校に行っていなくても、5分だけでもいいから遊んでいったらどうか」と学童の先生から提案がありました。本人に伝えると「誰もいない学童だったら遊んでもいい」ということだったので、学童にある空き教室に行くことになりました。個室という家に近い状態で5分間だけ過ごすことからスタート。その後、徐々に時間が伸びていき、また外遊びもできるようになっていきました。また、学童の先生から学校との連携について提案があり、その後学校でも別室で登校できるようになりました。

子どものつらい状態を周囲に伝えるのはとても大変なことですが、ぜひ一度家族以外の人に話を聞いてもらう機会を作りましょう。

親子それぞれの時間を持つ

親子それぞれの時間を持つことで、問題に対して冷静になることができます。すべての原因を排除することを親はおそらくできません。排除できないゆえに、行き詰まってしまう家庭が多いことだと思います。例え話ですが、目が悪い人は、補助が必要な時もありますが、最終的には自分に合ったメガネを見つけることが大切です。常に誰かに頼っていると、自分の視力の問題に気づくことができず、自立が遅れてしまいます。

原因に対して効果的なアプローチは親以外の人や物の場合もあり、子どもに対して常に近い状態でいると、状況が悪くなることを恐れて、新しいことに手が出にくくなるのではなないでしょうか。

体も心も距離を取ることは、親はもちろん子どもも問題に対して新しく考えるきっかけになります。不登校は個人からは見えないだけで、社会的には身近な問題です。ぜひ、相談機関を活用して、親子それぞれの時間を持つようにしましょう。

学校以外の学びを提案する

学校に行けない状態が続くと、子どもが新しいことを学ぶ時間が減る可能性があります。学校に通えていた時には得意だった科目も、登校拒否の状態が続けば新しい内容は当然わからないので、あっという間に苦手な科目になってしまうことでしょう。その後、学ぶこと自体が苦手になってしまうことも考えられます。ですので、ぜひ学ぶ機会を積極的に取り入れていきましょう。

国も学びの場の提供を推進*5 しています。もともと勉強が好きでない子は、どこで勉強が面白くなくなったのか確認することも大切です。タブレットや動画学習を取り入れながら、学ぶことを続けていけるとよいですね。フリースクールを検討するのもいいでしょう。

登校拒否に関する相談先

「登校拒否」に対していくつか方法があることがわかりました。子どもを支えていく中で、協力者は不可欠です。ここでは「登校拒否」について相談できる場所をまとめてみました。お子さんや親自身にあう相談先を見つけていきましょう。

学校や教育委員会

学校での様子を聞くためには担任の先生たちから話を聞く必要があります。「担任の先生は忙しいのか、あまり様子を話してもらえない」「当たり障りのない返事が多い」といったことがもしかしたらあるかもしれませんね。学校には特別支援コーディネーターやスクールソーシャルワーカーといった、特別な支援が必要な子どもについて窓口が設定されています。また「適応指導教室(教育支援センター)」と呼ばれる、不登校の子が通う場所も教育委員会によって設定されています。ぜひ1度、担任の先生以外にも声をかけて、相談や情報収集をおこなっていきましょう。

福祉事務所や市役所

我が子にあった支援を考える上で、福祉サービスの利用も検討してみるといいでしょう。福祉サービスを利用するためには福祉事務所や市役所で相談する必要があります。窓口に行くことで、福祉サービスはもちろん、民間のサービスなど様々な情報をもらうことが可能です。市役所で相談することに対して抵抗や不安がある方は、事前に電話をしてどの窓口で対応してもらえるか確認する、総合窓口で「子どものことで相談があるのですが」とたずねておくとスムーズです。窓口では、親自身が使える福祉サービス、病院や療育機関なども紹介してもらえることもありますので、子どもにあった支援を考えたい方はぜひたずねてみましょう。

医療機関

「登校拒否」や子どもの行動が病気や障害からきているかもしれないと気になる場合は医療機関を受診してみましょう。発達障害などの診断が行えるのは医師のみです。児童精神科や心療内科はすぐに受診できず、予約をして待つことがほとんどです。実は小児科で吃音や療育に通うための意見書がもらえるなど、「登校拒否」の相談に乗ってもらえる場合もあります。気になる場合には「かかりつけ医」という選択も覚えておいてくださいね。

オンライン

「市役所やかかりつけ医は人目が気になる」「とにかく話をきいてほしい」「クリニックを予約したが、それまでに相談できる場所がほしい」といった場合に、オンライン(カウンセリング)サービスを使うという手段もあります。料金は各サービスによって様々ですが、悩みに合わせた専門家や相談時間、相談方法(電話やオンライン対面、チャットやメッセージでやりとりする方法)など、自分にあったサービスを選べることが魅力的です。「どこに相談してよいかわからない」「相談事が多すぎて、どんな人を選んだらよいかわからない」「近くに相談できる場所がない」といった方は、「ソクたま相談室」のコンシェルジュがおすすめです。全国どこにお住まいでも利用可能ですので、ぜひ相談してみてくださいね。

まとめ

学校拒否の子について、以下にまとめてみました。

「登校拒否」と「不登校」は同じ意味で使われている
・「登校拒否」の原因は小中学生共に「無気力・不安」が一番多い
・「登校拒否」の子は増え続けており、長期化もすすんでいる
・「登校拒否」の子に親ができることは観察や学びの提案などがある
・「登校拒否」に関する相談先はいくつもある

「学校に行きたがらない」「学校に行くことを拒否している」子は、見えないだけで身近に多く存在しており、悩む保護者も多くいることがわかりました。どうか親子だけで悩まず、ほんの少しの勇気を出して、相談してみてくださいね。きっと、お子さんにあった接し方やこれからのことがみえてくると思います。これからも皆さんのことを応援しています。

【引用元資料】
*1 不登校の現状に関する認識 文部科学省
*2文部科学省 令和4年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要
*3 文部科学省委託事業 不登校の要因分析に関する調査研究 結果の概要 令和6年3月
*4 「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」令和元年10月25日
*5 厚生労働省 誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策(COCOLOプラン) 令和5年3月

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佐々木ゆり

公認心理師、臨床発達心理士。保育士歴は20年。現在は療育スタッフとして発達障害を持つお子さんやその家族と関わっています。発達と保育を軸に、直接支援はもちろん、webライター、保育士になりたい人の支援、保育士さん支援など幅広いキャリアを展開中です。

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