子どもがいじめられたらどうすればいい?親がとるべき適切な行動やいじめの対処法について解説
我が子が学校でいじめにあっているのではないかと気付いたら、「冷静に適切な対応を」と頭ではわかっていても、焦りや戸惑い、不安が押し寄せてきますよね。
そこでこの記事では、「自分の子どもがいじめられていたらどうしよう…」「子どもがいじめられているみたいだけど、どうしたらいいかわからない」という不安をお持ちの方のために、いじめにあった子どもを守るための対処法や保護者が気を付けておきたいポイントについて、詳しくご紹介します。
目次
子どもがいじめられているとわかったら、まずすべきことは?
令和4年に文部科学省が発表した資料によると、令和3年度の小学生のいじめ認知件数は、低学年から高学年まで全ての学年で前年度に比べて増加している※と明らかになりました
【※参照】いじめの状況及び文部科学省の取組について|文部科学省
※いじめの定義や種類についての記事はこちら
我が子がいじめられていると知ると、親としてどんな対応が正しいか悩んでしまいますよね。心掛けるとよい対応はいくつかありますが、共通するのは「徹底して寄り添う」点です。
話の真偽を確認する前に「あなたの味方だ」と伝える
真っ先に心掛けたい対応といっても過言ではないのが「いままでつらかったね」「あなたの味方だよ」と子どもに伝えることです。
子どもにとっていじめは、深いトラウマとなり得ます。打ち明けるだけでも、大きなエネルギーを要するはずです。
そのため「あなたが悲しい思いをしているのは事実だ」「ずっとあなたの味方でいる」と、寄り添う姿勢を見せてあげてください。いじめられていることを打ち明けた際に頭ごなしに否定されなかった経験、無条件で受け入れてもらえた経験は、子どもの心の安全地帯になります。
いじめられている内容を詳しく確認する
味方だと伝えた後は、子どもの話をよく聞きながら、いじめの内容を確認しましょう。
「自分がいじめられている」とは親に伝えられても、どんなことをされたのか、具体的な内容まではなかなか言えない子どもも多くいます。また「いじめられているのが恥ずかしい」「仕返しが怖い」など、さまざまな理由で詳しく打ち明けられない子どもも少なくありません。
そのため、いじめられていることを打ち明けられた直後にいきなり内容を問い詰めるのではなく、何でも聞くという姿勢で子どもをリラックスさせてから、ゆっくりと内容を確認しましょう。できるだけ「はい」「いいえ」などの選択肢がないオープン・クエスチョンを活用します。
【オープン・クエスチョンの一例】
・いつ、どこで、誰から、どのようにいじめられた?
・周囲はどんな状況だった?
・ケガをさせられたり持ち物を壊されたりした?
・いじめられてどんな気持ちになった?
なお、子どもから聞いた内容は文書でまとめておくようにしましょう。実は、いくら冷静に子どもの話を聞いているつもりでも、内心は保護者も非常に動揺してしまう可能性があります。その場合、内容を頭だけで覚えておくのは困難です。
まとめた文書は、いじめの内容を学校と共有するための資料になります。
また、壊された物や暴行された際のケガがある場合は、写真に残したり診断書を取ったりするなど、可能な範囲で証拠を集めるよう心掛けてください。
学校へ連絡する
いじめの内容を把握できたら、すみやかに学校へ連絡しましょう。
まずは担任の先生に相談するのがおすすめです。学校へ所属しているスクールカウンセラーなど、いじめに関連する相談窓口でも構いません。
「子どもからいじめられていると相談されたけど、学校に話すべきかは迷ってしまう…」そんな方もいらっしゃいます。しかし、平成25年に施行された「いじめ防止対策推進法」第23条に記載のとおり、いじめの事実を学校へ伝えるのは、実は法律上の義務です。
第二十三条 学校の教職員、地方公共団体の職員その他の児童等からの相談に応じる者及び児童等の保護者は、児童等からいじめに係る相談を受けた場合において、いじめの事実があると思われるときは、いじめを受けたと思われる児童等が在籍する学校への通報その他の適切な措置をとるものとする。
【引用】別添3 いじめ防止対策推進法(平成25年法律第71号)|文部科学省
いじめの深刻化を防いだり事実関係を明確にしたりするためにも、学校とのすみやかな連携が必要です。
【学校といじめの情報を共有する際のポイント】
- 学校とのやりとりは記録をしておく
- 内容の記憶の相違によるトラブルを防ぐため、学校側および保護者側どちらも複数人で対応する
- 学校側からの返答がいつ頃になりそうかを確認しておく
子どもがいじめられているとわかったら、「してはいけない」こと
「我が子をいじめるなんて冷静でいられない」「反省してしっかりと謝罪をしてほしい」大切な我が子が辛い思いをしてきたとわかれば、親としてはそう思いますよね。
しかし、いじめへの対応で注力するべきなのは、加害者側を罰するよりも、まずはいじめられた子どもの気持ちに寄り添いながら声を上げやすい環境を作っていく点です。
子どもを非難したり責めたりする
いじめを受けたこどもは、すでに心に大きな傷を負っています。そのため「なぜ逃げなかったの?」「もっと強く言い返すべきだった」など、子どもを責める発言は避けましょう。
責める言葉は子どもの自尊心を傷つけ、心を閉ざしてしまう恐れがあります。子どもの気持ちを共感的に受け止め、安心して話せる雰囲気作りが大切です。
相手の保護者へ直接連絡をする
我が子から加害者として特定の子どもの名前が出たとしても、相手の保護者へ直接連絡はせず、学校関係者を通してやりとりするようにしましょう。もしも相手がいじめの事実を把握していない場合、つい感情的になってしまうなど、事態が悪化してしまう可能性があります。
双方の子どもや保護者が学校の対応に異議を唱えるなど、混乱が生じるリスクもあるため、担任の先生やスクールカウンセラーなどを介してのやりとりが適しているでしょう。
学校や相手の保護者へ感情的に怒りをぶつける
学校や相手の保護者を感情的に非難したり威圧的な態度を出したりすると、いじめの解決がかえって遅れる可能性があります。
理不尽ないじめに怒りを感じるのは、当然のことです。しかし、自分の保護者が学校や他の保護者へ感情的に怒りをぶつけてしまう行為は、いじめを受けていた子どもにとっても心理的ストレスになります。
必要に応じて専門家の助言も仰ぎながら、子どもの話を聞いてまとめた文書をもとに、冷静にいじめの内容を伝えましょう。
SNSで拡散する
「できるだけいじめの事実を多くの人に知ってもらいたい」そんな感情になるかもしれませんが、いじめの内容をやみくもに他人に広める行為は、子どものプライバシーや名誉を傷つけかねません。
特に不特定多数の人が閲覧可能なSNSでの発信は、子どもの名前や学校の特定にも繋がりやすく、大変危険です。
さらに、SNSでの拡散は、学校や関係機関による公正な調査や対応を妨げる恐れもあります。いじめは重大な問題ですが、広く拡散するよりも、まず第三者機関に相談して冷静に対応することが何より大切です。
いじめにあった子どもの適切なケアとは?
いじめにあっていると子どもが打ち明けてきた場合、子どもを守るために保護者が取るとよい適切なケアについて挙げていきます。
家庭を安全地帯にする
いじめの事実を伝えた際に「話してもらえてうれしい」「ずっとつらかったんだね」と受け止めながら“家ではリラックスして過ごしていい”という事実を伝えましょう。
また、子どもの自尊心を守るために、自己肯定感を高められるような言葉がけも重要です。「よく頑張ったね、もう我慢しなくていいよ」と、これまでを評価してあげましょう。
家庭は子どもにとって、大切な心の拠り所です。安心して過ごせる家庭環境を整えれば、子どもは立ち直る力を得やすくなります。
プレッシャーをかけすぎない
どんな風にいじめにあってたのか、その内容は今後のために詳しく聞く必要があります。しかし、問い詰めるように状況を聞きすぎると、子どもにとって精神的な負担にもなりかねません。
子どもがいじめの話題を出したくなさそうな場合、そっとしておきましょう。外部のいじめ相談窓口など、ご家族以外の第三者へつなぐのも一つです。たとえば以下のような相談先があります。
・24時間子どもSOSダイヤル(通話料無料)|文部科学省
電話:0120-0-78310
専門家のケアを受ける
いじめを受けた子どもにとって、学校は非常に怖い場所です。なかには、学校での出来事を思い出すだけで、体調を崩してしまう子もいるかもしれません。
そのため、いじめで子どもが抱えたトラウマの大きさに応じて、心理カウンセラーなど専門家のケアを受けましょう。保護者だけですべてを抱え込むのは困難です。周りを頼りながら適切なサポートを求めることが大切といえます。
子どもがいじめられた場合、学校はどこまで対応してもらえる?
子どもたちが心身ともに安心できる状態で学べるための環境づくりをする「安全配慮義務」は、学校の義務です。そのため、いじめの相談や報告を受けると、次のような対応を検討します。
- いじめの事実確認と加害者への指導
- 別室での勉強や臨時の分散登校の措置
- 学校いじめの対策委員会の開催
- スクールカウンセラーによる心のケア
- 加害者との円滑な関係修復の仲介
一方で、いじめが深刻で被害生徒の心身の安全が著しく脅かされる事態の場合、もし解決したとしても、転校を含めた他の選択肢を検討せざるを得ません。
特に、いじめが集団で行われていた場合、解決後も被害者の立場が脅かされ続けるリスクが高くなります。そうした場合は、新しい環境での生活を勧める必要もあるでしょう。
いじめの本当の「解決」とは、いじめがなくなったときではなく、いじめられていた子どもの心が回復したときだと考えています。そのためには、関係者全員の尽力が必要不可欠です。
しかし、最終的には被害者の子どもの幸せが何より大切といえます。学校と保護者は常に最善の選択ができるよう、注意深く検討し続けることが重要です。
もし学校が対応してくれない場合、どうすればいいのか?
「学校に相談したけど適切な対応をしてくれない」「学校と関係がこじれてしまい、解決に繋がる兆しが見えない」そんな場合は、次のような手段があります。
教育委員会に申し立てをする
教育委員会は、いじめの内容を確認して対策方法を教育長に提案し、それを元に学校に指導や助言、学校への訪問などを行う機関です。学校側は、指導や助言を受けたうえで取った対策や結果を教育委員会へ報告しなければなりません。
そのため、いじめ解決までの糸口がスムーズに見つかる可能性があります。
第三者委員会の設置を求める
公正性を期すため、学校関係者や専門家、弁護士から構成される第三者委員会の設置を求めるといった手段もあります。しかし現時点では、第三者委員会の調査に関して、法律での明確な決まりはありません。
文部科学省が発表している「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」では、調査組織は「当該事案の関係者と直接の人間関係または特別な利害関係を有しない者(第三者)」で構成するとなっています。ところが、第三者のみで構成するか第三者を加えた体制にするかは、学校などの判断に任されるのが現状です。
探偵や弁護士、警察のサポートはどのように得ればいい?
学校に相談していじめ問題が解決できれば、それに越したことはありません。しかし、そう簡単にはいかないケースも多く存在します。
もしも学校や教育委員会から納得できる対応が得られない場合は、探偵や弁護士、警察への相談も最終手段として検討できます。
探偵
いじめ問題を話し合う際のキーポイントは「いじめの証拠」です。いじめの加害者や学校にいじめの事実を認めてもらったり、損害賠償や慰謝料を請求したりする場合、加害者の保護者の責任を追及するための証拠集めは非常に大切です。
たとえば、加害者の保護者が子どものいじめを知ったうえで見て見ぬふりしていた場合「監督義務」を怠っていたとして、責任を追及できます。
とはいえ「自分の子どもがいじめをしていたことを知っていた証拠」を、いじめを受けた子ども本人や保護者が証拠を集めるのは、難しいですよね。その場合に頼れるのが、探偵のいじめ調査です。
対象者の生活習慣や行動、交友関係など、素行調査でいじめの実体を調査します。
費用は案件によって異なりますが、相場としては10~40万円、平均費用は約25万円のようです。
弁護士
いじめ問題を取り扱っている弁護士に相談するのも有効です。
弁護士は、いじめられた子どもの代理人として加害者を警察へ刑事告訴したり、治療費や慰謝料などの損害賠償を加害者や学校から請求したりできます。また、いじめられた子どもの保護者に付き添って学校へ行き、いじめ解決への交渉をするのも可能です。そのため弁護士の介入は、いじめを受けた子どもや保護者の負担軽減にもつながります。
費用は探偵への依頼と同様に個別の案件で異なりますが、一般的には、着手金と報酬金合わせて20~50万円ほどが相場のようです。
警察
いじめの内容が犯罪行為にあたるほど悪質な場合、学校は所轄の警察署と連携して、援助を求めなければなりません。
6 学校は、いじめが犯罪行為として取り扱われるべきものであると認めるときは所轄警察署と連携してこれに対処するものとし、当該学校に在籍する児童等の生命、身体又は財産に重大な被害が生じるおそれがあるときは直ちに所轄警察署に通報し、適切に、援助を求めなければならない。
【引用】別添3 いじめ防止対策推進法(平成25年法律第71号)|文部科学省
悪質ないじめが確認できているのにもかかわらず学校が警察と連携してくれない場合は、警察への相談も視野に入れましょう。その際、いじめ問題を取り扱っている弁護士へ相談して同席してもらうとスムーズな場合があります。
なお、いずれの専門家の力を借りる際も、プライバシーへの配慮が欠かせません。相談内容や進捗具合を他の人にやみくもに広げるのは控えましょう。
子どもがいじめにあったとき、親が気をつけたいことは?
いじめにあっている子どもを守るために奮闘するなかで、感情的になってしまうシーンもあるかもしれません。どうしても「いじめている側をこらしめたい」などと考えてしまいますよね。
しかしいじめ問題は、冷静な対応と長期的な視野を持つことが不可欠です。
感情的にならず、冷静な態度を心掛ける
「加害者を許したくない」と感情が高ぶるのは自然なことです。しかし、相手を非難したり威圧的な態度が出たりすると、かえって解決が遅れる恐れがあります。
感情のコントロールは難しいかもしれませんが、子どもの気持ちや今後のことを最優先に考え、専門家の助言を仰ぐ姿勢が求められます。冷静な態度こそが、いじめ問題の適切な解決につながるのです。
子どもに寄り添い、味方であり続ける
いじめは自己肯定感の低下や孤独感を招き、深刻な心の傷になり得ます。そんなとき、家族が味方でいてくれるという事実は、子どもにとって心の大きな拠り所です。
家庭に絶対的な味方がいると、子どもは安心して気持ちを打ち明けられます。秘密を抱え込まずに済むため、心理的ストレスからも開放されるのです。
つらい経験をした子どもに寄り添い、味方であり続けることが、保護者の重要な役割といえます。
いじめの解決に向けて長期的な視点を持つ
いじめ問題は一朝一夕で解決できるものでなく、時間をかけて信頼関係を構築し、対話を重ねることが大切です。学校や専門家とも連携を取りながら、できる対応を着実に取っていく必要があります。
早期解決を求めすぎると、表面的な対応に終わってしまう危険性も否定できません。子どもの心身の健康を最優先に、目の前の対処法だけでなく、長期的な視点を忘れずにいることが大切です。
一人で抱え込まずに他者の助言も参考にする
いじめは複雑な背景と課題を抱えており、一人で全てを判断するのは困難です。そのため、保護者同士の主観に捉われず、第三者の客観的な視点や専門家のアドバイスを仰ぐのも不可欠といえます。
なにより、子どもだけではなく保護者やご家族もエネルギーを要する問題です。一人で抱え込まずに、専門家や学校、行政など、さまざまな関係機関と連携を取りましょう。
いじめは親子だけでなく、社会全体で取り組むべき重大な課題です。寄り添う人々の力を借りながらの対処が何より大切といえます。
いじめ問題の対応事例
ここからは、筆者が対応したいじめ問題の事例をご紹介します。
ケース1:小学生女子Aさん
「理不尽な理由で仲間外れにされ、不登校傾向が見られる」とAさんの保護者より相談を受ける。その後、学校へのすみやかな連絡を勧めたところ、担任の先生と保護者が連携して加害児童に謝罪を求めた。その後、被害児童の心のケアを行った結果、いじめは解消した。
ケース2:小学生男子Bさん
「常に身なりを馬鹿にされている」とBさんの保護者より相談を受ける。スクールカウンセラーとつながることを提案し心のケアに努めていたが、被害児童が一時的に別の学校へ転校し、新しい環境で心を癒せたことで、再びいじめのない学校生活を送れるようになった。
ケース3:中学生男子Cさん
いじめの被害者ではなく加害者側として、Cさんの保護者から相談を受ける。学校と連携していじめの事実を確かめるように勧め、学校側も把握。被害者の立場に立って考えるグループセッションを通じ、加害者は深く反省して、行動を改めた。
まとめ
いじめは、子供と保護者に大きな影響を与える深刻な問題です。我が子がいじめられていると気付いた場合、家庭を子供の安全地帯にし、心の回復を支援しましょう。
もちろん、保護者だけで抱え込む必要はありません。学校や教育委員会、または対応に納得できない場合は、第三者委員会の設置や弁護士、警察などへの相談も検討できます。
ときには専門家の力も得ながら、社会全体で取り組むべき課題と考えての対応が重要です。関係機関と連携しながら、子供たちが声を上げやすい環境をつくっていくことこそが、いじめ防止の大きな一歩となります。
【参考サイト】
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